バリント症候群 病巣と頭頂後頭葉

バリント症候群 病巣

バリント症候群の病巣を臨床で使える形に整理
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病巣の基本

典型は両側の頭頂後頭葉(parieto-occipital)の障害で、同時失認・精神性注視麻痺・視覚性運動失調の3徴が出現し得ます。

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画像の読みどころ

後方の分水嶺梗塞(MCA-PCA境界)など、左右対称に近い病変が隠れていることがあります。

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臨床の落とし穴

せん妄・認知症・皮質盲と誤認されやすく、視力が保たれているのに「見えていないように振る舞う」状況で疑うと見落としが減ります。


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バリント症候群 病巣と両側頭頂後頭葉

バリント症候群(Bálint syndrome)は、同時失認(simultanagnosia)・視覚性運動失調(optic ataxia)・精神性注視麻痺(oculomotor apraxia/psychic paralysis of gazeとして記載されることもある)を中核とする高次視覚・視空間の症候群で、典型的には両側の頭頂後頭葉(parieto-occipital)の障害で生じます。

症候群として完成するには「両側性」の要素が重要で、片側の頭頂葉病変では半側空間無視や視覚性注意障害が目立っても、3徴がそろう典型像には至りにくいと理解すると臨床像のズレを説明しやすくなります。

病巣としては、上頭頂小葉(superior parietal lobule)や角回(angular gyrus)を含む頭頂後頭葉ネットワークの損傷がしばしば言及され、到達運動・視線制御・注意の統合が破綻することで「見えるのに扱えない」状態が起きます。

バリント症候群 病巣と分水嶺梗塞

血管性病変では、後方の分水嶺(MCA-PCA境界)に両側性の梗塞が生じると、選択的に頭頂後頭葉皮質が障害され、バリント症候群を呈することがあります。

このタイプは「広範な麻痺がないのに、視空間の混乱が強い」というギャップが起こり得るため、一般的な脳卒中の重症度スケールだけで見ていると病巣の重要性が過小評価されやすい点が落とし穴です。

国内報告でも、CT/MRIで両側頭頂葉・後頭葉の分水嶺領域に梗塞を認め、視覚性注意障害・精神性注視麻痺・視覚(性運動)失調の組み合わせからバリント症候群と診断した記載があり、「後方分水嶺×両側」という見立ては実務的です。

バリント症候群 病巣とMRI所見

画像では「両側の頭頂後頭葉」の皮質〜皮質下が要点ですが、病変が角回を含む後部領域へ及ぶ例や、外傷後に片側優位の頭頂後頭葉挫傷でも症候が成立した報告があり、必ずしも教科書的な左右対称に限りません。

特に高齢者・急性期では、症状が「混乱」「見当識障害」として拾われ、せん妄認知症・皮質盲として扱われることがあるため、画像で後方皮質の両側病変を見たら、視力(視機能)と視空間行動の乖離をベッドサイドで確認する価値があります。

また、視覚背側経路(dorsal stream)の損傷として整理すると、上頭頂小葉や頭頂間溝周辺の機能(到達、把握、空間内での身体の位置づけ)が症状に直結し、病巣—症候対応をチームで共有しやすくなります。

バリント症候群 病巣と視覚性運動失調

視覚性運動失調は、視標を見ているのにリーチがずれる、把持前の手の形づくりが不適切、オンライン修正が難しい、といった「視覚誘導運動」の障害として現れ、後部頭頂葉病変との関連が強調されています。

国内の検討では、視覚性運動失調の残存群に共通する病巣として上頭頂小葉を中心とした頭頂後頭葉、さらに角回の皮質下に及ぶ病変が示され、病巣の深さ(皮質下への波及)が経過に影響し得る示唆になります。

臨床では「麻痺が軽いのに、食事で箸やスプーンが皿に当たらない/スイッチを押せない/便座にうまく座れない」などADLの微妙な破綻として出るため、視力低下や不器用さに回収せず、視覚性運動失調として評価枠を立てると病巣仮説と介入が噛み合います。

バリント症候群 病巣の独自視点:誤診パターン

バリント症候群は稀で不完全に理解されている臨床実体であり、病因も脳卒中・外傷・腫瘍・感染・神経変性など多岐にわたるため、「典型3徴がそろわない=別疾患」と短絡しやすい点が誤診の温床になります。

とくに「視力が保たれているのに盲のように振る舞う」「対象の一部しか捉えられない」「自発的な視線移動がぎこちない」などは、認知症の視空間障害や注意障害、または心因・せん妄として誤回収されやすく、病巣(両側頭頂後頭葉)を起点に鑑別の軸を立て直すと整理が進みます。

意外に重要なのは、訴えが「見えない」ではなく「見えているはずなのに扱えない」「距離感が破綻する」「階段やドアが怖い」のように生活場面で具体化される点で、問診が抽象的だと病巣推定に必要な情報が抜け落ちます。

病巣と3徴の基本(精神性注視麻痺・空間性注意障害・視覚性運動失調)の整理に役立つ解説。

岐阜大学 神経内科コラム:Balint症候群(3徴の整理)

両側頭頂葉・後頭葉の分水嶺梗塞によるBálint症候群の画像・経過イメージに役立つ症例報告。

日本赤十字関連リポジトリ:両側頭頂葉・後頭葉分水嶺梗塞によるBálint症候群(CT/MRIと言及)

視覚性運動失調の病巣(上頭頂小葉、角回皮質下への波及など)を病巣—症候対応として確認できる資料。

J-STAGE:視覚性運動失調の臨床症候と経時的変化からみた重症度の検討(病巣の共通性)