中間部ぶどう膜炎と診断と治療
中間部ぶどう膜炎の診断:SUNと硝子体混濁
中間部ぶどう膜炎は、炎症の主座が「硝子体」にあるパターンで、前眼部所見が目立たないこともあるため、問診で「飛蚊症」「霧視」など硝子体混濁を示唆する自覚症状を拾うことが重要です。
診療録・治療反応の評価を標準化するには、SUN Working Group が提案した炎症所見の用語とグレーディングを採用すると、施設内・多職種連携での再現性が上がります。日本眼炎症学会の「ぶどう膜炎診療ガイドライン」では、前房細胞、前房フレア、硝子体混濁(vitreous haze)などの定量法をSUNに沿って整理しており、硝子体混濁は0、0.5+、1+〜4+のように基準眼底写真との比較を前提に評価する点が明示されています。
また、臨床経過の用語(acute/chronic/recurrent など)もSUNで定義されており、「治療を止めると3か月以内に再燃する」なら慢性(chronic)とみなす、など“言葉のズレ”を減らせます。
中間部ぶどう膜炎は“病名”というより、まず解剖学的分類(前部・中間部・後部・汎)を押さえ、その上で原因疾患(サルコイドーシスなど)や感染性、仮面症候群の除外へ進む、という組み立てが安全です。
参考:ぶどう膜炎の用語・所見定量(SUNの評価法、硝子体混濁のグレーディング)がまとまっている
中間部ぶどう膜炎の検査:黄斑浮腫と網膜血管炎
視機能低下の“直接原因”として頻度が高いのは、硝子体混濁そのものよりも、後眼部合併症(例:囊胞様黄斑浮腫)であることが多いため、OCTを含む黄斑評価をルーチン化すると見落としが減ります。
ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、後眼部炎症の適応として黄斑浮腫、広範な網膜血管炎、視神経乳頭浮腫などを挙げ、全身ステロイド治療の適応判断に組み込む考え方を示しています。
さらに蛍光眼底造影(FA)についても、視神経乳頭過蛍光、黄斑浮腫、血管壁の漏出などを点数化して合計40点で評価するスコア法が紹介されており、網膜血管炎や乳頭浮腫、黄斑浮腫の変化を“説明可能な数値”として共有できるのが利点です。
実臨床の盲点として、硝子体混濁が強い症例では眼底の観察条件が悪くなり、黄斑浮腫や周辺血管炎の把握が遅れがちです。そういう時ほど、OCTとFAの役割分担(OCT=黄斑の形態、FA=血管炎と漏出)を意識すると、治療強度の決定がブレにくくなります。
中間部ぶどう膜炎の治療:ステロイドと免疫抑制薬
治療は、まず「炎症の部位と視機能への影響」で局所治療か全身治療かを決め、再燃性・慢性化の程度で免疫抑制薬や生物学的製剤を検討する、という段階的アプローチが現実的です。
ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、視力障害を伴う中・後眼部炎症に対して、ステロイド薬後部テノン嚢下注射(例:トリアムシノロンアセトニド)を選択肢として挙げ、合併症(白内障・眼圧上昇・眼球穿孔・感染など)を説明した上で適応判断するよう記載しています。
全身治療としてのステロイドは、黄斑浮腫、広範な網膜血管炎、滲出性網膜剥離、視神経乳頭浮腫などの重篤な後眼部炎症を適応として挙げ、開始量(プレドニゾロン換算で0.5 mg/kg/日以上、重篤なら1 mg/kg/日から開始することもある)や漸減の考え方、投与前評価(感染症チェック、胸部X線、IGRAなど)を整理しています。
免疫抑制薬は、ステロイドの副作用軽減(steroid sparing)や、ステロイド抵抗例・離脱困難例に用いる位置づけです。日本ではぶどう膜炎に対して保険適用となっている免疫抑制薬が限られる点(ガイドラインではシクロスポリンが保険適用と記載)も、薬剤選択を左右します。
“意外に効くが落とし穴もある”ポイントとして、全身ステロイドで炎症が落ち着いても、漸減速度が速いと再燃して慢性化に転ぶケースがあるため、硝子体混濁や黄斑浮腫の指標を定めて、減量の「基準日」をチーム内で共有しておくと安全です。
中間部ぶどう膜炎の治療:TNF阻害薬と安全対策
既存治療で効果不十分な「非感染性の中間部・後部・汎ぶどう膜炎」に対しては、アダリムマブが適応となり得ますが、導入前後の感染症リスク管理を“手順”として持つことが不可欠です。
日本眼炎症学会の「非感染性ぶどう膜炎に対するTNF阻害薬使用指針および安全対策マニュアル(2019改訂第2版)」では、アダリムマブは「既存治療で効果不十分な非感染性の中間部、後部または汎ぶどう膜炎」が対象であること、感染性ぶどう膜炎には使用しないこと(結核、梅毒、トキソプラズマ、ヘルペス関連ぶどう膜網膜炎、CMV網膜炎、細菌性・真菌性眼内炎などを鑑別)を明確にしています。
同マニュアルでは、導入前スクリーニングとして結核(胸部X線/CT、IGRA)、B型肝炎(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、必要に応じてHBV DNA)などを必須とし、導入後も定期的な血液検査等のモニタリングと内科連携を求めています。
さらに注意点として、TNF阻害薬は重篤感染症リスクだけでなく、脱髄疾患(多発性硬化症など)既往が禁忌に含まれる点が重要で、中間部ぶどう膜炎がMSと関連し得るという臨床文脈では、神経症状の問診・既往確認が“単なる形式”ではなく安全性そのものになります。
独自視点として、眼科外来での運用上は「自己注射の教育」と「2〜3か月ごとの眼所見・全身所見モニタリング」をセットで回せるかが成否を分けます。薬効の話よりも、発熱・咳などの感染兆候が出た時の受診導線(どこに、何時間以内に、何を持って来るか)を患者と家族に具体化しておく方が、結果的に継続率と安全性が上がります。
参考:TNF阻害薬の適応、禁忌、導入前スクリーニング、感染症・HBV再活性化など安全対策がまとまっている
日本眼炎症学会 TNF阻害薬使用指針・安全対策マニュアル(2019改訂第2版, PDF)
中間部ぶどう膜炎の合併症:緑内障と白内障と手術
中間部ぶどう膜炎は慢性化・再燃を繰り返すと、炎症そのものに加えて治療(特にステロイド)による合併症も積み重なり、視機能低下の主因が“炎症”から“合併症”へ移行します。
ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、合併症として白内障、続発緑内障、硝子体混濁、黄斑上膜などに対する外科的治療を章立てで扱い、原則は「炎症の鎮静化を一定期間確認してから手術計画を立てる」ことを強調しています。
続発緑内障については、虹彩後癒着による瞳孔ブロック、周辺虹彩前癒着による隅角閉塞、線維柱帯以降の排出路障害、さらにステロイド反応性の眼圧上昇など複数の機序があり、眼圧だけでなく視神経障害の進行も含めて外科治療のタイミングを判断する必要があります。
“現場で意外と忘れやすい点”として、硝子体手術は治療目的だけでなく、診断目的(仮面症候群、眼内リンパ腫、感染性の検索)を兼ねる局面があり、ステロイド反応が乏しい硝子体混濁では「診断としての硝子体手術」を早期に選択肢に入れることが、結果的に時間を節約します。
また、白内障手術後に囊胞様黄斑浮腫が顕在化することもあるため、中間部ぶどう膜炎では「術前の黄斑OCT」と「術後の炎症コントロール」をセットで考えると、視力が出ない原因分析が容易になります。