インジナビル販売中止の経緯と代替薬
インジナビルは添付文書改訂で削除対象になっています。
インジナビルの販売中止時期と経過措置
インジナビル(商品名:クリキシバン)は、HIVプロテアーゼ阻害剤として長年使用されてきましたが、2018年3月末に経過措置期間が満了し、国内での販売が完全に中止されました。これはネルフィナビル(2020年3月末)、サキナビル(2018年3月末)、テラプレビル(2018年3月末)と同様の措置です。acc.jihs+1
販売中止後は、海外で販売が継続されているものの、国内では新規処方ができなくなっています。経過措置期間中に既存患者への対応が求められ、医療機関では代替薬への切り替え計画が必須でした。
参考)https://medical.nihon-generic.co.jp/a.php?id=45
つまり現在は処方不可です。
多くの医薬品添付文書において、併用禁忌の項目からインジナビルが削除される改訂が進められています。これにより、薬物相互作用の確認作業においても、インジナビルを除外した新しい基準での運用が必要です。nc-medical+1
インジナビル販売中止の理由と背景
販売中止の主な理由は、より安全で効果的な新世代抗HIV薬の登場です。1996年にインジナビルと核酸系逆転写酵素阻害薬2剤との3剤併用療法(HAART)が始まり、CD4数の増加とHIV-RNA量の減少が強力かつ持続的に得られることが判明しましたが、その後の薬剤開発により治療選択肢が大幅に拡大しました。
参考)HIV感染症「治療の手引き」を読み直す │ KANSEN J…
新世代薬剤の特徴は以下の通りです。
これは大きな進歩です。
現在の初回治療では、NRTI 2剤+INSTI 1剤、またはNRTI 1剤(3TC)+INSTI 1剤(DTG)の2剤療法が推奨されています。これらのレジメンは、旧世代のプロテアーゼ阻害剤と比較して、48週目の血中HIV RNA量が50コピー/mL未満となる患者の割合が高いことが証明されています。
参考)抗HIV薬選択の基本
インジナビルの代替薬と現在の推奨治療
インジナビルの代替として、現在推奨されるキードラッグは主に3つのカテゴリーに分類されます。インテグラーゼ阻害剤(INSTI)では、ドルテグラビル(DTG)、ビクテグラビル(BIC)、ラルテグラビル(RAL)が選択肢となります。
参考)抗HIV治療ガイドライン2024年版【初回治療に用いる抗HI…
プロテアーゼ阻害剤(PI)では、ダルナビル(DRV)がリトナビル(rtv)またはコビシスタット(cobi)との併用で推奨されています。DRVは既存のPIが効かない多剤耐性ウイルスに対しても高い抗ウイルス効果を示す薬剤です。hiv-resistance+1
代替薬選択の基本は以下です。
- NRTI 2剤+INSTI 1剤の組み合わせが第一選択
- DTG+3TCの2剤療法も初回治療として支持される
- DRV+rtv/cobiは1日1回投与が可能
抗HIV治療ガイドライン – 最新の推奨レジメンと薬剤選択基準
クラス内の切り替えだけでなく、別クラスへの切り替えも可能です。PIからINSTI(DTG、BIC、EVG)への切り替え、PIからRPVまたはDORへの切り替えなど、患者の治療歴や耐性検査結果に基づいた柔軟な対応が求められます。
参考)https://www.hiv-practiceupdates.jp/education/edu001/edu03.html
インジナビルから代替薬への切り替え手順
切り替えは慎重に行います。
ウイルス学的抑制が得られている患者に対するレジメン切り替えでは、多くの研究でART開始後6ヵ月以上ウイルス学的に抑制されている患者を対象としています。切り替えの目的は、忍容性の改善、短期または長期毒性の軽減、薬物相互作用の最小化などです。
治療歴が長い患者では、切り替え前に以下の項目を徹底的に調査する必要があります。
- 患者の詳細な治療歴の確認
- 過去の耐性検査結果のレビュー
- 現在の治療忍容性の評価
- 併用薬との薬物相互作用のチェック
結論は慎重な評価です。
新しいレジメンへの計画前には、HIV感染者の治療歴、耐性検査の結果、治療忍容性、薬物相互作用について徹底的な調査が必須となります。単純に1つの薬剤を変更できる場合もあれば、複雑な調整が必要な場合もあるため、個別の患者状況に応じた判断が求められます。
販売中止後の添付文書改訂と医療機関での対応
インジナビル販売中止に伴い、多数の医薬品で添付文書の改訂が実施されています。特に「禁忌」および「相互作用_併用禁忌」の項目からインジナビルの記載が削除され、医療現場での薬物相互作用確認プロセスが変更されました。viatris-e-channel+2
改訂対応は全科で必要です。
CYP3A阻害作用に基づく薬物相互作用の記載において、インジナビル、サキナビル、テラプレビルなどの販売中止薬剤が順次削除されています。これにより、循環器系薬剤、消化器系薬剤など、幅広い領域の添付文書で改訂が進められており、医療従事者は最新の添付文書内容を常に確認する必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/25/1/25_38/_pdf
医療機関での実務対応として以下が重要です。
- 電子カルテシステムの医薬品マスタ更新
- 薬物相互作用チェックシステムの設定変更
- 医療スタッフへの情報共有と教育
海外で販売が継続されている状況でも、国内では未発売扱いとなるため、個人輸入などの特殊なケースを除き、処方は不可能です。既存患者については、販売中止前に計画的な代替薬への切り替えが完了しているはずですが、万が一の問い合わせに備えて、適切な代替薬の情報を整理しておくことが推奨されます。
HIV治療の最新動向と今後の展望
抗HIV治療は劇的に進化しています。現在では強力かつ副作用が少ない薬剤が利用可能となり、CD4数に関わらず無症候期の早い時期から治療開始することが世界的に推奨されています。jsv.umin+1
新しい配合剤の登場により、錠剤数の負担が大幅に軽減されました。TDF/FTC(ツルバダ®)、ABC/3TC(エプジコム®)などの合剤は、服薬アドヒアランスの向上に貢献しています。さらに、テノフォビルアラフェナミド(TAF)はTDFのプロドラッグとして開発され、投与量を減らすことで腎臓や骨への副作用が少ないという利点があります。hiv-resistance+1
第2世代薬剤は耐性対策に優れています。第2世代非核酸系逆転写酵素阻害剤は、K103N変異を有するHIV-1に対しても十分な抗ウイルス作用を示し、既存薬で効果が得られなかった症例でも治療選択肢が拡大しています。
今後の治療戦略では、2剤療法の普及が注目されています。DTG+3TCの組み合わせは、従来の3剤併用と同等の効果を示しながら、薬剤数を減らすことで副作用リスクと経済的負担を軽減できる可能性があります。ウイルス学的抑制が得られている患者に対する簡素化されたレジメンへの切り替えは、長期的な治療継続において重要な戦略となるでしょう。