腎動脈血栓症 原因 症状 診断 治療

腎動脈血栓症と診断治療

腎動脈血栓症:現場で迷わない要点
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疑うトリガー

側腹部痛+血尿、単純CTで結石が見えない、鎮痛薬が効きにくい…この組合せは「腎梗塞(腎動脈閉塞)」を鑑別に入れる合図。

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検査のコツ

LDH上昇や白血球増多、血尿などはヒント。ただし決め手は血管評価できる画像(造影CT/CTAなど)。

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治療は時間勝負

急性閉塞は抗凝固が基本。血栓溶解や血栓除去は時間依存で、早期ほど腎機能改善の可能性が高い。

腎動脈血栓症の原因:血栓塞栓症と動脈硬化

腎動脈血栓症(実臨床では「腎動脈閉塞」や、その結果としての「腎梗塞」を含む文脈で語られることが多い)は、腎動脈本幹または分枝の血流が血栓や塞栓で遮断され、末梢が虚血・梗塞に至る病態です。

急性閉塞の最大の原因として、心臓由来(心房細動心筋梗塞後、感染性心内膜炎の疣贅など)や大動脈由来(アテローム塞栓など)の血栓塞栓症が挙げられます。

さらに、腎動脈内での血栓形成(外傷、手術、血管造影血管形成術後など)も原因となりえます。

現場視点での「見落としやすい背景」を整理すると、次のチェックが役立ちます。

意外と盲点になるのが「原因検索の段取り」です。塞栓性が疑われる場合は、心電図で心房細動の検出、凝固亢進の評価、必要に応じて(塞栓源精査として)経食道心エコーで大動脈病変や心内血栓・疣贅を見にいく、という流れが推奨されます。

腎動脈血栓症の症状:側腹部痛と血尿

急性の腎動脈閉塞は、持続する側腹部痛や腹痛に加えて、発熱、悪心・嘔吐、血尿などを呈しうるとされています。

肉眼的血尿、乏尿・無尿が起こる場合があり、時間経過で急性腎障害の所見が出てくることもあります。

一方で、腎梗塞は特徴的症状に乏しく、初回で診断がつくのは50%未満とも言われるため、症状だけで除外しない姿勢が重要です。

臨床でありがちな誤ルートは「尿路結石っぽいから単純CT→結石なしでも結石扱いで帰宅」です。側腹部痛+血尿は結石を強く想起させますが、単純CTやエコーで結石・水腎がはっきりしない、NSAIDsの反応が悪い、痛みが持続する、といった条件がそろうときは腎梗塞(腎動脈血栓症)へ軌道修正する価値があります。

腎動脈血栓症の診断:造影CTとLDH

診断の中心は「血管を評価できる画像」です。腎動脈狭窄・閉塞はCT血管造影やMRアンギオグラフィーなどの画像検査で確定するとされています。

腎梗塞では、造影CTで終末動脈の支配領域に一致した楔状の不染域(造影欠損)が重要所見で、造影CTが一選択になりやすい、という実践的整理がなされています。

また梗塞発症後数日以降に、側副血行から皮質が被膜に沿って帯状に造影されるcortical rim signが約50%で見られ、腎盂腎炎などとの鑑別に役立つ可能性があります。

検査データは「確定」には不足でも、疑う後押しになります。血液・尿検査で、白血球増多、血尿、タンパク尿が出現しうることが示されています。

加えて、腎梗塞ではLDH上昇がヒントになり、LDHが上がる一方でASTやALPの上昇が目立たないパターンに注目すべき、という臨床的提案があります。

診断の落とし穴として重要なのは「造影剤と腎機能」の扱いです。CT血管造影や動脈造影で用いるヨード造影剤には腎毒性のリスクがあり、腎機能や状況に応じて検査選択を考える必要があります。

MRAで使うガドリニウム造影剤は、重度CKDで腎性全身性線維症のリスクがある点も押さえどころです。

腎動脈血栓症の治療:抗凝固療法と血栓溶解療法

急性閉塞の治療は、原因が血栓塞栓性なら抗凝固療法が基本で、状況により血栓溶解薬や外科的・カテーテルによる塞栓除去術の併用が検討されます。

特に「症状出現後3時間以内」に治療できれば腎機能改善の可能性が高い一方、完全回復はまれで、基礎疾患や他部位塞栓なども影響し早期・後期死亡率が高い、とされています。

また、実地の症例解説でも、腎梗塞と診断後に入院の上でヘパリン静注が開始され、外傷性でなければ手術が必要となることはほとんどない、と整理されています。

抗凝固の期間については、血栓塞栓性疾患では禁忌がなければヘパリンによる抗凝固が必要で、長期抗凝固は少なくとも6〜12カ月、再発例や凝固亢進性疾患では無期限継続を考慮、とされています。

DOAC(ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバンなど)は適切な患者で考慮可能、という記載もあります。

ここでの実務上の“意外な論点”は、「腎を救う」だけでなく「塞栓源を潰す」優先順位です。原因が血栓塞栓の場合は発生源を同定して治療すべき、と明確に述べられており、再発や他臓器塞栓を防ぐ設計(不整脈評価、心臓・大動脈の精査)を治療計画に組み込む必要があります。

腎動脈血栓症の独自視点:尿管結石ルートからの離脱

腎動脈血栓症(腎梗塞)は、「側腹部痛+血尿」という入口のせいで尿路結石ルートに乗りやすく、単純CTで異常が乏しい点が診断の遅れに直結します。

そのため、独自視点としては“画像モダリティの選択”ではなく、“思考のスイッチ条件”をチームで共有することが再現性の高い対策になります。

たとえば救急・外来で、次のようなルールを院内で合意しておくと、担当者の経験差を埋めやすいです。

  • ✅「側腹部痛+血尿」で単純CT/エコーが決め手に欠ける場合、腎梗塞を鑑別に追加して造影CTを検討する。​
  • ✅痛みが持続し鎮痛薬で“それなりに取れない”、発熱や血圧上昇がある場合は、結石に固定せず再評価する。​
  • ✅採血を省略しがちな症例でも、腎梗塞を疑った時点でLDHなどを取りに行く(ただし確定は画像で)。​

さらに、診断確定後のコミュニケーションにも工夫の余地があります。腎梗塞は基礎疾患を抱える患者が多く、診断後1年死亡率14.3%という報告もあるため、腎臓単独疾患としてではなく全身リスクとして説明し、循環器・腎臓内科・救急の連携を早期に組む姿勢が重要です。

参考:腎動脈狭窄・閉塞の病因、診断(画像検査の選択)、急性閉塞の治療(抗凝固・血栓溶解・塞栓除去、時間依存性)

MSDマニュアル(プロフェッショナル版):腎動脈の狭窄および閉塞

参考:腎梗塞を疑うべき臨床像、造影CT所見(楔状不染域、cortical rim sign)、単純CTの限界、LDHの扱い、抗凝固開始の実際

Emergency Medicine Alliance:EMA症例57(腎梗塞の症例解説)