アファチニブ適正使用ガイド副作用対策と投与管理の実践

アファチニブ適正使用における副作用管理と投与方法

減量後の再増量は絶対にダメです

この記事の3ポイント
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下痢発現率80.8%の管理が治療継続のカギ

アファチニブでは投与開始1週間以内に下痢が発現しやすく、Grade3以上が14.4%に達します。ロペラミド塩酸塩の携帯と早期対応により重篤化を防げます

空腹時投与で血中濃度が34%低下を回避

食事前後の投与により血中濃度が大幅に低下するため、食事1時間前から食後3時間までの間は服用を避ける必要があります

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副作用発現時は10mg減量、再増量は禁止

Grade2以上の副作用発現時は休薬後10mg減量で再開しますが、一度減量した後は増量できません。20mgで忍容性が得られない場合は中止を考慮します

アファチニブの適応と作用機序の特徴

アファチニブ(ジオトリフ錠)は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌に対する分子標的薬です。特にExon19の欠失変異やExon21のL858R変異を有する患者に高い効果を示します。従来のゲフィチニブエルロチニブと異なる点は、HER1(EGFR)、HER2、HER4の細胞内チロシンキナーゼドメインに不可逆的に結合することです。

不可逆的結合という特性が重要です。

この作用機序により、受容体のリン酸化が持続的に抑制され、がん細胞の増殖シグナル伝達経路が遮断されます。通常、成人には1日1回40mgを空腹時に経口投与しますが、患者の状態により1日1回50mgまで増量できます。

化学療法未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者を対象とした国際共同第III相臨床試験では、無増悪生存期間中央値が全症例で11.1ヵ月、Common mutation例では13.6ヵ月と報告されています。40歳代後半から罹患率が増加し始める肺癌において、EGFR遺伝子変異陽性例は日本人に比較的多く認められることから、本剤の適正使用は臨床上極めて重要な位置づけとなっています。

年齢別の疾患分布を理解すべきです。

ベーリンガーインゲルハイム社のアファチニブ適正使用ガイド(最新版の臨床試験データと副作用管理の詳細が記載)

アファチニブの下痢発現率と早期対応の重要性

アファチニブによる下痢は最も頻度の高い副作用であり、発現率は全Gradeで80.8%、うちGrade3以上が14.4%に達します。日本人におけるGrade3の発現率は20.4%とさらに高く、同じEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブやエルロチニブと比較しても高頻度です。

投与開始1週間程度をピークに下痢が生じます。

初回発現は2週間以内が82.2%と高く、日本人では特に早期に発現する傾向があります。この下痢の要因は消化管運動の変化、腸内細菌叢の変化、腸管へのCl分泌の亢進など複合的とされており、完全には解明されていません。重要なのは、確立された予防法がないため、下痢の発現に備えて止瀉薬としてロペラミド塩酸塩を常に携帯し、症状が発現したら速やかに服用する体制を整えることです。

重症度がGrade2で48時間以上継続する場合、またはGrade3以上の場合は、Grade1に回復するまでアファチニブを休薬します。回復後は10mg減量して投与を再開しますが、1日1回20mg投与で忍容性が認められない場合は投与中止を考慮する必要があります。下痢は支持療法や休薬、用量の減量で管理可能ですが、一部の患者では投与中止に至ることもあります。

ロペラミド塩酸塩のほか、半夏瀉心湯が有効であったという報告もあります。下痢に伴う合併症を予防するため、患者には乳製品、揚げ物、食物繊維を多く含む物、香辛料など刺激が強いものを避け、消化に良い食事を心がけるよう指導することが重要です。また、スポーツドリンクなどの電解質が含まれた飲料をこまめに補給し、脱水予防を図ります。

肛門周囲のケアも忘れてはなりません。

排便時は温水洗浄便座を使用し、ない場合は新生児向けのお尻拭きなどのウェットティッシュを使用するとよいでしょう。肛門周囲を傷つけないように押さえるように拭き、下痢の回数が多い場合は肛門部を保護する目的で排便後に保湿剤などを塗布する対策も有効です。

リスク因子として、女性、高齢患者(65歳以上)、低体重患者および腎機能が低下した患者では、より注意深く観察・管理する必要があります。さらに「内服開始前の便性状が硬便または軟便である患者」もリスク因子となるという報告があるため、投与開始前に患者の排便状況を詳細に把握しておくことが求められます。

東和薬品の抗がん剤ナビ(アファチニブによる下痢の対処法の詳細な服薬指導ポイント)

アファチニブの皮膚障害と爪囲炎のマネジメント

アファチニブによる皮膚障害は下痢に次いで高頻度に発現する副作用です。全身性発疹・斑状丘疹性及び紅斑性皮疹が55.5%、爪囲炎が56.8%、皮膚乾燥が29.3%、ざ瘡が20.5%に認められます。Grade3以上の重度の皮膚障害は16.6%に達し、治療継続を困難にする要因となります。

爪囲炎の発現率が50%を超える点が特徴です。

皮膚障害の発現時期は、投与開始から2週間程度で顔や頭、胸、腹部を中心に発疹や吹き出物ができやすくなります。全身の皮膚が乾燥し、かゆみを伴うこともあります。爪囲炎は皮疹よりもやや遅れて発現する傾向があり、数週間後から爪周囲の炎症や痛みが生じることがあります。

皮膚障害への対策として、患者には投与開始前から保湿剤の使用を指導します。毎日の入浴後や朝の洗顔後に、顔を含む全身に保湿剤を塗布する習慣をつけることで、皮膚乾燥による症状の悪化を防ぐことができます。また、日焼けは皮膚症状を増悪させる可能性があるため、外出時には日焼け止めの使用や帽子の着用を推奨します。

爪囲炎への対応も重要です。

爪切りは深爪を避け、爪の先端を丸く切らずに真っ直ぐに切るスクエアオフカットを指導します。靴は足を圧迫しないゆったりしたものを選び、素足での歩行は避けるよう伝えます。手指の爪囲炎には、手袋の着用により外部刺激から保護することも有効です。

Grade2以上の皮膚障害が発現した場合、Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後は10mg減量して投与を再開します。必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導することも、適正使用において重要なポイントです。ステロイド外用剤や抗菌薬の併用により症状が改善することもあるため、皮膚科との連携を早期に図ることで、患者のQOL維持と治療継続が可能となります。

ベーリンガープラスのジオトリフ皮膚障害マネジメント(皮膚症状の発現機序と具体的な対処法)

アファチニブの空腹時投与と用量調整の原則

アファチニブは必ず空腹時に投与する必要があります。食後に本剤を投与した場合、最高血中濃度(Cmax)および血中濃度時間曲線下面積(AUC)が低下するとの報告があり、食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後3時間までの間の服用は避けなければなりません。

食事のタイミングが治療効果に直結します。

具体的には、高脂肪食摂取後にアファチニブを投与すると、空腹時と比較してAUCが34%低下することが母集団薬物動態解析で示されています。これは薬剤の吸収が遅延し、最高血中濃度到達時間(Tmax)が顕著に延長するためです。つまり、食事前後に服用すると十分な薬効を発揮できず、治療効果が不十分になる可能性があります。

国際共同第III相臨床試験においても、食事の影響を理由として食事の1時間前から食後3時間までの間の服用を避けることが規定されていました。患者への服薬指導では、この空腹時投与の重要性を繰り返し説明し、具体的な服用タイミング(例えば起床直後や就寝前など)を患者の生活リズムに合わせて設定することが、アドヒアランス向上につながります。

用量調整の原則も明確です。

通常用量は1日1回40mgですが、1日1回40mgで3週間以上投与し、下痢、皮膚障害、口内炎及びその他のGrade2以上の副作用が認められない場合は1日1回50mgに増量してもよいとされています。一方、副作用発現時は休薬し、Grade1以下に回復後10mg減量して投与を再開します。

ここで最も重要なのは、一旦減量した後は増量を行わないという原則です。つまり、40mgから30mgに減量した場合、その後副作用が改善しても40mgに戻すことはできません。さらに減量が必要な場合は20mgまで下げますが、20mgで忍容性が得られなければ投与中止を考慮します。この「減量後の再増量禁止」は、副作用の再発リスクを考慮した安全性確保のための規定であり、厳格に遵守する必要があります。

実地臨床では低用量開始も検討されることがありますが、その場合でも有害事象を評価した上で増量を考慮する必要があります。特に高齢者では低用量開始が選択されることもありますが、基本は1日1回40mg投与、有害事象発現時の即減量であることに留意すべきです。

アファチニブの薬物相互作用と重篤な副作用への対応

アファチニブは排出トランスポーターであるP-糖蛋白(P-gp)およびBCRP(乳癌耐性蛋白)の基質であることが示されています。そのため、P-gp阻害剤との併用により本剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現頻度及び重症度が高まるおそれがあります。

薬物相互作用の確認は必須です。

P-gp阻害剤としてリトナビル、イトラコナゾールベラパミル等との併用には注意が必要です。臨床試験において、本剤20mgの投与1時間前にP-gp阻害剤であるリトナビルを投与したときの本剤のAUC0-∞及びCmaxは48%及び39%上昇したと報告されています。併用により本剤の血中濃度が上昇すると、下痢や皮膚障害などの副作用が増強される可能性が高まるため、処方時には併用薬の確認が不可欠です。

逆に、P-gp誘導剤であるリファンピシンカルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)等との併用では、本剤の血中濃度が低下し、本剤の作用が減弱するおそれがあります。治療効果が不十分になるリスクがあるため、これらの薬剤との併用も避けるべきです。

重篤な副作用として最も注意すべきは間質性肺疾患です。

間質性肺疾患の発現頻度は1.3%と比較的低いものの、間質性肺炎肺浸潤、肺臓炎、急性呼吸窮迫症候群アレルギー性胞隔炎等があらわれることがあり、死亡例も報告されています。初期症状として咳、息切れ、軽い発熱などがみられ、かぜと間違われやすいため注意が必要です。特に高齢者や喫煙歴の長い患者にこのような症状があらわれた場合、ただちに医師に相談するよう指導します。

投与開始前には胸部X線検査等で肺の状態を確認し、投与中は定期的に胸部CT検査などで間質性肺疾患の発現を監視します。特発性肺線維症、間質性肺炎、じん肺症、放射線肺炎、薬剤性肺炎の合併は、間質性肺疾患のリスクを高めるため、これらの既往歴がある患者では特に慎重な観察が求められます。

その他の重大な副作用として、重度の下痢(14.4%)、重度の皮膚障害(16.6%)、肝不全・肝機能障害(2.2%)、心障害(0.9%)、中毒性表皮壊死融解症皮膚粘膜眼症候群(頻度不明)があります。肝機能検査や心電図検査などの定期的なモニタリングにより、これらの副作用を早期に発見し、適切に対応することが適正使用の要となります。

治療期間は1年以上に及ぶことも多く、長期にわたる副作用管理と患者教育が治療成功のカギとなります。

ベーリンガープラスの製品Q&A(休薬・減量基準と薬物相互作用の詳細情報)