抗がん剤治療を受ける際に最も気になるのが副作用です。抗がん剤の副作用は薬剤の種類や投与方法、個人の体質によって大きく異なります。副作用の出現時期は、薬剤によってある程度予測することができます。
投与開始直後や投与中に現れる副作用としては、アレルギー反応、血圧低下、不整脈、呼吸困難、悪心・嘔吐などがあります。これらは急性の副作用と呼ばれ、医療スタッフの監視下で対応されます。
投与後から数日間は悪心・嘔吐、食欲低下、便秘、全身倦怠感が出やすくなります。また、関節痛や筋肉痛もこの時期に現れることがあります。
投与後5日目から10日頃には口内炎や下痢が出現し、全身倦怠感も持続することが多いです。抗がん剤の種類によって異なりますが、7日目から14日目頃に骨髄抑制(好中球減少や血小板減少)や肝・腎機能障害が起きやすくなります。
投与後14日目頃から脱毛が始まり、その後手足・足趾のしびれ(感覚性末梢神経障害)などが出やすくなります。長期的な副作用としては、抗がん剤による薬剤性肺障害や心不全は2~6カ月後に多く、治療終了後2年から5年頃に急性白血病や悪性リンパ腫など2次発がんのリスクが高まることもあります。
吐き気や嘔吐は抗がん剤治療における最も一般的な副作用の一つです。これらは抗がん剤が消化管の粘膜や脳の神経を刺激することで発生すると考えられています。吐き気・嘔吐は大きく3種類に分類されます。
吐き気・嘔吐への対処法としては、以下のような方法が効果的です:
最近は副作用を抑える薬の開発も進んでおり、以前に比べて吐き気・嘔吐の症状は軽減されてきています。しかし、個人差も大きいため、症状が強い場合は我慢せずに医療スタッフに相談することが重要です。
脱毛は抗がん剤治療における代表的な副作用の一つで、特に細胞障害性抗がん剤で多く見られます。脱毛は通常、治療開始から2〜3週間後に始まり、頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛なども抜ける場合があります。
脱毛の程度は使用する抗がん剤の種類や量、個人の体質によって異なります。完全に抜けてしまう場合もあれば、薄くなる程度で済む場合もあります。重要なのは、多くの場合、脱毛は一時的なものであり、治療終了後には再び髪が生えてくることです。
脱毛への対処法としては:
脱毛は外見の変化を伴うため、心理的な負担が大きいことがあります。国立がん研究センターでは「アピアランス支援センター」を設置し、外見の変化に対するケアやサポートを行っています。同じ経験をした患者同士の交流の場や、専門家によるカウンセリングを利用することも心理的サポートとして効果的です。
末梢神経障害は、特定の抗がん剤(タキサン系やプラチナ系など)で起こりやすい副作用です。手足の指先にしびれや痛み、感覚異常などが現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。
主な症状としては:
末梢神経障害の特徴として、冷たいものに触れると症状が悪化することが多く、冬の寒い時期には特に注意が必要です。インタビューでは「冷蔵庫から出した大根の冷たさが一番最初にピリッと来た」「冷蔵庫に物を取るために手を入れるだけで、手がしびれてくる」といった体験が語られています。
末梢神経障害への対処法としては:
注意すべき点として、末梢神経障害は抗がん剤治療が終了した後も症状が長期間続くことがあります。「半年ぐらいたつんだけど、また残ってる」という患者の声もあり、治療後のケアも重要です。
骨髄抑制は抗がん剤治療における重要な副作用の一つで、白血球(特に好中球)、赤血球、血小板の減少を引き起こします。これらの血球は骨髄で作られますが、抗がん剤は細胞分裂の盛んな骨髄細胞にも影響を与えるため、血球産生が抑制されるのです。
骨髄抑制による主な症状と危険性:
骨髄抑制は通常、抗がん剤投与後7〜14日頃に最も顕著になり、その後徐々に回復します。しかし、重度の骨髄抑制は命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、定期的な血液検査によるモニタリングが欠かせません。
「抗がん剤治療の前に血液検査をして白血球が減っていたりすると延期になる。2回ほど治療を受けられないことがあった」という患者の声もあるように、骨髄抑制の程度によっては治療スケジュールの調整が必要になることもあります。
骨髄抑制への対処法としては:
骨髄抑制は予測可能な副作用であるため、適切なモニタリングと予防策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。
抗がん剤治療における副作用の出現や重症度には個人差があり、同じ薬剤でも反応が異なることがあります。近年、この個人差に着目した「個別化医療」のアプローチが進んでいます。
個別化医療の主なポイント:
個別化医療のアプローチにより、「この患者さんにはこの薬剤が最適」「この患者さんにはこの副作用対策が必要」といったきめ細かな治療が可能になりつつあります。また、副作用の予測精度が向上することで、患者さんの生活の質(QOL)を維持しながら効果的な治療を継続できる可能性が高まっています。
医療機関によっては、治療前に詳細な問診や検査を行い、個々の患者さんに合わせた副作用対策プランを立てるところも増えています。治療を受ける際は、自分の体質や生活習慣、過去の薬剤反応などの情報を医師に伝えることが重要です。
抗がん剤治療中の副作用は日常生活に大きな影響を与えることがありますが、ちょっとした工夫で症状を軽減し、生活の質を維持することができます。ここでは、よくある副作用ごとに実践的な対処法をご紹介します。
口内炎への対処法
「口内炎ができて、歯磨きが少ししかできないほど痛かった」という患者の声もあるように、口内炎は食事や会話など基本的な日常活動に支障をきたすことがあります。早めの対処が重要です。
味覚・嗅覚障害への対処法
「周囲の人から『これはおいしいよ』と言われても、何も味ないじゃないかって感じだった」「砂糖が苦く感じる」など、味覚障害は食事の楽しみを奪うことがあります。自分に合った食べ物を見つけることが大切です。
皮膚・爪の変化への対処法
「抗がん剤の種類によって、皮膚のただれの色素沈着があったり、爪が欠けやすくなったりした。皮膚科も並行して受診している」という声もあるように、皮膚・爪のケアは専門的なアドバイスを受