電子伝達系とNADHとFADH2とATP

電子伝達系 わかりやすく

電子伝達系を臨床で迷わない要点
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結論は「電子→H+→ATP」

NADH/FADH2の電子が複合体へ渡り、そのエネルギーでH+勾配を作り、ATP合成酵素がATPを作ります。

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酸素は最終受容体

酸素は「燃やすための材料」だけでなく、電子のゴールとして水になる重要な役割を持ちます。

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阻害・脱共役は臨床に直結

阻害剤や脱共役(共役の破綻)はATP低下や熱産生増加につながり、薬理・毒性・病態の理解に役立ちます。

電子伝達系のわかりやすく全体像:NADHとFADH2と酸素とATP

 

電子伝達系(呼吸鎖)は、解糖系クエン酸回路で生じたNADH・FADH2の「電子」を、ミトコンドリア内膜上の複合体へ順に受け渡す仕組みです。日本薬学会の用語解説でも、NADH/FADH2の酸化に伴う電子の受け渡しと、それに伴うプロトンの汲み出し、そしてATP産生までが一連として説明されています。

ポイントは、エネルギーの本体が「電子」そのものというより、電子が高いエネルギー状態から低い状態へ“落ちていく”際に得られる落差を、H+(プロトン)勾配として一時的に保存するところです(電気化学的勾配)。この勾配を使ってATP合成酵素(ATPシンターゼ)が回転し、ADP+リン酸からATPが合成されます。

医療従事者向けに言い換えるなら、電子伝達系は「酸素を使ってATPを量産する最終ライン」です。酸素は、単に“呼吸で取り込むガス”ではなく、電子の最終受け取り手(最終電子受容体)として不可欠で、電子が酸素へ渡ることで最終的にが生成されます。看護roo!の解説でも、電子伝達と共役して酸素が4電子還元されて水になる(O2+4H++4e-→2H2O)ことが示されています。

さらに臨床で重要なのは「酸素消費=ATP産生」ではない点です。通常は酸素消費(酸化)とATP産生(リン酸化)が“共役”していますが、この結びつきが外れると、酸素を使っているのにATPが増えない状況が起こります(脱共役)。この“ズレ”が、発、代謝変化、薬剤・中毒の説明に直結します。

電子伝達系のわかりやすく各複合体:複合体Iと複合体IIと複合体IIIと複合体IV

電子伝達系は、内膜上の膜タンパク質複合体(複合体I〜IV)と、可動性の電子運搬体(ユビキノン、シトクロムc)で構成されます。日本薬学会は、複合体I(NADH-ユビキノンオキシドレダクターゼ)、複合体II(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、複合体III(ユビキノール-シトクロムcオキシドレダクターゼ)、複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ)へ順次電子が受け渡される、と整理しています。

ここを「わかりやすく」するコツは、複合体を“役割の違う装置”として見ることです。

✅ ざっくり役割(暗記より「流れ」を優先)

・複合体I:NADHから電子を受け取り、次の運搬体へ渡す。同時にH+勾配づくりに関与する(プロトンを汲み出す側)。

・複合体II:FADH2側(主にコハク酸由来)から電子を入れる入口。ただしIのように強いH+ポンプではない、と整理されることが多い(入口は増えるが、ATP効率が下がる理由の理解につながる)。

・複合体III:ユビキノール(還元型ユビキノン)から電子を受け取り、シトクロムcへ渡す中継。

・複合体IV:シトクロムcから電子を受け取り、酸素へ渡して水を作るゴール。

臨床説明では、「NADHは“上流の高エネルギー電子”を持ってくる宅配便、FADH2は“少し低め”の宅配便」と表現すると、ATP収支の差や低酸素の影響を説明しやすくなります。厳密なATP数は教科書・流派で揺れますが、現場でまず必要なのは“入口の違いが効率差になる”という因果の理解です。

電子伝達系のわかりやすく共役と脱共役:酸化的リン酸化と熱産生とUCP

電子伝達系は、酸素消費(酸化)とATP産生(リン酸化)が結びついているため、酸化的リン酸化とも呼ばれます。看護roo!は「酸化とATP産生がカップリング(共役)していることから酸化的リン酸化という」と説明し、共役の概念を明確にしています。

一方で脱共役(uncoupling)は、酸素が消費されてもATPが産生されない状態です。看護roo!では、脱共役が起こると栄養素の結合エネルギーがATPに変換されず、熱へ傾くこと、そして新生児の褐色脂肪組織で脱共役による熱産生が重要であること、さらにUCP(脱共役タンパク質)が注目されていることが解説されています。

この部分は医療従事者の“説明力”を上げるところです。例えば、

・「熱が出る=炎症だけ」ではなく、「エネルギー変換の効率が熱側に傾く」病態・薬理の可能性がある。

・「酸素化が保たれているのに倦怠感が強い」などの訴えを、ATP産生効率の観点で整理できる(もちろん鑑別は別問題ですが、患者教育の枠組みを作れる)。

また、脱共役は“悪いこと”と決めつけないのが重要です。生理的には体温維持という目的があり、病的にはエネルギーがATPにならず熱として散るため、体力低下や代謝の破綻につながり得ます。ここを二面性で押さえると、教育資料としての説得力が上がります。

電子伝達系のわかりやすく阻害:ロテノンとアンチマイシンとシアンと活性酸素

電子伝達系は「流れ」なので、どこかを塞ぐと上流が渋滞します。渋滞の結果として、ATP産生が落ちるだけでなく、電子が漏れて活性酸素種(ROS)が増えやすくなる、という理解が臨床的です。看護roo!は、電子伝達と共役して酸素が水になる過程でスーパーオキシドなどの活性酸素が発生し得ること、そしてSODなどの消去系があることに触れています。

阻害剤の“定番”は教育でよく出ますが、ここも「わかりやすく」するなら、複合体の番号とセットで押さえるのが実用的です。J-STAGE掲載の論文(薬学雑誌の総説)でも、ミトコンドリア電子伝達系阻害剤としてロテノン、アンチマイシンA、シアンが挙げられ、阻害によりROS放出が亢進することが示されています。

・ロテノン:複合体Iの阻害として扱われることが多い。

・アンチマイシンA:複合体IIIの阻害として扱われることが多い。

・シアン(シアン化物):複合体IV(酸素への受け渡し段階)の阻害として扱われることが多い。

臨床・教育への落とし込みとしては、次の整理が役に立ちます。

  • 「IVが止まる=酸素があっても使えない」→ 組織低酸素に似たエネルギー危機。
  • 「IやIIIが詰まる=上流が過還元」→ 電子漏れが増え、ROSが増えやすい条件。
  • 「ATPが落ちる」だけでなく、「酸化ストレスが上がる」ことが症状や臓器障害の理解の補助線になる。

必要に応じて、論文PDFの参照(阻害剤とROSの関係の裏取り)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/130/1/130_1_29/_pdf

電子伝達系のわかりやすく独自視点:NADPHオキシダーゼと白血球と電子伝達系

「電子伝達系」という言葉は、多くの場合“ミトコンドリア内膜の呼吸鎖”を指しますが、医療現場では“電子を渡して機能する仕組み”は他にもあります。日本薬学会の解説では、小胞体のシトクロムP450系(薬物代謝など)や、白血球で活性酸素種を産生して殺菌に関与するNADPHオキシダーゼも、電子伝達系の一種といえる、と明記されています。

ここが意外に重要なのは、患者説明で「活性酸素=悪」だけで終わらせない視点が作れるからです。ミトコンドリア由来のROSは過剰だと障害になりますが、免疫ではROSが“武器”として機能します(殺菌)。つまり、電子の受け渡しは「ATPを作る」だけでなく、「薬を代謝する」「病原体を倒す」という別の臨床アウトカムにもつながる、ということです。

教育・研修の場では、次のような問いに展開できます。

  • 発熱や炎症の背景に、免疫のROS産生(NADPHオキシダーゼ)という“別の電子伝達”があるのでは?
  • 代謝(P450)とミトコンドリア機能低下が重なると、薬効・副作用の出方をどう説明するか?
  • 「酸素投与」だけでは回復しないケースで、電子の最終受容体(酸素)以前の問題(阻害・共役破綻)をどう疑うか?

権威性のある参考(電子伝達系の定義と、P450・NADPHオキシダーゼも含めた説明の根拠)

https://www.pharm.or.jp/words/word00622.html

行における電子伝達系 最適化プログラム