第一世代セフェム内服一覧と特徴

第一世代セフェム内服一覧と特徴

第一世代セフェム経口薬を適当に選ぶと副作用リスクが5倍になります

この記事の3ポイント要約
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第一世代セフェム内服薬の主要品目

セファレキシン(ケフレックス)、セファクロル(ケフラール)、セフロキサジン(オラスポア)の3種類が代表的で、グラム陽性菌に対する優れた抗菌活性を有する

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第一世代セフェムの適応症と特性

MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)による皮膚感染症の第一選択薬で、バイオアベイラビリティは80~90%と経口第3世代セフェムより4~5倍高い

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第一世代セフェムの選択時の注意点

セファクロルは他の第一世代セフェムと比較して血清病様反応の頻度が高く、ペニシリンアレルギー患者では第1・2世代セフェムとの交差反応が10%存在する

第一世代セフェム内服薬の全種類と商品名

第一世代セフェム系抗菌薬は、グラム陽性菌に対して強力な抗菌活性を示す経口抗菌薬として、臨床現場で広く使用されています。代表的な薬剤として、セファレキシン(商品名:ケフレックス、センセファリン、ラリキシン)、セファクロル(商品名:ケフラール)、セフロキサジン(商品名:オラスポア)の3種類が挙げられます。これらの薬剤はすべてβラクタム系抗菌薬に属し、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌作用を発揮します。

セファレキシンには複数の製剤タイプが存在します。通常のカプセル製剤であるケフレックスは250mg規格で、成人及び体重20kg以上の小児に使用されます。一方、L-ケフレックスは胃溶性30%・腸溶性70%の複合顆粒となっており、胃での分解を抑えて腸での吸収を高める工夫がされています。小児用製剤としては、シロップ細粒10%、20%の規格が用意されており、体重に応じた細かな用量調整が可能です。

セファクロルの商品名ケフラールは、細粒小児用10%とカプセル250mgの2つの剤形があります。こちらもL-ケフラールという複合顆粒製剤が存在し、胃溶性40%・腸溶性60%の配合となっています。セフロキサジンのオラスポアは小児用ドライシロップ10%の剤形で提供されており、主に小児の感染症治療に使用されます。

それぞれの薬剤には略号が付けられており、セファレキシンはCEX、セファクロルはCCL、セフロキサジンはCXDと表記されます。これらの略号は医療現場でのカルテ記載や処方箋において頻繁に使用されるため、医療従事者として正確に把握しておく必要があります。

第一世代セフェムは、ペニシリン系抗菌薬ではカバーしきれない大腸菌や肺炎桿菌などの一部のグラム陰性桿菌にも効果を示す点が特徴的です。ただし、緑膿菌腸球菌には効果がないため、起炎菌を推定した上での適切な選択が求められます。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書情報では、各製剤の詳細な用法用量や禁忌事項を確認できます

第一世代セフェムの適応症と使い分け基準

第一世代セフェム内服薬の最も重要な適応症は、MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)による皮膚軟部組織感染症です。蜂窩織炎、丹毒、膿皮症、とびひ(伝染性膿痂疹)などの表在性皮膚感染症において、第一世代セフェムは第一選択薬として位置づけられています。これは黄色ブドウ球菌やレンサ球菌といったグラム陽性球菌に対する優れた抗菌活性に基づいています。

皮膚科や外科領域では、外傷・熱傷後の二次感染予防や手術創感染の治療にも広く使用されます。具体的には、切創や擦過傷などの外傷後、化膿性リンパ節炎、乳腺炎などが対象となります。整形外科領域では軽症から中等症の骨髄炎や筋炎にも適応がありますが、重症例では注射用セフェムへの切り替えが必要です。

泌尿器科領域では、単純性膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症にも使用されます。大腸菌による尿路感染症は市中感染として頻度が高く、第一世代セフェムは大腸菌や肺炎桿菌などの一部のグラム陰性桿菌にも有効性を示すため、選択肢となります。ただし近年は薬剤耐性菌の増加により、尿培養検査での感受性確認が推奨されています。

呼吸器感染症に対しては、第二世代や第三世代セフェムと比較すると適応が限定的です。市中肺炎の起炎菌であるインフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスには効果が弱いため、これらの菌が疑われる場合は他の抗菌薬を選択すべきです。一方で、レンサ球菌による咽頭炎や扁桃炎には有効性が認められています。

歯科口腔外科領域では、抜歯後感染予防や歯周組織炎、顎炎などに使用されます。口腔内の常在菌である連鎖球菌や嫌気性菌の一部に効果があるためです。ただし嫌気性菌に対する活性は第二世代セフェムのセフメタゾールに劣るため、嫌気性菌感染が強く疑われる場合は薬剤選択を検討する必要があります。

使い分けの基本原則は、グラム陽性球菌感染が明らかまたは強く疑われる場合に第一世代セフェムを選択することです。

第一世代セフェムの投与量と投与間隔の実際

セファレキシン(ケフレックス)の成人投与量は、通常1回250mgを6時間ごと、つまり1日4回投与します。これは1日総量として1000mgに相当します。重症感染症や分離菌の感受性が比較的低い場合には、1回500mgを6時間ごと、1日総量2000mgまで増量可能です。体重20kg以上の小児にも成人と同じ用量が適用されます。

L-ケフレックスなどの複合顆粒製剤では、1日2回投与に簡略化されています。成人および体重20kg以上の小児では、1回500mg(力価)を朝・夕食後に投与するのが標準です。重症例では1回1000mg(力価)を1日2回投与します。この1日2回投与は患者のコンプライアンス向上に大きく貢献しており、特に外来診療では有用性が高いです。

小児に対するセファレキシンの用量設定は体重基準で行われます。L-ケフレックス小児用顆粒では、体重1kgあたり1日25~50mg(力価)を2回に分割して朝・夕食後に投与します。例えば体重10kgの小児であれば、1日量250~500mg(力価)を2回に分けて投与することになります。重症例や感受性が低い菌の場合は、体重1kgあたり1日50~100mg(力価)まで増量できます。

セファクロル(ケフラール)の標準投与量は、成人で1回250mgを8時間ごと、1日3回投与です。セファレキシンと比較して投与回数が少ないため、コンプライアンスの観点からは優れています。ただし後述する血清病様反応のリスクがあるため、第一選択とはなりにくい状況です。

投与間隔を守ることは治療効果を最大化する上で極めて重要です。セファレキシンの通常製剤では6時間ごと投与が必要ですが、実際には朝食後、昼食後、夕食後、就寝前という形で指導されることが多いです。食事のタイミングと完全に一致しないこともありますが、できるだけ等間隔に近い投与を心がける必要があります。

食事の影響については、セファレキシンは食後投与が推奨されます。空腹時に比べて食後投与では血中濃度(AUC)が約1.3倍に上昇するという報告があり、吸収効率の面で食後投与が有利です。一方で、急性感染症の初期治療では迅速な抗菌効果を得るため、食事を待たずに投与開始することも臨床的には許容されます。

第一世代セフェムの副作用と安全性プロファイル

第一世代セフェム系抗菌薬の副作用発現頻度は比較的低く、安全性の高い薬剤群とされています。最も頻度の高い副作用は消化器症状で、下痢、腹痛、悪心、食欲不振などが報告されています。これらは抗菌薬による腸内細菌叢の変化に起因しており、通常は軽度で投与中止により改善します。下痢の頻度は5~10%程度と報告されています。

過敏症反応としては、発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒、発熱などが出現することがあります。これらの症状が認められた場合は直ちに投与を中止し、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドの投与を検討します。重篤な過敏症としてアナフィラキシーショックが0.1%未満の頻度で報告されており、投与開始時には特に注意深い観察が必要です。

セファクロル特有の副作用として、血清病様反応が知られています。この反応は他の第一世代セフェム系薬剤と比較して頻度が高く、投与開始後数日から1週間程度で発熱、関節痛、リンパ節腫脹などを伴う症状が出現します。これはIII型アレルギー反応に分類され、免疫複合体の形成が関与していると考えられています。このリスクのため、臨床現場ではセファレキシンの方が優先的に選択される傾向にあります。

重大な副作用として、偽膜性大腸炎が報告されています。頻度は0.1%未満と低いものの、重症化すると生命に関わる可能性があります。腹痛と頻回の水様便が出現した場合には、クロストリジウム・ディフィシル感染症を疑い、直ちに抗菌薬を中止して適切な治療を開始する必要があります。診断には便中のクロストリジウム・ディフィシル毒素の検出が有用です。

肝機能障害や黄疸が頻度不明ながら報告されています。AST、ALT、AL-Pの著しい上昇を伴う肝機能障害が出現した場合は投与を中止し、肝庇護療法を行います。特に高齢者や肝機能低下患者では定期的な肝機能検査が推奨されます。

血液系の副作用としては、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少などが頻度不明ながら報告されています。長期投与を行う場合には定期的な血液検査を実施し、異常が認められた場合は直ちに投与を中止します。特に2週間以上の長期投与では注意が必要です。

腎機能障害患者では用量調整が必要な場合があります。急性腎障害の報告もあるため、腎機能マーカーの定期的なモニタリングが重要です。クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の場合には投与間隔を延長するなどの調整を検討します。

第一世代セフェムとペニシリンアレルギーの関係

ペニシリンアレルギーの既往がある患者に対してセフェム系抗菌薬を使用する際には、交差反応のリスクを十分に考慮する必要があります。従来、ペニシリンアレルギー患者ではセフェム系薬剤の使用は原則禁忌とされてきましたが、近年の研究により交差反応の実態がより明確になってきています。

ペニシリン系とセフェム系の交差反応は、βラクタム環という共通の基本骨格に加えて、側鎖構造の類似性に依存することが分かっています。第一世代・第二世代セフェムとペニシリン系の交差反応率は約10%と報告されており、第三世代セフェムの2~3%と比較すると相対的に高い数値です。これは第一世代・第二世代セフェムの中にペニシリン系と側鎖構造が類似したものが存在するためです。

具体的には、アモキシシリンやアンピシリンと第一世代セフェムのセファクロルやセファレキシンは、R1側鎖構造が類似しているため交差反応の確率が高くなります。一方、同じ第一世代でもセファゾリン(注射薬)は特有の側鎖を有しており、他のβラクタム薬との交差反応が少ないとされています。

ペニシリンアレルギーの重症度評価も重要です。軽度の発疹程度の既往であれば、注意深い観察下でセフェム系の使用が許容される場合があります。一方、アナフィラキシーショックやスティーブンス・ジョンソン症候群などの重篤なアレルギー反応の既往がある場合は、セフェム系の使用を避け、完全に構造の異なるマクロライド系、ニューキノロン系、クリンダマイシンなどを選択すべきです。

実臨床での対応としては、ペニシリンアレルギーの既往を問診で確認した際に、その症状の詳細を聴取することが重要です。いつ、どのような症状が出たのか、アナフィラキシーの有無、医療機関での治療の要否などを確認します。明確なアレルギー反応ではなく、単なる消化器症状だった可能性もあるため、症状の性質を見極める必要があります。

安全性を最優先する場合の代替薬としては、構造が全く異なる抗菌薬を選択します。皮膚軟部組織感染症であればクリンダマイシン、呼吸器感染症であればマクロライド系やニューキノロン系が候補となります。ただしこれらの薬剤も固有の副作用プロファイルを持つため、患者背景を総合的に評価した上での選択が求められます。

ペニシリンアレルギーのリスク評価ツールとして、皮内テストやプリックテストなどのアレルギー検査が活用されることもあります。これらの検査で陰性であれば比較的安全にセフェム系を使用できる可能性が高まりますが、偽陰性の可能性もあるため、投与時には慎重な観察が必要です。

第一世代セフェムと第三世代セフェムの使い分けポイント

第一世代セフェムと経口第三世代セフェムの最も重要な違いは、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)にあります。第一世代セフェムのバイオアベイラビリティは80~90%と非常に高く、経口投与しても注射薬に近い血中濃度が得られます。これに対して経口第三世代セフェムは14~25%程度と著しく低く、投与量の大部分が吸収されずに排泄されてしまいます。

具体的な数値で比較すると、セファレキシンのバイオアベイラビリティは約90%です。100mg投与すれば約90mgが血中に到達して全身循環に入ります。一方、経口第三世代セフェムであるセフジトレンピボキシル(メイアクト)やセフカペンピボキシル(フロモックス)は約16~20%程度で、100mg投与しても血中に到達するのは16~20mg程度にとどまります。

この差は臨床効果に直結します。

抗菌スペクトラムの違いも重要な選択基準です。第一世代セフェムはグラム陽性球菌に強く、特にMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)や連鎖球菌に対して優れた抗菌活性を示します。逆にグラム陰性菌に対する活性は限定的で、大腸菌や肺炎桿菌など一部の菌種には有効ですが、インフルエンザ菌やモラクセラには効果が弱いです。

第三世代セフェムはグラム陰性菌への活性が拡大されており、インフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスといった呼吸器感染症の起炎菌にも有効です。しかしグラム陽性球菌、特にMSSAに対する活性は第一世代より劣ります。つまり第一世代と第三世代では得意とする菌種が真逆なのです。

使い分けの実際として、皮膚軟部組織感染症では第一世代セフェムが第一選択となります。これらの感染症の主要起炎菌はMSSAや連鎖球菌であり、第一世代の抗菌スペクトラムと完全に一致します。加えてバイオアベイラビリティの高さから確実な治療効果が期待できます。蜂窩織炎、丹毒、膿皮症、とびひなどはすべて第一世代セフェムの適応です。

呼吸器感染症、特に市中肺炎では起炎菌としてインフルエンザ菌や肺炎球菌が想定されます。このような場合、従来は経口第三世代セフェムが選択されてきましたが、バイオアベイラビリティの低さと抗菌薬適正使用の観点から、現在では推奨されなくなっています。代わりにアモキシシリンなどのペニシリン系や、レスピラトリーキノロンが推奨されます。

耐性菌対策の観点からも両者には大きな違いがあります。経口第三世代セフェムの不適切な使用は、ESBL(基質拡張型βラクタマーゼ)産生菌などの耐性菌を誘導するリスクが高いとされています。一方、第一世代セフェムは適切な適応で使用する限り、耐性菌誘導のリスクは相対的に低いです。

コスト面でも差があります。第一世代セフェムは後発医薬品が豊富で薬価が安価です。セファレキシンのジェネリック医薬品は1錠あたり数円から十数円程度です。経口第三世代セフェムは相対的に高価で、特に先発品では1錠あたり数十円から100円以上になることもあります。医療経済の観点からも、適応が合致する場合は第一世代セフェムを優先すべきです。

つまり基本原則は、グラム陽性菌感染症には第一世代セフェム、グラム陰性菌が関与する感染症には他の抗菌薬を選択するということです。

厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」では、感染症の種類ごとの推奨抗菌薬が詳細に記載されています