ルストロンボパグとエルトロンボパグの違い

ルストロンボパグとエルトロンボパグの違い

ムルプレタとレボレードは用法で混同される

この記事の3ポイント要約
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適応疾患の違い

ルストロンボパグは慢性肝疾患の短期投与、エルトロンボパグはITP・再生不良性貧血の長期管理に使用

投与期間と服薬タイミング

ルストロンボパグは7日間で食事影響なし、エルトロンボパグは空腹時投与が必須で長期継続

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肝機能と禁忌の違い

ルストロンボパグはChild-Pugh分類Cで禁忌、エルトロンボパグは定期的な肝機能検査が必要

ルストロンボパグとエルトロンボパグの適応疾患

 

ルストロンボパグ(商品名:ムルプレタ)とエルトロンボパグ(商品名:レボレード)は、いずれもトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬に分類される低分子化合物です。どちらもヒトTPO受容体に選択的に作用し、TPOの一部のシグナル伝達経路を活性化することで巨核球の増殖と分化を促進し、血小板数を増加させます。

しかし適応疾患は明確に異なります。

つまり使い分けが必須です。

ルストロンボパグの適応は「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」のみです。肝硬変や慢性肝炎などで血小板数が低下している患者が、肝生検や肝癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術などの侵襲的処置を受ける前に、一時的に血小板数を増やす目的で使用されます。投与開始前の血小板数が50,000/μL未満の患者が対象となり、手術予定日の8~13日前から投与を開始するという短期集中型の治療薬です。

一方、エルトロンボパグは複数の適応を持つ長期管理薬です。主な適応は「慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」と「再生不良性貧血」であり、C型慢性肝炎患者のインターフェロン療法導入前の血小板減少症改善にも使用されてきました。ITPでは他の治療で十分な効果が得られない場合に、血小板数を維持するために継続的に投与します。再生不良性貧血では免疫抑制療法が無効または不応の患者に対して使用され、汎血球減少の改善を目指します。

このように、ルストロンボパグは慢性肝疾患に特化した短期使用薬、エルトロンボパグは血液疾患に対する長期管理薬という位置づけが基本です。

適応疾患を混同すると、患者さんが本来受けられる治療機会を失うリスクがあります。薬剤選択時には必ず適応を確認することが求められます。

ルストロンボパグとエルトロンボパグの投与期間と用法

投与期間と服薬タイミングの違いは、両薬剤の最も重要な相違点の一つです。

ルストロンボパグは1回3mgを1日1回、7日間経口投与します。投与期間が7日間と限定されているのが特徴です。手術予定日の8~13日前から投与を開始し、投与開始から5日後を目安に血小板数を測定します。血小板数が目標値に達したことを確認してから観血的手技を実施します。食事の影響を受けにくいため、服用タイミングに関する制限はありません。

これに対してエルトロンボパグは、初回投与量12.5mgを1日1回から開始し、血小板数や症状に応じて12.5mgずつ増減します。1日最大投与量は50mgです(ITPの場合)。重要なのは「食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する」という服薬指導です。

なぜでしょうか?

エルトロンボパグは食事と一緒に服用すると、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム、セレン、亜鉛などの多価陽イオンとキレートを形成し、吸収が著しく低下します。健康成人に乳製品を含む高カロリー・高脂肪食(カルシウム427mg含有)とともに投与した試験では、AUCが59%、Cmaxが70%も減少しました。そのため制酸剤、乳製品、多価陽イオンを含むサプリメントなどとの併用は避け、服用前4時間および後2時間はこれらの摂取を避ける必要があります。

投与期間についても大きな違いがあります。ルストロンボパグは7日間で投与完了ですが、エルトロンボパグは血小板数を目標範囲に維持するために数カ月から数年にわたって継続投与することが一般的です。用量調整は少なくとも2週間は同一用量を維持してから行い、血小板数が50,000/μL以上を安定して維持できるように調整します。

服薬アドヒアランスの観点からも、ルストロンボパグは短期間で食事制限がないため比較的遵守しやすい一方、エルトロンボパグは空腹時投与という制約があり、生活リズムに合わせた服薬指導が必要です。

ムルプレタの詳細な用法・用量情報(KEGG MEDICUS)
レボレードの服薬指導に関する詳細情報(KEGG MEDICUS)

ルストロンボパグとエルトロンボパグの肝機能障害と禁忌

肝機能に関する注意事項は、両薬剤で対照的な違いがあります。

ルストロンボパグは重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者には禁忌です。血中濃度が上昇し、副作用のリスクが高まるためです。Child-Pugh分類AまたはBの患者には投与可能ですが、投与中は血小板数だけでなく肝機能の変化にも注意を払う必要があります。

ここが意外なポイントです。

エルトロンボパグは重度肝機能障害でも「禁忌」ではなく「慎重投与」の位置づけです(ただし東アジア人など一部の患者では初回量を減量する必要があります)。しかし投与中の肝機能モニタリングが極めて重要で、ALT、AST、ビリルビンを投与開始前、投与開始後は少なくとも2週間ごとに測定し、その後も定期的に測定することが求められます。

エルトロンボパグによる肝障害は用量依存的に発現頻度が高まり、臨床試験では肝機能検査値異常が約10~15%の患者で報告されています。肝毒性が重症化すると生命を脅かす可能性があるため、ALTが正常上限の3倍以上に上昇し、かつ総ビリルビンが正常上限の2倍以上に上昇した場合は、直ちに投与を中止しなければなりません。

再生不良性貧血の患者では、エルトロンボパグと免疫抑制剤シクロスポリンなど)を併用することが多いため、薬物相互作用による肝機能への影響にも注意が必要です。シクロスポリンと併用するとエルトロンボパグの血中濃度が変動する報告があります。

慢性肝疾患患者にルストロンボパグを投与する際は、Child-Pugh分類を必ず確認し、分類Cの患者には投与してはいけません。一方、エルトロンボパグを投与する際は、肝機能の定期的なモニタリング体制を整え、異常値が出た場合の対応プロトコルを明確にしておくことが不可欠です。

ルストロンボパグとエルトロンボパグの薬価と医療経済

薬価の違いは、治療の継続可能性と医療経済に直結します。

ルストロンボパグ(ムルプレタ錠3mg)の薬価は1錠12,302.2円です。1日1回7日間投与なので、1クール(7日間)の薬剤費は$$7 \times 12,302.2 = 86,115.4\text{円}$$となります。手術前の一時的な血小板増加を目的とした短期投与のため、トータルコストは10万円弱で済みます。

対照的にエルトロンボパグ(レボレード錠)は用量によって薬価が異なります。レボレード錠12.5mgは1錠2,377.3円、レボレード錠25mgは1錠4,683.2円です。維持量が12.5mg/日の場合、1カ月(30日)の薬剤費は$$30 \times 2,377.3 = 71,319\text{円}$$です。25mg/日であれば$$30 \times 4,683.2 = 140,496\text{円}$$となります。

年間で計算するとどうでしょうか。

12.5mg/日の場合は年間約856,000円、25mg/日では年間約1,685,000円にもなります。ITPや再生不良性貧血では数年にわたる投与が必要なケースも多く、累積の医療費は相当な額になります。高額療養費制度が適用されるものの、患者の自己負担も決して軽くありません。

医療機関の立場からは、DPC対象病院では出来高算定される薬剤もあるため、薬剤選択が病院経営に与える影響も考慮する必要があります。ルストロンボパグは周術期の限定使用なので予算管理がしやすい一方、エルトロンボパグは外来での長期処方となるため、患者の経済状況や保険適用状況を確認しながら治療継続の可否を判断することが求められます。

ジェネリック医薬品の有無も重要です。現時点ではいずれも後発品は発売されていないため、先発品の薬価がそのまま治療費に反映されます。

ルストロンボパグとエルトロンボパグの副作用と安全性

副作用プロファイルには共通点と相違点があります。

TPO受容体作動薬に共通する重大な副作用として「血栓症・血栓塞栓症」があります。

これらは原理的に避けられないリスクです。

ルストロンボパグでは門脈血栓症が0.5%に報告されています。慢性肝疾患患者はもともと門脈血流が低下しており、血栓形成リスクが高い集団です。特に門脈血流が遠肝性(肝臓から離れる方向)の患者では血栓症リスクがさらに高まるため、臨床試験では除外されていました。このような患者には慎重な投与判断が必要です。

エルトロンボパグでも血栓症・血栓塞栓症は重大な副作用として位置づけられています。ITP患者では静脈血栓症や動脈血栓症のリスクがあり、高齢者や血栓症の既往がある患者では特に注意が必要です。再生不良性貧血患者を対象とした臨床試験では、約2~4%に血栓症が報告されています。

その他の副作用にも違いがあります。

ルストロンボパグの主な副作用は悪心(4.2%)、疼痛、発熱、頭痛(各2.1%)などで、比較的軽微なものが中心です。投与期間が7日間と短いため、重篤な副作用の発現頻度は低い傾向にあります。

エルトロンボパグでは頭痛、疲労、悪心、下痢などの消化器症状が比較的高頻度に出現します。長期投与に伴う懸念として、肝機能障害のほかに「骨髄レチクリン線維の増生」があります。これは骨髄の線維化を意味し、血球産生に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため定期的な骨髄検査が推奨される場合もあります。

また再生不良性貧血患者では、エルトロンボパグ投与により染色体異常が検出される頻度が上昇することが報告されています。特にトリソミー8などの細胞遺伝学的異常に注意が必要で、定期的な染色体検査も考慮されます。

血小板数が過度に上昇するリスクもあります。ルストロンボパグでは投与期間が短いため極端な上昇は起こりにくいですが、エルトロンボパグでは用量調整が不適切だと血小板数が1,000,000/μLを超えることもあり、血栓症リスクが急激に高まります。血小板数が400,000/μLを超えた場合は減量、600,000/μLを超えた場合は休薬を検討します。

副作用マネジメントの観点から、ルストロンボパグは短期使用のため比較的安全性が高いですが、エルトロンボパグは長期投与による累積リスクがあるため、計画的なモニタリングと定期的な評価が不可欠です。

ムルプレタの副作用詳細(JAPIC添付文書情報)
レボレードの安全性情報(PMDA審査報告書)

【パグ】モザイヌ