デグロービング損傷と症状 病態の理解

デグロービング損傷 症状

デグロービング損傷の初期症状と重症度判定
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皮膚剥脱と軟部組織損傷

デグロービング損傷では、受傷部位から末梢の皮膚が全周性に剥脱し、皮下組織・脂肪層が露出します。剥脱された皮膚は栄養血管が途絶え、壊死に陥るリスクが高い。軟部組織全体に広範なダメージが加わるため、通常の縫合による生着は期待できません。

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神経・血管・腱の合併損傷

皮膚剥脱に伴い、神経・血管・腱が同時に損傷されることが多い。末梢側の神経麻痺、感覚障害、出血が顕著に現れます。血管損傷により止血困難となり、ショック状態へ移行する可能性もあります。損傷部位より末梢の感覚低下や運動麻痺の有無を初期評価で確認することが重要です。

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骨折・関節損傷の確認

デグロービング損傷では、強い牽引力や圧砕機序により骨折が同時に生じることが散見されます。前腕遠位部や下腿部への損傷では、単純X線検査で判読困難な小骨片が存在することもあり、CT検査による詳細な評価が必要となります。骨の露出が見られる場合は、感染防止処置を急速に実施する必要があります。

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出血・ショック症状

デグロービング損傷は大量出血を伴うことが多く、出血性ショック状態への進行が迅速です。初期対応では止血と輸液・輸血による循環管理が最優先。患者の全身状態の安定化なしには、局所治療へ進むことができません。特に複合外傷の場合、多臓器障害へ移行する危険性があります。

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感染リスクと環境汚染

露出した深部組織は感染リスクが極めて高い。特に交通事故では、タイヤゴムやアスファルト片などの環境汚染物質が創面に付着。土壌由来の嫌気性菌やガス産生菌による急速な感染進展が起こる可能性もあります。初期創処理での徹底的な洗浄と消毒、広域抗生物質の即時投与が必須です。

デグロービング損傷 皮膚剥脱機序と分類

 

デグロービング損傷は、回転する機械部分(タイヤ、ベルト、ローラー)への巻き込みが主原因です。手袋を脱ぐように皮膚が全周性に剥脱する特徴から「デグロービング」と呼称されます。剥脱の程度により、全周性剥脱と部分周性剥脱に分類されます。部分周性の場合、初期評価で見落とされるケースが報告されており、受傷部分の詳細な観察が医療従事者には欠かせません。

交通事故では歩行中、自転車乗車中、バイク乗車中に大型自動車に巻き込まれるケースが多く、労災事故では工場機械への巻き込みが典型的です。受傷機序の詳細な把握は、隠れた合併損傷の発見に直結します。剥脱皮膚の位置が手指や足指に限定されず、前腕遠位部から手部全体、下腿から足部全体にまで及ぶことが一般的です。

デグロービング損傷 末梢神経損傷の臨床評価

デグロービング損傷では、神経の牽引損傷や完全断裂が起こり、受傷部位より末梢側の神経麻痺が発生します。初期診察時に末梢側の感覚・運動機能を系統的に評価することが診断の鍵となります。軽い症例でも末梢側のしびれ感や痛覚低下が見られ、これらの所見は後遺障害認定において極めて重要な客観所見となります。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)を併発する可能性も高く、ジリジリとした灼熱感、むくみ、皮膚の色調変化が経時的に現れることがあります。初期段階での神経障害の評価記録が、後の治療経過や後遺症認定に大きく影響するため、専門的な神経学的検査(Semmes-Weinstein monofilament検査など)の実施が推奨されます。

デグロービング損傷 開放性損傷と閉鎖性損傷

デグロービング損傷には開放性と閉鎖性の2つのタイプが存在します。開放性では皮膚が大きく裂開し、骨・筋肉・神経が露出する典型的な症状を示すため、診断は容易です。一方、閉鎖性(Morel-Lavallée損傷とも呼ばれる)では外表的な大きな創がなく、皮下に液体貯留が生じるため、初期評価で見落とされやすいという臨床的課題があります。

閉鎖性デグロービング損傷は、受傷後数週間経過後に患部の腫脹や可動性の異常が顕在化することがあります。MRI検査により皮下の脂肪層損傷や液体貯留を検出でき、早期診断には画像検査が不可欠です。閉鎖性であっても組織の壊死リスクは同等であり、治療方針は開放性と変わりません。両型ともに段階的な手術再建と長期的なリハビリテーションが必要となります。

デグロービング損傷 症状 感染症併発と全身管理

デグロービング損傷での感染症併発は、局所症状を劇的に悪化させ、切断判断を余儀なくさせる場合があります。腱・筋肉・骨が露出した創では、通常の創傷被覆では不十分であり、壊死組織の除去(デブリードマン)と徹底的な洗浄が初期対応として行われます。それでも環境汚染物質や土壌菌の付着から感染に至ることがあります。

広域スペクトラムの抗生物質投与と、定期的な創処理による感染制御が重要です。感染が進展し制御困難になった場合、患肢の機能温存が不可能となり、切断術が最終的な選択肢となることもあります。全身管理では、感染に伴う敗血症多臓器不全、凝固異常への対応も視野に入れた集中治療が必要となります。初期段階での感染予防と積極的な感染管理が、長期予後を大きく左右する要因となります。

参考資料。

デグロービング損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント | 医療相談
デグロービング損傷 | 弁護士法人小杉法律事務所


医療に詳しい弁護士のための後遺障害等級アップ事例集1 デグロービング損傷(12級→5級)