嫌色素性腎細胞癌 予後
嫌色素性腎細胞癌 予後と病期とTNM
嫌色素性腎細胞癌(chromophobe RCC)は、腎細胞癌の主要3型(淡明・乳頭・嫌色素)の一つとして整理され、全体としては比較的おだやかな臨床経過をとりやすいサブタイプです。
ただし「予後が良い」という言い方は、あくまで病期(T/N/M)で層別化する前の集団としての傾向であり、病期が上がれば当然ながら生存は悪化します。
EAUのまとめでは、非転移(N0–N1を含む)における嫌色素性腎細胞癌の5年OSが高いことが示されており、局所病変で発見され完全切除できる症例が多い点が強みです。
一方で臨床現場では、TNMだけで「低リスク」と決め打ちしない姿勢が重要です。EAUは予後因子を解剖学的(腫瘍径、静脈侵襲、脂肪浸潤、LN転移、遠隔転移など)、組織学的(壊死、脈管侵襲、亜型など)、臨床的(PSや炎症マーカーなど)に整理しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12410128/
嫌色素性腎細胞癌でも、この枠組みで「どの軸が悪いか」を点検すると、術後の説明やフォローアップ計画の精度が上がります。
参考:嫌色素性腎細胞癌を含む腎細胞癌の病期・病理分類、非転移例の5年OSなど(病理・疫学パート)

嫌色素性腎細胞癌 予後と病理と壊死と肉腫様分化
嫌色素性腎細胞癌は、一般的なWHO/ISUP核グレード(旧Fuhrman)をそのまま当てはめて評価することが推奨されにくい、という「病理評価上の落とし穴」があります。
その代わり、EAUの解説でも嫌色素性腎細胞癌に関しては、腫瘍壊死や肉腫様分化(sarcomatoid change)の有無で二段階に層別化するグレーディング案(low vs high)が提案され、これが多変量解析でも予後と関連した、と紹介されています。
つまり医療従事者の視点では、「嫌色素=低悪性度」という先入観より先に、病理報告書で壊死と肉腫様分化を最優先で拾うことが実務的です。
さらに、肉腫様成分は「嫌色素性腎細胞癌の一部がたまたま荒れている」ではなく、RCCサブタイプを問わず脱分化パターンであり、がん特異的生存(CSS)不良と結びつくことが明確に述べられています。
参考)https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1040842821000755
またEAUは、肉腫様成分の割合が多いほど予後不良とされる点や、カットオフは統一されていないものの20%という提案がある点にも触れています。
日常診療では、病理レポートに「sarcomatoid(%)」の記載があるか、壊死の記載があるかを確認し、術後のサーベイランス強度(画像間隔など)を上げる根拠として説明できるようにしておくと有用です。
参考:予後因子(壊死、肉腫様分化、嫌色素性腎細胞癌でのグレードの考え方など)

嫌色素性腎細胞癌 予後と再発と転移と骨
EAUの病理・各論では、嫌色素性腎細胞癌は予後が比較的良好で、5年・10年のRFSが高い一方、再発自体は一定割合で起こり得ること、再発例の多くが遠隔転移として出現し、単一臓器転移では骨が最も多いことがまとめられています。
この「骨が多い」は、フォローアップ中の症状聴取(骨痛、病的骨折リスク)や、画像検査の選択(必要時の骨評価)を考えるうえで、嫌色素性腎細胞癌に固有の臨床勘所になります。
また、完全切除かつpT2a未満で、壊死や肉腫様分化がない場合は予後が極めて良好とされ、ここが患者説明の安心材料にもなります。
ただし「再発が少ない=フォロー不要」ではありません。EAUは、腎細胞癌の予後は病期・組織学的グレードで悪化するという原則を明記しており、嫌色素性腎細胞癌でも高T病変、N陽性、遠隔転移があれば同じ土俵で厳しくなります。
したがって、術後カンファレンスでは「病期(TNM)×壊死・肉腫様分化×脈管侵襲など」を並べ、再発リスクが低い理由/高い理由をチームで共有するのが安全です。
嫌色素性腎細胞癌 予後とリスク分類とIMDC
独自視点として重要なのは、嫌色素性腎細胞癌の“局所例の術後予後”と、“進行・転移例の薬物療法下の予後”を同じ尺度で語らないことです。EAUは転移性RCCのリスク分類としてIMDCを提示し、Karnofsky PS、診断から治療までの期間、ヘモグロビン、補正Ca、好中球、血小板の6因子で層別化することをまとめています。
これは嫌色素性腎細胞癌を含む「非淡明細胞型」でも、転移期に入った段階では“腫瘍の顔つき”以上に、全身状態や炎症・栄養・造血のパラメータが予後に効いてくる、という臨床感覚と一致します。
またEAUは、IMDCが近年の免疫療法併用レジメンのRCTでも使われ、臨床実装として好ましいモデルになり得る点に触れており、転移例の見立て・治療方針説明の共通言語として押さえる価値があります。
医療者向けの実務としては、転移が疑われた時点で「病理再確認(肉腫様分化、壊死)」「画像で転移臓器(骨など)」「IMDCの採点に必要な採血・PS確認」を同時に走らせると、説明の筋が通りやすくなります。sciencedirect+1
嫌色素性腎細胞癌は“基本おだやか”であるほど、悪いパターン(高リスク病理や転移)に入った症例のギャップが大きく、患者・家族も医療者側も判断が遅れやすい点が落とし穴です。
そのギャップを埋める道具として、IMDCのような汎用モデルを使い「この患者は転移性腎細胞癌としてはどの群か」を明確に言語化することが、チーム医療では意外に効きます。