膵炎治療薬ゴロで覚える蛋白分解酵素阻害薬の種類と使い分け

国家試験対策に役立つ独自視点の情報も満載。

この記事で薬剤の使い分けまで理解できるでしょうか?

膵炎治療薬ゴロで覚える蛋白分解酵素阻害薬

実は急性膵炎の蛋白分解酵素阻害薬、効果が証明されていません

この記事の3つのポイント
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膵炎治療薬のゴロ合わせ

「なか卯がタンパク」でナファモスタット、カモスタット、ウリナスタチン、ガベキサートの4剤を一気に暗記

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薬剤の使い分けと注意点

急性膵炎の注射薬と慢性膵炎の経口薬、併用禁忌の組み合わせを詳しく解説

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ガイドラインの最新知見

2021年改訂で明らかになった蛋白分解酵素阻害薬の実際の効果と臨床での位置づけ

膵炎治療薬の基本ゴロと4つの薬剤名

 

膵炎治療に使用される蛋白分解酵素阻害薬は、国家試験でも頻出のテーマです。主要な薬剤は4つあり、それぞれナファモスタット、カモスタット、ガベキサートウリナスタチンという名称を持っています。これらを一度に覚えるために、医療従事者の間で広く使われているのが「なか卯がタンパク」というゴロ合わせです。

この語呂合わせは極めてシンプルな構造になっています。「な」がナファモスタット、「か」がカモスタット、「卯(う)」がウリナスタチン、「が」がガベキサートを表しており、最後の「タンパク」は蛋白分解酵素阻害薬そのものを指しています。つまり、このフレーズ全体で「これらは蛋白分解酵素阻害薬である」という意味が込められているのです。

別のバリエーションとして「かもがウリをがぶっと食べた」というゴロもあります。「かも」がカモスタット(とナファモスタット)、「ウリ」がウリナスタチン、「がぶっと」がガベキサートという構成です。どちらかお好みの方を選んで覚えるとよいでしょう。

これらの薬剤はすべて急性膵炎慢性膵炎の治療に用いられます。膵臓で産生される消化酵素が活性化して自己の組織を破壊してしまう状態を防ぐために、トリプシンなどの蛋白分解酵素の働きを阻害する作用を持っています。国家試験では薬剤名を問う問題だけでなく、作用機序や適応疾患についても出題されるため、語呂合わせで名前を覚えた後は各薬剤の特徴まで理解を深めることが重要です。

実際の臨床現場では、これらの薬剤は急性膵炎の極期や重症期に投与されます。膵臓への刺激を最小限にするために絶食や輸液管理と併用しながら使用されるのが一般的です。ただし、後述しますが、近年のガイドライン改訂により、これらの薬剤の位置づけには変化が生じています。

膵炎治療薬の注射薬と経口薬の使い分け

蛋白分解酵素阻害薬には注射薬と経口薬の2つの剤形があり、病態に応じて適切に使い分ける必要があります。急性膵炎では注射薬が中心となり、慢性膵炎では経口薬が選択される傾向にあります。

注射薬として使用されるのはガベキサートメシル酸塩、ナファモスタットメシル酸塩、ウリナスタチンの3剤です。これらは急性膵炎の急性期に点滴静注で投与されます。ガベキサートは通常1回100mgを5%ブドウ糖注射液またはリンゲル液500mLに溶解し、8mL/分以下で点滴します。ナファモスタットも同様に点滴で使用され、ウリナスタチンは汎発性血管内血液凝固症(DIC)を合併した症例でも選択されることがあります。

一方、経口薬はカモスタットメシル酸塩のみです。カモスタットは慢性膵炎における急性症状の緩解を目的として使用され、通常1日量600mgを3回に分けて経口投与します。慢性膵炎は急性増悪を繰り返す疾患であるため、外来通院しながら内服治療を継続できるメリットがあります。

症状により適宜増減が可能です。

興味深いことに、カモスタットには術後逆流性食道炎という適応もあります。この場合は1日量300mgを3回に分けて投与します。胃切除術後に、十二指腸液や膵液が食道に逆流して炎症を起こす状態に対して、消化液中のトリプシンを阻害することで症状を和らげる効果が期待されます。ただし、胃酸の逆流による通常の逆流性食道炎には効果がないため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーとは使い分けが必要です。

注射薬を使う場合の注意点として、血管外漏出のリスクがあります。特にナファモスタットは血管外に漏れると皮膚壊死を起こす可能性があるため、投与速度や投与経路の確認が重要です。また、高カリウム血症を起こすリスクもあり、腎機能低下患者では特に注意が必要とされています。

膵炎治療薬の併用禁忌と保険適応の落とし穴

蛋白分解酵素阻害薬を使用する際、医療従事者が特に注意すべきなのが併用に関する制限です。保険診療上、注射用ガベキサートメシル酸塩と注射用ナファモスタットメシル酸塩の併用投与は原則として認められていません。両剤とも同じ蛋白分解酵素阻害薬であり、作用機序が重複するため、併用による追加効果が期待できないというのが理由です。

さらに、ガベキサートまたはナファモスタットとウリナスタチンの2剤併用も、原則として保険適応が認められません。審査支払機関の取扱いでは、これらの組み合わせは医学的必要性が認められない限り査定対象となります。急性膵炎の治療において、複数の蛋白分解酵素阻害薬を同時投与しても相乗効果は証明されていないため、通常は1剤を選択して使用することになります。

どの薬剤を選ぶかは施設の方針や医師の判断によりますが、ガベキサートは比較的広く使用されています。ナファモスタットは抗凝固作用が強いため、DICを合併している症例や血液透析時の抗凝固薬としても使用されることがあります。ウリナスタチンは他の2剤と比較してやや作用が穏やかとされ、軽症から中等症の症例で選択されることもあります。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)後膵炎の予防という特殊な状況では、ナファモスタットの予防投与が行われることがあります。ERCP後膵炎は手技に伴う合併症として発生率が約26.4%と報告されており、劇症化を防ぐ目的で予防的に使用されます。一方、ウリナスタチン(商品名:ミラクリッド)は膵炎が実際に発症した後の治療薬として位置づけられる傾向があります。

実際の処方では、レセプト診療報酬明細書)審査で査定されないよう、併用禁忌の組み合わせを避けることが実務上極めて重要です。電子カルテのシステムによってはアラートが出る設定になっている場合もありますが、注射薬の処方時には薬剤師による疑義照会も含めて、複数の目でチェックする体制が求められます。

膵炎治療薬の効果に関する最新ガイドライン知見

2021年に改訂された「急性膵炎診療ガイドライン第5版」では、蛋白分解酵素阻害薬に関する推奨内容が大きく変更されました。従来は急性膵炎の標準治療として広く使用されてきましたが、現在では「生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない」という評価になっています。

複数のランダム化比較試験やメタアナリシスの結果、蛋白分解酵素阻害薬は致命率や膵合併症発症率を改善せず、在院日数も短縮しないことが示されました。重症膵炎のみを対象とした検討でも有用性が証明されなかったため、ガイドラインでは投与を積極的には推奨していない立場を取っています。推奨度としては「エビデンス不十分」とされ、使用する場合でも慣例的な投与は避けるべきとされています。

この背景には、日本の臨床現場における実態調査の結果があります。全国調査により、専門医であっても予防的抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の投与がほぼ全例で慣例的に行われている実態が明らかになりました。しかし、海外のガイドラインでも同様に、これらの薬剤は推奨されない方向性が示されています。

それでもなお、多くの施設で蛋白分解酵素阻害薬が使用され続けているのはなぜでしょうか。一つには、理論的には酵素活性化を抑制する機序が妥当と考えられること、もう一つには、他に確実に有効な薬物療法がないという現実があります。急性膵炎の治療は輸液管理と絶食による膵臓の安静が基本であり、薬物療法の選択肢が限られているため、「効果が証明されていないが、害もない範囲で使用する」という判断がなされることも少なくありません。

ガイドラインでは、むしろ発症48時間以内の早期経腸栄養の開始が重症例での感染症合併発生率を下げる効果があると強調されています。また、予防的抗菌薬についても、軽症例では投与しないこと、重症例でも推奨しないという方針が示されました。これは、化学炎症によるCRP上昇を細菌感染と誤認して不必要な抗菌薬を投与するケースが多かったことへの警鐘でもあります。

実際の臨床判断では、ガイドラインの推奨を理解しつつも、個々の患者の重症度や合併症リスク、施設の治療方針を総合的に考慮することになります。国家試験対策としては、「蛋白分解酵素阻害薬は理論的には有効だが、エビデンスは不十分」という最新の知見を押さえておくことが重要です。

膵炎治療における膵消化酵素薬との違いと独自視点

膵炎治療薬を理解する上で、蛋白分解酵素阻害薬と膵消化酵素薬(膵酵素補充薬)を混同しないことが重要です。この2つは名前が似ていますが、作用も適応も全く異なります。

蛋白分解酵素阻害薬は、前述のとおり膵臓の酵素が過剰に活性化して自己組織を破壊するのを防ぐ薬です。急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪期に使用します。一方、膵消化酵素薬は、膵臓の機能が低下して消化酵素が十分に分泌されなくなった状態を補う薬です。つまり、「酵素を抑える薬」と「酵素を補う薬」という正反対の役割を持っています。

膵消化酵素薬の代表例がパンクレリパーゼ(商品名:リパクレオン)です。これはブタの膵臓から精製した高力価の膵酵素製剤で、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼを含んでいます。慢性膵炎が進行して膵外分泌機能不全に至った患者、膵切除後の患者、膵嚢胞線維症の患者などに使用されます。通常1回600mgを1日3回、食直後に経口投与します。

慢性膵炎では病期により治療方針が変わります。代償期(早期)では膵臓への刺激を減らすために蛋白分解酵素阻害薬のカモスタットを使用し、痛みをコントロールします。しかし非代償期(進行期)になると膵臓の機能が著しく低下し、消化酵素が不足するため、今度は膵消化酵素薬で補充することになります。脂肪分解酵素であるリパーゼが最も早く働かなくなるため、脂肪便、体重減少、栄養失調などの症状が現れたら膵酵素補充が必要というサインです。

国家試験では、この使い分けを問う問題が出題されることがあります。「急性期には阻害薬、進行期には補充薬」という原則を理解しておけば、選択肢を正確に判断できます。また、リパクレオンは近年一時的な需要増により供給不足が問題となり、限定出荷が実施された経緯があります。このような医薬品供給の実務的な問題も、臨床現場では重要な関心事です。

独自の視点として、膵炎治療における栄養管理の重要性も押さえておきましょう。従来は「膵臓を休ませる」ために絶食期間を長く取ることが常識とされていましたが、現在のガイドラインでは発症48時間以内の早期経腸栄養開始が推奨されています。これは腸管粘膜の萎縮を防ぎ、bacterial translocation(腸内細菌の移行)による感染症を予防する効果があるためです。重症例では胃管を通した経鼻経腸栄養が選択されることもあります。

また、慢性膵炎の疼痛管理では、従来禁忌とされてきたモルヒネについても議論があります。モルヒネはOddi括約筋を収縮させて膵管圧を上昇させる可能性があるため避けられてきましたが、疼痛コントロールが不十分な場合は弱オピオイドトラマドールや、慎重に使用される医療用麻薬が検討されます。ペンタゾシンは比較的Oddi括約筋への影響が少ないとされ、急性膵炎の疼痛に使用されることがあります。

膵炎治療の実践では、薬物療法だけでなく、禁酒・禁煙指導、低脂肪食の栄養管理、合併症の早期発見といった多面的なアプローチが不可欠です。医療従事者として、これらの知識を統合的に理解し、患者の状態に応じた最適な治療を提供することが求められます。

日本膵臓学会の急性膵炎・慢性膵炎に対する薬物治療の解説ページでは、一般向けにわかりやすく治療薬の使い分けが説明されています。
急性膵炎診療ガイドライン2021(PDF)では、蛋白分解酵素阻害薬のエビデンス評価や推奨度が詳細に記載されており、最新の治療方針を確認できます。
日本消化器病学会の健康情報誌「消化器のひろば」では、膵炎の薬物治療について患者・医療従事者双方に有用な情報が掲載されています。

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