四剤併用療法と多発性骨髄腫の初回治療

四剤併用療法の適応と効果

移植適応患者でも4剤併用が第一選択になるケースがあります。

この記事の3つのポイント
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DVRd療法のMRD陰性率は75.2%

従来の3剤併用VRd療法の47.5%と比較して約1.6倍の深い奏効を達成。持続的MRD陰性率も64.8%と、治癒に近づく可能性を示す

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移植適応・非適応を問わず使用可能

2025年6月の添付文書改訂により、造血幹細胞移植の適応有無に関わらず未治療の多発性骨髄腫に対して使用可能に。日本人集団でもMRD陰性率77.8%を達成

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初回1-2サイクルの用量維持が鍵

減量を前提とせず規定用法で開始することで確実な予後改善が期待できる。好中球減少62.4%、末梢性感覚ニューロパチー49.3%など既知の有害事象に注意

四剤併用療法DVRd療法とは何か

四剤併用療法DVRd療法は、ダラツムマブ(ダラキューロ配合皮下注)、ボルテゾミブレナリドミドデキサメタゾンを組み合わせた多発性骨髄腫の治療法です。2025年6月25日の添付文書改訂により、造血幹細胞移植の適応・非適応に関わらず、未治療の多発性骨髄腫患者に対して使用可能になりました。

つまり治療選択肢が広がったということですね。

この療法の特徴は、4つの異なる作用機序を持つ薬剤を同時に使用することで、多様化した骨髄腫細胞に対して広範な効果を発揮する点にあります。ダラツムマブは骨髄腫細胞に多く発現しているCD38分子を標的とする抗体医薬品で、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、免疫抑制系細胞への制御効果も報告されています。ボルテゾミブはプロテアソーム阻害薬、レナリドミドは免疫調節薬、デキサメタゾンはステロイド薬として作用します。

多発性骨髄腫の治療において、より早く深い奏効(微小残存病変MRD陰性)を達成し、それをできるだけ長く維持することが治療目標とされています。特に薬剤耐性を持つがん細胞が出現する前の初回治療が重要であり、DVRd療法はこの課題に対する解決策として期待されています。従来は移植適応患者には3剤併用後に自家造血幹細胞移植を行うのが標準的でしたが、DVRd療法の登場により、患者の状態や希望によっては薬剤だけで深い奏効を狙える可能性が出てきました。

初回から強力な治療を行うことで、多発性骨髄腫という従来は治癒困難とされてきた疾患においても、救える患者が増えていくことが期待されています。日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木憲史先生は、「”Until PD(再発するまで治療を継続する)”という考え方ではなく、無再発という目標を決めて治療すべき」と強調しています。

四剤併用療法の臨床試験結果と有効性

DVRd療法の承認根拠となったPERSEUS試験では、移植適応の未治療多発性骨髄腫患者を対象に、DVRd療法群とVRd療法群(3剤併用)を比較しました。主要評価項目である感度閾値10⁻⁵でのMRD陰性率は、VRd療法群の47.5%に対してDVRd療法群では75.2%を達成しました。これは統計学的に有意な差(P<0.0001)です。

オッズ比は3.3という結果でした。

さらに注目すべきは、MRD陰性状態が12ヶ月以上持続した割合です。VRd療法群の29.7%に対し、DVRd療法群では64.8%と、2倍以上の差がありました。これは多くの患者が長期にわたり無再発を維持していることを意味する重要なデータです。治癒に近づける可能性を示唆しており、多発性骨髄腫治療のパラダイムシフトとなる可能性があります。

追跡期間中央値58.7カ月時点での解析では、VRd療法群のPFS中央値が52.6カ月(約4.4年)であったのに対し、DVRd療法群では中央値に未到達という結果でした。推定PFSは17.1年とも報告されており、病勢進行または死亡のリスクを43%有意に低下させました(ハザード比0.57、95%信頼区間0.41-0.79、P<0.0005)。

移植非適応患者を対象としたCEPHEUS試験でも同様の結果が得られています。観察期間中央値58.7カ月において、MRD陰性率(10⁻⁵)はDVRd療法群60.9%、VRd療法群39.4%(オッズ比2.37、95%信頼区間1.58-3.55、P<0.0001)でした。持続的MRD陰性率(12カ月以上)も、DVRd療法群48.7%に対してVRd療法群26.3%と、約2倍の差を示しました。

日本人サブグループ解析では、さらに良好な結果が得られています。DVRd療法群9例とVRd療法群13例を対象とした解析で、MRD陰性率(10⁻⁵)は77.8% vs 46.2%、持続的MRD陰性率(≥12カ月)は55.6% vs 38.5%と、全体集団と一貫した、あるいはそれ以上の効果を示しました。病勢進行または死亡のリスクは66%減少しており、日本人患者においてもDVRd療法の有効性が確認されています。

完全奏効(CR)以上の奏効率についても、DVRd療法群で有意に高い結果が報告されています。深い奏効を早期に達成することで、患者のQOL向上と長期予後改善が期待できるでしょう。

四剤併用療法の投与スケジュールと管理

DVRd療法の投与スケジュールは、1週間間隔、2週間間隔、4週間間隔の順で段階的に投与間隔を延ばしていく方式です。ダラキューロ配合皮下注は、成人に1回15mL(ダラツムマブとして1,800mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファとして30,000単位)を皮下投与します。

具体的には以下のスケジュールが推奨されています。

📅 初期導入期(1-8週)

第1-8サイクルは1週間ごとにダラキューロを投与します。この期間中、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンも併用します。

28日間を1サイクルとして計画します。

📅 維持期前半(9-24週)

第9サイクル以降は2週間間隔でダラキューロを投与します。この期間も3剤の併用を継続し、深い奏効の維持を目指します。

📅 維持期後半(25週以降)

その後は4週間間隔での投与に移行します。疾患進行が認められるまで、または忍容できない有害事象が発現するまで継続します。

レナリドミドの用量は腎機能に応じて調整が必要です。クレアチニンクリアランスが30-60mL/分の患者では10mg、30mL/分未満では15mgを隔日投与とするなど、腎機能障害の程度に合わせた減量基準が設定されています。血液検査で腎機能を定期的にモニタリングすることで、適切な用量調整が可能になります。

ボルテゾミブは通常1.3mg/m²を週1回投与しますが、末梢神経障害の発現や重症度に応じて減量や休薬を検討します。デキサメタゾンは40mg(75歳以上では20mg)を週1回経口投与するのが標準的です。

初回1-2サイクルは特に重要です。

京都府立医科大学の黒田純也先生は、「初回の1-2サイクルはできるだけ減量を前提とせず、規定の用法通りにしっかり薬剤を使うことが重要」と強調しています。初回の強力な治療によって確実に予後が良くなり、日常生活に戻れる患者が出てくる可能性が高まるためです。ただし、全身状態や年齢、合併症の有無を総合的に評価し、個々の患者に最適化した投与計画を立てることが求められます。

投与日には、インフュージョンリアクション(投与時反応)のモニタリングが必須です。ダラキューロの初回投与時には特に注意が必要で、投与開始日から翌日までに呼吸器症状(22.1%)、全身状態の障害(15.5%)、胃腸障害(11.1%)などが報告されています。適切な前投薬(抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛薬、ステロイド)の実施と、投与後の観察体制を整えることで、安全性を確保できます。

四剤併用療法における副作用と対策

DVRd療法で観察される有害事象は、各薬剤の既知の安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは特定されていません。しかし、4剤を併用することで有害事象の発現頻度は高くなる傾向があり、適切なモニタリングと管理が不可欠です。

主な治療関連有害事象として、好中球減少症がDVRd療法群で62.4%(VRd療法群53.9%)、末梢性感覚ニューロパチーが49.3%(VRd療法群47.6%)、下痢が45.6%(VRd療法群37.5%)と報告されています。これらは多発性骨髄腫治療では比較的頻度の高い副作用ですが、グレード3以上の重篤な事象については慎重な対応が必要です。

骨髄抑制が最も注意すべき点です。

⚠️ 血液毒性への対応

好中球減少、血小板減少、リンパ球減少、発熱性好中球減少症などの骨髄抑制が発現します。定期的な血液検査(少なくとも週1回、特に初期サイクル)を実施し、好中球数が1,000/μL未満、血小板数が25,000/μL未満になった場合は休薬を検討します。G-CSF製剤の予防的投与も選択肢の一つです。発熱性好中球減少症が発現した場合は、直ちに広域抗菌薬の投与を開始し、感染源の検索を行います。

⚠️ 神経障害への対応

ボルテゾミブによる末梢性ニューロパチーは累積的に発現します。手足のしびれ、痛み、感覚異常などの症状が出現した場合、グレード2以上ではボルテゾミブの減量(1.0mg/m²または0.7mg/m²へ)または休薬を検討します。早期発見のため、各投与前に神経症状の問診を丁寧に行うことが重要です。ビタミンB12製剤の併用が症状軽減に有効な場合があります。

⚠️ 消化器症状への対応

下痢、便秘、悪心などの消化器症状は、レナリドミドやボルテゾミブで高頻度に認められます。下痢に対してはロペラミドなどの止瀉薬、便秘には緩下剤を適宜使用します。悪心・嘔吐には5-HT3受容体拮抗薬やNK1受容体拮抗薬を含む制吐療法を実施します。重度の下痢(1日7回以上または水様便)が持続する場合は脱水のリスクがあり、輸液療法と薬剤の休薬を検討します。

⚠️ インフュージョンリアクション

ダラツムマブ投与時に46.4%の患者でインフュージョンリアクションが報告されています。アナフィラキシー、鼻づまり、咳、寒気、眼症状、気管支痙攣、低酸素症、呼吸困難などの症状が出現する可能性があります。投与開始時には必ずバイタルサインをモニタリングし、酸素投与や気管支拡張薬、エピネフリンなどの救急薬品を準備しておきます。グレード3以上の反応が出現した場合は投与を中止し、適切な処置を行います。

血栓症リスクにも注意が必要です。レナリドミドは静脈血栓塞栓症のリスクを高めるため、アスピリン(81-325mg/日)またはワルファリンなどの抗凝固療法の併用が推奨されます。深部静脈血栓症や肺塞栓症の初期症状(下肢の腫脹、疼痛、突然の呼吸困難、胸痛など)について患者に説明し、早期発見に努めます。

高齢者では有害事象の発現率が高くなる傾向があります。75歳以上の患者では、デキサメタゾンの用量を20mgに減量することが推奨されており、全身状態や臓器機能に応じてさらなる用量調整を検討します。ただし、比較的元気な65-75歳の患者には4剤併用療法での積極的治療が検討されます。

四剤併用療法の適応判断と患者選択

DVRd療法は強力な治療効果を持つ一方で、全ての患者に適した治療法ではありません。京都府立医科大学の黒田純也先生は、「強力な治療であるが故に、医師は目の前の患者ごとにどの治療をどのタイミングでどのように使うのかを考え、個々に最適な治療法を提示していくことが重要」と強調しています。

適応判断において考慮すべき要素は複数あります。

🔍 全身状態と年齢

Performance Status(PS)が0-2で、比較的元気な患者がDVRd療法の良い適応となります。65-75歳の高齢者でも、臓器機能が保たれており、4剤併用療法に耐えられると判断される場合は積極的な治療の対象となります。一方、PS 3以上、75歳以上で frailty(虚弱)が顕著な患者では、より忍容性の高い2剤または3剤併用療法を選択することが推奨されます。

🔍 染色体異常とリスク分類

多発性骨髄腫では、del(17p)、t(4;14)、t(14;16)などの高リスク染色体異常を有する患者の予後が不良とされています。これらのハイリスク群では、より強力な初回治療によって深い奏効を得ることが特に重要であり、DVRd療法の良い適応となります。FISH検査やG-band法による染色体検査の結果を治療選択に活用します。

🔍 臓器機能障害の有無

重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/分未満)がある場合、レナリドミドの用量調整が必要です。透析を要する患者では、投薬タイミングを透析後に設定するなどの工夫が求められます。肝機能障害がある患者では、ボルテゾミブの代謝に影響する可能性があるため、肝機能のモニタリングを強化します。重篤な心肺機能異常を伴う患者では、DVRd療法のような強力な治療は避け、より忍容性の高いレジメンを選択することが適切です。

🔍 移植適応の有無

従来は、65歳以下で移植適応のある患者には3剤併用療法後に自家造血幹細胞移植を行うのが標準的でした。しかし、DVRd療法の登場により、薬剤だけで深い奏効(MRD陰性)を達成できる可能性が出てきました。患者のライフスタイルや希望を考慮し、移植による有害事象(長期入院、感染リスク、QOL低下)と薬物療法のメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、shared decision makingを実践することが重要です。

移植を選択しない場合でも問題ありません。

🔍 患者の価値観とQOL

多発性骨髄腫は「ながら治療」ができる時代になったと言われています。治療を受けながら社会生活を送ることの重要性を考慮し、患者の仕事や家族の状況、生活の質を維持したいという希望を治療計画に反映させます。DVRd療法は外来通院で実施可能であり、皮下注射のため投与時間も短縮されています(静脈注射のダラザレックスは初回3-4時間かかるのに対し、皮下注のダラキューロは約5分)。

治療開始前には、患者および家族に対して十分なインフォームドコンセントを行います。期待される効果だけでなく、起こりうる副作用、対処法、緊急時の連絡先などを文書と口頭で説明します。特に、血栓症や感染症の初期症状については具体的に伝え、早期受診を促すことが重要です。

多職種連携も欠かせません。薬剤師による服薬指導、看護師による副作用モニタリングと生活指導、栄養士による栄養サポート、ソーシャルワーカーによる経済的・社会的支援など、チーム医療の体制を整えることで、DVRd療法の安全性と継続性を高めることができます。

治療費の問題についても患者に情報提供します。DVRd療法は高額な治療となるため、高額療養費制度や医療費助成制度の利用について、ソーシャルワーカーと連携して相談に応じます。経済的理由で治療継続が困難にならないよう、早期から支援体制を構築することが大切です。

日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラインでは、未治療多発性骨髄腫の推奨治療レジメンが詳しく解説されています。移植適応・非適応別の治療戦略について最新のエビデンスに基づいた情報が得られます。
CareNetの記事では、ASCO多発性骨髄腫ガイドライン改訂の内容が報告されており、国際的な治療推奨の最新動向を把握できます。移植適応初回治療における4剤併用療法の位置づけが明確化されています。