プロメタジン商品名
プロメタジンヒベルナピレチア基本情報
プロメタジンは、フェノチアジン系の第一世代抗ヒスタミン薬として広く医療現場で使用されている薬剤です。主な商品名として、田辺三菱製薬の「ヒベルナ」と高田製薬の「ピレチア」が知られています。
ヒベルナは1956年から販売が開始された歴史の長い医薬品で、現在も多くの医療機関で処方されています。一方、ピレチアは元々塩野義製薬から販売されていましたが、2013年に高田製薬に販売が移行されました。
プロメタジンの化学名は(2RS)-N,N-Dimethyl-1-(10H-phenothiazin-10-yl)propan-2-ylamine monohydrochlorideで、分子式はC17H20N2S・HClです。分子量は320.88となっており、白色から淡黄色の結晶性粉末として存在します。
興味深いことに、プロメタジンはフランスのローヌ・プーラン社(現サノフィ・アベンティス社)で1945年にCharpentierによって合成され、この研究がその後のフェノチアジン系抗精神病薬クロルプロマジン(コントミン)の開発につながりました。
両商品の成分は同一のプロメタジン塩酸塩ですが、製薬会社の違いにより製剤設計や添加物に若干の差異があります。しかし、臨床効果や安全性プロファイルに大きな違いはありません。
プロメタジン商品名効能効果
プロメタジンは多様な適応症を持つ薬剤として知られており、その効能・効果は以下のように幅広く設定されています。
神経系疾患への適応
- 振せん麻痺
- パーキンソニズム
- 薬剤性錐体外路症状
麻酔関連用途
- 麻酔前投薬
- 人工(薬物)冬眠
アレルギー性疾患
皮膚疾患
- 湿疹・皮膚炎に伴うそう痒
- 皮膚そう痒症
- 薬疹・中毒疹
- じん麻疹
- 血管運動性浮腫
その他
- 動揺病(乗り物酔い)
プロメタジンの作用機序は、主にヒスタミンH1受容体遮断による抗ヒスタミン作用と、アセチルコリンのムスカリン受容体遮断による抗コリン作用にあります。さらに、中枢神経系への作用により鎮静効果も発現します。
特筆すべきは、プロメタジンが市販の総合感冒薬「PL顆粒」の成分としても使用されていることです。処方薬のPL配合顆粒には、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩として13.5mgが配合されており、風邪症状の緩和に貢献しています。
プロメタジン副作用注意点
プロメタジンの使用に際しては、様々な副作用への注意が必要です。安全性評価対象例数11,201例中1,354例(12.09%)に副作用の発現が認められており、主な副作用は以下の通りです。
主要な副作用とその発現頻度
重篤な副作用(頻度不明)
特に注意すべきは、プロメタジンが血液脳関門を通過しやすい第一世代抗ヒスタミン薬であることです。このため、中枢神経系への影響が強く、眠気や認知機能の低下が起こりやすくなります。
重要な使用上の注意として、眠気が生じる可能性があるため、自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避ける必要があります。また、他の中枢神経抑制剤やアルコールとの併用により、相互に作用が増強される可能性があります。
さらに、プロメタジンは制吐作用を有するため、他の薬剤による中毒症状や腸閉塞などの重要な症状を隠してしまう可能性があります。このため、原因不明の嘔吐症状に対する安易な使用は避けるべきです。
プロメタジン薬価剤型比較
プロメタジンの商品名別の薬価と剤型について詳細に比較すると、以下のような状況となっています。
ヒベルナ(田辺三菱製薬)の薬価
剤型 | 規格 | 薬価 |
---|---|---|
糖衣錠 | 5mg | 5.9円/錠 |
糖衣錠 | 25mg | 5.9円/錠 |
散剤 | 10% | 6.5円/g |
注射液 | 25mg | 61円/管 |
ピレチア(高田製薬)の薬価
剤型 | 規格 | 薬価 |
---|---|---|
錠剤 | 5mg | 6.5円/錠 |
錠剤 | 25mg | 5.9円/錠 |
細粒 | 10% | 9.5円/g |
薬価の比較では、25mg錠においてヒベルナとピレチアは同価格の5.9円/錠となっています。しかし、5mg錠ではピレチアが6.5円/錠とやや高く、散剤・細粒についてもピレチアの方が高い薬価設定となっています。
剤型の特徴として、ヒベルナは糖衣錠を採用しており、服用時の味やにおいを軽減する工夫がなされています。一方、ピレチアは通常の錠剤と細粒の剤型で提供されています。
注射剤についてはヒベルナのみが製造・販売されており、1管25mgあたり61円の薬価となっています。注射剤は主に麻酔前投薬や人工冬眠法において使用され、即効性が求められる場面で重要な役割を果たします。
用法・用量は両商品共に同一で、通常成人では1回5~25mgを1日1~3回経口投与します。パーキンソニズムに対しては1日25~200mgを適宜分割投与する設定となっています。
プロメタジン処方実態独自視点
近年の医療現場におけるプロメタジンの処方実態を見ると、興味深い変化が見られます。第一世代抗ヒスタミン薬として分類されるプロメタジンは、眠気などの副作用が強いため、アレルギー疾患の治療では第二世代抗ヒスタミン薬に主役の座を譲っています。
しかし、プロメタジンには他の抗ヒスタミン薬にはない独特の特徴があります。抗コリン作用が比較的強いため、向精神薬による薬剤性パーキンソニズムの治療において、現在でも重要な位置を占めています。特に統合失調症患者の抗精神病薬による錐体外路症状に対して、トリヘキシフェニジルと並んで処方される機会が多いのが現状です。
また、麻酔科領域では術前投薬として根強い需要があります。プロメタジンの持つ鎮静作用と制吐作用は、手術前の患者の不安軽減と術後嘔吐の予防に有効であり、完全に代替できる薬剤が少ないのが実情です。
興味深いことに、救急医療の現場では「冬眠療法」の一環として、クロルプロマジンと組み合わせて使用されることがあります。これは重篤な病態における代謝抑制を目的とした古典的な治療法ですが、現在でも特定の状況で選択される場合があります。
処方量の動向を見ると、錠剤よりも注射剤の需要が相対的に安定しており、これは急性期医療における需要を反映していると考えられます。また、高齢者医療において、認知症に伴う不安や興奮状態の管理に、少量のプロメタジンが使用されるケースも散見されます。
薬物動態の観点から見ると、プロメタジンは肝臓での初回通過効果が大きく、経口投与時のバイオアベイラビリティは約25%と低いことが報告されています。このため、注射剤と経口剤では効果に大きな差が生じる可能性があり、投与経路の選択が治療効果に大きく影響します。
さらに、プロメタジンの血中濃度は3時間で最高濃度に達し、二相性の半減期を示します(初期相:1.4時間、後期相:12.3時間)。この薬物動態特性により、1日1回投与でも十分な効果が期待できる場合があり、服薬コンプライアンスの向上に寄与しています。
現在の医療現場では、プロメタジンの適応症の中でも特にパーキンソニズムと麻酔前投薬での使用が中心となっており、古典的な抗ヒスタミン薬としての役割から、より専門的な用途での使用にシフトしているのが実態です。
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