小規模多機能型居宅介護看護の実践ガイド

小規模多機能型居宅介護看護の基礎知識と核心ガイド

在宅療養を支える複合サービス

通いを軸に柔軟に支援

通い・訪問・泊まりを利用者の状態と家族状況に合わせて組み合わせ、地域での生活継続を支援します。

看多機は医療ニーズに対応

看護小規模多機能型居宅介護では訪問看護と一体化し、退院直後や看取り期の療養生活を支えます。

主治医連携と情報共有が要

急変兆候の早期把握、医師の指示確認、家族支援を多職種で継続し、入院回避と安全な療養を両立します。

小規模多機能型居宅介護看護とは何か

「小規模多機能型居宅介護看護」という検索語は、一般に「小規模多機能型居宅介護」と「看護小規模多機能型居宅介護」を包括して指す場合に使われます。両者はいずれも地域密着型サービスであり、住み慣れた自宅・地域での生活を可能な限り継続できるよう、通い、訪問、泊まりを一つの事業所が一体的に提供する仕組みです。

小規模多機能型居宅介護は、「通い」を中心に据えながら、利用者の心身状態、生活状況、本人の希望、家族の介護力に応じて訪問や泊まりを随時組み合わせます。たとえば、普段は週3回の通いを使う利用者が、発熱後の数日間は自宅訪問中心へ切り替え、主介護者の体調不良時には緊急で泊まりを利用する、といった運用が可能です。定期的に複数の事業所へ依頼し直すのではなく、なじみの職員が生活全体を把握しながら支援できる点が大きな特徴です。

看護小規模多機能型居宅介護は、従来「複合型サービス」と呼ばれたサービスで、小規模多機能型居宅介護に訪問看護の機能を組み合わせたものです。訪問、通い、泊まりのそれぞれで介護と看護を一体的に提供できるため、医療的ケアを必要とする中重度者、退院直後で状態が不安定な人、終末期に自宅で過ごしたい人などへの対応力が高まります。厚生労働省は、主治医と密接に連携し、医療行為を含む多様なサービスを24時間365日体制で提供する地域の拠点として位置付けています。www.mhlw.go.jp/…/001115259.pdf

“>厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護」

医療従事者が紹介・連携を検討する際は、「小多機なら介護中心、看多機なら看護を含む複合的な在宅療養支援」と大まかに理解したうえで、実際の提供可能な医療処置、夜間対応、訪問看護体制、協力医療機関、看取りの実績を事業所単位で確認することが重要です。同じサービス種別でも、看護職員の配置状況や地域資源との連携状況によって、対応範囲には差があります。

小多機と看多機の違いと対象者

小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護は、どちらも「通い・訪問・泊まり」を柔軟に使う点は共通しています。しかし、看護小規模多機能型居宅介護には訪問看護の機能が組み込まれ、療養上の世話や必要な診療の補助を含む看護サービスを、在宅だけでなく通い・泊まりの場でも一体的に提供できる点に本質的な違いがあります。

項目 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護
サービスの構成 通い・訪問・泊まりを組み合わせる介護サービス 小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせる複合型サービス
主な支援内容 食事、入浴、排泄、服薬介助、生活援助、機能訓練、見守り 介護支援に加え、療養上の世話、診療補助、医療的ケア、状態観察、看取り支援
想定される利用者 認知症、独居、高齢者世帯、日中独居、頻回な生活支援が必要な人 医療依存度が高い人、退院直後の人、終末期の人、継続的な看護評価が必要な人
看護職員の基準 本体事業所で看護職員を1人以上配置 本体事業所で保健師・看護師・准看護師を常勤換算2.5人以上配置
主な連携先 主治医、訪問看護、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所 主治医、訪問看護事業所、病院、訪問診療、薬局、居宅介護支援事業所
適する場面 生活支援と柔軟な介護サービス調整が主な課題である場合 医療処置、症状変動、退院支援、看取りを含めた在宅療養が課題である場合

小多機の利用者像としては、独居や高齢者のみ世帯で、日中・夜間を問わず見守りや複数回の生活支援が必要な人、認知症により日によって生活リズムや支援量が変わりやすい人、家族の就労や介護負担のために泊まりを含む柔軟な支援を必要とする人が挙げられます。厚生労働省の資料では、小多機利用者の支援ニーズとして、日に複数回の服薬介助、訪問と通いの組み合わせ、訪問と泊まりの組み合わせが多く示されています。www.mhlw.go.jp/…/001113809.pdf

“>厚生労働省「小規模多機能型居宅介護」

看多機は、医療的な観察・処置と生活支援を分けずに設計したい場合に有力な選択肢です。具体的には、慢性心不全やCOPDなどで増悪・再入院を繰り返す人、ストーマ・尿道カテーテル・在宅酸素・経管栄養などの管理を要する人、褥瘡処置や疼痛管理が必要な人、がん終末期で症状緩和と家族支援を必要とする人などが想定されます。もっとも、医療処置の可否は主治医の指示、事業所の設備・看護体制、職員の技能、緊急時連携体制に左右されるため、紹介前の確認が欠かせません。

人員・設備・利用の基本基準

小規模多機能型居宅介護は、少人数の登録利用者を対象に、なじみの関係性を重視して支援する地域密着型サービスです。本体事業所の登録定員は原則29人以下です。通いの利用定員は登録定員の2分の1から18人まで、泊まりの利用定員は通い定員の3分の1から9人までとされます。利用者が生活上の危機に直面したときにも、日常を知る事業所が訪問・泊まりを調整できるよう、小規模な単位で運営されます。

小多機の日中の職員配置は、通いサービスの利用者3人に対して介護・看護職員を常勤換算で1人以上、加えて訪問サービスに従事する職員を1人以上配置する考え方です。夜間は、泊まり利用者への対応を行う夜勤職員と、随時の訪問に対応する宿直職員による体制が基本となります。看多機では、日中の通い・訪問に従事する職員のうち、それぞれ少なくとも1人は保健師、看護師または准看護師であることが求められ、看護職員は本体事業所で常勤換算2.5人以上が必要です。

項目 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護
登録定員 本体事業所は29人以下 本体事業所は29人以下
通い定員 登録定員の2分の1から18人まで 登録定員の2分の1から15人までを基本とし、登録定員が26人以上では16人から18人
泊まり定員 通い定員の3分の1から9人まで 通い定員の3分の1から9人まで
日中の通い配置 利用者3人に対し介護・看護職員1人以上 利用者3人に対し1人以上で、少なくとも1人は看護職員
日中の訪問配置 常勤換算で1人以上 常勤換算で2人以上で、少なくとも1人は看護職員
看護職員 本体事業所で1人以上 本体事業所で常勤換算2.5人以上
介護支援専門員 小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した者を配置 小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した者を配置
宿泊室 プライバシーに配慮したしつらえが必要 原則個室で、1人当たり7.43平方メートル以上が基準

医療従事者が特に注意したいのは、制度上の人員基準を満たしていることと、個別利用者に必要な看護・医療対応を常に実施できることは同義ではない点です。たとえば、毎日の吸引、頻回の輸液管理、急変リスクの高い呼吸管理、夜間の医療的判断などでは、事業所ごとの受け入れ基準や協力医療機関との役割分担を具体的に確認する必要があります。看多機であっても、主治医の指示内容、緊急連絡方法、看護師の勤務体制、夜間のオンコール、救急搬送時の情報提供手順を共有して初めて、安全な在宅療養支援につながります。

なお、地域密着型サービスは原則として事業所の所在する市町村の被保険者が利用します。自治体間の事前同意や指定により例外的な広域利用が可能となる場合もありますが、利用可否は保険者・自治体へ確認が必要です。住所地、保険者、地域包括支援センター、ケアマネジャーとの早期調整が、退院時のサービス空白を防ぐ実務上の要点になります。

医療連携と退院支援での実践ポイント

退院支援で小多機または看多機を検討する際は、退院日からサービス開始日までの「生活の連続性」を設計することが重要です。病棟からの情報提供が、疾患名や処方内容だけにとどまると、在宅で必要な観察・介助・家族支援の具体像が見えません。医療従事者は、退院後に起こりやすい症状変化、セルフケアの実行可能性、服薬管理の難易度、食事・排泄・移動の支援量、家族の不安や介護可能時間を、サービス担当者が判断可能な形にして伝える必要があります。

看多機では、通い・泊まりの場における看護サービスも含めて計画できるため、退院直後に日中の状態観察や服薬確認を強め、夜間の不安が大きい期間は泊まりを組み合わせる、といった段階的な在宅移行が可能です。例えば、心不全で入退院を繰り返す高齢者では、体重、浮腫、呼吸状態、食事・水分摂取、服薬状況を日々把握し、悪化兆候を主治医へ早期共有する導線を作ります。病状が安定すれば通い中心へ、増悪リスクが高まれば訪問や泊まりを増やすという柔軟な組み立てができます。

  • 退院前カンファレンスで、疾患経過、治療目標、急変時方針、本人の意思、家族の介護力を多職種で共有する
  • 主治医の指示内容、医療処置の手順、必要物品、緊急時の連絡先を文書化して事業所とすり合わせる
  • 服薬は薬剤名の羅列ではなく、飲み忘れ時の対応、頓用基準、副作用観察、自己管理能力まで共有する
  • 酸素療法、経管栄養、カテーテル、ストーマ、褥瘡などは、事業所の受け入れ可否と担当範囲を事前に確認する
  • 救急搬送を望むのか、在宅での症状緩和を優先するのか、本人・家族の意思決定内容を定期的に見直す
  • 入院時に備え、診療情報、看護サマリー、薬剤情報、ACPの内容を速やかに提供できる運用を整える

小多機・看多機のケアマネジャーは、原則として当該事業所に所属する介護支援専門員が居宅サービス計画を作成します。そのため、一般の居宅介護支援事業所から小多機・看多機へ移行する場合、担当ケアマネジャーが変わる可能性があります。医療機関側は、紹介時に「サービスの追加」だけでなく、ケアマネジメント体制も変化することを本人・家族に丁寧に説明し、既存の支援関係を尊重しながら情報移管を進めることが望まれます。

厚生労働省の資料では、看多機は退院直後の在宅生活への移行、がん末期などの看取り期、家族へのレスパイトや相談支援に対応する役割を持つと整理されています。利用者の主傷病には認知症、脳卒中、心臓病が多く、提供されるケアとしては身体の清潔保持、服薬指導・管理、排泄援助などが多いことも示されています。医療処置だけに焦点を絞らず、日常生活支援と家族の継続可能性を同時に評価することが、看多機の機能を生かす鍵です。厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護の利用者像と提供ケア」

看取りと多職種協働で注意すべきこと

看多機は、医療ニーズの高い中重度者の在宅療養を支える仕組みであり、看取り期の支援にも重要な役割を果たします。ただし、看多機を利用すれば必ず自宅看取りが実現するわけではありません。症状の複雑性、夜間の急変、家族の疲弊、介護力の変化、本人の意思、医療機関への入院希望などを継続的に評価し、本人・家族にとって最善の療養場所を選び直すことが必要です。

厚生労働省の調査資料では、看多機利用者は要介護3以上が約64%、平均要介護度は3.16とされ、中重度者の割合が高いことが示されています。また、過去1年の利用終了者について、1事業所当たりの平均では死亡・看取りが4.2人であり、その内訳は自宅での死亡が1.8人、看多機での死亡が2.4人でした。これは、看多機が自宅だけでなく、必要に応じて泊まりの場も活用しながら終末期を支える実態を示唆します。厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護の現状と課題」

終末期支援では、主治医、訪問診療医、看護師、介護職、薬剤師、ケアマネジャー、リハビリテーション専門職、歯科・栄養関係職種、地域包括支援センターが、役割を曖昧にしないことが大切です。とくに疼痛、呼吸困難、せん妄、食事摂取量低下、分泌物増加、排泄困難、褥瘡悪化などの症状について、誰が観察し、誰が医師へ報告し、誰が家族に説明し、誰が夜間に初動対応するのかを事前に決めておく必要があります。

医療従事者は、看取りの可否を「医学的に可能か」だけで判断せず、本人の価値観、家族の受容、介護者の健康状態、緊急連絡体制、死亡後の対応まで含めて支援します。本人が「自宅に帰りたい」と表現していても、家族が夜間の急変に強い不安を抱えている場合、看多機の泊まりを活用することが、本人の地域生活の継続と家族の安心を両立する選択肢になることがあります。一方で、常時の高度な医療管理が必要で事業所の対応範囲を超える場合には、訪問診療・訪問看護の増強、緩和ケア病棟、介護医療院、入院医療などを含めて再検討すべきです。

小多機・看多機の価値は、通い、訪問、泊まり、看護を単に足し算することではありません。利用者の状態変化に合わせてサービス量と場所を機動的に調整し、生活の継続性を守る点にあります。医療機関の退院支援部門、病棟看護師、外来スタッフ、訪問診療医、薬局は、地域の小多機・看多機がどのような利用者を受け入れ、どこまでの医療対応ができるのかを平時から把握しておくことで、退院直前の調整不足を減らせます。

紹介時には、疾患や医療処置だけでなく、「本人は何を大切にしたいか」「どの時間帯に困りごとが生じるか」「家族が続けられる支援量はどこまでか」「急変時にどのような治療・療養を望むか」を共有してください。こうした情報が揃うことで、小規模多機能型居宅介護看護は、地域で暮らし続けたい人の意思を具体的な支援計画へつなぐ有効な基盤となります。

コミュニティケア [訪問看護、介護・福祉施設のケアに携わる人へ] 2025年2月号 (第27巻2号) 特集 先駆事例からわかる 訪問看護ステーションの業務効率化