アテゾリズマブ ベバシズマブ 副作用 の全体像
治療開始4ヶ月以降でも新たに間質性肺疾患を発症するリスクがあります。
アテゾリズマブ ベバシズマブ併用療法の基本的な副作用プロファイル
アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は、切除不能な肝細胞癌に対する一次治療として2020年に承認されて以降、臨床現場で広く使用されています。IMbrave150試験のデータによると、アテゾリズマブとベバシズマブが投与された329例中276例(83.9%)に副作用が認められました。
これは非常に高い発現率です。
主な副作用として10%以上の頻度で報告されているのは、高血圧が78例(23.7%)、蛋白尿が62例(18.8%)、疲労が50例(15.2%)、AST増加が46例(14.0%)、そう痒症が43例(13.1%)、注入に伴う反応が36例(10.9%)、下痢が34例(10.3%)となっています。
つまり多彩な副作用が出現するということですね。
この併用療法の特徴は、免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブによる免疫関連有害事象(irAE)と、血管新生阻害薬であるベバシズマブによる血管関連の副作用が重複して発現する点にあります。医療従事者は両薬剤の副作用プロファイルを正確に理解し、早期発見と適切な対処を行う必要があります。
副作用は治療開始直後から発現するものもあれば、治療を繰り返すことで徐々に出現するものもあり、発現時期には個人差が大きいことが知られています。特に免疫関連有害事象は治療終了後も発現する可能性があるため、長期的なフォローアップが不可欠です。
医療用医薬品データベース(KEGG)のアバスチン添付文書情報には、詳細な副作用発現頻度と対処法が記載されており、日常診療での参考になります。
アテゾリズマブによる免疫関連副作用(irAE)の特徴
アテゾリズマブは抗PD-L1抗体として、がん細胞による免疫抑制を解除することでT細胞の抗腫瘍活性を回復させる薬剤です。しかし、この免疫活性化作用が過剰になると、正常な組織に対しても免疫反応が生じ、さまざまな免疫関連有害事象(irAE)を引き起こす可能性があります。
間質性肺疾患は最も注意すべきirAEの一つで、発現頻度は2.9%と報告されています。風邪に似た症状から始まることが多いのが特徴です。具体的には空咳(痰のない咳)、息切れ、息苦しさ、発熱といった症状が出現します。これらは一見すると感冒症状と区別がつきにくいため、患者さんからの訴えを注意深く聴取する必要があります。
肝機能障害も頻度の高いirAEで、無症状で血液検査により発見されることが多いですが、AST増加が14.0%、ALT増加も同程度の頻度で認められています。重症化すると黄疸、倦怠感の増悪、食欲不振が顕著になりますが、Grade3以上の重篤な肝機能障害の発現率は比較的低いとされています。
大腸炎は下痢や腹痛として現れますが、単なる消化器症状と見過ごされやすい点に注意が必要です。1日4回以上の下痢が続く場合や、血便が見られる場合は速やかに医療機関に連絡するよう患者指導を徹底することが重要です。
甲状腺機能異常は、甲状腺機能低下症が10.7%、甲状腺機能亢進症が5.9%と比較的高頻度で認められます。多くの場合、自覚症状に乏しく、定期的な甲状腺機能検査で発見されます。動悸、体重変化、寒がりや暑がりといった症状の有無を問診で確認することが早期発見につながります。
中外製薬の製品情報サイトには、テセントリクの間質性肺疾患に関する詳細な対処法が掲載されており、臨床判断の参考になります。
ベバシズマブ特有の副作用とその管理
ベバシズマブは血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害することで腫瘍の血管新生を抑制する薬剤ですが、この作用機序に起因する特徴的な副作用が知られています。正常組織の血管機能にも影響を及ぼすため、全身性の血管関連有害事象が出現します。
高血圧は最も頻度の高い副作用で、23.7%に認められます。投与開始後4ヶ月以内の発症が多いとされていますが、それ以降も新たに発症する可能性があるため、継続的な血圧モニタリングが必須です。家庭での血圧測定を指導し、収縮期血圧が150mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上を超えることが多い場合は、降圧剤の開始または強化を検討します。
蛋白尿は18.8%に出現し、特に高血圧を合併している患者で発現率が上昇することが知られています。尿蛋白2+以上が検出された場合は24時間蓄尿を行い、2g/24時間以上では休薬基準に該当します。軽度の蛋白尿は経過観察可能ですが、Grade3以上の高度な蛋白尿では投与中止を検討する必要があります。
出血は19.3%と比較的高頻度で認められ、軽度の鼻出血や歯肉出血から、重篤な消化管出血(2.0%)、肺出血(1.2%)、脳出血(0.1%)まで多様です。肝細胞癌患者では食道静脈瘤や胃静脈瘤を合併していることが多く、治療開始前6ヶ月以内にこれらからの出血歴がある患者は慎重投与の対象となります。
止血しにくい状況が続く場合は要注意です。
血栓塞栓症は深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、脳梗塞などの形で現れることがあります。足の腫れや痛み、息苦しさ、胸痛、片側の麻痺、言語障害といった症状が出現した場合は緊急対応が必要です。2025年の症例報告では、C型肝炎関連肝細胞癌患者においてアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法後に重度の門脈血栓症が発生し、死亡に至った事例が報告されており、血栓症リスクの高い患者では特に注意深い観察が求められます。
創傷治癒遅延もベバシズマブの特徴的な副作用で、大きな手術を受けて間もない患者では傷口の治りが遅くなることがあります。手術予定がある場合は、ベバシズマブの最終投与から少なくとも28日間の休薬期間を設けることが推奨されています。
アテゾリズマブ ベバシズマブ併用時の投与中止・休薬基準
副作用が発現した際の対応として、投与中止基準と休薬基準を正確に理解しておくことが治療継続の可否を判断する上で極めて重要です。Grade分類に基づいた段階的な対応が求められます。
間質性肺疾患についてはGrade3以上または再発性の場合は直ちにテセントリクの投与を中止します。Grade2の場合は休薬し、ステロイド治療を開始してGrade1以下まで回復するのを待ちますが、12週間を超える休薬後も回復しない場合は投与中止となります。つまり回復を待つ期間には上限があるということですね。
肝機能障害では、肝細胞癌患者特有の基準が設定されています。AST/ALTがGrade3(正常上限の5倍超〜20倍以下)の場合はテセントリクを休薬し、ビリルビンがGrade2以上(正常上限の1.5倍超)に上昇した場合も休薬対象です。Grade4(正常上限の20倍超)では投与中止が原則です。
蛋白尿の管理では、尿蛋白2+以上が検出された時点で24時間蓄尿による定量評価を行います。2g/24時間以上でGrade1以下に回復するまでアバスチンを休薬し、高度な蛋白尿(Grade3以上)では投与中止を検討します。尿蛋白/クレアチニン比(UPC比)も有用な指標で、外来での簡便な評価に活用できます。
出血に関しては、喀血や重度の出血があらわれた場合は直ちにアバスチンの投与を中止します。消化管穿孔や瘻孔が疑われる場合も同様に投与中止が必須です。下痢や腹痛が続き激しい腹痛が出現した場合は、消化管穿孔の可能性を念頭に置いた評価が必要です。
高血圧については、Grade2(収縮期血圧140-159mmHgまたは拡張期血圧90-99mmHg)では降圧療法を開始または強化しながら投与継続が可能ですが、Grade3以上(収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上)でコントロール不良の場合は休薬を検討します。高血圧性脳症や高血圧性クリーゼといった重篤な状態では直ちに投与中止します。
厚生労働省の最適使用推進ガイドラインには、投与基準と中止基準の詳細が記載されており、治療方針決定の際の公式な参考資料として活用できます。
副作用マネジメントにおける多職種連携の重要性
アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法の副作用管理には、医師だけでなく看護師、薬剤師、栄養士など多職種が協力して患者をサポートする体制が不可欠です。それぞれの専門性を活かした関わりが治療成功の鍵となります。
薬剤師の役割として、入院中は病棟薬剤師が副作用の早期発見と他職種への情報提供を担います。投与前の薬剤管理指導では、起こりうる副作用とその初期症状について患者・家族に詳しく説明し、緊急連絡カードの携帯を促します。外来化学療法では、毎回の投与前に患者から症状を聴取し、検査値と併せて総合的に評価することで、医師の治療判断をサポートします。
看護師は投与中のバイタルサインモニタリングと注入に伴う反応(infusion reaction)の早期発見に重要な役割を果たします。点滴中や点滴後24時間以内に発熱、悪寒、ふるえ、かゆみ、発疹、血圧変動、呼吸困難などが現れた場合の迅速な対応が求められます。また退院後の自己管理指導として、家庭での血圧測定方法、皮膚症状の観察ポイント、緊急受診が必要な症状などについて具体的に説明します。
栄養士は食欲不振、悪心、下痢といった消化器症状に対する食事指導を行います。蛋白尿が出現している患者では過度な蛋白制限は必要ありませんが、塩分管理や水分バランスについてのアドバイスが有効です。疲労感が強い患者には少量頻回の食事提案など、個別化した栄養サポートが求められます。
2025年の報告では、アテゾリズマブ・ベバシズマブ療法で末梢神経障害を発症した症例に対し、多職種によるカンファレンスを通じて理学療法士、作業療法士も加わった包括的なリハビリテーションプログラムが実施され、QOLの維持に貢献したとされています。irAEとしての末梢神経障害の発生率は1.5%と稀ですが、発症した場合の機能低下は患者の日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からのリハビリテーション介入が重要です。
チーム医療における情報共有の仕組みとして、電子カルテでの副作用情報の一元管理、定期的なカンファレンスでの症例検討、オンコロジーチーム回診などが有効とされています。各職種が得た患者情報を速やかに共有することで、副作用の見逃しを防ぎ、適切なタイミングでの介入が可能になります。
アテゾリズマブ ベバシズマブ投与における患者教育と長期フォローアップ
副作用マネジメントの成功には、患者自身が治療内容と起こりうる副作用を正しく理解し、異変に気づいたときに適切な行動をとれることが前提となります。そのため治療開始前の患者教育が極めて重要です。
患者教育の内容として、まず治療スケジュールと各薬剤の作用機序を分かりやすく説明します。アテゾリズマブは3週間間隔で1200mg、ベバシズマブは3週間間隔で15mg/kgを点滴静注するという投与方法と、初回投与はそれぞれ60分、90分かけて行い、忍容性が良好であれば次回以降は投与時間を短縮できることを伝えます。
副作用の自己チェック項目として、毎日の体温測定、週2-3回の血圧測定、皮膚症状の観察、排便回数と性状の確認、呼吸状態の変化などを日誌に記録するよう指導します。特に咳が2週間以上続く場合、1日4回以上の下痢が続く場合、出血が10分以上止まらない場合などは、速やかに医療機関に連絡する必要があることを繰り返し説明します。
緊急連絡カードの携帯を徹底し、体調不良で他の医療機関を受診する際には必ずこのカードを提示して免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けていることを伝えるよう指導します。irAEは治療終了後も発現する可能性があるため、治療が終わってからも数ヶ月間はカードの携帯を継続する必要があります。
長期フォローアップでは、定期的な血液検査(肝機能、腎機能、甲状腺機能、血算など)、尿検査、画像検査に加えて、患者のQOL評価も重要です。IMbrave150試験では、アテゾリズマブ・ベバシズマブ群と観察群の健康関連QOLや機能スコアは同等であり、治療により生活の質が大きく損なわれないことが確認されています。しかし個々の患者では副作用により生活に支障をきたすこともあるため、症状の程度だけでなく生活への影響度も含めた評価が必要です。
治療効果判定と並行して、継続的な副作用モニタリングを行い、新たな症状の出現や既存症状の悪化がないかを毎回確認します。副作用による治療中止率は14%と報告されており、主な原因は消化管出血と疲労です。適切なマネジメントにより多くの患者で治療継続が可能ですが、重篤な副作用が発現した場合には患者の安全を最優先に治療方針を見直すことが大切です。
患者向けハンドブックを活用することで、患者自身が治療について理解を深め、副作用の早期発見と適切な対処につながります。医療機関で配布されているこうした資料を有効活用しましょう。

アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法による肝細胞癌治療