肝庇護薬点滴の効果と種類
強ミノ40mL投与でもALT改善が不十分なら100mL増量が有意に有効です
肝庇護薬点滴の主要な種類と作用機序
肝庇護薬の点滴治療において、最も使用頻度が高いのはグリチルリチン製剤である強力ネオミノファーゲンシー(強ミノ)です。この薬剤は甘草由来のグリチルリチン酸を主成分とし、グリシンとL-システイン塩酸塩を配合することで、グリチルリチン酸の大量投与による電解質異常を軽減する工夫が施されています。
強ミノの作用機序は多岐にわたります。抗炎症作用としては、アラキドン酸代謝系の初発酵素であるホスホリパーゼA2や、炎症性ケミカルメディエーターを産生するリポキシゲナーゼに直接結合し、これらの酵素活性化を選択的に阻害します。
つまり炎症の元を断つということですね。
免疫調節作用も重要な働きです。T細胞活性化調節、インターフェロン-γ誘起、NK細胞活性化、胸腺外Tリンパ球分化増強といった複数の免疫系への作用が確認されています。肝細胞レベルでは、四塩化炭素による肝細胞障害を抑制する効果や、肝細胞の増殖を促進する作用も実験的に示されています。
強力ネオミノファーゲンシーの詳細な薬効薬理については、こちらのKEGGデータベースで添付文書を確認できます
グリチルリチン製剤以外の選択肢としては、内服薬のウルソデオキシコール酸があります。胆汁の分泌を促進し、脂肪の消化・吸収を助けることで胃腸機能を改善するとともに、肝臓の血流を増加させて肝細胞を保護します。肝細胞保護効果や活性酸素の除去効果があり、ASTやALT値を低下させます。
漢方薬の小柴胡湯も肝庇護薬として使用されますが、注意点があります。
肝硬変の患者には使用できません。
慢性活動性肝炎に対する肝機能改善効果が確認されていますが、適応を見極める必要があります。
肝庇護薬点滴の投与量設計とエビデンス
強力ネオミノファーゲンシーの投与量は、疾患や病態によって大きく異なります。小児ストロフルスや湿疹などのアレルギー性疾患では、通常成人に1日1回5~20mLを静脈内注射します。一方、慢性肝疾患における肝機能異常の改善を目的とする場合は、1日1回40~60mLを静脈内注射または点滴静注するのが基本です。
増量する場合は1日100mLを限度とします。この投与量設定には明確なエビデンスがあります。国内11施設における慢性肝炎・肝硬変178症例を対象とした用量別比較試験では、40mL/日を3週間投与後、ALT値が正常上限値の1.5倍以下に改善しなかった93例を対象に、40mL/日継続群と100mL/日増量群を比較しました。
結果は明確でした。100mL/日増量投与群の有効率は50.0%(23/46例)で、40mL/日継続投与群の25.5%(12/47例)と比較して有意に高い改善効果を示しました。
これは単純な話ではありません。
40mLでALT値改善が不十分な症例に対しては、100mLへの増量投与が有用であることが証明されています。
大阪公立大学医学部附属病院の肝疾患センターでは、肝庇護療法の詳細な治療方針を公開しています
投与期間についても検討が必要です。国内36施設における慢性肝炎133例を対象とした二重盲検比較試験では、強ミノ40mLを連日1カ月間静注投与した結果、有効率(有効以上)は25.4%、やや有効以上は68.7%で、プラセボ群と比較して有意に有効でした。肝機能検査項目別では、AST、ALT、γ-GTP値の改善が有意差をもって認められました。
慢性肝炎患者に100mLを8週間投与した試験では、肝機能の改善と肝組織像の改善に相関が認められており、長期投与による組織学的改善も期待できます。
ただし、ウイルス量は減少しません。
肝庇護療法はあくまで肝炎を鎮静化し、肝組織の線維化進展を抑えることを目的とする治療です。
肝庇護薬点滴における重大な副作用管理
強力ネオミノファーゲンシーの副作用管理において、最も注意すべきは偽アルドステロン症です。増量または長期連用により、高度の低カリウム血症や低カリウム血症の発現頻度の上昇、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加などが現れる可能性があります。
偽アルドステロン症の頻度は「頻度不明」とされていますが、これは決して稀ではありません。添付文書の副作用欄を見ると、0.1~5%未満の頻度で血清カリウム値の低下が発生し、投与量の増加により発現頻度の上昇傾向が認められています。低カリウム血症の結果として、脱力感や筋力低下が現れるおそれがあるため、定期的な血清カリウム値の測定が必須です。
高齢者では特に注意が必要です。臨床での使用経験において、低カリウム血症等の副作用の発現率が高い傾向が認められています。患者の状態を観察しながら慎重に投与することが求められます。
ショックやアナフィラキシーも重大な副作用です。血圧低下、意識消失、呼吸困難、心肺停止、潮紅、顔面浮腫などが現れることがあります。発現を予測するため十分な問診を行い、ショック発現時に救急処置のとれる準備をしておく必要があります。投与後は患者を安静な状態に保たせ、十分な観察を行うことが基本です。
併用注意薬剤にも留意が必要です。ループ利尿薬(エタクリン酸、フロセミド等)やチアジド系降圧利尿薬(トリクロルメチアジド、クロルタリドン等)との併用では、これらの利尿作用がグリチルリチン酸のカリウム排泄作用を増強し、血清カリウム値の低下が現れやすくなります。観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行うことが不可欠です。
モキシフロキサシン塩酸塩との併用では、心室性頻拍(Torsade de pointesを含む)やQT延長を起こすおそれがあります。強ミノが有するカリウム排泄作用により血清カリウム濃度が低下すると、モキシフロキサシンによる心電図異常が発現するリスクが高まるためです。
肝庇護薬点滴の保険適用と実臨床での位置づけ
強力ネオミノファーゲンシーの保険適用は明確に定められています。効能・効果は「小児ストロフルス、湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、皮膚そう痒症、口内炎、フリクテン、薬疹・中毒疹」と「慢性肝疾患における肝機能異常の改善」です。
慢性肝疾患に対する保険算定では、1日40~60mLの投与が基本となります。
増量する場合でも1日100mLが限度です。
薬価は強力ネオミノファーゲンシー静注20mLが122円/管、5mLが66円/管となっており、60mL投与の場合は366円、100mL投与では610円の薬剤費が発生します。
しかし、保険適用の運用には注意点があります。単なる脂肪肝では慢性肝疾患として認められないケースがあり、薬剤性肝障害で投与した場合でも査定される事例が報告されています。適応病名の付け方には慎重な判断が求められます。
実臨床での位置づけを考えると、肝庇護療法は抗ウイルス療法が使えない場合や、抗ウイルス療法の効果が不十分な場合の補助的治療として重要です。C型肝炎やB型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)や核酸アナログ製剤が第一選択となる現在でも、肝機能異常の改善や肝硬変への進展抑制を目的として肝庇護療法は継続されています。
はやさかクリニックでは、B型肝炎の肝庇護療法について詳しい解説を提供しています
肝発癌抑制効果についても議論があります。強力ミノファーゲンC投与により肝発癌リスクが低下するという報告がある一方で、高濃度ビタミンC点滴との併用では期待したほどの肝癌発生予防効果が得られなかったという研究もあります。
エビデンスの蓄積は継続中です。
肝庇護薬点滴投与時の具体的な注意事項
静脈内投与の際は、患者の状態を観察しながらできるだけ投与速度を緩徐にすることが重要です。急速投与により過呼吸症状(肩の熱感、四肢冷感、冷汗、口渇、動悸)や一過性の視覚異常(目のかすみ、目のチカチカ等)が現れることがあります。
点滴静注を選択する場合、慢性肝疾患に対しては生理食塩液またはブドウ糖液で適宜希釈します。投与時間は明確に規定されていませんが、少なくとも30分以上かけてゆっくりと投与することで副作用のリスクを最小限に抑えられます。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。グリチルリチン酸一アンモニウムを大量投与した動物実験(ラット)において腎奇形等が認められているためです。授乳婦に対しても、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する必要があります。
禁忌患者には絶対に投与してはいけません。本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある患者、アルドステロン症の患者、ミオパチーの患者、低カリウム血症の患者では、低カリウム血症や高血圧症等を悪化させるおそれがあります。
これらの患者には投与しないことが基本です。
甘草を含有する製剤との併用にも注意が必要です。強ミノに含まれるグリチルリチン酸が重複し、偽アルドステロン症が現れやすくなります。漢方薬の多くには甘草が配合されているため、患者の内服薬を確認し、甘草含有量が1日1~2gを超えないよう調整することが推奨されます。
投与頻度については、慢性肝疾患では1日1回が基本です。毎日注射を続けることで肝炎の進行を抑え、今以上に肝細胞が破壊されないようにします。効果の持続時間は個人差がありますが、水溶性成分が中心であるため尿から体外に排出されやすく、継続的な投与が重要となります。
ミノファーゲン製薬の公式添付文書で、最新の安全性情報を確認することをお勧めします
二日酔いや疲労回復目的で自費診療として使用する場合、1アンプル(20mL)あたり2000円前後の費用設定が一般的です。美容クリニックや内科クリニックで提供されている「強ミノ注射」は、保険適用外の自由診療として位置づけられています。医療機関によって価格設定が異なるため、患者への説明時には明確な料金提示が求められます。