炎症性眼窩うっ血 症状原因 診断治療 MRI

炎症性眼窩うっ血 症状診断治療

炎症性眼窩うっ血の全体像
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症状と身体所見

眼窩痛、眼瞼腫脹、眼球突出、複視などの自覚・他覚所見を時系列で整理し、緊急度評価のポイントを押さえます。

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原因と鑑別診断

感染性・特発性・血腫性などの病態を整理し、眼窩蜂窩織炎や腫瘍性病変との鑑別観点を提示します。

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画像検査と治療戦略

CT・MRI・血液検査の読み方の要点と、ステロイド・抗菌薬・外科的ドレナージなど治療選択の実際をまとめます。

炎症性眼窩うっ血の症状と身体所見

炎症性眼窩うっ血に相当する状態では、急性の眼窩痛と眼瞼腫脹、発赤、球結膜充血が同時期に出現することが多く、患者は「片眼の急な腫れと痛み」を主訴に受診することが少なくありません。

眼瞼を触れると高度の圧痛を伴い、眼球運動に伴う痛みや眼球突出、開瞼困難が加わると、眼窩内軟部組織の炎症とうっ血がかなり進行しているサインと解釈できます。

視機能に関しては、複視や視力低下、視野障害が出現すれば、炎症やうっ血が視神経あるいは眼動脈系に波及している可能性があり、緊急画像評価が推奨されます。

全身症状として発熱、頭痛、悪心などを伴う場合には、眼窩蜂窩織炎敗血症の危険性を念頭に置き、敗血症性血栓性静脈炎を含めた全身評価を早期に行う必要があります。

身体診察では、眼位の変化(外偏位や上転制限など)と眼球運動障害のパターンを丁寧に確認することで、外眼筋炎優位か眼窩脂肪組織主体かなど、炎症性眼窩うっ血の局在をある程度推定できます。

また、うっ血乳頭や視神経乳頭浮腫が観察されれば、眼窩内圧上昇や頭蓋内圧亢進を併発している可能性があり、単純な眼窩局所疾患にとどまらない病態として扱うべきです。

参考)うっ血乳頭

炎症性眼窩うっ血の原因と病態生理

炎症性眼窩うっ血の背景には、急性細菌感染による眼窩蜂窩織炎、特発性眼窩炎症、外傷や凝固異常に伴う眼窩内血腫など、複数の病態が含まれており、それぞれで静脈還流障害のメカニズムが異なります。

眼窩蜂窩織炎では黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌などの細菌が副鼻腔炎や皮膚感染巣から波及し、眼窩脂肪組織と静脈系に強い炎症を惹起することで、うっ血と組織浮腫が急速に進行します。

特発性眼窩炎症(Idiopathic Orbital Inflammatory Disease:IOID)では、明らかな感染巣を伴わず、自己免疫機序が疑われる炎症が外眼筋、眼窩脂肪、涙腺に生じ、炎症性浮腫が眼窩静脈を圧排してうっ血をきたします。

参考)6.眼窩筋炎 (眼科 62巻11号)

この場合、ステロイド反応性が高い一方で、ステロイド依存性・再発例や免疫抑制薬を要する難治例もあり、炎症性眼窩うっ血が慢性化して眼窩構造を変形させることがあります。

参考)https://www.japanthyroid.jp/doctor/img/basedou02.pdf

比較的知られていない原因として、出血性素因を背景にした特発性眼窩内血腫があり、慢性炎症細胞を伴う血腫塊が静脈還流を障害し、腫瘍様の眼球突出と眼窩うっ血像を呈することがあります。

これらの症例では、初期に腫瘍性病変と誤認されることも多く、病理で血腫と軽度の慢性炎症のみが確認されて初めて炎症性眼窩うっ血を伴う血腫性病変と判断されるケースも報告されています。

炎症性眼窩うっ血の検査 診断と画像所見

炎症性眼窩うっ血が疑われる場合、まず全身状態を評価したうえで血液検査を行い、白血球増多、CRP上昇、赤沈亢進など炎症反応の有無を確認し、細菌性か非感染性かの手がかりとします。

感染が疑われる時には、眼脂や膿瘍内容の培養に加えて、敗血症を懸念する場合には血液培養も実施し、起炎菌同定と抗菌薬感受性に基づく治療の最適化を行います。

画像検査ではCTとMRIが中心となり、CTは眼窩蜂窩織炎の範囲や副鼻腔炎・骨変化の評価、膿瘍形成の有無の確認に有用です。

参考)眼窩蜂窩織炎 – 20. 眼の病気 – MSDマニュアル家庭…

一方、MRIは外眼筋炎や涙腺炎など特発性眼窩炎症の同定、眼窩血管腫・リンパ増殖性疾患など腫瘍との鑑別に優れており、T2信号や造影パターンから炎症の活動性も推定できます。

特発性眼窩内血腫では、CTで低〜等吸収の紡錘形腫瘤として描出され、造影で辺縁が軽度増強する所見が報告されており、腫瘍性病変との鑑別が問題になります。

こうした症例では、内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)下の生検によって血腫と確認されることがあり、炎症性眼窩うっ血を伴う血腫性病変としての理解が重要です。

眼底検査では、うっ血乳頭や視神経乳頭浮腫の有無を必ず確認し、頭蓋内圧亢進や視神経障害を早期に検出する必要があります。

視野検査で生理的暗点拡大や求心性視野狭窄があれば、炎症やうっ血が視神経機能に影響し始めているサインとして、より積極的な減圧・抗浮腫治療を検討する契機となります。

炎症性眼窩うっ血の治療 抗菌薬 ステロイド ドレナージ

炎症性眼窩うっ血の治療は、原因病態の見極めと同時に、視機能を守るための時間との闘いという側面があります。細菌性が疑われる場合には、入院下で広域静注抗菌薬を早期投与し、必要に応じて治療効果と培養結果を見てレジメンをデエスカレートします。

膿瘍形成が画像上疑われる、あるいは視神経障害が進行する場合には、切開排膿や穿刺排膿を含む外科的ドレナージを検討し、眼窩内圧と炎症性うっ血の急速な軽減を図ることが推奨されます。

特発性眼窩炎症に伴う炎症性眼窩うっ血では、ステロイド全身投与が第一選択となることが多く、急性期は中等量〜高用量を短期間投与したのち、症状と画像所見を見ながら漸減していきます。

しかし、ステロイド依存性や再燃例も少なくなく、長期管理ではアザチオプリンなどの免疫抑制薬の併用や、生物学的製剤の可能性を検討する報告もあり、眼科とリウマチ・免疫内科の連携が重要です。

特発性眼窩内血腫に伴ううっ血では、マンニトールやアセタゾラミド、副腎皮質ステロイド、抗菌薬などによる保存的療法がまず試みられますが、改善が乏しい場合には穿刺吸引やESSを用いた外科的除去が選択されます。

外科的アプローチでは再出血や感染といった合併症リスクもあるため、腫瘤の局在や患者背景を踏まえたうえで、眼科・耳鼻咽喉科・脳神経外科を含む多職種カンファレンスで方針決定を行うのが望ましいです。

支持療法としては、疼痛コントロール、発熱に対する対症療法、血糖や凝固能の管理、脱水防止など全身管理も重要であり、全身状態が不安定な症例では集中治療室レベルでのモニタリングが必要となることもあります。

退院後も炎症やうっ血の再燃、眼球位置の変化、視機能低下を見逃さないよう、画像検査と視機能評価を組み合わせた長期フォローアップ計画を立てることが推奨されます。

炎症性眼窩うっ血の予後評価と意外なピットフォール

炎症性眼窩うっ血の予後は、診断までの時間、初期治療の適切性、基礎疾患の有無によって大きく左右され、特に視力障害出現から治療介入までの遅れが最終視力を決定づけるとされています。

炎症自体が改善しても、長期化したうっ血と浮腫により、視神経萎縮や外眼筋線維化を残し、眼位異常や複視が固定して生活の質を損なう症例もあるため、早期の減圧と炎症制御が重要です。

あまり知られていないピットフォールとして、うっ血乳頭を伴う症例では、眼窩病変のみならず頭蓋内圧亢進や脳静脈洞血栓症など頭蓋内疾患が背景に潜んでいることがあり、眼窩のCT・MRIだけでなく頭部全体の評価が必要になる点が挙げられます。

また、自己免疫性甲状腺疾患などの全身性疾患では、甲状腺眼症に伴う外眼筋炎の活動性評価にMRIのT2信号や造影増強効果が用いられますが、同様の所見は特発性眼窩炎症など他の炎症性眼窩うっ血病態でも出現しうるため、画像のみでの断定は危険です。

高齢者や免疫抑制状態の患者では、症状が典型的でなく、比較的軽度の眼痛や腫脹のうちに重症の眼窩蜂窩織炎が進行していることもあり、「痛みの訴えが弱いから軽症」と安易に判断すると視機能喪失につながるリスクがあります。

さらに、眼窩周囲の軽微な打撲歴を契機に眼窩内血腫が形成される症例では、数日〜数週間かけて徐々に眼球突出と炎症性眼窩うっ血が進行することがあり、患者自身が外傷との関連を忘れている場合もあるため、詳細な外傷歴の聴取が役立つことがあります。

予後の観点では、視力と視野の定期的なフォローに加え、眼窩形態変化や眼位の評価を包括的に行い、必要に応じてプリズム眼鏡や斜視手術、義眼床形成などのリハビリテーション的介入も検討されます。

炎症性眼窩うっ血を単なる急性炎症として扱わず、「長期の視機能と整容性に影響しうる慢性の起点」と捉えてマネジメントする視点が、臨床現場で求められています。

炎症性眼窩うっ血に関する病態と診断・治療の詳細な解説(特発性眼窩炎症や甲状腺眼症との関連を含む)

自由が丘清澤眼科:特発性眼窩炎症の解説ページ

眼窩蜂窩織炎を中心とした感染性眼窩疾患の症状・診断・治療の総説

関西医科大学附属病院:眼窩蜂窩織炎

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