長生堂製薬の歴史とジェネリック医薬品製造企業概要

長生堂製薬の企業概要と医薬品製造事業

長生堂製薬の基本情報
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企業概要

1894年創業、徳島県に本社を置く130年以上の歴史を持つジェネリック医薬品製造企業

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主力事業

後発医薬品の製造・販売、セフェム系抗生物質の専用工場による高品質な医薬品提供

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業績

売上高120億円、従業員375名、日本ジェネリックの完全子会社として安定経営

長生堂製薬の創業から現在までの歴史と企業発展

長生堂製薬株式会社は、1894年(明治27年)に美馬友三郎によって個人営業として創業された、130年以上の歴史を持つ製薬企業です。創業当初は四国・九州地区を基盤として薬局・薬店への直販を主力に営業を開始しました。

企業の発展過程において、1914年に長生堂薬房と改称し、1943年には企業整備令により徳島県薬業者の統合で徳島県製薬株式会社に合併されるという激動の時代を経験しました。しかし、1946年に長生堂製薬株式会社として再発足し、現在に至る基盤を築いています。

重要な転換点となったのは1966年の医療用医薬品市場への進出です。この決断により、同社は一般用医薬品から医療用医薬品への事業転換を図り、現在の後発医薬品製造企業としての地位を確立しました。

  • 1981年:製造棟新築工事完成
  • 1984年:抗生物質製剤製造棟新築工事完成
  • 2001年:川内工場(抗生物質製剤専用工場)竣工
  • 2014年:本社第二工場竣工

2013年以降の企業再編では、日本調剤による買収を経て、2021年11月に日本ジェネリック株式会社の完全子会社となりました。この統合により、グループ内での製造・販売体制が整備され、より効率的な事業運営が可能となっています。

長生堂製薬のジェネリック医薬品事業と市場戦略

長生堂製薬の主力事業は後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造です。ジェネリック医薬品は、医療の質を落とすことなく増大する医療費抑制を実現する重要な役割を担っており、国の方針では市場における同薬の割合8割を目指して普及が進められています。

同社が製造する主要なジェネリック医薬品には以下のような製品があります。

神経系・感覚器官用医薬品

  • トリアゾラム錠(催眠鎮静剤):0.125mg錠 薬価5.90円、0.25mg錠 薬価6.10円
  • ブロチゾラム錠:0.25mg錠 薬価10.40円

解熱鎮痛消炎剤

  • アセトアミノフェン製剤:錠剤、細粒、坐剤など多様な剤形で提供
  • 坐剤:50mg、100mg、200mg規格で小児から成人まで対応

現在、数多くの医薬品承認を保有し、受託分も含め様々な医薬品を製造しています。自社ブランドのジェネリック医薬品だけでなく、他製薬メーカーからの受託製造も積極的に行っており、製造技術の高さが評価されています。

主要取引先には大塚製薬、武田薬品工業、田辺三菱製薬、東和薬品、日医工、マイラン製薬などの大手製薬企業が名を連ねており、業界内での信頼性の高さを示しています。

長生堂製薬のセフェム系抗生物質製造と専用工場の特徴

長生堂製薬の最大の特徴は、日本でも数少ないセフェム系抗生物質の専用工場を他社に先駆けて立ち上げた実績です。この領域において、市場シェアの約半分を占める地位を確立しており、国内トップシェアを誇っています。

徳島市川内町にある川内工場は、セフェム系抗生物質製剤専用工場として設計されており、内服固形剤の製造ラインを有しています。2001年10月に竣工したこの専用工場により、高品質なセフェム系抗生物質の安定供給を実現しています。

主要なセフェム系製品

  • エポセリン坐剤125mg:セフチゾキシムナトリウム坐剤 薬価226.70円
  • エポセリン坐剤250mg:セフチゾキシムナトリウム坐剤 薬価270.70円
  • セフスパン細粒50mg:セフィキシム水和物細粒 薬価44.50円

セフェム系抗生物質は、グラム陽性菌・グラム陰性菌に対して広範囲の抗菌活性を示し、感染症治療において重要な役割を果たしています。専用工場での製造により、交差汚染のリスクを最小限に抑え、高い品質管理基準を維持しています。

この専用工場の存在により、同社は他の製薬企業からの受託製造も積極的に受け入れており、セフェム系抗生物質分野における日本の医薬品供給体制の中核を担っています。

長生堂製薬の主要製品ラインナップと薬価情報

長生堂製薬は、幅広い医薬品カテゴリーにわたって193品目の医薬品を製造しています。各製品は適正な薬価設定により、医療機関での使用しやすさと患者の経済的負担軽減の両立を図っています。

主要製品カテゴリー別詳細

薬効分類 代表製品 規格 薬価
セフェム系抗生物質 エポセリン坐剤 125mg 226.70円
セフェム系抗生物質 セフスパン細粒 50mg/g 44.50円
解熱鎮痛剤 アセトアミノフェン錠 200mg 6.70円
催眠鎮静剤 トリアゾラム錠 0.125mg 5.90円

特に注目すべきは、小児用製剤の充実度です。アセトアミノフェン坐剤は50mg、100mg、200mgの3規格を展開し、体重に応じた適切な投与量の選択が可能となっています。小児科領域における解熱・鎮痛治療において、安全性と有効性を両立した製品提供を実現しています。

また、高齢者に多用される睡眠薬類についても、トリアゾラムやブロチゾラムなどのベンゾジアゼピン系製剤を適正な薬価で提供しており、高齢化社会における医療ニーズに対応しています。

製品の品質管理については、ISO9001認証取得をはじめとする国際的な品質管理基準に準拠した製造体制を構築しています。各製品は厳格な品質試験を経て出荷されており、医療現場での安全使用に貢献しています。

長生堂製薬の将来展望と医療業界における独自のポジション

長生堂製薬は、ジェネリック医薬品市場の拡大とともに、独自の競争優位性を活かした事業展開を進めています。同社の強みは、130年以上の歴史で培った製造ノウハウと、セフェム系抗生物質専用工場による高度な技術力にあります。

今後の成長戦略

🎯 技術革新への投資

2006年に竣工した研究開発センターを拠点として、新たなジェネリック医薬品の開発を継続的に推進しています。特に、高齢化社会における疾患構造の変化に対応した製品開発に注力しています。

🎯 生産能力の拡充

2014年に竣工した本社第二工場により、従来からの製造能力を大幅に増強しました。これにより、受託製造の拡大と自社製品の安定供給の両立を実現しています。

🎯 グループシナジーの最大化

日本ジェネリックグループの一員として、製造・販売・流通の各段階での効率化を図っています。親会社の販売ネットワークを活用することで、製品の市場浸透率向上を目指しています。

医療業界全体を見渡すと、ジェネリック医薬品の使用割合は現在約8割の目標に向けて順調に拡大しており、同社の事業環境は追い風が続いています。特に、医療費抑制への社会的要請が高まる中で、高品質で適正価格のジェネリック医薬品を提供する同社の役割はますます重要になっています。

また、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、感染症治療薬の安定供給体制の重要性が再認識されています。セフェム系抗生物質の国内トップシェアを持つ同社は、日本の医薬品安全保障において重要な位置を占めています。

採用・人材育成への取り組み

若手研究者や技術者が多く活躍する社風を大切にしており、積極的な新卒採用を実施しています。OJT中心の教育体制により、製薬業界の専門知識と技術の継承を図っています。年1回のキャリア申告制度により、従業員の成長と会社の発展を両立させる人事制度を構築しています。

長生堂製薬は、歴史と伝統を基盤としながらも、常に革新を続ける企業として、日本の医療制度を支える重要な役割を担い続けています。ジェネリック医薬品市場の更なる拡大とともに、同社の存在意義はますます高まっていくことが予想されます。

日本製薬工業協会の業界動向資料