止血薬ゴロ覚え方と作用機序分類

止血薬ゴロ覚え方と作用機序

カルバゾクロム単独投与は効果が不明確です

この記事の3ポイント要約
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止血薬の分類とゴロ

全身性止血薬と局所性止血薬の違いを理解し、ゴロで効率的に暗記する方法を紹介します

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作用機序別の分類

毛細血管強化薬、抗プラスミン薬、凝固促進薬の3つの作用機序を詳しく解説します

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臨床での使い分け注意点

トラネキサム酸の禁忌やカルバゾクロムのエビデンス不足など、実践的な知識を提供します

止血薬の全身性と局所性の違い

 

止血薬は投与経路と作用部位によって、大きく2つに分類されます。全身性止血薬は内服や静脈注射によって血液中に取り込まれ、全身の血管系に作用する薬剤です。一方、局所性止血薬は出血部位に直接塗布したり、充填したりすることで局所的な止血効果を発揮します。

全身性止血薬には、カルバゾクロム(アドナ)やアドレノクロム、トラネキサム酸トランサミン)などがあります。これらは毛細血管の透過性を抑制したり、血液凝固を促進したりする働きを持っています。投与後30分から60分程度で効果が現れ、3時間程度持続すると言われています。

効果発現までに時間がかかるのが特徴です。

局所性止血薬には、ゼラチンスポンジ(スポンゼル、ゼルフォーム)、トロンビン製剤、酸化セルロース(サージセル)、コラーゲン製剤などがあります。これらは出血部位に直接作用し、即座に止血効果を発揮します。手術中の出血や抜歯後の止血に頻繁に使用されるため、外科系の医療従事者にとっては必須の知識となります。

使い分けの基本は、出血の性質と部位によります。小血管や毛細血管からのじわじわとした出血には全身性止血薬が適していますが、大量出血や手術中の出血には局所性止血薬が優先されます。

両者を併用することも珍しくありません。

止血薬ゴロ合わせ覚え方の実践

止血薬を効率的に覚えるためのゴロ合わせを紹介します。薬剤師国家試験や看護師国家試験でも頻出の内容なので、しっかり押さえておきましょう。

全身性止血薬の代表的なゴロは「ヘモコアラーゼ」です。これはヘモコアグラーゼという血液凝固促進薬を覚えるためのものですが、この薬剤は生体由来のトロンビン様酵素製剤で、フィブリノゲンをフィブリンに変換して止血作用を示します。

投与後の効果発現が比較的速いのが利点です。

毛細血管強化薬のカルバゾクロムとアドレノクロムを覚える際には、「アドカル」と短く覚えるのもよいでしょう。アドレノクロムとカルバゾクロムは、どちらも毛細血管に作用して血管透過性を抑制し、血管抵抗性を増強します。血液凝固系には直接影響を与えないのが特徴です。

抗プラスミン薬のトラネキサム酸とイプシロンアミノカプロン酸は、「トライプ」と覚えると便利です。これらはプラスミノゲンのリジン結合部位を競合阻害し、フィブリン溶解を抑制します。つまり、血栓を溶かす働きを抑えることで止血効果を発揮するということですね。

ビタミンK依存性凝固因子は「にくなっとう」で覚えます。これは第Ⅱ(に)、第Ⅸ(く)、第Ⅶ(な)、第Ⅹ(とう)因子を指します。ワルファリン服用中の患者が納豆を避けるべき理由も、このゴロで一緒に覚えられます。納豆に含まれるビタミンKがワルファリンの効果を減弱させるためです。

局所止血薬のゴロとしては「止血に局アナ参加する、ゼラチンスッポントロントロン」というものがあります。局所麻酔にアドレナリンを添加、酸化セルロース、ゼラチンスポンジ、トロンビンを覚えられます。これらは歯科領域で特に頻用される止血材です。

止血薬作用機序と薬剤分類の詳細

全身性止血薬は作用機序によって3つに分類されます。それぞれの特徴を理解することが、適切な薬剤選択につながります。

第1の分類は毛細血管強化薬です。カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(アドナ)、アドレノクロムモノアミノグアニジン(アドクノン)、アスコルビン酸(ビタミンC)がこれに該当します。これらは毛細血管の透過性亢進を抑制し、血管抵抗性を増強することで止血作用を示します。

血液凝固系や線溶系には影響を与えません。

ただし、注意すべき点があります。カルバゾクロムは日本で50年以上使用されている薬剤ですが、単独使用についてのエビデンスが乏しいのが実情です。複数の文献レビューでは、カルバゾクロムの止血効果は「ほぼおまじないの域を出ない」とまで評されています。それでも広く処方されているのは、副作用が少なく、使い慣れているという理由が大きいでしょう。

第2の分類は抗プラスミン薬です。トラネキサム酸(トランサミン)とイプシロンアミノカプロン酸が代表的です。これらはプラスミノゲンのリジン結合部位を競合的に阻害し、プラスミンへの変換を抑制します。結果として、フィブリンの分解が抑えられ、血栓が安定化して止血効果を発揮します。

トラネキサム酸は様々な出血症状に対してエビデンスが確立されています。外傷性出血、産科出血、消化管出血、喀血などに有効性が示されており、WHOの必須医薬品リストにも掲載されています。ただし、血栓を安定化させる作用があるため、血栓症のリスクがある患者には注意が必要です。

第3の分類は血液凝固促進薬です。ビタミンK製剤(フィトナジオンメナテトレノン)、フィブリノゲン、トロンボプラスチン、ヘモコアグラーゼなどがあります。これらは凝固因子の産生を促進したり、直接凝固反応を進めたりすることで止血効果を示します。ビタミンKは肝臓での凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)の合成に必須です。

局所止血薬は物理的・化学的機序で作用します。ゼラチンスポンジは血液を吸収して膨張し、出血部位を物理的に圧迫します。トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに直接変換して血栓を形成します。酸化セルロースはヘモグロビンと親和性があり凝血塊を形成し、さらに酸性環境を作り出すことで血管収縮も促します。

止血薬トラネキサム酸の禁忌と注意点

トラネキサム酸は優れた止血効果を持つ一方で、いくつかの重要な禁忌と注意点があります。医療従事者として必ず把握しておくべき内容です。

最も重要な禁忌は上部尿路出血です。腎盂、腎杯、尿管からの出血に対してトラネキサム酸を投与すると、尿中で形成された凝血塊が溶解しにくくなります。その結果、凝血塊が尿路を閉塞し、水腎症や腎後性腎不全を引き起こす危険性があります。下部尿路出血(膀胱出血)には使用できますが、上部と下部の区別が重要です。

血栓症の既往がある患者も禁忌です。トラネキサム酸は線溶を抑制するため、血栓の分解を遅らせます。深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞などの既往がある患者では、新たな血栓形成のリスクが高まります。添付文書では「消費性凝固障害のある患者」も禁忌とされています。

併用禁忌薬としてトロンビン製剤があります。トロンビンは血液凝固を直接促進する薬剤であり、トラネキサム酸と併用すると血栓形成リスクが著しく上昇します。両者を同時に投与することは絶対に避けなければなりません。局所止血薬としてトロンビンを使用している場合は特に注意が必要です。

経口避妊薬(ピル)やホルモン補充療法薬との併用にも注意が必要です。これらのエストロゲン製剤は血液凝固能を亢進させる作用があり、トラネキサム酸と併用すると血栓症リスクが増加します。喫煙者、肥満、高血圧などの患者ではさらにリスクが高まります。美容目的でトラネキサム酸を処方する際は、必ず併用薬を確認しましょう。

副作用として、消化器症状(食欲不振、悪心、嘔吐)が比較的多く報告されています。重篤な副作用としては、血栓症の他に痙攣発作があります。特に腎機能低下患者では血中濃度が上昇しやすく、痙攣のリスクが高まるため、用量調整が必要です。

止血薬の臨床での使い分けと独自視点

実際の臨床現場では、止血薬の選択は出血の種類、部位、患者背景によって細かく判断されます。教科書的な知識だけでなく、実践的な使い分けを理解しておくことが重要です。

粘膜出血(鼻出血、歯肉出血、消化管出血など)にはトラネキサム酸が第一選択となります。粘膜は線溶活性が高い部位であり、抗プラスミン薬の効果が発揮されやすいためです。実際、2020年のLancet誌に掲載されたHALT-IT試験では、消化管出血へのトラネキサム酸投与が検討されましたが、死亡率改善効果は示されませんでした。

ただし静脈血栓症のリスクは増加しました。

過信は禁物ということですね。

術中・術後の異常出血に対しては、カルバゾクロムとトラネキサム酸が併用されることが多いです。「アドトラ」という略称で処方されますが、実際にはトラネキサム酸の効果がメインで、カルバゾクロムの貢献度は限定的である可能性が高いです。それでも併用されるのは、異なる作用機序を組み合わせるという理論的根拠と、長年の慣習によるものでしょう。

外傷性大量出血には、トラネキサム酸の早期投与が推奨されています。CRASH-2試験では、受傷後3時間以内にトラネキサム酸を投与することで死亡率が有意に低下することが示されました。これは救急医療における重要なエビデンスです。ただし、受傷後3時間以降の投与では効果が減弱し、かえって死亡率が上昇するという結果も出ています。

タイミングが重要です。

産科出血(分娩後出血)に対しても、トラネキサム酸の有効性が確立されています。WOMAN試験では、分娩後出血に対するトラネキサム酸投与が死亡率を減少させることが示されました。特に投与開始が早いほど効果が高いという結果です。

産科領域でも必須の止血薬と言えるでしょう。

輸血後にカルバゾクロムが投与されることがあります。これは輸血を必要とする患者では血管透過性が亢進している可能性があり、輸血成分が血管外に漏出するのを防ぐという理論的根拠に基づいています。ただし、これについてもエビデンスは十分ではありません。

あくまで経験的な使用法です。

局所止血材の選択では、出血の程度と部位を考慮します。軽度のにじみ出るような出血にはゼラチンスポンジで十分です。より強い出血には、トロンビンとゼラチンを混合したフローアブル止血材(フロシール)が有効です。ペースト状で出血部位に密着しやすく、タンポナーデ効果とトロンビンの凝固作用が相乗的に働きます。

意外と知られていないのが、酸化セルロースの感染抑制効果です。酸性環境を作り出すことで細菌の増殖を抑える作用があり、感染リスクの高い創部での使用に適しています。一方、トロンビンは生物学的製剤であるため、アレルギー反応のリスクがあります。

使用前に患者背景を確認することが大切です。

止血薬を適切に使いこなすには、各薬剤の作用機序、適応、禁忌を正確に理解することが不可欠です。ゴロ合わせで基本を覚え、臨床での使い分けを学ぶことで、患者の安全と治療効果を最大化できます。エビデンスに基づいた薬剤選択を心がけましょう。

日本血栓止血学会が公開する血管強化薬と局所止血薬の詳細な作用機序解説(PDF)はこちらから確認できます
救急領域における止血機能異常症の診療ガイド(第3版)で、トラネキサム酸の適応と禁忌について詳しく学べます

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