デグロービング損傷 症状
デグロービング損傷 皮膚剥脱機序と分類
デグロービング損傷は、回転する機械部分(タイヤ、ベルト、ローラー)への巻き込みが主原因です。手袋を脱ぐように皮膚が全周性に剥脱する特徴から「デグロービング」と呼称されます。剥脱の程度により、全周性剥脱と部分周性剥脱に分類されます。部分周性の場合、初期評価で見落とされるケースが報告されており、受傷部分の詳細な観察が医療従事者には欠かせません。
交通事故では歩行中、自転車乗車中、バイク乗車中に大型自動車に巻き込まれるケースが多く、労災事故では工場機械への巻き込みが典型的です。受傷機序の詳細な把握は、隠れた合併損傷の発見に直結します。剥脱皮膚の位置が手指や足指に限定されず、前腕遠位部から手部全体、下腿から足部全体にまで及ぶことが一般的です。
デグロービング損傷 末梢神経損傷の臨床評価
デグロービング損傷では、神経の牽引損傷や完全断裂が起こり、受傷部位より末梢側の神経麻痺が発生します。初期診察時に末梢側の感覚・運動機能を系統的に評価することが診断の鍵となります。軽い症例でも末梢側のしびれ感や痛覚低下が見られ、これらの所見は後遺障害認定において極めて重要な客観所見となります。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)を併発する可能性も高く、ジリジリとした灼熱感、むくみ、皮膚の色調変化が経時的に現れることがあります。初期段階での神経障害の評価記録が、後の治療経過や後遺症認定に大きく影響するため、専門的な神経学的検査(Semmes-Weinstein monofilament検査など)の実施が推奨されます。
デグロービング損傷 開放性損傷と閉鎖性損傷
デグロービング損傷には開放性と閉鎖性の2つのタイプが存在します。開放性では皮膚が大きく裂開し、骨・筋肉・神経が露出する典型的な症状を示すため、診断は容易です。一方、閉鎖性(Morel-Lavallée損傷とも呼ばれる)では外表的な大きな創がなく、皮下に液体貯留が生じるため、初期評価で見落とされやすいという臨床的課題があります。
閉鎖性デグロービング損傷は、受傷後数週間経過後に患部の腫脹や可動性の異常が顕在化することがあります。MRI検査により皮下の脂肪層損傷や液体貯留を検出でき、早期診断には画像検査が不可欠です。閉鎖性であっても組織の壊死リスクは同等であり、治療方針は開放性と変わりません。両型ともに段階的な手術再建と長期的なリハビリテーションが必要となります。
デグロービング損傷 症状 感染症併発と全身管理
デグロービング損傷での感染症併発は、局所症状を劇的に悪化させ、切断判断を余儀なくさせる場合があります。腱・筋肉・骨が露出した創では、通常の創傷被覆では不十分であり、壊死組織の除去(デブリードマン)と徹底的な洗浄が初期対応として行われます。それでも環境汚染物質や土壌菌の付着から感染に至ることがあります。
広域スペクトラムの抗生物質投与と、定期的な創処理による感染制御が重要です。感染が進展し制御困難になった場合、患肢の機能温存が不可能となり、切断術が最終的な選択肢となることもあります。全身管理では、感染に伴う敗血症、多臓器不全、凝固異常への対応も視野に入れた集中治療が必要となります。初期段階での感染予防と積極的な感染管理が、長期予後を大きく左右する要因となります。
参考資料。
デグロービング損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント | 医療相談
デグロービング損傷 | 弁護士法人小杉法律事務所

医療に詳しい弁護士のための後遺障害等級アップ事例集1 デグロービング損傷(12級→5級)