顎関節症治療と何科受診と症状

顎関節症治療と何科

顎関節症「何科」最短ガイド
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基本は歯科(口腔外科)

顎関節症は顎関節・咀嚼筋の痛み、雑音、開口障害などを主要症候とする包括診断名で、まずは歯科領域で系統的に評価・初期治療を行う設計が標準です。

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鑑別が最重要

顎関節症に似た症状でも、歯性痛・耳鼻科疾患・神経痛・重篤な全身疾患などが混在し得るため、初期の見落とし回避が臨床の要です。

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保存的・可逆的治療が原則

多くは自然経過や保存的治療で改善するため、疾患教育・セルフケア、理学療法、薬物療法、スプリント(アプライアンス)などの可逆的アプローチを段階的に用います。

顎関節症の治療は何科:歯科口腔外科が第一選択

 

顎関節症は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害(顎運動異常)を主要症候とする「包括的診断名」で、病態として咀嚼筋痛障害・顎関節痛障害・顎関節円板障害・変形性顎関節症などを含みます。

この“病態の幅”が広いことが、「何科に行くべきか」を難しくしますが、標準的な診察・検査・初期治療の枠組みは歯科(とくに口腔外科を含む歯科)で整備されています。

臨床現場で患者が最初に迷うポイントは「整形外科では?」という誤解ですが、顎関節症は咬合、ブラキシズム、歯列接触癖(TCH)など口腔機能・行動要因を含めて評価する必要があり、歯科での全体評価が合理的です。

医療従事者向けの受診誘導フレーズ例

「顎関節症が疑われる場合は、まず歯科(口腔外科のある医療機関)で顎関節と咀嚼筋、口腔内をまとめて評価し、必要なら医科とも連携します。」

参考)https://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2020.pdf

顎関節症の治療と症状:雑音・痛み・開口障害の見立て

顎関節症の代表症状は、①顎・側頭部・耳前部の痛み、②「カクッ」「ポキッ」などのクリックや「ジャリジャリ」「ミシミシ」といったクレピタス(捻髪音)、③開口障害や開口路偏位です。

意外に見落とされやすい臨床のコツは、開口距離を「無痛最大開口」「自力最大開口」「強制最大開口」の3種類で測り、差から原因を推定する点です。

例えば、無痛最大開口が小さい一方で強制最大開口が大きい場合は筋原性(咀嚼筋痛障害など)を疑いやすく、逆に自力最大開口と強制最大開口の差が小さい場合は非復位性円板前方転位や関節腔癒着など関節内要因の可能性を考えます。

📌簡易チェック(患者説明用)

  • 痛み:咀嚼、あくび、会話で増悪するか。
  • 音:単音のクリックか、持続する摩擦音(クレピタス)か。
  • 開口:指が縦に何本入るかではなく、実測で推移を見る(例:mm)。

顎関節症の治療と検査:画像検査と鑑別診断の優先順位

顎関節症診療で最重要なのは「顎関節症以外」を先に落とすことです。

ガイドでは、頭蓋内疾患、歯・歯周疾患、耳疾患、副鼻腔疾患、咽頭疾患、顎骨疾患、巨細胞性動脈炎、虚血性心疾患、三叉神経痛、破傷風、各種頭痛、精神疾患、全身疾患(線維筋痛症やEhlers-Danlos症候群など)まで鑑別候補として明記されています。

画像検査は「鑑別のため」と「確定診断のため」で役割が異なり、パノラマX線は他疾患除外や下顎頭骨変化の粗い評価に有用で、円板障害の確定にはMRIが必要とされます。

🧩あまり知られていない“紹介判断”の実務ポイント

顎関節症の初期治療で改善しないとき、漫然と「スプリントを続ける」よりも、鑑別診断の再点検と画像(とくにMRI/CT)へ進む判断が質を左右します。

ガイドでは、基本治療で2週間〜1か月程度で改善が期待され、長くとも3か月で改善が乏しければ専門治療(MRI、医療連携、専門的処置)を検討する流れが示されています。

顎関節症の治療と薬物療法:NSAIDsとアセトアミノフェンの使い分け

顎関節痛障害(関節痛)では、顎関節への内在性外傷に続く炎症を背景にNSAIDsが用いられ、投与は“頓用より時間投与が原則”で初期投与は最長7日分量が推奨と記載されています。

また、咀嚼筋痛障害では、末梢侵害受容・中枢感作・コーピングなど複合要因が示され、NSAIDsの副作用(消化管障害、腎障害、喘息、心血管、血小板など)を踏まえて安全性重視で最小量から短期間投与し、効果と副作用を注意深く観察する方針が述べられています。

アセトアミノフェンは中枢性作用が想定され、NSAIDsより副作用が少ない点が整理されており、患者背景(腎機能、消化管リスク、併用薬)に応じた選択が重要です。

💊現場での説明例(患者向け)

「痛み止めは“治す薬”というより、痛みで動かせない状態を解除して、顎のリハビリや生活改善を進めるための土台です。短期間で安全に使い、経過を必ず再評価します。」​

顎関節症の治療とスプリント:スタビリゼーションと注意点(独自視点)

初期治療の中心として、疾患教育・セルフケアに加え、理学療法、薬物療法、アプライアンス療法(代表はスタビリゼーションアプライアンス)が可逆的治療として推奨されます。

スタビリゼーションアプライアンスは、上顎または下顎の歯列全体を被覆し、左右均等な咬合接触を付与することで咀嚼筋緊張の緩和や顎関節部への過重負荷軽減を目的とし、原則として夜間就寝時使用とされます。

独自視点として強調したいのは、スプリントを「装置」ではなく“行動変容の増幅器”として位置づけることです。ガイドでも日中の歯列接触癖、姿勢、硬固物咀嚼、睡眠障害などのリスク因子是正が重要とされており、スプリント単独で完結させず、生活・行動介入とセットで「暴露時間を減らす」設計にすると説明の説得力が上がります。

⚠️誤解されやすい注意点(重要)

  • 「24時間装着」は副作用(下顎位の変化など)リスクがあり、原則夜間中心で慎重に運用します。
  • 「咬合調整」は基本治療では行わない(悪化リスクがある)と明記されています。
  • 改善が鈍い場合は、装置の微調整より先に再評価(診断・鑑別・心理社会面も含む)を優先します。

(顎関節症の標準的な診察・検査・治療の流れ、鑑別疾患リスト、薬物療法・理学療法・アプライアンス療法の具体、紹介タイミングの根拠)

一般社団法人日本顎関節学会「顎関節症治療の指針 2020」(PDF)

(初期治療の主題が「自己開口訓練」「スタビリゼーション口腔内装置」であること、ガイドラインとしての位置づけ)

Minds ガイドラインライブラリ「顎関節症初期治療診療ガイドライン2023 改訂版」

【指定第2類医薬品】コリホグス 16錠