診療報酬改定と賃上げ:医療従事者の処遇改善と新評価料

診療報酬改定による賃上げ対策

2024年度診療報酬改定のポイント
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ベースアップ評価料の新設

医療従事者の賃上げを目的とした新たな評価料

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全領域での適用

病院、診療所、訪問看護ステーションなど幅広く対象

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算定方法の柔軟性

各医療機関で分配方法を自由に決定可能

診療報酬改定:ベースアップ評価料の新設と算定方法

2024年度の診療報酬改定において、医療従事者の処遇改善を目的とした「ベースアップ評価料」が新設されました。この評価料は、6月から算定可能となり、医療機関の収入増加を通じて、職員の賃上げを実現することを目指しています。

ベースアップ評価料の特徴として、以下の点が挙げられます:

・全領域での適用:病院、診療所、訪問看護ステーションなど、幅広い医療機関が対象となります。
・柔軟な分配:得られた収入の分配方法は各医療機関で自由に決定できます。
・算定方法の細分化:入院ベースアップ評価料は165区分に細分化されています。

算定方法については、厚生労働省が公開している「ベースアップ評価料計算支援ツール」を活用することで、各医療機関の具体的な収入増加額を試算することができます。

ベースアップ評価料計算支援ツールのダウンロード先:
厚生労働省:令和6年度診療報酬改定と賃上げについて

このツールを使用することで、医療機関は自施設の条件に基づいた具体的な収入増加額を把握し、効果的な賃上げ計画を立てることが可能となります。

診療報酬改定:医療従事者の賃上げ目標と実現への道筋

2024年度診療報酬改定における賃上げ目標は、全職種平均で3%程度とされています。この目標達成に向けて、医療機関は以下のような取り組みを検討する必要があります:

  1. ベースアップ評価料の積極的な活用
  2. 既存の加算・評価料の見直しと最適化
  3. 業務効率化による人件費の捻出
  4. 賃金体系の見直しと適正化

特に注目すべき点として、看護職員の処遇改善があります。日本看護協会の働きかけにより、今回のベースアップ評価料は全ての看護職員を対象としており、地域医療を支える様々な医療機関での賃上げが期待されています。

看護職員の処遇改善に関する詳細情報:
日本看護協会:令和6年度診療報酬改定「ベースアップ評価料」が新設6月より算定可能に

医療機関は、この機会を活用して看護職員を含む全ての医療従事者の賃金水準を見直し、適切な処遇改善を行うことが求められています。

診療報酬改定:賃上げ促進税制の活用と報酬改定の関係

2024年度からは、新たな「賃上げ促進税制」がスタートします。この税制は、積極的に賃上げを行う企業に対する優遇措置を強化するものです。医療機関にとっても、この税制を活用することで、診療報酬改定と合わせてより効果的な賃上げを実現できる可能性があります。

賃上げ促進税制の主な特徴:

・企業規模別の3分類(大企業、中堅企業、中小企業)
・中小企業向けの税額控除率上乗せ要件の緩和
・中小企業向けの税額控除の繰越制度の導入

医療機関は、診療報酬改定によるベースアップ評価料の算定と、賃上げ促進税制の活用を組み合わせることで、より大きな賃上げ効果を得ることができます。特に中小規模の医療機関にとっては、税制面での優遇措置が拡充されているため、積極的な検討が望まれます。

賃上げ促進税制の詳細については、以下のリンクを参照してください:
佐々木総合会計事務所:令和6年度からスタートする賃上げ促進税制の概要 ~医療機関向け

診療報酬改定:病院・診療所の賃上げ対応の選択肢

医療機関が賃上げを実施する際には、様々な選択肢があります。以下に主な対応策を示します:

  1. 一律ベースアップ:
    全職員に対して一定率または一定額の賃上げを行う方法です。公平性が高いですが、個々の貢献度を反映しにくい面があります。

  2. 職種別・職位別ベースアップ:
    看護職、医療技術職、事務職などの職種別、または管理職・一般職などの職位別に賃上げ率を変える方法です。各職種・職位の市場価値や人材確保の必要性に応じて柔軟に対応できます。

  3. 成果連動型賃上げ:
    個人やチームの業績に応じて賃上げ幅を決定する方法です。モチベーション向上につながりますが、評価基準の設定が難しい面があります。

  4. 手当の新設・拡充:
    基本給ではなく、特定の業務や資格に対する手当を新設または拡充する方法です。柔軟な運用が可能ですが、将来的な人件費増加につながる可能性があります。

  5. 非金銭的待遇改善:
    有給休暇の拡充、研修機会の提供、福利厚生の充実など、金銭以外の面で待遇を改善する方法です。直接的な賃上げではありませんが、職員の満足度向上に寄与します。

医療機関は、自施設の状況や職員のニーズを踏まえて、これらの選択肢を組み合わせた最適な賃上げ戦略を立てることが重要です。

診療報酬改定:高齢者救急に対応する新入院料の概要

2024年度の診療報酬改定では、高齢者救急への対応を強化するため、新たな入院料が設定されました。この新設は、増加する高齢者の救急需要に対応し、より適切な医療提供体制を構築することを目的としています。

新入院料の主な特徴:

・高齢者の特性を考慮した医療提供体制の評価
・多職種連携によるケアの推進
・在宅復帰支援の強化

この新入院料の算定には、高齢者医療に精通した医師や看護師の配置、リハビリテーション専門職の関与、栄養サポートチームの介入などが要件として設定されています。医療機関は、これらの要件を満たすことで、高齢者救急に特化した診療報酬を算定できるようになります。

高齢者救急に関する新たな取り組みの詳細:
GemMed:医療従事者の処遇改善に向けたベースアップ評価料、賃金改善手法、評価料併算定などの詳細示す

この新入院料の導入により、高齢者救急に対応する医療機関の経営基盤が強化され、結果として医療従事者の処遇改善にもつながることが期待されています。医療機関は、高齢者救急への対応力を高めることで、地域医療における重要な役割を果たすとともに、職員の賃上げにも寄与する可能性があります。

以上、2024年度診療報酬改定における賃上げ対策について、ベースアップ評価料の新設、賃上げ促進税制の活用、具体的な賃上げ方法、そして高齢者救急に対応する新入院料の概要まで幅広く解説しました。医療機関は、これらの制度改正を十分に理解し、自施設の状況に合わせた最適な戦略を立てることが重要です。医療従事者の処遇改善は、質の高い医療サービスの提供と人材確保の両面で極めて重要な課題であり、今回の診療報酬改定を契機に、積極的な取り組みが求められています。