ビグアナイド薬一覧と種類・特徴・使用時の注意

ビグアナイド薬一覧と種類・特徴

メトホルミンを長期服用する患者の約3割でビタミンB12が基準値以下に低下します

この記事の3つのポイント
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国内で使用できるビグアナイド薬の全製剤

メトホルミン製剤とブホルミン製剤の成分別分類、各製剤の規格・投与量・特徴を一覧表で整理し、配合剤も含めた実践的な製剤選択のポイントを解説します

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造影剤使用時の休薬ルールとeGFR基準

ヨード造影剤投与前後の具体的な休薬期間、腎機能レベル別の投与量調整基準、乳酸アシドーシスのリスク評価と予防策を詳しく説明します

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長期投与で注意すべきビタミンB12欠乏

メトホルミン長期服用患者における栄養障害のモニタリング方法、末梢神経障害や貧血の早期発見、適切な検査タイミングについて解説します

ビグアナイド薬の主要成分と製剤一覧

 

国内で認可されているビグアナイド薬には、メトホルミン塩酸塩を有効成分とする製剤とブホルミン塩酸塩を有効成分とする製剤の2種類が存在します。2型糖尿病治療における一選択薬として世界的に広く使用されており、日本でも処方頻度が高い薬剤群です。

メトホルミン製剤は、先発品である「メトグルコ」をはじめとして、多数の後発品が発売されています。メトグルコ錠には250mg錠と500mg錠の2規格があり、成人における最高投与量は薬剤成分として1日2250mgまで使用可能です。この投与量は2013年に従来の750mgから大幅に引き上げられました。

他の主要なメトホルミン製剤として「グリコラン錠250mg」があります。これは従来から使用されてきた製剤で、原則として1日最高投与量は750mgまでとされており、メトグルコとは投与量の上限が異なる点に注意が必要です。

ブホルミン製剤は「ジベトス錠50mg」が代表的な製剤です。メトホルミンと同じビグアナイド系に分類されますが、作用機序や代謝経路に若干の違いがあり、臨床での使用頻度はメトホルミンと比較すると少ない傾向にあります。通常成人には1日量100~150mgを2~3回に分割して食後に経口投与し、最高1日量は150mgまでです。

後発品も多数流通しており、「メトホルミン塩酸塩錠250mgMT」「メトホルミン塩酸塩錠500mgMT」といった名称で、製造販売会社ごとに異なる商品名が付けられています。薬価も先発品と後発品で異なるため、経済的な側面からも選択肢が広がっています。

配合剤も複数開発されており、DPP-4阻害薬とメトホルミンを組み合わせた製剤が主流です。代表的なものとして「エクメット配合錠LD/HD」(ビルダグリプチン+メトホルミン)、「イニシンク配合錠」(アログリプチン+メトホルミン)などがあります。配合剤は服薬アドヒアランスの向上が期待できる一方、用量調整の柔軟性が低下する点に留意が必要です。

KEGG医薬品データベースのビグアナイド系糖尿病薬一覧では、国内で流通する全製剤の詳細情報と薬価を確認できます。

ビグアナイド薬の作用機序と特徴

ビグアナイド薬は主に肝臓における糖新生を抑制することで血糖値を低下させる作用機序を持ちます。通常の糖尿病治療薬とは異なり、インスリン分泌を促進するのではなく、インスリンの効きを改善する点が大きな特徴です。

肝臓では糖質以外の物質(乳酸、アミノ酸など)からブドウ糖を作り出す糖新生という反応が常に行われています。ビグアナイド薬はこのプロセスを抑制することで、肝臓から血液中に放出される糖の量を減らします。さらに筋肉や脂肪組織でのインスリン感受性を高め、血液中の糖の取り込みを促進する働きも持っています。

つまりインスリン抵抗性を改善する薬ということですね。

この作用機序により、ビグアナイド薬は単独使用では低血糖を起こしにくいという安全性上の利点があります。インスリンやスルホニル尿素薬のように膵臓を刺激して強制的にインスリンを分泌させる薬剤とは異なり、体内のインスリンの効率を高めるだけなので、血糖値が正常範囲にあるときには作用が働きません。

体重増加を引き起こしにくい点も臨床上の大きなメリットです。むしろ体重減少傾向を示すことが多く、肥満を合併する2型糖尿病患者において特に有用な選択肢となっています。欧米の大規模研究では、メトホルミン投与により平均2~3kgの体重減少が報告されています。

心血管イベント抑制効果も注目されており、英国で実施されたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)では、肥満2型糖尿病患者においてメトホルミンが心筋梗塞のリスクを約40%減少させることが示されました。この結果により、欧米では2型糖尿病治療における第一選択薬として広く推奨されるようになりました。

日本糖尿病学会の治療ガイドラインでも、特に肥満やインスリン抵抗性が顕著な患者において、メトホルミンは初期治療の選択肢の一つとして位置づけられています。ただし欧米とは異なり、日本では患者の病態に応じて複数の薬剤クラスから選択するアプローチが取られています。

ビグアナイド薬の用法用量と投与上の注意

メトホルミン製剤の基本的な投与方法は、通常成人に対して1日500mgから開始し、1日2~3回に分割して食直前または食後に経口投与します。維持量は効果を観察しながら決定しますが、通常は1日750~1500mgとされています。

投与開始時に重要なのは、少量から始めて段階的に増量するアプローチです。初回から高用量を投与すると消化器症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛など)が出現しやすくなります。1~2週間の間隔をあけて、副作用の有無を確認しながら用量を調整していく方法が推奨されています。

メトグルコ錠では患者の状態により適宜増減可能ですが、1日最高投与量は2250mgまでです。この高用量設定により、従来の用量では血糖コントロールが不十分だった患者に対しても、より強力な治療効果が期待できるようになりました。ただし日本人では1回の投与量が750mgを超えると消化器症状が出やすいという報告があり、実臨床では1回500mg×朝夕2回(計1000mg)といった投与パターンが多く採用されています。

食事のタイミングとの関係も重要です。メトホルミンは食直前または食後に服用することで、食後の血糖上昇を効果的に抑制できます。空腹時に服用すると胃腸障害が出現しやすくなるため、必ず食事と関連付けて服用するよう患者指導を行う必要があります。

分割回数については、1日2回投与と3回投与のどちらも可能ですが、服薬アドヒアランスを考慮すると1日2回投与の方が望ましいケースが多いです。メトホルミンの半減期は約4~6時間であり、血中濃度を安定させるためには複数回投与が理論的には適していますが、実際の臨床効果と服薬継続率を総合的に判断して投与回数を決定します。

腎機能による投与量調整も必須です。メトホルミンは主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者では血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。具体的な基準については次の項目で詳述します。

ビグアナイド薬使用時の禁忌と腎機能評価

ビグアナイド薬使用において最も重要な確認事項が腎機能です。メトホルミン製剤の添付文書では、腎機能を推定糸球体濾過量(eGFR)で評価し、投与の可否と用量を決定するよう明記されています。

eGFRが30mL/min/1.73m²未満の重度腎機能障害患者、または透析患者(腹膜透析を含む)では、メトホルミンは禁忌です。この基準は2019年の添付文書改訂により明確化されました。以前は「中等度以上の腎機能障害」という曖昧な表現でしたが、現在は数値基準が設定されています。

eGFRが30~45mL/min/1.73m²の場合は慎重投与が必要であり、リスクとベネフィットを勘案して投与の適否を判断します。この範囲では投与開始は原則として推奨されず、すでに投与中の患者についても減量または中止を検討する必要があります。

eGFRが45~60mL/min/1.73m²の場合は、腎機能に応じて最高用量を調整します。この範囲では1日最高投与量を1500mg程度に制限することが目安とされています。また投与中はより頻回に腎機能を確認するなど、慎重な経過観察が求められます。

つまり定期的な腎機能チェックが必須です。

高齢者への投与にも特別な注意が必要です。75歳以上の高齢者では腎機能の生理的な低下に加えて、脱水や感染症などのリスクファクターが重なりやすく、乳酸アシドーシスの発症頻度が高いことが報告されています。高齢者への投与開始時には、eGFRの値だけでなく、全身状態や併存疾患も総合的に評価することが重要です。

重度の肝機能障害も禁忌とされています。肝臓は乳酸を代謝する主要な臓器であり、肝機能が著しく低下している状態では、ビグアナイド薬により産生された乳酸が蓄積しやすくなるためです。

心血管系や肺機能に高度の障害がある患者、低酸素血症を起こしやすい状態の患者も禁忌です。組織への酸素供給が不十分になると、細胞は嫌気的代謝に移行して乳酸を多く産生するため、乳酸アシドーシスのリスクが上昇します。

過度のアルコール摂取も避けるべき状況です。アルコールは肝臓での乳酸代謝を阻害し、また脱水を引き起こすことで腎機能を低下させるため、ビグアナイド薬との併用によりリスクが増大します。

日本糖尿病協会の「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」には、腎機能レベル別の詳細な投与指針が掲載されています。

ビグアナイド薬と造影剤使用時の休薬ルール

ヨード造影剤を使用する検査を実施する際、ビグアナイド薬服用患者では特別な注意と休薬対応が必要になります。ヨード造影剤の投与により一過性の腎機能低下が起こる可能性があり、その結果としてビグアナイド薬の腎排泄が減少し血中濃度が上昇するためです。

eGFRが60mL/min/1.73m²以上の腎機能正常患者では、原則として休薬は不要とされていますが、医療機関によっては安全性を考慮して休薬する運用もあります。日本医学放射線学会と日本腎臓学会の合同提言では、この範囲の患者でも可能であれば検査前から休薬することを推奨しています。

eGFRが30~60mL/min/1.73m²の中等度腎機能障害患者では、明確な休薬ルールが定められています。ヨード造影剤投与48時間前から休薬を開始し、造影剤投与後48時間は再開しないという基準です。つまり検査当日を含めて合計5日間の休薬期間が必要になります。

検査前は本剤の投与を一時的に中止します(緊急検査時を除く)。可能であれば2日前から休薬するのが原則です。

造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開してはいけません。これは造影剤による腎機能への影響が完全に回復するまでに時間を要するためです。投与再開時には血清クレアチニン値に変化がないことを確認し、患者の状態に十分注意しながら慎重に再開します。

eGFR30mL/min/1.73m²未満の重度腎機能障害患者では、メトホルミン自体が禁忌であるため、通常は投与されていません。万が一投与されている場合や、肝機能低下・低酸素症を合併している場合は、造影剤の投与自体を避けるべきとされています。

救急患者など緊急で造影検査が必要な場合は、検査当日から休薬を開始し、検査後は乳酸アシドーシスの徴候(悪心、嘔吐、腹痛、過呼吸、意識障害など)に特に注意しながら経過観察を行います。この状況では48時間後に腎機能を再評価し、異常がないことを確認してから再開を検討します。

院内での運用体制も重要です。放射線科や検査部門と薬剤部、処方医との間で情報共有システムを構築し、造影剤使用予定患者のビグアナイド薬服用状況を確実に把握できる仕組みが必要です。電子カルテのアラート機能や処方チェックシステムの活用が有効です。

日本医学放射線学会の「ヨード造影剤とビグアナイド系糖尿病薬との併用に関するガイドライン」では、腎機能レベル別の詳細な対応フローチャートが示されています。

ビグアナイド薬の副作用と乳酸アシドーシス

ビグアナイド薬の最も頻度が高い副作用は消化器症状です。悪心、嘔吐、下痢、腹部不快感、食欲不振などが投与開始時に出現しやすく、特に投与開始後1~2週間以内に発現することが多いです。これらの症状は多くの場合、用量依存性であり、投与量を減らすか、時間をかけて徐々に増量することで軽減できます。

消化器症状が持続する場合の対策として、食後投与の徹底、1回投与量の減量と分割回数の増加、徐放性製剤への変更などが検討されます。症状が重度で改善しない場合は、薬剤の変更も考慮する必要があります。

最も重篤な副作用が乳酸アシドーシスです。これは体内に乳酸が異常に蓄積し、血液が酸性に傾く状態で、死亡率が約50%と非常に予後不良な合併症です。ただし適切に使用されている限り、メトホルミンによる乳酸アシドーシスの発症頻度は10万人・年あたり3~9人程度と極めて稀です。

乳酸アシドーシスのリスクが高まるのは、禁忌や慎重投与の条件を無視して投与された場合です。腎機能障害、肝機能障害、心不全、呼吸不全、脱水、過度のアルコール摂取、高齢者などが重要なリスクファクターとなります。

初期症状としては、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状が出現します。これらは通常の副作用と区別しにくいため注意が必要です。進行すると過呼吸(深く大きい呼吸)、筋肉痛、倦怠感、意識障害などが現れます。このような症状を認めた場合は、直ちに投与を中止し、血液ガス分析や血中乳酸値の測定を行います。

意外ですね。

診断基準は、血中乳酸値5mmol/L以上、血液pH7.35以下、乳酸/ピルビン酸比の上昇などです。確定診断後は、重炭酸ナトリウムの投与や透析療法などの集中治療が必要になります。

長期投与で注意すべき副作用として、ビタミンB12欠乏があります。メトホルミンは腸管でのビタミンB12吸収を阻害する作用があり、長期服用患者の約20~30%で血清ビタミンB12値が低下すると報告されています。ビタミンB12欠乏は巨赤芽球性貧血や末梢神経障害(しびれ、感覚異常など)を引き起こす可能性があります。

長期服用患者では1~2年ごとにビタミンB12や葉酸の測定を行い、欠乏が認められた場合はビタミンB12製剤の補充を検討します。特に原因不明の貧血や末梢神経症状が出現した患者では、積極的に測定を行うべきです。

皮膚症状として、稀に発疹、紅斑、そう痒などが報告されています。また肝機能障害(AST、ALT上昇)が出現することもあるため、定期的な肝機能検査も推奨されます。

副作用モニタリングのポイントは、投与開始時の消化器症状の確認、定期的な腎機能・肝機能・血算の検査、長期投与患者でのビタミンB12測定、乳酸アシドーシスのリスク因子の継続的な評価です。

ビグアナイド薬の配合剤と併用療法

近年、ビグアナイド薬と他の糖尿病治療薬を組み合わせた配合剤が多数開発され、臨床で広く使用されるようになっています。配合剤は服薬錠数の減少により患者のアドヒアランス向上が期待できる一方、用量調整の柔軟性や副作用発現時の原因特定という点では単剤併用に劣ります。

DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤が最も多く、「エクメット配合錠LD/HD」(ビルダグリプチン50mg+メトホルミン250mg/500mg)、「イニシンク配合錠」(アログリプチン25mg+メトホルミン500mg)、「メタアナ配合錠LD/HD」(アナグリプチン100mg+メトホルミン250mg/500mg)などがあります。

これらは作用機序の異なる2剤を組み合わせることで、相加的または相乗的な血糖降下効果が得られます。DPP-4阻害薬はインクレチンの分解を抑制してインスリン分泌を促進する薬剤であり、メトホルミンの糖新生抑制作用と組み合わせることで、多面的な血糖コントロールが可能になります。

SGLT2阻害薬とメトホルミンの配合剤も登場しています。「スージャヌ配合錠」(イプラグリフロジン50mg+メトホルミン500mg)などが該当します。SGLT2阻害薬は腎臓での糖再吸収を阻害して尿中に糖を排泄させる作用を持ち、体重減少効果や心血管保護作用も期待できることから、メトホルミンとの併用により包括的な治療効果が得られます。

配合剤を選択する際のポイントは、患者の病態と治療目標に応じた適切な組み合わせの選択、各成分の用量が患者に適しているかの確認、副作用プロファイルの理解、腎機能など投与制限の確認です。

例えばエクメット配合錠LDはメトホルミン250mg、HDは500mg含有であり、患者の腎機能や血糖コントロール状況に応じて選択します。しかし配合剤では各成分を独立して増減できないため、きめ細かな用量調整が必要な患者では単剤併用の方が適している場合もあります。

配合剤使用時の休薬対応も重要です。例えば造影剤使用時には、配合剤に含まれるメトホルミン成分のために休薬が必要になります。この場合、併用されているDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬の成分まで中止されることになるため、血糖コントロールへの影響を考慮した対応が求められます。

検査前後の期間だけ配合剤を中止し、必要に応じてDPP-4阻害薬単剤に切り替える、または血糖値をこまめにモニタリングするなどの対応を検討します。

配合剤から単剤併用への切り替えや、単剤併用から配合剤への切り替えを行う場合は、服薬コンプライアンスの変化や患者の理解度にも配慮が必要です。切り替えの理由や方法について、薬剤師から丁寧に説明することが、治療の継続性を保つ上で重要になります。

KEGG医薬品情報データベースのメトホルミン塩酸塩ページでは、配合剤を含む全製剤の詳細情報が確認できます。

糖尿病の最新治療Vol.10 No.1 特集:ビグアナイド薬(メトホルミン)Update