アトモキセチン先発とストラテラとカプセルと用法用量

アトモキセチン先発とストラテラ

アトモキセチン先発(ストラテラ)を臨床で迷わず扱う要点
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まず押さえる

先発はストラテラ(カプセル)で、AD/HD治療の選択肢として用法用量・禁忌・重要な基本的注意が整理されています。

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安全性の軸

血圧・心拍の定期測定、自殺念慮や攻撃性の観察など、処方前後での「観察項目」が明確に提示されています。

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個体差の鍵

CYP2D6(遺伝子多型や阻害薬併用)で血中濃度が上がりやすく、増量ペースや副作用モニタリングに直結します。

アトモキセチン先発ストラテラの効能又は効果とカプセル

アトモキセチン先発は、一般に「ストラテラ(Strattera)」として処方され、効能又は効果は注意欠陥/多動性障害(AD/HD)です。

先発ストラテラの剤形はカプセル(5mg/10mg/25mg/40mg)で、カプセル内容物には眼球刺激性があるため「カプセルを開けて服用しない」指導が明記されています。

また、AD/HDの診断はDSM等の標準的診断基準に基づき慎重に行い、基準を満たす場合にのみ投与する旨が添付文書に記載されています。

臨床現場で見落とされやすいポイントとして、先発の「剤形=カプセル」という事実が、服薬アドヒアランスだけでなく、服薬介助(嚥下、家族の手技)やトラブル時の対応(開封・粉砕の可否)に直結します。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00060723.pdf

小児では「飲めないから開けて混ぜる」という発想が起こりやすい一方、ストラテラはそれを避ける必要があるため、開始前の服薬設計(服薬練習、剤形選択、家族への説明)が治療継続率に影響し得ます。

参考:先発ストラテラの剤形・禁忌・用法用量・重要な基本的注意(心血管系、自殺念慮など)

PMDA 医療用医薬品情報(ストラテラ)

アトモキセチン先発ストラテラの用法及び用量と増量

18歳未満では、アトモキセチンとして1日0.5mg/kgから開始し、0.8mg/kg、1.2mg/kgへ段階的に増量した後、維持は1.2~1.8mg/kgで、増量は1週間以上の間隔をあけ、原則1日2回分割投与とされています。

18歳以上では1日40mgから開始し、1日80mgまで増量後に80~120mgで維持し、80mgまでの増量は1週間以上、その後の増量は2週間以上あけることが明記されています。

上限は小児で「1.8mg/kgまたは120mgのいずれか少ない量」、成人で「120mgを超えない」とされています。

処方設計で重要なのは、「増量の速さ」と「副作用の出方」が噛み合わないと中断につながる点で、添付文書でも“忍容性に問題がない場合にのみ増量”というニュアンスが複数箇所で強調されています。

とくに医療者が説明すべき事項として、投与前に治療上の位置づけと副作用リスクについて十分な情報提供を行い、適切な使用方法を指導することが記載されています。

長期投与では、必要に応じて休薬期間の設定などで有用性を定期的に再評価することも示されており、「漫然継続を避ける」方向性が明文化されています。

アトモキセチン先発ストラテラの副作用と自殺念慮と心拍数

重要な基本的注意として、投与開始前および投与期間中は、血圧と心拍数(脈拍数)を定期的に測定することが明記されています。

また、外国の小児・青少年を対象としたプラセボ対照短期試験の併合解析で、投与初期の自殺念慮リスクがプラセボより大きかったとの報告(アトモキセチン投与群0.37% vs プラセボ0%)が添付文書に記載されています。

攻撃性・敵意についても、投与中の発現や悪化が報告されているとして観察が求められています。

重大な副作用として肝機能障害、黄疸肝不全が挙げられ、異常時には中止等の適切な処置が指示されています。

心血管系では、重篤な心血管障害のある患者が禁忌に設定され、投与検討時に循環器専門医へ相談するなど慎重な判断が推奨されています。

さらに、突然死や重篤な心疾患の家族歴などから異常の可能性が示唆される場合、投与開始前に心電図検査等で心血管系の評価を行うことが記載されています。

意外に見落とされがちな点として、「よくある消化器症状」より前に、医療安全として“観察するべき兆候”が文章で丁寧に指定されていることです。

患者・家族が「体調の変化」を自己判断で放置しないよう、チェックすべき具体例(動悸、めまい、気分の変化、攻撃性の悪化など)を最初の処方時点で共有しておくと、早期受診につながりやすくなります。

アトモキセチン先発ストラテラの相互作用とCYP2D6

アトモキセチンは主にCYP2D6で代謝され、CYP2D6阻害作用を有する薬剤の併用や、遺伝的にCYP2D6活性が欠損している患者(Poor Metabolizer)では血中濃度上昇と副作用発現リスクが高まり得るため、忍容性を見ながら慎重に増量するよう記載されています。

併用禁忌としてMAO阻害剤(セレギリン等)投与中または中止後2週間以内が挙げられ、間隔を空けることが指示されています。

併用注意にはCYP2D6阻害剤(例:パロキセチン)などが挙げられ、血中濃度上昇の可能性に応じた増量ペースの調整が求められています。

薬物動態の具体例として、添付文書では外国人PMがEMに比べて定常状態の平均血漿中濃度が約10倍、Cmaxが約5倍高値で、半減期も延長する旨が示されています。

さらに、パロキセチン併用ではアトモキセチンのCmaxとAUCがそれぞれ約3.5倍、約6.5倍に増加し、その血中濃度がPM単剤時と同程度になったと記載されています。

学術的にも、アトモキセチンはCYP2D6遺伝子型で曝露量が大きく変わり、副作用リスクの増大に関係するため、個別化投与の重要性が議論されています。

参考)303 See Other

ここでの独自視点(検索上位に埋もれがちな実務論点)として、CYP2D6阻害薬は精神科・心療内科領域で遭遇しやすく、併存疾患(うつ、不安、睡眠障害)治療の追加処方が「後から」入ってくることで、同じ用量でも副作用プロファイルが変化し得ます。

そのため、アトモキセチン先発を安定運用するには、開始時だけでなく「併用薬が変わったタイミング」をトリガーに、血圧・心拍、眠気、食欲、気分変化を再点検する運用が安全面で合理的です。

遺伝子検査をルーチン化できない環境でも、阻害薬併用や増量時の“臨床的なシグナル”を拾うことで、実質的な個別化に近づけられます。

参考:アトモキセチンのCYP2D6多型と薬物動態・個別化投与(PBPKモデル)

Scientific Reports: PBPK modelling of atomoxetine in different CYP2D6 genotypes