床ずれの薬一覧|医療従事者向け治療薬選択ガイド

床ずれの薬一覧と治療効果

床ずれ治療薬の基本分類
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感染制御薬

ユーパスタ、ゲーベンクリームなど初期治療の標準薬

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組織再生促進薬

アクトシン、プロスタンディンなど血流改善・上皮化促進

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壊死組織除去薬

ブロメライン、カデックスなどデブリードマン効果

床ずれの薬の基本分類と作用機序

床ずれの薬は作用機序により大きく4つのカテゴリに分類されます。

感染制御系薬剤

細菌感染を抑制し、創傷環境を整える薬剤群です。ユーパスタ軟膏は白糖とポビドンヨードの配合により、殺菌作用と浸出液吸収作用を併せ持ちます。ゲーベンクリームは銀イオンによる広域抗菌作用を示し、耐性菌の出現リスクが低いことが特徴です。

組織再生促進系薬剤

血流改善や細胞増殖を促進する薬剤です。アクトシン軟膏のブクラデシンナトリウムは、cAMP濃度を上昇させ血管新生を促進します。プロスタンディン軟膏のアルプロスタジルは、プロスタグランジンE1誘導体として血管拡張作用を発揮します。

壊死組織除去系薬剤

蛋白質分解酵素により壊死組織を選択的に除去します。ブロメライン軟膏は、パイナップル由来の蛋白質分解酵素により、生きた組織を傷つけることなく壊死組織のみを分解します。

皮膚保護系薬剤

周囲の健常皮膚を保護し、治癒環境を維持します。白色ワセリンや亜鉛華軟膏は、皮膚のバリア機能を補完し外部刺激から保護します。

床ずれの薬一覧|初期治療に使用する外用薬

初期治療段階では感染制御と浸出液管理が重要となります。以下に主要な薬剤を示します。

ユーパスタ軟膏(精製白糖・ポビドンヨード配合)

  • 価格:1gあたり43.5円
  • 適応:感染のある浸出液の多い褥瘡
  • 特徴:殺菌作用と浸出液吸収の両立
  • 使用頻度:1日1-2回
  • 注意点:ヨードアレルギー、甲状腺機能異常の既往

ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)

  • 価格:1gあたり13.9円
  • 適応:感染制御が必要な乾燥気味の褥瘡
  • 特徴:銀イオンによる広域抗菌、耐性菌出現リスク低
  • 使用頻度:1日1-2回
  • 注意点:汎血球減少、間質性腎炎のリスク

カデックス外用散(カドレスポンキサン)

  • 価格:1gあたり79.4円
  • 適応:難治性褥瘡、他剤無効例
  • 特徴:浸出液吸収と殺菌作用の両立
  • 使用頻度:1日1-2回
  • 注意点:使用部位の疼痛、刺激感

イソジンシュガー軟膏

ユーパスタの後発品として位置づけられ、同等の効果を示します。価格面でのメリットがあり、長期治療において経済的負担軽減に寄与します。

床ずれの薬|上皮化促進と組織再生薬

肉芽形成期から上皮化期にかけて使用される薬剤群です。血流改善と細胞増殖促進が主な作用機序となります。

アクトシン軟膏(ブクラデシンナトリウム)

  • 価格:1gあたり53.4円
  • 作用機序:cAMP濃度上昇による血管新生促進
  • 適応:肉芽形成不良、上皮化遅延
  • 保存:要冷蔵(2-8℃)
  • 使用法:1日1-2回、ガーゼに展延後貼付

プロスタンディン軟膏(アルプロスタジル)

  • 価格:1gあたり58.7円
  • 作用機序:プロスタグランジンE1様作用による血管拡張
  • 適応:血流障害を伴う褥瘡
  • 使用制限:1日10g以下
  • 特記事項:ラップ療法との併用で効果増強

フィブラストスプレー(トラフェルミン)

  • 価格:1本12,338.7円
  • 作用機序:塩基性線維芽細胞成長因子による直接的組織修復
  • 適応:難治性褥瘡、深い潰瘍
  • 特徴:遺伝子組換え技術による生物学的製剤
  • 注意点:過剰肉芽形成のリスク

リフラップ軟膏(リゾチーム塩酸塩)

組織修復促進作用を有し、感染制御と組織再生の両面からアプローチします。特に慢性期の褥瘡において、長期安定した効果を示します。

床ずれの薬の使い方と注意点

適切な薬剤選択と使用方法が治療成功の鍵となります。以下に実践的なポイントを示します。

使用前の準備手順

  1. 石鹸を用いた洗浄で前回の軟膏残渣を除去
  2. 大量の流水で石鹸成分を完全に除去
  3. 清潔なガーゼで水分を優しく拭き取り
  4. 周囲皮膚の状態確認

薬剤別使用上の注意

感染制御薬使用時の注意点

  • ユーパスタ:甲状腺機能モニタリングが必要
  • ゲーベンクリーム:銀沈着による皮膚変色の可能性
  • カデックス:高価格のため費用対効果の検討が重要

組織再生薬使用時の注意点

  • アクトシン:冷蔵保存必須、室温での長時間放置は効果減弱
  • プロスタンディン:出血傾向のモニタリング、1日使用量制限
  • フィブラストスプレー:過剰肉芽形成時は使用中止

併用療法の考慮事項

ラップ療法との併用により、薬剤の浸透性と保湿効果が向上します。特にプロスタンディン軟膏では、ラップ療法併用により治癒期間の短縮が報告されています。ただし、感染のリスクが高い場合は慎重な適応判断が必要です。

副作用モニタリング

定期的な血液検査により、全身への影響を監視します。特にゲーベンクリームでは汎血球減少、ユーパスタでは甲状腺機能異常の早期発見が重要です。

床ずれの薬選択における医療経済的考察

薬剤選択においては、治療効果と医療経済性の両面からの検討が不可欠です。近年の診療報酬改定により、褥瘡治療における薬剤費管理の重要性が増しています。

コストパフォーマンス分析

初期投資が高額でも治癒期間短縮により総医療費抑制につながる場合があります。フィブラストスプレーは1本あたり12,338円と高価ですが、難治性褥瘡における治癒促進効果により、長期的な医療費削減効果が期待されます。

ジェネリック医薬品の活用

イソジンシュガー軟膏(ユーパスタの後発品)やサトウザルベ軟膏の使用により、同等の治療効果を維持しながら薬剤費削減が可能です。特に長期治療が予想される症例では、経済的負担軽減の観点から積極的な検討が推奨されます。

在宅医療における薬剤選択

在宅医療では、保存条件や使用頻度が重要な選択基準となります。常温保存可能なプロスタンディン軟膏は、冷蔵保存が必要なアクトシン軟膏と比較して在宅使用に適しています。

多職種連携における薬剤情報共有

訪問看護師、薬剤師、介護スタッフとの情報共有により、適切な薬剤管理と効果的な治療継続が実現します。特に副作用モニタリングや使用方法の統一において、多職種連携の重要性が高まっています。

将来展望

再生医療技術の進歩により、幹細胞治療や組織工学的アプローチが実用化段階に入っています。従来の薬物療法との併用により、さらなる治療効果向上が期待されています。

日本褥瘡学会誌における最新の治療ガイドライン
厚生労働省による褥瘡予防・管理ガイドライン