β3作動薬過活動膀胱における作用機序効果選択使い分け

β3作動薬過活動膀胱における作用機序と治療選択

ミラベグロンの12カ月継続率は約40%しかない

この記事の3ポイント要約
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β3作動薬の作用機序と特徴

膀胱平滑筋のβ3受容体に選択的に作用し、蓄尿機能を亢進させる新規作用機序の治療薬。抗コリン薬に比べて口渇・便秘などの副作用が少ない

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ミラベグロンとビベグロンの使い分け

ビベグロンは禁忌・併用注意薬が少なく、定期検査不要。ミラベグロンはCYP3A4/2D6関連の薬物相互作用に注意が必要

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心血管系リスクと投与時の注意点

血圧上昇・心拍数増加のリスクがあり、心血管疾患既往患者では慎重投与。残尿量100mL超の症例では尿閉リスクを考慮

β3作動薬過活動膀胱における基本的作用機序

β3作動薬は、膀胱平滑筋に存在するβ3アドレナリン受容体に選択的に作用し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進させる過活動膀胱治療薬です。従来の抗コリン薬が膀胱の収縮を抑制する機序であったのに対し、β3作動薬は膀胱の弛緩を促進するという異なるアプローチで治療効果を発揮します。

つまり作用機序が異なるということですね。

抗コリン薬では膀胱収縮に関与するムスカリン受容体を遮断することで、膀胱の不随意収縮を抑制します。一方、β3作動薬は交感神経系のノルアドレナリンが働きかけるβ3受容体を刺激し、蓄尿期における膀胱の弛緩作用を増強することで膀胱容量を増大させます。この作用機序の違いにより、抗コリン薬で問題となりやすい口渇、便秘、認知機能への影響といった副作用の発現が少ないという特徴があります。

臨床試験では、β3作動薬による治療により尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁のいずれの症状に対しても有意な改善効果が確認されています。過活動膀胱診療ガイドラインにおいても、β3作動薬は抗コリン薬と同様に推奨度Aとして位置づけられており、一選択薬としての有効性が認められています。

特に高齢者や多剤併用患者では、抗コリン作用による副作用リスクを回避できるβ3作動薬の優先使用が推奨されています。認知機能低下のリスクがある患者や、緑内障前立腺肥大症などで抗コリン薬の使用が制限される症例においても、β3作動薬は有用な治療選択肢となります。

β3作動薬ミラベグロンとビベグロンの違いと選択基準

現在、国内で承認されているβ3作動薬には、ミラベグロン(ベタニス®)とビベグロン(ベオーバ®)の2剤があります。両剤とも同じβ3受容体作動薬というクラスに属しますが、薬物動態、薬物相互作用、安全性プロファイルにおいて重要な違いがあります。

どういう違いがあるのでしょうか?

ミラベグロンは日本で創製された世界初のβ3作動薬として2011年に承認されました。用法用量は1日1回50mg食後投与が基本で、重度の肝障害や重度の腎障害患者では25mgへの減量が必要です。ミラベグロンの代謝には薬物代謝酵素CYP3A4が関与しており、さらにCYP2D6を阻害する作用もあるため、多剤併用時には薬物相互作用に注意が必要となります。

一方、ビベグロンは2018年に承認された新しいβ3作動薬で、同じく1日1回50mg食後投与で使用されます。ビベグロンの最大の特徴は、ミラベグロンと比較して警告や禁忌が少なく、併用禁忌・注意薬も少ないという点です。定期的な検査も不要であり、薬物相互作用のリスクが低いため、多剤併用が多い高齢者においても使いやすい薬剤といえます。

β3受容体への選択性もビベグロンの方が高いとされています。

実臨床でのデータを見ると、ミラベグロンとビベグロンの個別の継続率に有意差はないものの、ミラベグロン使用者の方が治療中止率が高く、その多くが代替β3作動薬(つまりビベグロンへのスイッチング)に変更されているという報告があります。これは効果不十分や副作用によるものと考えられ、症例によっては薬剤変更が治療継続のカギとなることを示唆しています。

使い分けの基準としては、心血管疾患の既往がある患者、多剤併用中の患者、CYP関連の薬物相互作用が懸念される患者ではビベグロンを優先的に選択することが推奨されます。一方、ミラベグロンには長期使用実績があり、50週以上の長期投与データも豊富であるため、安定した長期管理が見込める症例では継続使用も十分に妥当な選択です。

β3作動薬過活動膀胱治療における副作用と心血管系リスク

β3作動薬の副作用プロファイルは抗コリン薬と大きく異なります。抗コリン薬で高頻度に認められる口渇や便秘といった症状の発現頻度は低く、患者のQOL維持という観点からも優れた特性を持ちます。しかし、β3作動薬特有の副作用として心血管系への影響があり、臨床使用においては十分な注意が必要です。

動悸や血圧上昇に注意が必要です。

ミラベグロンの臨床試験では、血圧上昇や心拍数増加が報告されており、心血管系疾患を有する患者への投与時には慎重な観察が求められます。β3受容体は膀胱だけでなく、心臓、血管、腎臓、神経系などに広く分布しており、β3作動薬がこれらの受容体に作用することで心拍出量の増加やレニン分泌の亢進、交感神経系の活性化が生じる可能性が指摘されています。

重篤な心疾患を有する患者に対しては、ミラベグロンは禁忌とされています。不整脈、心不全虚血性心疾患などの既往がある患者では、投与により症状が悪化するリスクがあるためです。ビベグロンも同様に心血管系への影響はありますが、ミラベグロンに比べると禁忌や慎重投与の範囲が狭く、比較的安全性が高いとされています。

それでも心血管疾患既往例では注意が原則です。

その他の副作用としては、便秘、口内乾燥、残尿量増加、膀胱炎などが報告されています。特に残尿量増加については、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞疾患を合併する患者で尿閉のリスクが高まるため、投与前に残尿量を測定し、100mLを超える症例では慎重に投与を判断する必要があります。

尿閉のリスク評価は投与前に必須です。

臨床現場で心血管系リスクを評価する際には、既往歴の確認だけでなく、併用薬(特に降圧薬抗不整脈薬)の種類と用量、血圧・脈拍のベースライン値を記録しておくことが重要です。投与開始後は定期的に血圧と心拍数をモニタリングし、異常が認められた場合には減量または中止を検討します。患者自身にも動悸や息切れなどの症状が出た場合には速やかに受診するよう指導しておくことが、安全な治療継続につながります。

β3作動薬と抗コリン薬併用療法のエビデンス

単剤治療で効果不十分な過活動膀胱症例に対して、β3作動薬と抗コリン薬の併用療法が行われることがあります。作用機序が異なるため相加的な効果が期待でき、2018年9月からは国内でも保険診療上、両剤の併用が正式に認められています。

併用は原則として認められています。

海外の臨床試験では、抗コリン薬単剤で効果不十分だった患者にβ3作動薬を追加することで、尿意切迫感や切迫性尿失禁エピソードが有意に減少したというデータが報告されています。日本国内でも、難治性過活動膀胱患者320例を対象とした研究で、ミラベグロンとプロピベリン(抗コリン薬)の併用療法により、症状スコアの改善と治療継続率の向上が確認されました。

併用療法の適応となるのは、β3作動薬または抗コリン薬の単剤治療を3カ月以上継続しても効果不十分な症例です。どちらを先に使用するかについては、患者の年齢、併存疾患、認知機能、多剤併用の有無などを総合的に評価して決定します。高齢者や認知機能低下リスクのある患者ではβ3作動薬を第一選択とし、効果不十分時に抗コリン薬を追加するという流れが一般的です。

高齢者ではβ3作動薬優先が基本です。

一方で、併用療法には副作用リスクの増加という側面もあります。特に排尿筋収縮力の低下により、残尿量が増加し尿閉を来すリスクが高まるため、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞を合併する症例では慎重な判断が必要です。併用開始前と開始後には必ず残尿量を測定し、150mLを超える場合や排尿困難感が増悪する場合には、併用を中止して単剤治療に戻すことを検討します。

残尿量150mL超は併用回避の目安です。

女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版では、「重度の過活動膀胱に対する抗コリン薬とβ3作動薬の併用療法は排尿症状の悪化に注意が必要」と記載されており、併用のメリットとリスクを天秤にかけた慎重な判断が求められます。患者には併用の目的と期待される効果、起こりうる副作用について十分に説明し、自覚症状の変化を観察しながら治療を進めることが重要です。

β3作動薬過活動膀胱治療における継続率と治療効果の持続性

過活動膀胱治療における大きな課題の一つが、薬物治療の継続率の低さです。抗コリン薬の長期継続率は約20%程度とされており、副作用や効果不十分により多くの患者が治療を中断してしまうという現実があります。β3作動薬はこの点で改善が期待されていましたが、実際の継続率はどうなのでしょうか。

どれくらいの患者が続けられるのでしょう?

ミラベグロンの12カ月継続率は約40%という報告があり、抗コリン薬の約20%と比較すれば高い値ですが、依然として半数以上の患者が1年以内に治療を中断しているという状況です。中止理由として最も多いのは自然寛解であり、次いで効果不十分、副作用の順となっています。β3作動薬では抗コリン薬に比べて副作用による中止が少ないという利点がありますが、効果不十分による中止は一定数存在します。

効果不十分による中止は避けられません。

治療効果の発現時期について、β3作動薬は服用開始から2週間程度で効果が現れることが多いとされています。抗コリン薬と同様に、投与開始後4週間までに約8割の症例で何らかの効果が認められるため、この時期までの評価が重要です。4週間経過しても効果が不十分な場合には、他剤への変更や併用療法を検討するタイミングといえます。

4週間が効果判定の目安になります。

長期投与に関しては、ミラベグロンの52週投与試験において、長期投与においても有効性が維持され、副作用発現率も増加しないことが確認されています。治療継続率は77.1%と高く、安定期に入れば長期的な症状コントロールが可能な薬剤であることが示されています。ビベグロンについても52週投与までの有効性維持が報告されており、長期使用の安全性は確立されています。

安定期に入れば長期継続が期待できます。

継続率を向上させるためには、患者教育と定期的なフォローアップが不可欠です。過活動膀胱は慢性疾患であり、症状が改善しても自己判断で服薬を中断すると再発するリスクが高いことを患者に理解してもらう必要があります。また、効果が不十分な場合や副作用が出現した場合には、薬剤の変更や併用療法という選択肢があることを伝え、治療を諦めないよう支援することが重要です。

薬物療法だけでなく、行動療法や骨盤底筋訓練などの非薬物療法を併用することで、治療効果を高め継続率を改善できる可能性があります。患者のライフスタイルや治療に対する期待値を把握し、個々の症例に応じた最適な治療プランを提供することが、過活動膀胱治療成功のカギとなります。

女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版(日本泌尿器科学会)- β3作動薬と抗コリン薬の併用に関する推奨事項や、薬物療法の選択基準について詳細なエビデンスが記載されています
β3刺激薬の解説(日経メディカル処方薬事典)- β3作動薬の作用機序、副作用、使用上の注意点について医療従事者向けに詳しく解説されています