前立腺がん症状治療方法
前立腺がんの早期症状と自覚しにくい理由
前立腺がんは早期には自覚症状がほとんどないという特徴があります。これは、前立腺がんが主に前立腺の外側(辺縁領域)に発生するためです。
早期がんの特徴
・症状がほとんど現れない
・PSA検査での発見が中心
・定期検診の重要性が高い
前立腺がんが尿道から離れた場所にできるため、初期段階では尿路への影響が少なく、症状として現れにくいのです。これは前立腺肥大症とは対照的で、肥大症は尿道に近い内腺で起こるため早期から排尿症状が現れます。
多くの患者さんが症状を感じないまま進行し、検査で偶然発見されるケースが珍しくありません。そのため、50歳以降の男性には定期的なPSA検査が推奨されています。
前立腺がんの進行による症状変化
前立腺がんが進行すると、様々な症状が段階的に現れてきます。症状は大きく3つのカテゴリーに分けられます。
泌尿器症状
がんが尿道や膀胱を圧迫することで起こる症状。
・排尿困難:尿が出にくい、尿線が細くなる
・頻尿:特に夜間の排尿回数が増加
・残尿感:排尿後もすっきりしない感覚
・血尿:尿に血が混じる
・排尿時痛:排尿時の痛みや違和感
転移による症状
がんが他の部位に転移することで起こる症状。
・骨痛:腰痛、背中の痛み
・下腹部の違和感
・体重減少や疲労感
前立腺がんの約90%は骨転移を起こしやすく、特に腰椎や骨盤への転移が多く見られます。骨転移による痛みは、がんの進行を示す重要なサインです。
前立腺がんの手術療法と適応基準
手術療法は前立腺がんの根治的治療として最も効果的な方法の一つです。
前立腺全摘除術の種類
・開腹手術:従来からの標準的な方法
・腹腔鏡手術:小さな傷で行う低侵襲手術
・ロボット支援手術:ダヴィンチシステムなど
手術の適応となるのは、余命が10年以上見込める患者で、がんが前立腺に限局している場合です。手術時間は約3時間、入院期間は2~3週間程度が一般的です。
手術の合併症
手術には以下のようなリスクが伴います。
・尿失禁:術後数か月で改善することが多い
・勃起障害:性機能への影響
・排尿機能障害
これらの合併症は、神経温存手術や術後のリハビリテーションにより軽減される傾向にあります。患者さんの年齢や全身状態を総合的に判断して手術適応を決定します。
前立腺がんの放射線治療と最新技術
放射線治療は手術に比べて身体的負担が少ない治療法として、高齢者や手術リスクが高い患者に適用されます。
外照射療法の進歩
・IMRT(強度変調放射線治療):コンピューター制御により精密な照射
・定位放射線治療:短期間での集中照射
・粒子線治療:陽子線、重粒子線による高精度治療
従来の外照射では7~8週間の治療期間が必要でしたが、最新の寡分割照射では治療期間を大幅に短縮できます。
小線源治療(ブラキセラピー)
放射性物質を前立腺内に直接埋め込む治療法です:
・入院期間:3~4日程度
・合併症が比較的少ない
・勃起機能の温存率が高い
放射線治療は局所進行がんに対して、内分泌療法と併用されることが多く、より高い治療効果が期待できます。
前立腺がんの薬物療法とホルモン治療の新展開
前立腺がんの90%は男性ホルモン依存性であるため、ホルモン治療(内分泌療法)が治療の中心となります。
内分泌療法の種類
・精巣摘除術:外科的去勢術、手術時間40分程度
・LH-RHアナログ:注射による薬物的去勢
・抗アンドロゲン剤:男性ホルモンの作用を阻害
現在では薬物的去勢が主流となっており、4週間持続型から3か月持続型まで様々な製剤があります。副作用として、ほてり、女性化乳房、性欲減退などが見られます。
新世代ホルモン治療薬
近年、従来の治療に抵抗性となった去勢抵抗性前立腺がんに対して、以下の薬剤が開発されています。
・アビラテロン:CYP17阻害薬
・エンザルタミド:アンドロゲン受容体阻害薬
・ダロルタミド:新世代AR阻害薬
これらの新薬により、進行性前立腺がんの予後が大幅に改善されています。転移のある患者でも、従来より長期間の症状コントロールが可能になりました。
化学療法
ホルモン治療抵抗性となった場合には、ドセタキセルやカバジタキセルによる化学療法が行われます。最近では初期治療からホルモン治療と化学療法を併用する治療戦略も注目されています。