腸骨の出っ張りと痛みの原因や対処法

腸骨の出っ張りと痛み

この記事の要点
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腸骨の出っ張りとは

骨盤の一部である腸骨の上前腸骨棘や下前腸骨棘、腸骨稜などが体表から触れる突起部分を指します

痛みの主な原因

筋肉の過度な負担、裂離骨折、骨盤の歪み、仙腸関節障害などが痛みを引き起こします

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適切な対処法

安静と冷却、整形外科での診察、ストレッチやリハビリテーションが有効です

腸骨の出っ張りの位置と役割

腸骨は骨盤を構成する主要な骨で、その外側の縁部分を腸骨稜と呼びます。腸骨稜の前端にある突起が上前腸骨棘、その下方に下前腸骨棘があり、これらは体表から触れることができる骨の出っ張りです。上前腸骨棘には縫工筋や大腿筋膜張筋が、下前腸骨棘には大腿直筋が付着しており、歩行や走行時の動作に重要な役割を果たしています。これらの部位は筋肉の強い牽引力が集中するため、スポーツ動作や日常生活での負担が蓄積しやすい場所です。

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腸骨稜は骨盤の外側を沿うように走る骨の縁であり、腰部の筋肉や腹部の筋肉が付着する重要な解剖学的構造です。体幹の回旋動作や前屈動作の際に、これらの筋肉が腸骨稜を引っ張ることで痛みが生じることがあります。特に成長期のスポーツ選手では、骨の成長と筋肉の発達のバランスが崩れやすく、腸骨の出っ張り部分に負担がかかりやすい状況にあります。

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腸骨の出っ張りが痛む原因

腸骨の出っ張りが痛む主な原因は、筋肉の過度な負担による炎症です。走る、跳ぶ、キックするなどのスポーツ動作では、縫工筋や大腿直筋が強く収縮し、その付着部である上前腸骨棘や下前腸骨棘に強い牽引力が加わります。この繰り返しの負担により、筋付着部炎や疲労骨折が発生することがあり、特にダッシュやスタートダッシュ、ジャンプ動作を繰り返す競技で多く見られます。

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成長期の若年者では、骨端線が完全に閉鎖していないため、筋肉の強い収縮により骨片が剥がれる裂離骨折が起こりやすくなります。上前腸骨棘裂離骨折や下前腸骨棘裂離骨折は、急激なダッシュやキック動作時に発生し、患部の腫れや運動時の強い痛みを伴います。これらの損傷は早期に適切な治療を行わないと、骨の癒合不全や慢性的な痛みにつながる可能性があります。

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骨盤の歪みや仙腸関節の機能障害も、腸骨の出っ張り周辺に痛みを引き起こす要因となります。骨盤が左右非対称に傾くと、腸骨周辺の筋肉に過度な緊張が生じ、腸骨稜沿いに痛みや圧迫感が現れることがあります。また、仙腸関節の動きの不適合により、腰部や臀部だけでなく腸骨周辺にも関連痛が広がることが知られています。

参考)腸骨稜の痛みを理解し、効果的に対処する方法

腸骨の痛みに対する治療法と対処法

腸骨の出っ張りが痛む場合、まずは整形外科を受診することが推奨されます。医師による診察や画像検査により、裂離骨折や疲労骨折、筋付着部炎などの診断が行われます。痛みが強い急性期には、安静を保ち患部を冷却することで炎症を抑えることが重要です。必要に応じて消炎鎮痛薬の内服や湿布の使用、骨盤ベルトやコルセットによる固定が行われます。

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上前腸骨棘の痛みについて|原因や治療法を現役医師が解説

上前腸骨棘の痛みの具体的な原因と治療法について、医師が詳しく解説している参考リンクです。

症状が落ち着いた後は、リハビリテーションやストレッチを通じて筋肉の柔軟性を回復させることが大切です。仙腸関節や股関節周辺の筋肉をストレッチすることで、骨盤のバランスを整え、腸骨への負担を軽減できます。特に股関節外旋六筋や大腿筋膜張筋のストレッチは、仙腸関節の機能改善に効果的です。

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重症の裂離骨折や骨片の転位が大きい場合には、手術による骨片固定が必要となることがあります。また、保存療法で改善しない慢性的な痛みに対しては、ブロック注射やAKA-博田法による関節運動学的アプローチなどの専門的な治療が選択肢となります。

参考)骨盤(仙腸関節)の治療

腸骨の痛みを予防するセルフケア

腸骨の出っ張り周辺の痛みを予防するためには、日常生活での姿勢や動作に注意することが重要です。長時間同じ姿勢を続けることや、片側に荷物を持つ習慣は骨盤の歪みを引き起こしやすいため、左右均等に負担をかけるよう心がけましょう。足を組む習慣も骨盤を歪ませる原因となるため、避けることが推奨されます。

参考)仙腸関節障害・仙腸関節炎


スポーツを行う際には、ウォーミングアップとクールダウンを十分に行い、筋肉の柔軟性を保つことが大切です。特に成長期のアスリートは、骨の成長に筋肉の発達が追いつかないことがあるため、無理な練習量や急激な負荷増加を避け、段階的にトレーニング強度を上げることが必要です。

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仙腸関節のストレッチ|仙骨調整院セイクラムバランス

仙腸関節を緩めるストレッチの具体的な方法が図解で紹介されている参考リンクです。

自宅でできるセルフケアとして、壁を使った仙腸関節ストレッチが効果的です。壁に背中を密着させ、腰と壁の間に隙間がないようにして立つことで、仙腸関節周辺の筋肉を緩めることができます。この際、仙骨と腸骨を壁に押し付けていることを意識し、全身の力を抜いてリラックスした状態を1〜3分程度保持します。

参考)仙腸関節のストレッチ


骨盤ベルトの使用も、腸骨周辺の痛みを和らげる有効な手段です。骨盤ベルトを正しい位置に装着することで、骨盤の安定性が高まり、筋肉や関節への負担が軽減されます。ただし、長期間の使用は筋力低下を招く可能性があるため、痛みが落ち着いたら徐々に外す時間を増やしていくことが望ましいです。

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腸骨の痛みを放置するリスクと受診のタイミング

腸骨の出っ張りの痛みを放置すると、症状が慢性化し日常生活に支障をきたす可能性があります。急性期の炎症が治まらないまま運動を続けると、裂離骨折の骨片がさらに転位したり、骨癒合不全を起こしたりするリスクがあります。また、痛みをかばう動作により、他の部位に二次的な障害が生じることも少なくありません。

参考)下前腸骨棘裂離骨折について


以下のような症状がある場合は、速やかに整形外科を受診することが推奨されます。

参考)骨盤が痛む時には、何科を受診したらよいですか? |骨盤の痛み

✅ 安静時にも持続する強い痛み

✅ 患部の腫れや熱感が顕著

✅ 歩行や立ち上がり動作に支障がある

✅ 下肢へのしびれや放散痛を伴う

✅ 痛みが数週間以上続いている

仙腸関節障害について

仙腸関節障害の症状や診断方法について詳しく解説している医療機関の参考リンクです。

まれに、腸骨周辺の痛みが骨腫瘍や感染症などの重篤な疾患のサインである可能性もあります。夜間痛が強い、体重減少を伴う、発熱があるなどの全身症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。​
女性の場合は、月経周期と連動した腸骨周辺の痛みがある場合、婦人科系の問題が関与している可能性もあるため、産婦人科の受診も検討すべきです。骨盤の痛みは整形外科的な問題だけでなく、内臓の問題が原因となることもあるため、症状に応じて適切な診療科を選択することが重要です。

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