セミプリマブ肺がん承認と適応追加の臨床的意義

セミプリマブ肺がん承認後の治療選択と注意点

PD-L1発現率1%未満の患者では生存期間延長効果がほぼ認められません。

📋 セミプリマブ肺がん承認の3つのポイント

2025年9月19日の適応追加承認

切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する単剤療法および化学療法との併用療法が承認されました

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PD-L1発現率が治療効果の鍵

PD-L1発現率50%以上で高い奏効率を示し、1%未満では効果が限定的となる特徴があります

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最適使用推進ガイドラインの遵守

施設基準と医師要件を満たした医療機関での使用が求められ、副作用管理体制の整備が必須です

セミプリマブの非小細胞肺がんへの承認背景と臨床試験結果

抗PD-1抗体セミプリマブ(商品名リブタヨ点滴静注350mg)は、2025年9月19日に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する適応追加承認を取得しました。これにより、子宮頸がんに続く2つ目の固形がんへの適応となります。

承認の根拠となった主要な臨床試験は、PD-L1発現率50%以上の患者を対象としたEMPOWER-Lung 1試験(R2810-ONC-1624試験)です。この国際共同Ⅲ相試験では、セミプリマブ単剤療法と標準化学療法を比較し、全生存期間(OS)の中央値が22.1カ月(化学療法群14.3カ月)と有意な延長を示しました。ハザード比は0.676(95%信頼区間0.525-0.870、p=0.0022)で、死亡リスクを約32%低減することが確認されています。

さらに、PD-L1発現率を問わない患者集団を対象としたEMPOWER-Lung 3試験(R2810-ONC-16113試験)では、セミプリマブと化学療法の併用療法がプラセボと化学療法の併用と比較されました。OS中央値は21.9カ月対13.0カ月(ハザード比0.706、p=0.0140)と、併用療法でも有意な生存期間延長が証明されています。

つまり単剤でも併用でも効果があるということですね。

国内第Ⅰ相試験(R2810-ONC-1622試験)では、日本人患者における有効性と安全性が検証されました。PD-L1発現率50%以上の患者における奏効率は60.0%と高く、最長42.5カ月という長期の奏効期間が観察されました。PD-L1発現率を問わない集団での化学療法併用では奏効率42.0%が得られており、日本人患者においても海外試験と同様の治療効果が期待できます。

これは使えそうです。

セミプリマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(非小細胞肺癌)- 臨床試験の詳細データと有効性評価基準について記載されています

セミプリマブのPD-L1発現率別の治療効果と使い分け基準

セミプリマブの治療効果はPD-L1発現率によって大きく異なることが明らかになっています。この発現率別の解析は、適切な患者選択において極めて重要な意味を持ちます。

EMPOWER-Lung 3試験の探索的解析では、PD-L1発現率別の全生存期間が詳細に検討されました。PD-L1発現率50%以上の患者では、セミプリマブ併用療法の中央値17.9カ月に対しプラセボ併用療法13.8カ月(ハザード比0.613)と明確な延長効果が認められています。PD-L1発現率1%以上50%未満でも、21.9カ月対12.1カ月(ハザード比0.518)と大きな治療効果が示されました。

しかし、PD-L1発現率1%未満の患者群では状況が異なります。セミプリマブ併用療法の中央値12.8カ月に対しプラセボ併用療法14.2カ月(ハザード比1.006)となり、生存期間延長効果がほぼ認められませんでした。この結果は統計学的に有意な差ではなく、PD-L1低発現患者ではセミプリマブの上乗せ効果が限定的であることを示唆しています。

効果が出ないケースもあるんですね。

最適使用推進ガイドラインでは、PD-L1発現率が1%未満の場合にOS延長効果が小さい傾向が認められたことが明記されています。ただし、PD-L1発現率にかかわらず安全性プロファイルは同様であったため、発現率による副作用リスクの差は認められていません。つまり、効果の違いはあっても安全性は一定ということです。

臨床現場では、治療開始前にPD-L1発現率を必ず測定し、発現率に応じた治療方針を検討する必要があります。PD-L1発現率50%以上であれば単剤療法も選択肢となり、1%以上50%未満では併用療法が推奨されます。1%未満の場合は、セミプリマブ以外の治療選択肢も含めて慎重に判断することが求められます。

発現率の測定が鍵になります。

PD-L1≧50%の進行性非小細胞肺がんに対するセミプリマブの長期追跡データ – PD-L1発現率別の詳細な有効性データが掲載されています

セミプリマブの免疫関連有害事象と他の抗PD-1抗体との比較

セミプリマブは抗PD-1抗体として、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)に次ぐ3番目の製剤です。作用機序は同じですが、副作用プロファイルや適応疾患に違いがあります。

国内第Ⅰ相試験のコホートAでは、副作用が91.7%の患者に認められました。発現頻度が高い副作用は、皮膚および皮下組織障害53.3%(そう痒症23.3%、発疹16.7%など)、注入に伴う反応31.7%、胃腸障害25.0%(下痢10.0%、悪心10.0%など)、間質性肺疾患20.0%、甲状腺機能低下症を含む内分泌障害21.7%でした。Grade 3以上の重篤な副作用は30.0%に発現しています。

化学療法併用のコホートCでは、全例に副作用が認められ、Grade 3以上は62.0%と単剤療法より高頻度でした。これは化学療法による骨髄抑制(好中球数減少26.0%、貧血40.0%)が加わるためです。間質性肺疾患12.0%、神経障害24.0%も報告されており、併用療法では副作用モニタリングの重要性がさらに増します。

併用すると副作用も増えるということですね。

免疫関連有害事象(irAE)の特徴として、投与初期から投与終了後まで幅広い時期に発現する可能性があります。進行非小細胞肺がん患者を2年以上治療継続した場合、50%の患者に後期免疫関連有害事象が発現したという報告もあります。つまり、長期投与でもirAEリスクは継続するわけです。

他の抗PD-1抗体との比較では、セミプリマブの特徴として完全ヒト型モノクローナル抗体である点が挙げられます。ペムブロリズマブもヒト化抗体、ニボルマブもヒト型抗体ですが、分子構造の微細な違いがPD-1結合親和性や組織分布に影響を与える可能性が指摘されています。ただし、臨床的な有効性や安全性に明確な優劣をつけることは現時点では困難です。

薬価面では、セミプリマブは350mg7mL1瓶が450,437円で、1日薬価は約21,449円です。ペムブロリズマブやニボルマブと比較して同等の価格帯に設定されており、経済的な観点からの選択基準にはなりにくいと言えます。

リブタヨ点滴静注350mg適正使用のお願い – 副作用プロファイルと管理方法について詳細に解説されています

セミプリマブ投与における施設基準と医師要件の実務ポイント

セミプリマブの使用には、最適使用推進ガイドラインに定められた施設基準と医師要件を満たす必要があります。これは重篤な免疫関連有害事象が発現した際の迅速な対応を確保するための制度です。

施設要件として、以下の体制整備が求められます。まず、緊急時に十分対応できる医療体制が整備されていることが必須です。具体的には、副腎皮質ホルモン剤などの免疫抑制剤による治療が直ちに実施可能であり、間質性肺疾患や重症筋無力症などの重篤なirAEに対応できる専門医との連携体制が確立されていることです。

医師要件については、治療責任者が以下のいずれかの条件を満たす必要があります。医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に4年以上の臨床経験を有し、うち3年以上は肺がんのがん薬物療法を含む呼吸器病学の臨床研修を行っていることが基本です。または、がん薬物療法に関する適切な研修を修了し、十分な知識と経験を有する医師であることが求められます。

これは厳しい条件です。

最適使用推進ガイドラインには、PD-L1検査の実施も明記されています。治療開始前に腫瘍組織を用いたPD-L1発現率の測定が必須となり、測定にはSP263抗体を用いた免疫組織化学染色法が推奨されています。検査結果に基づいて治療方針を決定することが、適正使用の大前提となります。

投与スケジュールは、セミプリマブ350mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注します。化学療法併用の場合は、白金製剤とパクリタキセルまたはペメトレキセドを3週間間隔で4サイクル施行し、非扁平上皮癌でペメトレキセドを選択した患者では維持療法を継続します。

病勢進行まで投与を継続するのが原則です。

irAE発現時の対応体制として、発現した事象に応じた専門医との連携が重要です。間質性肺疾患では呼吸器内科医、大腸炎では消化器内科医、内分泌障害では内分泌内科医、神経障害では神経内科医など、各臓器の専門医と速やかに連携できる体制を整備しておく必要があります。副腎皮質ホルモン剤の投与開始基準や投与量についても、あらかじめプロトコルを定めておくと迅速な対応が可能になります。

準備が成功の鍵ですね。

セミプリマブ(遺伝子組換え)製剤の施設基準および医師要件 – 保医発通知に基づく具体的な要件が記載されています

セミプリマブ治療におけるEGFR/ALK/ROS1遺伝子変異と治療順序の考慮点

セミプリマブの臨床試験では、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子陽性の患者は対象外とされました。これらのドライバー遺伝子変異陽性患者には分子標的薬が第一選択となるため、セミプリマブは原則として遺伝子変異陰性の患者に使用されます。

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者では、オシメルチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療です。これらのTKIは奏効率が70-80%と高く、無増悪生存期間も18カ月前後と良好な成績を示します。ALK融合遺伝子陽性患者ではアレクチニブブリグチニブなどのALK阻害薬、ROS1融合遺伝子陽性患者ではクリゾチニブやエヌトレクチニブが推奨されます。

遺伝子検査が最初の分岐点です。

ただし、分子標的薬治療後に病勢進行した場合の後治療として、セミプリマブを含む免疫チェックポイント阻害薬の使用が検討されることがあります。EGFR-TKI耐性獲得後のPD-1/PD-L1阻害薬の有効性については、EGFR遺伝子変異陰性患者と比較して奏効率が低い傾向が報告されていますが、一部の患者では効果が得られることも知られています。

治療順序の考慮点として、化学療法の既往がセミプリマブの効果に影響する可能性があります。EMPOWER-Lung試験では化学療法未治療の患者が対象とされており、セミプリマブが最も効果を発揮するのは一次治療としての使用です。化学療法既治療例での有効性データは限定的であるため、可能な限り早期の治療ラインで使用することが推奨されます。

早めの使用が効果的ということですね。

病勢進行時の対応として、EMPOWER-Lung 1試験では2018年8月のプロトコール改訂以降、セミプリマブ単剤療法で病勢進行した患者にセミプリマブを継続しつつ最大4サイクルの白金製剤併用化学療法を追加することが認められました。この「add-on化学療法」戦略により、一部の患者で病勢コントロールが得られることが示されています。つまり、単剤療法で効かなくなっても併用に切り替えられる可能性があるわけです。

実臨床では、遺伝子検査結果、PD-L1発現率、患者の全身状態、臓器機能、既往治療歴などを総合的に評価し、セミプリマブの適応を慎重に判断する必要があります。特に、遺伝子検査とPD-L1検査の両方を治療開始前に完了させることが、適切な治療選択の前提条件となります。

セミプリマブ+白金製剤併用化学療法のレジメン詳細 – 併用療法の具体的な投与スケジュールと用量調整基準が記載されています

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