ブプレノルフィン商品名と剤形別使用法
腰痛患者にノルスパンテープを腰に貼ると血中濃度が約30%しか得られません
ブプレノルフィン商品名の全体像と分類
ブプレノルフィンは、複数の商品名で流通している合成麻薬性鎮痛薬です。日本国内での主な商品名は、注射剤・坐剤として販売される「レペタン」と、経皮吸収型製剤として展開される「ノルスパンテープ」の2系統に大別されます。同じ有効成分でも、剤形によって適応疾患や使用法が大きく異なるため、医療従事者は商品名だけでなく剤形と適応を正確に把握する必要があります。
レペタンは大塚製薬が製造販売する先発医薬品です。注射剤にはレペタン注0.2mg、レペタン注0.3mgがあり、術後疼痛、各種癌、心筋梗塞症における鎮痛に用いられます。坐剤にはレペタン坐剤0.2mg、レペタン坐剤0.4mgがあり、注射剤と同様の適応に加え、手術直後の激しい疼痛にはまず注射剤を投与した後、必要に応じて坐剤へと移行することが推奨されています。また、日新製薬からはブプレノルフィン注0.2mg「日新」、ブプレノルフィン注0.3mg「日新」という後発医薬品も販売されており、これらは薬価が先発品より低く設定されています。
ノルスパンテープはムンディファーマが製造販売する貼付剤です。ノルスパンテープ5mg、ノルスパンテープ10mg、ノルスパンテープ20mgの3規格があり、非オピオイド鎮痛剤で治療困難な変形性関節症および腰痛症に伴う慢性疼痛における鎮痛が適応となっています。通常成人は7日に1回貼り替える用法で使用され、初回貼付用量はブプレノルフィンとして5mgが選択されます。つまり注射剤・坐剤は急性疼痛やがん性疼痛に、貼付剤は慢性非がん性疼痛に主に使用されるということですね。
商品名の使い分けが重要な理由は、処方箋記載や在庫管理の正確性にも関係します。例えば処方箋に「ブプレノルフィン」とだけ記載されると、薬局では剤形が特定できず調剤に支障をきたします。レペタンとノルスパンでは適応疾患も投与経路も全く異なるため、医師や薬剤師は商品名と剤形を常にセットで確認する習慣を持つことが求められます。
KEGGデータベースの商品一覧ページでは、ブプレノルフィン製剤の薬価や規格を網羅的に確認できます。
ブプレノルフィン注射剤と坐剤の特徴
レペタン注射剤は、術後疼痛やがん性疼痛に対して迅速な鎮痛効果を発揮する注射薬です。通常、成人にはブプレノルフィンとして1回0.2mg~0.3mg(体重当たり4μg/kg~6μg/kg)を筋肉内または静脈内に注射します。初回量は0.2mgとすることが望ましく、その後必要に応じて約6~8時間ごとに反復注射します。作用時間はモルヒネより長く約6時間程度持続し、鎮痛効果はモルヒネの25~50倍の力価があるとされています。
先発品のレペタン注0.2mgは薬価が174円/管、レペタン注0.3mgは205円/管です。一方、後発品のブプレノルフィン注0.2mg「日新」は67円/管、ブプレノルフィン注0.3mg「日新」は205円/管となっており、0.2mg規格では後発品の方が薬価差が大きい点が注目されます。医療機関のコスト削減を考慮する場合、後発品への切り替えは有効な選択肢となります。
レペタン坐剤は、経口投与が困難な患者や継続的な鎮痛を必要とする場合に選択されます。通常、成人にはブプレノルフィンとして1回0.2mg又は0.4mgを直腸内に投与し、その後必要に応じて約8~12時間ごとに反復投与します。レペタン坐剤0.2mgの薬価は111.8円/個、レペタン坐剤0.4mgは141.5円/個です。術直後の激しい疼痛にはまず注射剤を投与し、その後坐剤を投与するという段階的使用が推奨されています。これは注射剤の方が効果発現が早く、坐剤は吸収に個人差があるためです。
注射剤・坐剤ともに劇薬、向精神薬(第二種)、習慣性医薬品に指定されており、処方箋医薬品として厳重な管理が求められます。特にペンタゾシン、ブプレノルフィン等の向精神薬注射剤については、特に乱用・盗難のおそれが高いので保管管理を厳重にし、不正使用や盗難防止に一層留意する必要があると厚生労働省の取扱手引に明記されています。医療機関では施錠可能な保管庫に保管し、使用記録を正確に残すことが必須です。
厚生労働省の病院・診療所における向精神薬取扱いの手引(PDF)には、具体的な保管・管理方法が詳述されています。
ブプレノルフィン貼付剤ノルスパンテープの使用法
ノルスパンテープは、皮膚から薬剤を吸収させて全身的に作用する経皮吸収型製剤です。一般的な湿布薬のように「痛い部位に直接貼る」のではなく、「血中に安定した濃度を保つために適切な部位に貼る」という考え方が基本になります。貼付部位は前胸部、上背部、上腕外側部、または側胸部に限定されており、膝や腰など痛みのある部位に直接貼ることは推奨されていません。
臨床試験のデータによると、膝蓋骨上部に貼った場合、上背部に貼ったときの約30%しか血中濃度が得られなかったことが報告されています。腰部も同様に吸収が不安定であり、皮膚の温度変動や動作によるシワ・剥離などが多いため、安定した吸収が期待できません。前胸部・上背部・上腕外側・側胸部は比較的平らで動きが少なく、血流が安定しているため、薬剤が7日間しっかり皮膚に密着し、一定の血中濃度を維持できるのです。
ノルスパンテープ5mgの薬価は1579.1円/枚、ノルスパンテープ10mgは2431.4円/枚、ノルスパンテープ20mgは3743.3円/枚です。初回貼付用量はブプレノルフィンとして5mgとし、その後の貼付用量は患者の症状に応じて適宜増減しますが、20mgを超えないことが定められています。つまり、1回の使用で最大20mg(3743.3円)までとなり、7日間持続するため、1日あたりのコストは約535円となります。
貼付の際には、同じ部位に続けて貼らないよう注意が必要です。皮膚の刺激を避けるため、同じ場所に貼る場合は3週間以上空けることが推奨されています。また、貼った後も皮膚内にブプレノルフィンがしばらく残留するため、同じ部位にすぐ貼り直すと血中濃度が上昇しすぎるリスクがあります。左右交互に貼るなど、貼付部位をローテーションする管理が重要ですね。
さらに、貼付部位を温めると薬の放出が早まり血中濃度が急上昇する可能性があります。高温の湯に長く浸かる入浴、サウナ・岩盤浴の利用、電気毛布・カイロの使用、熱いシャワーを貼付部位に直接当てる行為はいずれも避けるべきです。患者指導の際には、入浴時の注意点として「湯船に長時間つからず、貼付部位が湯に浸からないようにする」ことを具体的に伝える必要があります。
日経メディカルのDIクイズ記事では、ノルスパンテープを腰に貼らない理由が薬理学的に解説されています。
ブプレノルフィンの向精神薬としての規制と管理
ブプレノルフィンは、麻薬及び向精神薬取締法において麻薬ではなく向精神薬(第二種)に分類されています。麻薬ではないものの、中枢神経系に作用して依存性を形成する可能性があるため、厳重な管理が法律で義務付けられています。医療機関では向精神薬取扱者として登録し、保管・使用・廃棄に関する記録を保持する必要があります。
向精神薬取扱者は、その所有する向精神薬を廃棄するときは、焼却その他の向精神薬を回収することが困難な方法により行わなければなりません。また、ペンタゾシン、ブプレノルフィン等の向精神薬注射剤については、特に乱用・盗難のおそれが高いので保管管理を厳重にし、不正使用や盗難防止に一層留意することが厚生労働省の通知で繰り返し強調されています。これは医療従事者による横流しや自己使用などの事例が過去にあったためです。
具体的な保管方法としては、施錠可能な保管庫に収納し、鍵は責任者が管理する体制を整えることが基本です。使用の都度、患者名・投与量・投与日時を記録し、在庫数との照合を定期的に行います。薬局では調剤録に詳細な記録を残し、定期的に在庫確認を実施することが求められます。処方日数の制限もあり、ノルスパンテープなどの第二種向精神薬は1回14日分までの処方制限とされているため、1日に1枚貼付のノルスパンテープは1回の処方量は2枚までとなります。
長期使用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い慎重に投与することが添付文書にも記載されています。長期使用後、急に投与を中止すると不安、不眠、興奮、胸内苦悶、嘔気、振戦、発汗等の禁断症状があらわれることがあるため、投与を中止する場合は徐々に減量することが望ましいとされています。患者が自己判断で突然中止しないよう、服薬指導の際に離脱症状のリスクを説明することが重要です。
厚生労働省の薬局における向精神薬取扱いの手引(PDF)では、薬局での保管・管理の具体的な方法が解説されています。
ブプレノルフィンの適応疾患と他のオピオイドとの違い
ブプレノルフィンは、剤形によって適応疾患が明確に区別されています。レペタン注射剤・坐剤は、術後、各種癌、心筋梗塞症の鎮痛、および手術時の麻酔補助に適応があります。一方、ノルスパンテープは非オピオイド鎮痛剤で治療困難な変形性関節症および腰痛症に伴う慢性疼痛における鎮痛が適応となっており、がん性疼痛には適応がありません。つまり急性疼痛・がん性疼痛には注射剤・坐剤を、慢性非がん性疼痛には貼付剤を選択するのが基本です。
ブプレノルフィンは、μオピオイド受容体に対して部分作動薬として作用し、κオピオイド受容体に対しては拮抗作用を示します。この特性により、モルヒネなどの完全作動薬と比較して呼吸抑制が軽度であり、依存性形成および乱用のリスクが低いとされています。しかし、μオピオイド受容体への親和性が他のオピオイド鎮痛剤より強いため、他のオピオイドとの併用や切り替えには注意が必要です。
ブプレノルフィンから他のオピオイドへ切り替える場合、ブプレノルフィンがμオピオイド受容体に強固に結合しているため、切り替え直後には他のオピオイド鎮痛剤の鎮痛効果が十分に得られないことがあります。逆に、他のオピオイドからブプレノルフィンへ切り替える場合も、受容体からの置き換わりに時間がかかるため、十分な鎮痛効果が得られるまで時間を要することがあります。切り替え時には重複期間を設けず、十分な間隔を置くことが推奨されています。
特にレペタン(ブプレノルフィン)やソセゴン(ペンタゾシン)などの拮抗性オピオイドを、他のオピオイドと併用すると拮抗作用により疼痛が悪化するリスクがあります。例えばフェンタニル使用中の患者にレペタンを投与すると、フェンタニルの除痛効果が減弱してしまうため、併用は避けるべきです。電子カルテシステムでは処方時に注意喚起のアラートが出るよう設定されている施設も多くなっています。
非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドラインでは、ブプレノルフィン貼付剤は変形性関節症や腰痛症などの筋骨格系疼痛に推奨される選択肢として位置づけられています。トラマドール、コデイン、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル貼付剤と並び、非がん性慢性疼痛に適応のある6種類のオピオイドの一つです。
日本ペインクリニック学会の非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドラインでは、各オピオイドの使い分けが詳細に解説されています。