悪性リンパ腫治療薬一覧と分類別薬剤選択

悪性リンパ腫治療薬一覧と選択

適応外のステロイド先行投与で腫瘍量評価が困難になる

この記事の3ポイント要約
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病型別の薬剤分類

悪性リンパ腫は80種類以上の病型があり、B細胞性・T細胞性・ホジキンリンパ腫で治療薬が異なります

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主要レジメンと投与方法

R-CHOP療法を中心に、BR療法、ABVD療法など、多剤併用療法が標準治療となっています

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最新の分子標的薬

CAR-T療法やポラツズマブなど、再発・難治例に対する新規治療選択肢が拡大しています

悪性リンパ腫治療薬の基本分類と適応

 

悪性リンパ腫の治療薬は、病型によって使用する薬剤が大きく異なります。非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫では治療戦略そのものが違うため、正確な病理診断が治療選択の出発点となります。病理組織学的に80種類以上のサブタイプに分類され、それぞれに最適な治療薬が決定されています。

悪性リンパ腫の治療薬は大きく3つのカテゴリーに分けられます。一に細胞傷害性抗がん剤、第二に分子標的薬、第三にステロイド製剤です。これらを単剤で使用することはほとんどなく、複数の薬剤を組み合わせる多剤併用療法が標準となっています。治療効果を最大化し、薬剤耐性の出現を防ぐためです。

B細胞性リンパ腫に対しては、抗CD20抗体であるリツキシマブが治療の中心となります。CD20はB細胞の表面に発現する抗原で、B細胞性リンパ腫の大部分がこの抗原を持っています。リツキシマブはこのCD20に結合し、抗体依存性細胞傷害活性やアポトーシス誘導によって腫瘍細胞を破壊します。CHOP療法にリツキシマブを加えたR-CHOP療法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の5年生存率を65~80%以上に改善しました。

つまり病型診断が正確な薬剤選択の前提です。

ホジキンリンパ腫に対してはABVD療法が標準治療となります。ドキソルビシンブレオマイシンビンブラスチンダカルバジンの4剤を組み合わせた治療法で、限局期では4コース実施後に放射線療法を併用することが多くあります。進行期では6~8コースの化学療法が実施され、高い治癒率が報告されています。2014年以降は、CD30標的の抗体薬物複合体であるブレンツキシマブ ベドチンを組み合わせたA-AVD療法も選択肢となっています。

治療薬の選択では、患者の年齢や全身状態、合併症の有無も重要な判断要素となります。高齢者や心機能障害を持つ患者では、ドキソルビシンなどの心毒性を持つ薬剤の減量や代替薬剤の検討が必要です。ベンダムスチンを用いるBR療法は、比較的副作用が少なく高齢者にも使用しやすい選択肢として注目されています。濾胞性リンパ腫に対するBR療法とR-CHOP療法の比較試験では、BR療法の無増悪生存期間が優れていたという報告があります。

国立がん研究センターの悪性リンパ腫治療ガイドでは、病型別の標準治療が詳細に解説されています

悪性リンパ腫の主要レジメンと構成薬剤

R-CHOP療法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する初回治療の標準レジメンです。リツキシマブ(375mg/m²)、シクロフォスファミド(750mg/m²)、ドキソルビシン(50mg/m²)、ビンクリスチン(1.4mg/m²、最大2mg)、プレドニゾロン(100mg、5日間内服)で構成されます。3週間を1コースとして6~8コース実施することが標準です。

投与スケジュールの管理が治療成績に直結します。

R-CHOP療法の各薬剤にはそれぞれ異なる作用機序があります。シクロフォスファミドはアルキル化剤で、DNA鎖に架橋を形成して細胞増殖を阻害します。ドキソルビシンはアントラサイクリン系抗がん剤で、DNA合成を阻害し、心毒性に注意が必要です。ビンクリスチンは微小管阻害薬で、末梢神経障害が用量制限因子となります。プレドニゾロンはステロイドで、リンパ球に対する直接的な細胞傷害作用と食欲増進、制吐作用も期待されています。

BR療法は、リツキシマブとベンダムスチンを組み合わせた治療法です。ベンダムスチンは90mg/m²を1日目と2日目に投与し、リツキシマブ375mg/m²を1日目に投与します。4週間を1コースとして6~8コース実施することが一般的です。R-CHOP療法と比較して、脱毛や末梢神経障害が少ない一方で、皮膚障害や好中球減少に注意が必要となります。濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病に対して優れた効果が報告されています。

ABVD療法はホジキンリンパ腫の標準治療レジメンです。ドキソルビシン(25mg/m²)、ブレオマイシン(10mg/m²)、ビンブラスチン(6mg/m²)、ダカルバジン(375mg/m²)を1日目と15日目に投与し、28日を1コースとします。日本では用量を調整したABVd療法も実施されており、ABVD療法と同等の有効性が示されています。ブレオマイシンによる肺毒性、ドキソルビシンによる心毒性が主要な副作用として監視されます。

レジメン選択では副作用プロファイルも考慮します。R-CHOP療法は汎血球減少と感染症リスクが高く、投与10~14日目に好中球数が最低値となります。G-CSF製剤の予防投与が推奨される場合があります。BR療法では皮膚障害が特徴的で、重症化すると休薬が必要になるため、皮膚科との連携が重要です。治療開始前に各レジメンの副作用プロファイルを患者に説明し、早期発見・早期対応の体制を整えておくことが治療継続のカギとなります。

悪性リンパ腫治療における分子標的薬の役割

リツキシマブは1997年に米国で承認された最初の抗体医薬品であり、悪性リンパ腫治療に革命をもたらしました。CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫に対して高い効果を示し、従来のCHOP療法に追加することで治療成績が劇的に向上しました。作用機序は、抗体依存性細胞傷害活性、補体依存性細胞傷害活性、アポトーシス誘導の3つが主体です。初回投与時にはinfusion reactionと呼ばれる過敏反応が起こる可能性があるため、投与速度の管理と前投薬が重要となります。

これは治療法の転換点でした。

オビヌツズマブは、リツキシマブと同じくCD20を標的とする糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体です。リツキシマブと比較して、抗体依存性細胞貪食活性が強化されている一方で、補体依存性細胞傷害活性は低下しています。濾胞性リンパ腫に対する初回治療では、オビヌツズマブ併用化学療法がリツキシマブ併用化学療法と比較して無増悪生存期間を延長することが示されました。投与時間がリツキシマブよりも長く、初回投与は2日間に分割して実施するため、患者負担を考慮した投与計画が求められます。

ポラツズマブ ベドチンは、CD79bを標的とした抗体薬物複合体です。CD79bはB細胞受容体複合体の構成要素で、B細胞性リンパ腫の大部分で発現しています。ポラツズマブ ベドチンは、抗CD79b抗体に微小管阻害薬であるモノメチルアウリスタチンEを結合させた構造を持ちます。腫瘍細胞に結合後、細胞内に取り込まれて薬物を放出し、細胞死を誘導します。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、BR療法との併用で高い奏効率が報告されています。

分子標的薬の選択では、標的抗原の発現状況が決定要因となります。CD20陽性であればリツキシマブやオビヌツズマブが選択肢となりますが、CD20陰性のT細胞性リンパ腫では使用できません。治療効果を最大化するためには、免疫組織化学検査やフローサイトメトリーで表面抗原を正確に評価することが不可欠です。また、前治療での抗CD20抗体の使用歴や治療抵抗性の有無も、薬剤選択に影響を与えます。

分子標的薬の副作用管理も臨床では重要な課題です。リツキシマブでは初回投与時のinfusion reactionが最も問題となり、発熱、悪寒、低血圧、気管支痙攣などが出現する可能性があります。投与速度を遵守し、抗ヒスタミン薬や解熱鎮痛薬の前投薬を確実に実施することで、多くの症例で管理可能です。ポラツズマブ ベドチンでは末梢神経障害や好中球減少が主要な副作用となり、定期的な神経学的評価と血液検査が必要となります。

中外製薬のガザイバ(オビヌツズマブ)製品説明資料では、リツキシマブとの作用機序の違いが詳細に解説されています

悪性リンパ腫のCAR-T療法と再生医療製品

CAR-T療法は、患者自身のT細胞を遺伝子改変して腫瘍細胞を攻撃する能力を持たせる革新的な治療法です。キメラ抗原受容体(CAR)をT細胞に導入することで、特定の抗原を認識して腫瘍細胞を破壊します。現在、CD19を標的とするCAR-T細胞製剤が、再発・難治性のB細胞性非ホジキンリンパ腫に対して承認されています。キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジの3製品が使用可能で、それぞれ適応疾患に若干の違いがあります。

完全寛解を得られる可能性があります。

キムリアは、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫、B細胞性急性リンパ芽球性白血病に適応を持ちます。患者から採取したT細胞を加工施設に送り、約4週間かけてCAR-T細胞を製造します。この間、患者の病勢が進行しないように、つなぎの化学療法が実施される場合があります。製造されたCAR-T細胞は、1回の投与で完了しますが、投与前にはリンパ球除去化学療法として、シクロフォスファミドとフルダラビンの併用療法が必須です。

イエスカルタとブレヤンジは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫に適応を持ちます。イエスカルタのみ原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫への適応があるのが特徴です。製造期間や投与方法はキムリアと類似していますが、CAR構造やT細胞の選択方法に違いがあります。臨床試験では、複数の化学療法に抵抗性を示した患者に対しても40~50%以上の完全寛解率が報告されており、従来の治療では救済困難であった患者に治癒の可能性をもたらしています。

CAR-T療法の適応判断では、複数の条件を満たす必要があります。自家造血幹細胞移植の適応とならない、または移植後に再発した患者が対象です。過去に2種類以上の化学療法を受けており、かつ病勢が進行している状態が条件となります。年齢や全身状態も考慮され、高齢者や臓器機能低下がある患者では慎重な適応判断が求められます。治療可能な施設が限定されているため、専門施設への紹介が必要です。

CAR-T療法の副作用管理は極めて重要です。サイトカイン放出症候群は最も頻度の高い重篤な副作用で、発熱、低血圧、呼吸困難などが出現します。重症例では集中治療が必要となるため、投与後は入院管理が必須です。トシリズマブというIL-6受容体抗体がサイトカイン放出症候群の治療薬として使用されます。また、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群も重篤な副作用で、意識障害、痙攣、失語などの神経症状が出現します。投与後4週間程度は特に注意深い観察が必要となります。

費用面での課題も見逃せません。CAR-T療法の薬価は3000万円を超え、医療経済的な負担が大きいのが現状です。高額療養費制度の適用により患者の自己負担は軽減されますが、医療保険財政への影響が懸念されています。一方で、従来の治療では救命困難であった患者が長期生存を得られる可能性があり、費用対効果の評価は単純ではありません。

悪性リンパ腫治療の病期別戦略と薬剤選択

悪性リンパ腫の治療方針は、病期分類によって大きく異なります。限局期(I期・II期)では、化学療法のコース数を減らし、放射線療法を併用する戦略が取られることが多くあります。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の限局期では、R-CHOP療法3~4コースに続いて病変部位への放射線照射を実施することで、高い治癒率が達成されています。治療期間の短縮により副作用の累積を減らし、患者のQOLを維持することが可能となります。

進行期では長期的な視点が必要です。

進行期(III期・IV期)では、R-CHOP療法6~8コースの完遂が標準治療となります。中間評価としてPET-CTが実施され、治療効果を判定します。中間評価で完全寛解が得られている場合でも、微小残存病変の可能性を考慮して予定されたコース数を完遂することが推奨されます。治療中断は再発リスクを高めるため、副作用管理を徹底しながら治療を継続することが重要です。

低悪性度リンパ腫では、治療開始時期の判断も重要な要素となります。濾胞性リンパ腫の一部では、無症状で腫瘍量が少ない場合、すぐに治療を開始せずに経過観察を選択することがあります。これをwatch and wait戦略と呼び、不必要な治療による副作用を避ける目的があります。しかし、腫瘍量が多い、症状がある、急速に進行している場合には、R-CHOP療法やBR療法による治療介入が必要です。

再発・難治例に対する治療選択では、前治療の内容が大きく影響します。初回治療で良好な効果が得られ、長期間寛解を維持していた場合は、同じレジメンの再投与が有効なことがあります。一方で、初回治療に抵抗性を示した場合や早期再発の場合は、作用機序の異なる薬剤への変更が必要です。ポラツズマブ ベドチンとBR療法の併用、CAR-T療法、自家造血幹細胞移植などが選択肢となります。

年齢と合併症に応じた治療調整も欠かせません。80歳以上の高齢者や、心機能障害、腎機能障害を持つ患者では、標準用量での治療が困難な場合があります。R-miniCHOP療法のような減量レジメンが選択され、ドキソルビシンの減量や、心毒性のないベンダムスチンへの変更が検討されます。治療強度を下げても、完遂することで一定の効果が期待できるため、個別化された治療計画が重要となります。

日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラインでは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病期別治療戦略が詳細に記載されています

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