結合型エストロゲンとエストラジオールの違い
結合型エストロゲンは乳がんリスクが約1.7倍になります
結合型エストロゲンの化学構造と由来
結合型エストロゲン(CEE:Conjugated Equine Estrogen)は、妊娠中の雌馬の尿から抽出・精製された天然水溶性エストロゲン複合体です。代表的な製剤はプレマリン®で、1942年の発売以来長く使用されてきました。CEEには10種類以上のエストロゲン様物質が含まれており、主な成分はエストロン硫酸ナトリウムとエクイリン硫酸ナトリウムです。
重要な点は、ヒトの体に本来存在しない物質も含まれていることです。エクイリンはウマ特有のエストロゲンで、B環に二重結合を持つ独特の構造をしています。標的細胞にあるサルファターゼによって加水分解され、活性型のエストロン(E1)となって効果を発揮します。
製剤名の「プレマリン」は原料のpregnant mare’s urine(妊馬尿)に由来します。この由来を知ることで、動物性原料への配慮が必要な患者への説明も適切に行えますね。
日本では古くから使用されてきた製剤ですが、近年では後述する生体同一性ホルモンとの比較において安全性の観点から議論されることが増えています。通常量は0.625mg錠で、ホルモン補充療法(HRT)において更年期症状の改善に用いられてきました。
エストラジオール製剤の生体同一性
17β-エストラジオール(E2)は、ヒトの卵巣で作られるエストロゲンと全く同じ化学構造を持つ天然型エストロゲンです。「生体同一性ホルモン(バイオアイデンティカルホルモン)」とも呼ばれ、体内の自然なホルモンと区別がつきません。
構造が完全に一致していることが最大の特徴です。エストロゲンにはエストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3種類がありますが、E2はその中で最も生理作用が強く、エストロゲンの作用を代表しています。経口製剤の代表はジュリナ®錠で、2012年から日本でも使用できるようになりました。
経皮製剤としてパッチ(エストラーナ®テープなど)やゲル(ル・エストロジェル®、ディビゲル®)も利用可能です。これらは皮膚から直接吸収されるため、後述する肝初回通過効果を避けられる点で大きなメリットがあります。
欧米では天然型エストロゲンが主流となっています。日本でも2021年から天然型プロゲステロン製剤(ウトロゲスタン®)が処方できるようになり、より安全性の高い組み合わせでのHRTが可能になりました。血液検査でエストラジオール濃度を測定することで、投与量の適切性を客観的に評価できる点も臨床上有用です。
結合型エストロゲンの乳がん・血栓リスク
結合型エストロゲンは、17β-エストラジオールと比較して乳がんや静脈血栓症(VTE)のリスクを高める可能性が指摘されています。これは臨床現場で製剤選択を行う上で極めて重要な情報です。
2002年に報告されたWHI(Women’s Health Initiative)研究では、結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期併用した閉経後女性において、乳がんの発症リスクが対照群と比較して有意に上昇しました。
ハザード比は1.26とされています。
さらに胆嚢疾患のリスクもハザード比1.67と報告されており、長期使用には慎重な判断が求められます。
静脈血栓症に関しては、経口結合型エストロゲンの使用でVTEリスクがオッズ比1.5程度上昇することが知られています。一方で興味深いことに、骨に対しては良好な作用を示すことも報告されており、低用量(0.31mg)でも骨密度増加効果が認められています。このようにリスクとベネフィットが混在するのが特徴です。
血栓症のリスク因子を持つ患者では特に注意が必要です。喫煙者、肥満女性、50歳以上で開始する場合、血栓症の既往がある場合などは、後述する経皮エストラジオール製剤の選択を優先的に検討すべきでしょう。
血液検査でのモニタリングにも制約があります。結合型エストロゲンは複数の物質の混合体であるため、通常のエストラジオール測定では正確な効果判定が困難です。
エストラジオール製剤の投与経路による違い
エストラジオール製剤の大きな利点は、投与経路を選択できることです。経口製剤と経皮製剤では体内での代謝経路が根本的に異なり、それが安全性プロファイルの違いに直結します。
経口製剤は消化管から吸収後、門脈を経て肝臓で初回通過効果を受けます。肝臓内でのエストロゲン濃度が急激に上昇するため、肝臓でのトリグリセリド(TG)合成や凝固因子の産生が亢進します。これが血栓症リスク上昇の主要なメカニズムです。
経皮製剤は皮膚から直接血中に吸収されます。肝初回通過効果がないため、肝臓への負担が最小限です。メタ分析により、経皮エストラジオールではVTEリスクの上昇がないことが確認されています。経口薬がVTEリスクを2~3倍上昇させるのに対し、経皮製剤ではオッズ比0.85とむしろ低い傾向さえ見られます。
さらに詳細な研究では、経口薬の中でもエストラジオール単剤は結合型エストロゲンよりもVTEリスクが低いことが示されています(補正後OR:0.85、95%CI:0.76~0.95、p=0.005)。つまり、経口製剤を選択する場合でも、結合型エストロゲンよりエストラジオールの方が安全性が高いということですね。
経皮製剤の使用法にも種類があります。パッチは週2回貼付するタイプが多く、ゲルは毎日腕や太ももに塗布します。患者のライフスタイルや皮膚の状態に応じて選択できるのが利点です。
結合型エストロゲンとエストラジオールの使い分け基準
臨床現場での製剤選択には、患者の個別リスクと治療目標を総合的に評価する必要があります。画一的な処方ではなく、エビデンスに基づいた個別化医療の実践が求められます。
血栓症リスク因子を持つ患者では、経皮エストラジオールが第一選択です。具体的には喫煙者、BMI30以上の肥満、静脈血栓症の既往、血栓性素因、50歳以上での治療開始などが該当します。経皮投与では静脈血栓塞栓症のリスク上昇がほぼないため、これらの患者にも比較的安全に使用できます。
骨粗鬆症予防を主目的とする場合の選択は複雑です。結合型エストロゲンは骨に対する効果が強いという報告がある一方、長期使用での乳がんリスクを考慮する必要があります。最近の研究では、17β-エストラジオールの経皮製剤でも十分な骨密度維持効果が得られることが示されています。
治療効果のモニタリングを重視する場合は、エストラジオール製剤が有利です。血中エストラジオール濃度を測定することで、投与量が適切か客観的に判断できます。目標値は一般に50~100pg/mL程度とされ、この範囲で更年期症状の改善と副作用リスクのバランスが最適化されます。
結合型エストロゲンを選択するのは、過去に長期使用して良好な効果が得られており、特に有害事象がない患者に限定される傾向があります。製剤変更による症状の変動を避けたい場合や、経済的な理由でジェネリック医薬品を優先する場合などが該当します。
初回処方では、多くの専門家が経皮エストラジオール製剤を推奨しています。特に閉経後早期(閉経後10年以内)に開始し、血管系への保護効果を得るという「ウィンドウ仮説」の観点からも、より安全性の高い製剤での開始が望ましいですね。
結合型エストロゲンの臨床データと処方実態
結合型エストロゲンには長年の使用実績があり、豊富な臨床データが蓄積されています。しかし、そのデータの解釈には注意が必要です。
2002年のWHI研究は、HRTの安全性に関する認識を大きく変えました。結合型エストロゲン0.625mgと酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgの併用群では、冠動脈性心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症、乳癌の発生リスクが対照群より高いことが示されました。この研究結果は世界中に衝撃を与え、HRT処方が一時的に激減した経緯があります。
並行して行われた子宮摘出者に対する試験では、結合型エストロゲン単独投与群において乳癌リスクは対照群と有意差がありませんでした(ハザード比:0.80)。これは黄体ホルモン併用の影響が大きいことを示唆しています。
日本での処方実態を見ると、従来はプレマリン®が広く使用されてきました。しかし2012年にジュリナ®錠(経口エストラジオール)、経皮製剤も相次いで発売され、選択肢が増えています。現在では新規処方では経皮エストラジオール製剤の使用が増加傾向にあり、特に大学病院や専門クリニックではこの傾向が顕著です。
低用量での有効性も検証されています。結合型エストロゲン0.31mgでもほてりに対して有効で、骨密度増加効果も認められます。日本で認可されている最小含有量は0.625mgですが、錠剤を分割して使用する医療機関も存在します。
処方を継続する際の判断基準として、年1回の乳房検診、子宮内膜厚の経腟超音波検査、血液検査(肝機能、脂質、血糖)が推奨されます。長期投与では5年ごとにリスク・ベネフィットの再評価を行い、継続の妥当性を患者と共に検討することが重要です。
日本医事新報社のホルモン補充療法における使用薬剤の特徴
ホルモン補充療法のVTEリスクに関する製剤間の違いについての研究

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