OTSCと内視鏡とクリップと穿孔と瘻孔

OTSCと内視鏡

OTSCの要点(医療従事者向け)
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「全層をつかむ」思想

従来クリップで難しい穿孔・瘻孔・難治性出血を、キャップ内に組織を引き込み強力把持して閉鎖・圧迫するデバイス。

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禁忌と注意

食道静脈瘤は禁忌。誤発射や誤留置を避けるため、チャネル径やスレッドテンション管理など基本手順が重要。

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MRIと除去

3T以下の条件でMRI安全性の記載がある一方、アーチファクトは生じ得る。目的不十分ならremOVE等で内視鏡的除去も選択肢。

OTSCの適応:穿孔と瘻孔と出血部とリーク

 

OTSC(Over-The-Scope Clip)システムは、軟性内視鏡とともに用い、消化管の穿孔・瘻孔・出血部・リークの閉鎖、あるいは組織の圧迫を目的とした体内用結さつクリップです。

クリップはニッケルチタン合金の形状記憶を利用し、キャップからリリース後に元の形状へ戻る力で組織を把持する設計で、通常のthrough-the-scope(TTS)クリップでは把持力・深さが不足しやすい場面の「救済」になり得ます。

臨床では、医原性穿孔(内視鏡治療中の穿孔など)や、術後縫合不全に伴う瘻孔・リーク、難治性出血に対して報告が多く、外科回避の選択肢として位置づけられてきました。

ただし「何でも閉じられる」わけではなく、瘻孔やリークは慢性化すると辺縁が硬化・上皮化し、単純に“押し当てて吸引して発射”するだけでは、閉鎖しても早期再開通しやすいのが落とし穴です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/79/5/79_1049/_pdf

現場の意思決定では、(1) 欠損の大きさ、(2) 辺縁の炎症/線維化、(3) ドレナージや感染コントロールの状況、(4) 近傍の重要構造(胆道・膵管・狭窄部位など)をセットで評価し、「閉鎖成功の条件が揃っているか」を確認する視点が重要です。

意外と見落とされがちなのは「OTSC自体が強力だからこそ、狙いがズレたときのリカバリーが難しい」点で、適応判断の段階で“外した場合の次手(追加処置、除去、外科)”まで考えておくとチームが動きやすくなります。

参考)内視鏡用クリップ OTSCシステム

OTSCの禁忌と使用上の注意:食道静脈瘤と内視鏡

添付文書上、OTSCシステムは食道静脈瘤の治療が禁忌とされています(静脈瘤を破裂させるおそれ)。

また、他の内視鏡用器具と同じ内視鏡で併用する場合、チャネル径3.2mm未満の内視鏡は使用しないこと、と明確な注意があります(鉗子口損傷やスタックのリスク)。

この「チャネル径」の縛りは、緊急止血や穿孔閉鎖の場面で“手元のスコープでそのまま行けるか”を左右するため、夜間・休日当番体制では特に、使用可能なスコープと周辺デバイスの棚卸しが安全管理になります。

手技中の事故で代表的なのが誤発射で、添付文書には「ハンドホイールを通じてスレッドにテンションがかからないよう注意(不要なテンションで誤発射のおそれ)」とあります。

この注意は実務的で、例えばスコープ挿入・体位変換・アシストのケーブル取り回しで知らずにテンションがかかることがあるため、「スレッドのゆとり」「ストラップ固定」「術者・介助の声かけ」を標準化すると事故が減ります。

禁忌が少ないデバイスに見えても、OTSCは“装着しているだけでスコープ先端が大きくなる”ため、挿入時の粘膜損傷や視野制限も含め、チームでリスクを共有する価値があります。

OTSCのサイズとタイプ:tタイプとgcタイプ

OTSCにはtタイプ(消化管に用いる)とgcタイプ(胃に用いる)があり、添付文書上「gcタイプは胃の穿孔及び病変以外には使用しない」とされています。

サイズバリエーションとして、アプリケーターキャップ径(例:16.5mm、17.5mm、21.0mmなど)や適合内視鏡径が示されており、スコープ径とキャップの組み合わせ不一致は手技そのものの破綻につながります。

現場では「病変サイズ」だけでなく「到達性(食道通過、咽頭、狭窄)」「視野」「吸引量」を踏まえ、キャップ径を選ぶ必要があり、同じ穿孔でも部位で選択が変わる点が実務の勘所です。

意外なポイントとして、サイズの議論は“閉じられる欠損の大きさ”よりも、“キャップ内に引き込める組織量”に支配されます。

例えば瘻孔の辺縁が硬く十分に引き込めない場合、欠損が小さく見えても閉鎖は不安定になり、術後に「一旦閉じたがリークが再燃」という経過になり得ます。

そのため、術前に画像や内視鏡所見で硬化・上皮化の程度を推定し、単独OTSCに固執せずドレナージや他の閉鎖手段との組み合わせを検討する方が結果的に安全なことがあります。

OTSCの手技:アプリケーターキャップとハンドホイール

OTSCは、クリップが装填されたアプリケーターキャップを内視鏡先端に装着し、キャップに連結したスレッドをハンドホイールで巻き取って引張ることでクリップをリリースします。

基本動作はシンプルでも、「組織をキャップ内に十分引き込む」ことが成否を分け、添付文書にも“組織を十分に引き込んでからリリース”という注意が繰り返し記載されています。

補助デバイスとしてOTSCアンカー、OTSCツイングラスパーが併用器具として示され、必要に応じて把持して引き込む運用が想定されています。

臨床報告でも、穿孔部の両側粘膜を吸引で引き寄せたり、ツイングラスパー等の補助デバイスを組み合わせることで、従来クリップでは難しい穿孔閉鎖に成功した例が示されています。

参考)日本消化器病学会 アーカイブシステム

重要なのは「吸引だけで十分か」「把持して寄せるべきか」の判断で、出血を伴う穿孔や、周辺が浮腫で脆い状況では、無理な牽引や押し当てが追加損傷につながる可能性があるため、力の方向と量をチームで共有します。

実務のコツとしては、(1) 視野を確保した状態で引き込み量を確認、(2) 把持鉗子を使う場合は先端をキャップ内に十分引き込んだ状態を維持(シャフトへの誤留置回避)、(3) リリース後は把持状態を観察し目的が不十分なら次手を即決、という流れが安全です。

OTSCの合併症とremOVE:MRIと除去の実務(独自視点)

添付文書には、重大な不具合として止血不全・閉鎖不全、クリップ誤留置、クリップのリリース不全、機器の故障・破損が挙げられています。

重大な有害事象として組織損傷、穿孔、出血、感染も記載されており、「閉鎖するためのデバイス」でも操作や押し当てが原因で逆に穿孔・出血を起こし得る点は肝に銘じる必要があります。

また留置後に目的部位の把持が不十分な場合、remOVEシステムによる内視鏡的除去や、外科的除去・追加縫合などの適切な処置を行う旨が明記されています。

現場で意外に効いてくるのがMRIの扱いで、添付文書には静磁場強度3T以下でのMRI安全性確認、ただし画像にアーチファクトや歪みを及ぼす可能性があること、アーチファクトがクリップから約10mmの範囲に広がった非臨床試験の記載があります。

救急や周術期の医療現場では「OTSC留置中に別疾患でMRIが必要」になることがあり得るため、放射線部門・主治医・看護の情報連携として、留置デバイス名と条件(3T以下など)をカルテ・サマリに残す運用が、再説明の手間と検査遅延を減らします。

さらに独自視点として、OTSCは“閉じたら終わり”ではなく、閉鎖部位近傍の狭窄や違和感、感染フォーカス残存、ドレーン管理などの臨床経過まで含めて成功判定すべきで、成功の定義を「内視鏡的に閉じた」から「リークが止まり、栄養・感染が安定し、再介入が不要」へ引き上げると、チームの判断が一致しやすくなります。

PMDA 添付文書(禁忌・サイズ・MRI条件・remOVEによる除去の記載)。

OTSCシステム 添付文書(PMDA)

製品概要(穿孔・瘻孔・出血部・リーク、ニッケルチタン形状記憶の説明)。

OTSCシステム(センチュリーメディカル)

Andrea Chenier