胃内減圧チューブと管理
胃内減圧チューブの目的と適応と禁忌
胃内減圧チューブ(いわゆる胃管・胃サンプチューブ等)は、胃内容物を体外へ誘導して胃内の減圧を行い、嘔吐や腹部膨満の軽減、誤嚥リスクの低減(状況による)を狙う処置です。
もう一つの重要な役割は「情報収集」で、排液量や性状(胆汁様・血性・便臭様など)を継時的に見て、閉塞・出血・穿孔の疑い、腸管蠕動回復の兆候を評価できます。
臨床で混同しやすい点として、腸閉塞の保存療法では「イレウス管(小腸まで進める)」も減圧手段で、閉塞部位に近いところでより効果的に減圧・造影ができる特徴があります。
適応を「症状」から整理すると、以下のように考えるとチームで共有しやすいです。
・🤢嘔気・嘔吐が強く、胃内容が貯留している(術後・イレウス疑い・胃排出遅延など)
参考)経鼻胃管
・🎈腹部膨満が強く、減圧により呼吸苦や疼痛が増悪している
・🧪排液の評価が治療方針(継続/抜去/画像再評価)に直結する
禁忌や慎重適応は施設基準や医師判断が大前提ですが、少なくとも「挿入が難しい状況=リスクが上がる状況」という見立ては重要です。医療事故分析でも、挿入困難・抵抗感があったのに進めた、という背景要因が繰り返し示されています。
参考)https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/OE-procedure.pdf
胃内減圧チューブの挿入と固定と痛み対策
挿入時は「通すこと」自体よりも、「安全に通して、不要な刺激を減らし、後でずれない固定を作る」ことが成否を分けます。
強引な挿入は鼻咽頭粘膜出血などの合併症につながりうるため、十分な潤滑と挿入角度への配慮、意識がある患者では嚥下運動を利用することが推奨されています。
成人で鼻腔・口腔から胃内へ到達する挿入距離の目安として50~60cm程度が示されており、深すぎ・浅すぎの双方が問題になり得ます。
固定は「抜去・自己抜去を防ぐ」だけでなく、「鼻翼の圧迫壊死を防ぐ」意味があります。経鼻胃管の留置中合併症として鼻翼固定部の圧迫壊死が挙げられているため、皮膚状態の観察と固定の張力調整をルーチン化します。
疼痛・違和感が強いと、不穏や自己抜去、ひいては再挿入(=再び誤挿入リスク)に連鎖しやすいので、鎮痛・鎮静の方針、体位調整、口腔ケア(口渇対策)をセットで考えます。
参考)治療方法(薬物療法・イレウス管の挿入・手術療法)、症状、アセ…
現場で見落とされがちな「地味だけど効く」工夫として、長期留置ではチューブ接触による胃粘膜障害が起き得るため、時々2~3cm動かして予防する、という知見があります。
参考)胃管挿入,胃洗浄
減圧が目的でも、粘膜障害で出血が始まると排液の解釈が難しくなるため、「血性排液=病態悪化」と短絡せず、機械刺激の可能性も同時に疑う視点が役立ちます。
胃内減圧チューブの位置確認と気泡音とX線とpH
位置確認は、医療安全上「最優先の品質管理点」です。胃管誤挿入の分析では、気泡音が確認できても誤挿入だった事例が多数あり、気泡音のみでの確定は不十分であることが明確に示されています。
同分析では、胃内留置の確認方法として「挿入長」「気泡音」「内容物吸引」「吸引物のpH」「X線撮影」など複数の方法を組み合わせる必要性が示唆されています。
また、誤挿入の発見時期は「栄養剤注入後」が最も多く、注入してから呼吸状態悪化→画像で判明、というパターンが多い点は、減圧チューブ運用でも他人事ではありません(チューブ種別が違っても、誤挿入・迷入の基本構造は同じためです)。
実務に落とすと、次の順番で“疑いを潰す”運用が再現性があります。
・👀見て確認:口腔内でのたわみ・とぐろ・交差がないか(固定前に観察)
・🧲引いて確認:胃内容物を吸引できるか(引けないこと自体が重要所見)
・🧪pHで補強:吸引物のpH測定は位置確認の一手段で、pH5.5以下が一つの目安として扱われています(ただし薬剤などで解釈に注意)。
・🩻画像で確定:初回留置や不確実例ではX線で走行と先端位置を確認する運用が安全策として整理されています。
「意外と知られていない落とし穴」として、誤挿入していても気泡音が“聞こえる”ことがある点は、事故分析の中で具体的に示されています。
さらに、位置確認のための送気そのものが、位置によっては有害事象を起こし得る可能性が指摘されており、確認手技にもリスクがあることを前提に、最小限・複合的に行う姿勢が必要です。
位置確認の一次判断がつかない(吸引できない、症状が変、抵抗が強い、咳嗽が弱い等)ときは、「とりあえず固定して様子を見る」ほど危険な選択はありません。事故分析でも、院内ルール(X線やpH等)を守らずに開始したことが重大転帰に結びついた事例が複数示されています。
参考:胃管の誤挿入の発生状況、確認方法(気泡音・吸引・pH・X線)とその限界、改善策の具体例(マニュアル遵守、複数確認)
https://www.med-safe.jp/pdf/report_2015_3_T003.pdf
胃内減圧チューブの合併症と観察と記録
合併症は「挿入時」だけでなく「留置中」にも起こり、患者の苦痛・誤嚥・出血・皮膚障害など多面的です。経鼻胃管の合併症として、挿入時の嘔吐による誤嚥や気管内迷入、留置中の不快、嚥下障害による誤嚥、消化管の出血・穿孔、鼻翼固定部の圧迫壊死が挙げられています。
観察は、排液だけ見ていると事故が起きます。腸閉塞・イレウスの文脈でも、嘔気・嘔吐、口渇、腹部症状、腹痛などの症状確認が看護のポイントとして整理されており、減圧の目的に直結します。
つまり、排液が減っても「症状が軽くなっているか」「腹部所見が改善しているか」「SpO2や呼吸苦が悪化していないか」を同時に追うことで、減圧の効果と合併症の両方を拾えます。
記録で押さえると監査・申し送りで強いのは、次の5点です。
・🧾チューブ種別・サイズ(Fr)と挿入経路(右/左鼻腔など)
・📏固定長(cm)とマーキング位置のずれの有無(シフトごと)
・🧪位置確認の根拠(吸引の有無、pH、X線の有無と結果の確認者)
・🪣排液の量・色・におい・性状(泡沫、血性、胆汁様など)
・😷患者状態(苦痛、咽頭違和感、嘔気、呼吸状態、腹部所見)
「予防できるのに起こりがち」な合併症として、イレウス管では材質が硬く鼻翼の潰瘍形成が起きやすいとされ、固定部ケアが重要と説明されています。
参考)イレウスチューブ|イレウスチューブの適応・禁忌とケアのポイン…
胃内減圧チューブでも固定部の圧迫壊死は合併症に含まれるため、皮膚トラブルを“排液と同じくらい優先度の高いアウトカム”として扱うと、患者満足と安全性が上がります。
胃内減圧チューブの独自視点:誤挿入を減らすチーム運用と中止判断
検索上位の解説は「挿入手技」や「合併症一覧」に寄りがちですが、現場の事故を減らすカギは“運用設計”です。胃管誤挿入の分析では、院内ルールの周知不足・不遵守、申し送りの曖昧さ、X線を撮ったのに未確認、という「人と仕組みの穴」が繰り返し登場します。
そのため、個人の手技レベルに依存しないよう、次のような運用に落とすと再発防止の効果が出やすいです。
・🧑🤝🧑「開始許可」を分離:減圧開始(吸引開始)や注入開始の前に、位置確認をした人と開始する人を同一にしない、またはダブルチェックにする(X線は“撮影”でなく“確認”が完了条件)。
・📋チェックリスト化:吸引・pH・X線のどれを省略したかが一目で分かる様式にし、「省略の理由」を必須入力にする。
・⛔中止判断の言語化:抵抗が強い、咳嗽反射が乏しい、挿入困難、症状が変、のいずれかがあれば“いったん止める”を合言葉にして、上級者コールや透視・内視鏡等の代替案へ切り替える。
意外性のあるポイントとして、「気管挿管中なら誤挿入しないはず」という思い込みが背景要因として挙げられており、カフがあっても誤挿入が起こり得る認識が必要だと示されています。
この視点は周術期の胃内減圧(術中・術後)でも重要で、挿管中・鎮静中ほど咳嗽反射が期待できず、異常の“サインが出にくい”ため、より形式的・客観的な確認(X線、吸引、pH等)に寄せる方が安全です。

ピルミルによるGチューブホルダーベルト-さまざまなタイプの医療用栄養チューブ(PEGチューブ、Gチューブ、Jチューブ、PDなど)を固定するよう