胃カメラ用マウスピースと使い捨て
胃カメラ用マウスピースの使い方と固定ベルト
胃カメラ用マウスピースは、患者の開口状態を保持し、スコープの咬傷(スコープかまれ)を防ぐことが主目的です。
実際の装着は「前後の向きを合わせて患者にくわえさせる」「ストラップ(固定ストラップ/固定ベルト)を後頭部に回して固定する」という流れが基本になり、向きが不適切だと口腔損傷や痛みの原因になり得ます。
固定ベルト付きのタイプでは、バンド引掛け部にバンド穴を通し装着する手順が明示されており、誤った取り付けは窒息リスクにつながるため、装着直後と使用中に呼吸状態の確認が求められます。
現場で起こりやすいのは、固定が甘くマウスピースがずれることで、患者が「噛み直そう」として顎の緊張が上がり、結果として挿入が難しくなるケースです(挿入難は検査時間の延長にもつながるため、装着時に“安定しているか”を短時間で評価する習慣が有効です)。
参考)Gagless ギャグレス マウスピース 一般医療機器 内視…
固定の工夫として、マウスピース固定補助テープは「固定の標準化」や「カット作業不要」を特徴としており、スタッフ間の手技差を減らしたい施設では検討余地があります。
参考)https://axel.as-1.co.jp/asone/d/8-3604-01/
- 装着前:ひび割れ、変形、破損など外観異常の有無を目視確認する。
- 装着時:前後の向き、歯列への当たり方(義歯・治療歯の有無)を確認する。
- 固定後:呼吸に異常がないこと、ドレープ等が目に入らないことを確認する(タイプによる)。
参考:ディスポーザブルマウスピースの「構造・目的・使用方法・使用上の注意(義歯を外す、前後の向き、残留消毒液の粘膜炎症など)」
https://www.olympus-medical.jp/sites/default/files/2023-02/ge9390_1000_w_0.pdf
胃カメラ用マウスピースの種類とディスポーザブル
胃カメラ用マウスピースは、医療機器区分として「一般医療機器 内視鏡用マウスピース(JMDNコード:70951000)」に該当する届出例があり、現場では用途(上部消化管、気管支など)や開口部寸法、固定ストラップの有無で選定が分かれます。
例えば、開口部寸法(長径・短径)が規定されたディスポーザブル製品は、組み合わせ可能なスコープ範囲が示されているため、径だけでなく先端キャップ/フード併用の有無も含めて適合性を確認する運用が安全です。
また、術者側への患者飛沫の拡散低減をうたう構造(ドレープ・スポンジを含む構成)もあり、感染対策上の観点で「単に開口保持」以上の要求がある施設では検討対象になります。
ディスポーザブル運用は交差感染対策の一部として直感的に理解されやすい一方、注意点は「ディスポ=最初から清潔」という思い込みが起こり得ることです。
実際には「出荷前に洗浄、消毒および滅菌されていない」ため、施設のガイドラインに基づき使用前の洗浄・消毒の必要性を判断し、必要なら添付文書手順で実施するよう明記された製品があります。
この点は監査・指導時にも確認されやすいので、材料部・内視鏡室・外来で認識を揃え、誰がどのタイミングで何をするか(チェック表)まで落とすと運用が安定します。
- 選定観点:開口部寸法、ストラップ有無、飛沫対策構造、適用可能スコープ径(例:3~16mm等)。
- 運用観点:未滅菌である可能性、使用前処置の要否、単回使用(再使用禁止)。
- 患者観点:義歯、治療歯、欠損歯の有無(歯の破損リスク)。
参考:PMDA公開資料の「内視鏡用マウスピース(一般医療機器)届出情報、使用方法、窒息・誤嚥等の有害事象」
胃カメラ用マウスピースと咽頭反射の軽減ポイント
咽頭反射(いわゆる「オエッ」)は、鎮静の有無だけでなく「口腔・舌根周辺の緊張」と「挿入時の接触」でも増悪しやすく、マウスピースの噛み方や固定の安定が体感に影響します。
臨床現場の工夫として、奥歯で噛み合わせる設計のマウスピースは、咽頭反射や唾液誤嚥の軽減を狙って開発された経緯が示されています。
さらに、装着中に舌を下の前歯に当てる(舌を前方に出す)と奥舌が下がり、のどが広がりやすい、という使用上のコツが具体的に提示されている製品もあります。
一方で「強く噛みしめない」ことを患者に伝える、という極めてシンプルな介入が、顎の過緊張を下げて反射を悪化させにくい、という説明も一般向け情報として共有されています。
医療従事者向けには、声かけを定型化すると説明品質が安定します(例:「奥歯で“軽く”噛んで、唾液は飲み込まず外に出して大丈夫です」など)。
参考)上部消化管内視鏡検査(口から挿入)の受け方|オリンパス おな…
咽頭反射の強い患者では、マウスピースを「噛ませる道具」ではなく「口を支える治具」として認識してもらうほど、検査協力度が上がりやすい点も実感値として重要です。
- 声かけ例:強く噛まない/唾液は飲み込まない/力を抜く。
- 設計アプローチ:奥歯で噛み合わせる構造で反射や誤嚥軽減を目指す。
- コツ:舌の位置を調整して咽頭スペースを確保する提案がある。
胃カメラ用マウスピースの洗浄・消毒と感染対策の落とし穴
ディスポーザブルでも、製品によっては「出荷前に洗浄、消毒および滅菌されていない」ため、使用前の洗浄・消毒が必要かを施設ガイドラインで判断し、必要時は添付文書の手順に従うことが明記されています。
さらに「消毒液が残らないよう滅菌水で十分にすすぐ」「すすぎ不十分だと残留消毒液で粘膜が炎症を起こすおそれ」といった注意もあり、これは“内視鏡本体”に比べて見落とされやすいポイントです。
オゾン水への浸漬やオゾン雰囲気での保管が破損につながるおそれ、という記載もあり、院内でオゾン関連の設備・運用がある施設では保管場所のゾーニングまで含めた整理が必要になります。
「ディスポなのに洗浄・消毒?」という疑問は現場で起こりがちですが、要は“再使用する”ためではなく、“初回使用前の清浄度・安全性を担保する”という思想です。
特に上部内視鏡は咽頭反射や咳嗽で飛沫が出やすく、マウスピース周辺は分泌物の付着も多いので、前処置・後処理の責任分界(誰が、どのタイミングで、何を記録するか)を明文化しておくとヒヤリハットが減ります。
なお単回使用(再使用禁止)とされる製品では、再使用は感染リスクの観点から明確に禁忌です。
- 落とし穴1:ディスポ=滅菌済み、ではない(製品仕様の確認が必要)。
- 落とし穴2:残留消毒液による粘膜炎症リスク(すすぎと乾燥)。
- 落とし穴3:保管環境(オゾン等)による破損リスク。
胃カメラ用マウスピースの独自視点:抜去時の先端キャップ脱落と誤嚥リスク管理
検索上位の一般向け記事では「検査が楽になる工夫」や「鎮静の話」に注目が集まりがちですが、医療安全の観点で見落とせないのが“抜去時”のリスクです。
具体的には、マウスピースから内視鏡を引き抜く際に先端キャップまたはフード等が引っかかると、口腔内で脱落して患者が誤嚥し、窒息の原因となるおそれがあるため、内視鏡をまっすぐ・ゆっくり抜去し、抵抗があれば無理に引かない、という注意が明確に示されています。
さらに抜去後は「先端キャップ等が内視鏡に装着されたままか確認し、脱落していれば速やかに体内から取り出す」ことまで記載されており、ここは“手技の最後の確認項目”としてチェックリスト化すると強い領域です。
このリスクは、マウスピースそのものの選定だけで完全には消えません(先端キャップ/フードの併用、抜去角度、患者の噛み込み、唾液・痰の付着など複合要因が絡むためです)。
そのため、①抜去前に患者へ一声かけて噛み込みを緩めてもらう、②抜去時は“マウスピース開口部の中心線”に沿わせる、③抜去後に先端部品の装着確認を必須化、の3点をルーチンにするだけで、再現性の高い安全対策になります。
また、抜去時は体液飛散の可能性も示されているため、PPEと動線(廃棄容器の位置)を含めた一連の作業設計が、結果としてスタッフ曝露も減らします。
- 抜去の注意:まっすぐ・ゆっくり、抵抗があれば無理に引かない。
- 確認の習慣:抜去後に先端キャップ/フードの装着確認(脱落時は速やかに回収)。
- チーム運用:最後の確認項目を誰が見るか(術者/介助者)を決めて標準化する。