イサツキシマブ添付文書の用法用量と投与時注意点

イサツキシマブ添付文書の重要事項

輸血予定患者でもDTT処理だけでは不十分です

📋 この記事で分かる3つのポイント
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イサツキシマブの基本情報と効能効果

2025年2月に効能効果が拡大され、未治療の多発性骨髄腫にも使用可能となった抗CD38モノクローナル抗体の特徴と承認内容

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投与方法と重要な注意事項

段階的な投与速度調整、Infusion reactionへの対応、前投薬の実施方法など、安全な投与管理に必要な具体的手順

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輸血検査への影響と対処法

不規則抗体検査での偽陽性、DTT処理時のKell抗原評価不能など、輸血関連検査で注意すべき干渉と具体的な対応策

イサツキシマブの添付文書に記載された効能効果

 

イサツキシマブ(商品名:サークリサ)は、多発性骨髄腫細胞の表面に発現するCD38抗原に結合する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体です。サノフィ株式会社が製造販売しており、2020年6月に初めて日本で承認を取得しました。当初は「再発又は難治性の多発性骨髄腫」のみが適応でしたが、2025年2月20日に効能効果が「多発性骨髄腫」に変更され、未治療の患者にも使用できるようになりました。

つまり適応が拡大されたということですね。

この変更により、初回治療としてボルテゾミブレナリドミドデキサメタゾンとの4剤併用療法(IsaVRd療法)が新たな選択肢となっています。イサツキシマブは抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)活性、さらにアポトーシスの誘導という複数の作用機序を通じて、骨髄腫細胞を攻撃します。

効能効果の拡大に伴い、医療現場では初回治療から再発・難治例まで幅広い病期の患者に対して使用機会が増えています。添付文書上では「他の抗悪性腫瘍剤との併用」が原則とされており、単剤療法やデキサメタゾンのみとの併用は再発又は難治性の場合に限定されています。

PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医療用医薬品情報検索では、最新の添付文書をPDFおよびHTML形式で確認できます。効能効果や用法用量の詳細は定期的に更新されるため、投与前には必ず最新版を確認することが推奨されます。

PMDAの医療用医薬品情報ページでは、サークリサ点滴静注の最新添付文書とともに患者向医薬品ガイドも入手可能です。

イサツキシマブ添付文書の用法用量詳細

イサツキシマブの用法用量は併用する抗悪性腫瘍剤によって細かく設定されています。基本用量は体重1kg当たり10mg/kgですが、デキサメタゾンのみとの併用または単独投与の場合(再発又は難治性に限る)は20mg/kgとなります。投与間隔は併用薬のサイクルに応じて、A法(1週間間隔→2週間間隔)またはB法(1週間間隔→2週間間隔→4週間間隔)のいずれかを選択します。

具体的な投与スケジュールは複雑です。

未治療の多発性骨髄腫に対してボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンと併用する場合、42日間を1サイクルとして、最初のサイクルでは1、8、15、22、29日目の計5回投与します。2サイクル以降は同じく42日サイクルで1、15、29日目の3回投与となります。投与回数とタイミングが病期や併用薬によって異なるため、レジメンごとの投与カレンダーを用いた管理が重要です。

再発又は難治性の患者に対しては28日を1サイクルとする投与法が一般的です。ポマリドミド、カルフィルゾミブなどと併用する場合、最初のサイクルでは1、8、15、22日目の週1回投与を4回行い、2サイクル以降は1、15日目の2週間間隔投与に移行します。このように投与頻度が段階的に減少する設計になっています。

希釈方法も添付文書で詳しく規定されています。イサツキシマブは生理食塩液または5%ブドウ糖液を用いて希釈し、10mg/kg投与時は総量250mL、20mg/kg投与時は総量500mL(250mLの輸液バッグ2つ)に調製します。希釈液は2~8℃で保管すれば48時間以内、その後室温では点滴時間を含めて8時間以内に使用しなければなりません。

腎機能や肝機能による用量調整は添付文書上では明記されていません。イサツキシマブは抗体医薬品であり、主に網内系で代謝されるため、通常の腎排泄型や肝代謝型の低分子医薬品とは異なる動態を示します。ただし重度の腎障害や肝障害を有する患者での臨床データは限られているため、慎重な観察が必要です。

イサツキシマブ投与時の前投薬と投与速度管理

イサツキシマブ投与時には必ずInfusion reactionを軽減するための前投薬が必要です。添付文書では、投与開始60~15分前までに、解熱鎮痛薬、H1受容体拮抗薬、H2受容体拮抗薬、副腎皮質ホルモン剤を投与することが推奨されています。具体的には、アセトアミノフェンやロキソプロフェン、ジフェンヒドラミンやd-クロルフェニラミン、ファモチジンやラニチジン、そしてデキサメタゾンなどが使用されます。

前投薬は必須の手順です。

投与速度の管理は安全性確保の要です。初回投与時は特に慎重に行い、10mg/kg投与の場合、最初の60分間は25mL/時で開始します。この間にInfusion reactionが認められなければ、以降は30分ごとに25mL/時ずつ段階的に増速し、最大150mL/時まで上げることができます。2回目以降の投与では、前回の投与でInfusion reactionが発現しなかった場合、より速い投与速度から開始できます。

20mg/kg投与(単剤療法またはデキサメタゾンのみとの併用)では、さらに注意深い速度調整が求められます。初回は175mg/時で開始し、患者の忍容性が良好であれば30分ごとに50mg/時ずつ増速して、最大400mg/時まで上げることができます。投与量が2000mgを超える場合は、最大投与速度を400mg/時に制限する必要があります。

Infusion reactionが発現した場合の対応も添付文書に明記されています。Grade2の場合は投与を一時中断し、Grade1以下に回復するまで待ちます。回復後は87.5mg/時(固定輸注量の場合)または元の速度の半分で投与を再開し、30分後にInfusion reactionの再発がなければ段階的に増速できます。Grade3以上の場合は投与を中止し、再投与は行いません。

臨床試験のデータでは、Infusion reactionの発現率は全体の約35.4%とされており、その多くは初回投与時に発生しています。2回目以降の投与では発現率が低下しますが、4回目までは前投薬を継続することが推奨されています。医師の判断により、4回目までにInfusion reactionが認められなかった場合は前投薬の必要性を再評価できます。

投与中は患者のバイタルサインを継続的にモニタリングし、発熱、悪寒、悪心、頭痛、呼吸困難、血圧上昇などの症状出現に注意を払う必要があります。投与終了後24時間以内にもInfusion reactionが発現する可能性があるため、患者への注意喚起が重要です。

イサツキシマブと輸血検査への影響

イサツキシマブ投与患者で輸血が必要となる場合、輸血前検査に重大な影響を及ぼすことを認識しておく必要があります。イサツキシマブはCD38抗原に結合する抗体ですが、赤血球表面にもCD38が微量に発現しているため、不規則抗体スクリーニングや交差適合試験で偽陽性反応を示すことがあります。これは実際には不規則抗体が存在しないにもかかわらず、検査上陽性となる現象です。

この干渉は深刻な問題です。

添付文書では、輸血が予定されている患者に対して、イサツキシマブ投与開始前に型判定と不規則抗体スクリーニングを実施するよう明記しています。投与後に輸血が必要になった場合は、治療開始前の輸血前検査結果を参照することが推奨されます。ABO式およびRh式血液型の判定には影響しませんが、間接クームス試験では陽性反応が出る可能性があります。

偽陽性反応を回避するために、DTT(ジチオスレイトール)処理を行った赤血球試薬を用いる方法があります。DTT処理により赤血球表面のCD38抗原のジスルフィド結合が切断され、イサツキシマブとの結合が阻害されます。これにより、真の不規則抗体の有無を判定できるようになります。

しかしDTT処理には重大な注意点があります。Kell血液型抗原はDTT処理で変性してしまうため、Kell抗原に対する抗体(抗K抗体など)の評価が不能になります。抗K抗体は臨床的に重要な不規則抗体の一つであり、輸血時に溶血反応を引き起こす可能性があります。そのため、DTT処理赤血球を用いた検査を実施する場合は、別途Kell抗原陰性血の選択や、Kell抗原を持つ非DTT処理赤血球での追加検査が必要になることがあります。

輸血部門との密な連携が不可欠となります。イサツキシマブ投与中の患者に対して緊急輸血が必要になった場合、検査技師は薬剤投与歴を確認し、適切な検査法を選択しなければなりません。CD38抗体製剤(イサツキシマブやダラツムマブ)の投与歴がある患者では、標準的な輸血前検査プロトコルが使用できない可能性があるため、事前の情報共有が重要です。

実際の医療現場では、イサツキシマブ投与開始時に「CD38抗体製剤投与中」のカードを患者に渡し、他施設で輸血を受ける際にも情報が伝わるようにしている施設もあります。電子カルテのアラート機能を活用して、輸血オーダー時に自動的に注意喚起するシステムを導入している病院もあります。

KEGGデータベースのサークリサ情報では、添付文書の輸血検査に関する項目を含む詳細な薬剤情報が参照できます。

イサツキシマブ添付文書の併用療法レジメン

イサツキシマブの添付文書には、複数の併用療法レジメンが記載されています。2025年2月の適応拡大により、未治療の多発性骨髄腫に対してはボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(IsaVRd療法)が追加されました。このレジメンは国際共同第Ⅲ相試験IMROZの結果に基づいており、標準治療であるVRd療法と比較して無増悪生存期間の有意な延長が示されています。

4剤併用が新たな標準になりつつあります。

再発又は難治性の患者に対しては、すでに承認されている複数のレジメンから選択できます。ポマリドミド+デキサメタゾン(IsaPd療法)は、国際共同第Ⅲ相試験ICARIAの結果に基づいています。この試験では、Pd療法単独と比較してIsaPd療法で無増悪生存期間が約6ヶ月延長し(11.5ヶ月 vs 6.5ヶ月)、完全奏効率も向上しました。

カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(IsaKd療法)は、国際共同第Ⅲ相試験IKEMAの結果に基づいています。プロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブとの併用により、Kd療法単独と比較して病勢進行または死亡のリスクが約45%減少しました。このレジメンは特にプロテアソーム阻害薬に感受性がある患者に有効です。

ボルテゾミブ+デキサメタゾン(IsaVd療法)も選択肢の一つです。ボルテゾミブは皮下注射で投与できるため、外来治療の利便性が高く、末梢神経障害のリスクが静脈内投与より低いとされています。レナリドミドの使用が困難な患者や、腎機能障害がある患者での代替レジメンとして考慮されます。

単剤療法またはデキサメタゾンのみとの併用(Isa-d療法)は、再発又は難治性で標準的な治療が困難な場合に限定されています。20mg/kgの高用量を使用し、28日サイクルで最初のサイクルは週1回4回投与、2サイクル以降は2週間間隔での投与となります。フレイルな高齢患者や、多剤併用が困難な患者での選択肢です。

各レジメンの投与スケジュールは添付文書に詳細に記載されており、併用薬の用量調整基準も規定されています。副作用発現時の減量・休薬基準は併用薬ごとに異なるため、レジメン表と添付文書を併用した確認が必須です。血液毒性、感染症、神経障害など、併用薬によって注意すべき副作用プロファイルが異なります。

実臨床では、患者の年齢、併存疾患、前治療歴、臓器機能、染色体異常(特に1q gainやdel(17p)など高リスク因子)を総合的に評価してレジメンを選択します。イサツキシマブを含む4剤併用療法は強力ですが、その分副作用管理も複雑になるため、支持療法の充実とチーム医療体制の構築が重要となります。

イサツキシマブ添付文書の副作用と安全性情報

イサツキシマブの添付文書には、重大な副作用として複数の項目が記載されています。最も頻度が高く注意すべきはInfusion reactionで、発現率は約35.4%です。症状としては発熱、悪寒、呼吸困難、咳嗽、気管支痙攣、鼻閉、高血圧、嘔吐、悪心などがあり、アナフィラキシーに至る場合もあります。多くは初回投与時に発現しますが、2回目以降でも起こる可能性があります。

感染症も重要な副作用です。

骨髄抑制による好中球減少、血小板減少、貧血が高頻度で発現します。Grade3以上の好中球減少は約20~30%の患者で認められ、発熱性好中球減少症のリスクもあります。定期的な血液検査によるモニタリングと、必要に応じたG-CSF製剤の予防的使用が推奨されます。血小板減少に対しては輸血支持療法、貧血に対してはエリスロポエチン製剤や輸血が考慮されます。

感染症リスクの増加も重要な懸念事項です。特に肺炎や上気道感染症の発現が報告されています。CD38は免疫細胞にも発現しているため、イサツキシマブの投与により免疫機能が抑制される可能性があります。併用する免疫調節薬(レナリドミド、ポマリドミド)やプロテアソーム阻害薬も免疫抑制作用があるため、複合的なリスクとなります。

消化器症状として下痢、便秘、悪心が比較的高頻度で発現します。下痢はGrade3以上の重症例も報告されており、脱水や電解質異常に注意が必要です。止痢薬や補液による対症療法とともに、感染性腸炎との鑑別も重要となります。便秘に対しては緩下剤の使用や食事指導が有効です。

疲労感、倦怠感、不眠なども患者のQOLに影響を与える副作用として報告されています。これらの症状は数値化しにくく見過ごされがちですが、患者の訴えに耳を傾け、適切な支持療法を提供することが治療継続の鍵となります。睡眠導入剤の使用や、日中の活動量調整などの生活指導が有効な場合があります。

添付文書では妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが原則とされています。動物実験で胎児毒性が認められているためです。授乳中の使用も避けるべきとされており、生殖可能年齢の患者には適切な避妊指導が必要です。

高齢者への使用については、一般的な注意が記載されていますが、年齢による用量調整は規定されていません。ただし75歳以上の高齢者や併存疾患が多い患者では、副作用発現時の回復が遅れる可能性があるため、より慎重なモニタリングが求められます。

イサツキシマブは他の抗悪性腫瘍剤との併用が前提のため、副作用プロファイルは併用薬の影響も受けます。レナリドミドやポマリドミドとの併用では血栓塞栓症のリスクが増加するため、抗凝固療法の併用が推奨されています。カルフィルゾミブとの併用では心血管系有害事象に注意が必要です。併用薬それぞれの添付文書も参照し、総合的な安全性管理を行うことが重要です。

副作用発現時の対応として、添付文書には減量・休薬・中止基準が示されています。Grade3以上の骨髄抑制では回復まで休薬し、Infusion reactionでは重症度に応じた対応が規定されています。これらの基準を遵守することで、安全性を確保しながら治療を継続できる可能性が高まります。


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