先天性ネフローゼ症候群 治療 腎移植 腹膜透析

先天性ネフローゼ症候群 治療

先天性ネフローゼ症候群の治療:全体像
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治療のゴールは腎移植

フィンランド型(CNF)を代表に、根治は難しく、ネフローゼ期→腎不全期(保存/透析)→腎移植後の3段階で設計する。

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ネフローゼ期は「喪失の補正」

アルブミン補充と利尿、栄養、甲状腺ホルモン、血栓症・感染症対策が中心。免疫抑制は原則避ける。

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腎摘出・腹膜透析は戦略的に

薬物療法で難渋すれば片腎摘→必要なら対側腎摘+腹膜透析へ。体格が整えば腎移植を検討する。

先天性ネフローゼ症候群 治療の基本戦略と腎移植

先天性ネフローゼ症候群(特にフィンランド型CNF)は、疾患そのものを薬で“治す”というより、腎移植に安全に到達するための「橋渡し医療」を組み上げる疾患である。最終治療が腎移植であることを前提に、ネフローゼ期・腎不全期・腎移植後の3段階で管理する枠組みが提示されている。

この設計思想を共有すると、日々の輸液量調整や薬剤選択が「いまの浮腫を取るため」だけではなく、「感染・血栓を減らし、成長を支え、移植の条件を整えるため」という目的に再接続され、チームの意思決定が揃いやすい。

治療段階のイメージ(現場での共通言語)

・ネフローゼ期:高度蛋白尿による喪失(アルブミン、IgG、凝固/抗凝固因子、ホルモン結合蛋白など)を補正し、合併症を先回りして潰す。

・腎不全期(保存期・透析期):腎摘出や蛋白尿軽減により全身状態を立て直し、腹膜透析で体格と筋肉量を増やして移植に備える。

・腎移植後:感染症と血栓症リスクを見据えつつ、移植後ネフローゼ(再発/新規)にも備える。

腎移植の目安として、体格(身長・体重)を考慮して計画する考え方が示されており、移植の成否は「移植手技」だけでなく、移植前の低蛋白・低γグロブリン・過凝固状態からどれだけ離脱できたかに強く影響する。移植時期を“状態が整ったタイミング”で調整しやすいという点で、生体腎移植が臨床的に選ばれやすい理由にもなる。

独自視点として、先天性ネフローゼは“腎臓の病気”であると同時に、“栄養・内分泌・凝固・感染”を同時に扱うNICU/小児腎の総合診療領域であり、治療の主戦場は「尿蛋白そのもの」ではなく「喪失が引き起こす二次障害の制御」にある。

ネフローゼ期・腎不全期・腎移植後の3段階で治療を考える。

(フィンランド型先天性ネフローゼ症候群の診断・管理の手引きの総論)

https://pckd.jpn.org/disease/r6_cnf_guide.pdf

先天性ネフローゼ症候群 治療の診断ポイント(NPHS1・αフェトプロテイン)

治療設計の出発点は「先天性ネフローゼ症候群の中で、どの病型を疑うか」であり、特にCNFでは出生前〜新生児期に拾える情報が多い。CNFの補助所見として、母体血清・羊水のαフェトプロテイン高値、胎盤重量が出生体重の25%以上、出生後早期からの高度蛋白尿、血清アルブミン1.0g/dL未満などが挙げられている。

遺伝学的にはNPHS1(ネフリン)異常が代表で、非フィンランド人集団ではNPHS1以外(NPHS2、WT1、LAMB2、PLCE1など)の関与もあり得るため、「CNFっぽい」だけで免疫抑制へ走らず、鑑別と遺伝子検査の導線を早期に作ることが重要になる。

現場で役TITLE: 先天性ネフローゼ症候群 治療 腎移植 腹膜透析

先天性ネフローゼ症候群 治療

先天性ネフローゼ症候群の治療設計(医療従事者向け要点)
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基本戦略は「移植までの橋渡し」

フィンランド型先天性ネフローゼ症候群(CNF)では、ネフローゼ期→腎不全期(保存・透析)→腎移植期の3段階で管理し、最終目標は腎移植とされます。

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浮腫・低アルブミン対策が中核

高度蛋白尿による浮腫・低栄養・感染・血栓を同時に抑える必要があり、アルブミン補充+利尿薬、ACE阻害薬、必要時は腎摘を組み合わせます。

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免疫抑制療法は原則の位置づけに注意

CNFでは免疫抑制療法は根拠に乏しく避けるべき、という整理が示されています(ただし遺伝子背景が多様なCNS全体では例外もあり得るため鑑別が重要)。

先天性ネフローゼ症候群 治療の全体戦略(ネフローゼ期・腎不全期・腎移植)

先天性ネフローゼ症候群(CNS)は、生後3か月以内に発症するネフローゼ症候群を指し、その代表がフィンランド型先天性ネフローゼ症候群(CNF)です。

CNFはかつて管理困難で予後不良でしたが、診断・管理の体系化と腎移植を前提とした段階的治療により成績が改善してきた、と整理されています。

治療の最終目標は自己腎機能を廃絶させ腎移植を行うことであり、治療は「ネフローゼ期」「腎不全期(保存期・透析期)」「腎移植後」の3段階に分けて考える、という枠組みが提示されています。

ネフローゼ期の中心は、(1)高度蛋白尿に伴う浮腫への対応、(2)尿中喪失物質の補充、(3)感染症・血栓症など致死的合併症の予防、(4)栄養管理による成長発達の確保です。

参考)小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020 – Mi…

腎不全期は多くが腹膜透析(PD)で管理し、移植可能な体格(目安:身長75–80cm、体重8–10kg程度)を目指すとされています。

腎移植期では、感染症と血栓症が主要なリスクであるため、低蛋白・低ガンマグロブリン血症や過凝固状態から十分に脱した状態で移植することが望ましい、とされています。

先天性ネフローゼ症候群 治療の診断・遺伝子(NPHS1)と鑑別の要点

CNFを含む生後1年以内発症のネフローゼは原因が多様であり、家族歴・臨床像・検査所見・腎生検・遺伝学的情報を統合して診断する流れが示されています。

CNFの診断補助所見として、母体血清/羊水αフェトプロテイン高値、胎盤重量が出生体重の25%以上、血清アルブミン1.0g/dL未満、タンパク尿2,000mg/dL以上(補正条件あり)、生後6か月まで腎機能が保たれる、家族歴などが挙げられています。

原因遺伝子としてはCNFがNPHS1で、ほかにWT1、NPHS2、PLCE1、LAMB2などが鑑別に挙がり、二次性(感染症など)も含めて除外が必要とされています。

臨床上の落とし穴は、「CNS=免疫性」と短絡し、ステロイドを惰性的に開始してしまうことです。CNFはポドサイト/スリット膜関連の遺伝子異常が中心で、免疫抑制療法は根拠に乏しく避けるべきというステートメントが明記されています。

一方で、CNS全体は遺伝学的に多様であり、まれに免疫抑制で改善を認めた報告があること、ただしメカニズム不明で一般化はできないことも同じ文脈で述べられています。

したがって「遺伝子背景の見極め(特にNPHS1など)」が、治療の無駄と有害事象を減らす実務上の鍵になります。

先天性ネフローゼ症候群 治療の対症療法(アルブミン・ACE阻害薬・栄養)

浮腫・低アルブミン血症への対応として、経静脈アルブミン補充を行い、投与時にフロセミド0.5–1.0mg/kg併用が例示されています。

ただし高度蛋白尿では血清アルブミン値の上昇が一時的になりやすく、漫然投与を避け、胸水/腹水、重度症状、感染合併、周術期など適応を吟味すべきとされています。

中心静脈カテーテル留置は有用な一方、血栓症や菌血症などのリスクがあり、内頚静脈を第一選択として大腿静脈温存・鎖骨下静脈回避が望ましい、という実務的注意点まで記載があります。

蛋白尿減少目的としてACE阻害薬(第一選択として短時間作用型カプトプリル1–5mg/kg/day)が挙げられ、開始時は0.5–1.0mg/kg/day分3から、循環血漿量や低血圧に注意し腎機能を頻回に確認する、とされています。

難治例ではインドメタシン追加が考慮される一方、重症型変異(Fin-major/Fin-minor)では反応が乏しいことが多いなど、「遺伝子型と反応性」の示唆が述べられています。

栄養面では高カロリー(100–130kcal/kg/day)を目標にし、経口不十分なら経管栄養や中心静脈栄養も検討し、粉飴やMCTオイル併用も有効とされています。

さらに見落とされがちな補充療法として、ビタミンD(例:アルファカルシドール0.1–0.3μg/day)、ミネラル(Ca、Mg、Kなど)補充に加え、甲状腺ホルモンは「新生児期にTSHが正常でも低値になり得る」ためTSHに依らず生下時から補充開始(目安5μg/kg/day)という踏み込んだ推奨が書かれています。

また、トランスフェリン等の尿中喪失で貧血が難治化し、エリスロポエチンが通常のCKDより多量に必要になることがある、銅/セルロプラスミン喪失による好中球減少・貧血の報告がある、という“意外にハマる”論点も提示されています。

「低栄養・浮腫・感染・血栓」を同時に悪化させる引き金が喪失性病態にあるため、薬だけでなく補充と栄養を治療の主役として扱うのがCNF管理の実際です。

先天性ネフローゼ症候群 治療の合併症(感染症・血栓症)と予防

CNFでは敗血症や血栓症など生命を脅かす合併症があるため、合併症管理が必須とされています。

血栓症は死亡原因になり得るだけでなく永続的な神経合併症の原因にもなり得るとされ、凝固因子上昇やATⅢなどの尿中喪失を背景に過凝固へ傾く機序が説明されています。

予防として、生後4週頃から抗血小板薬(アスピリン等)+抗凝固薬(ワルファリン、目標PT-INR約2程度)投与が記載されています。

感染症については、IgGや補体因子の喪失により肺炎球菌など莢膜菌感染リスクが上がることが説明される一方、予防的な抗菌薬やガンマグロブリン投与は推奨しない、と明確に述べられています。

敗血症が疑われる場合は、早期の血液培養採取と広域抗菌薬投与を行い、必要に応じてガンマグロブリン投与、また尿中喪失によりCRPが低めになり得る点に注意、とされています。

ワクチンは積極的に行うが、ネフローゼ期はIgG喪失で抗体獲得が不十分になり得るため、腎移植に備えた反復接種は蛋白尿や浮腫が軽減してからが望ましい、という実務的な“タイミング論”が示されています。

先天性ネフローゼ症候群 治療の独自視点:腎摘・腹膜透析・腎移植後の再発(抗ネフリン抗体)

薬物療法で浮腫・合併症管理に限界がある場合、多くで腎摘出が必要になり得るとされ、片腎摘出で蛋白尿を減らしアルブミン補充回数を減らせる可能性が述べられています。

本邦では片腎摘出で管理可能なことが多く、難渋時は対側腎摘出+PD導入、という段階的選択が示され、移植を想定した経路(片腎摘→対側腎摘→PD→移植、など)も整理されています。

特に「生後6か月未満の両腎摘出ではレニン不足で術直後に著明な低血圧を呈することがある」という注意は、周術期管理の盲点になりやすいポイントです。

腎移植後の問題として、CNF(特にFin-major/Fin-minor)では移植後ネフローゼ発症(再発様病態)のリスクが高いこと、抗ネフリン抗体の関与が示唆され、治療としてステロイド、シクロフォスファミド、リツキシマブ、血漿交換などの有用性報告があるとまとめられています。

ここでの“独自視点”は、移植後の蛋白尿を「再発=原疾患が戻った」と単純化せず、「免疫学的に新しく獲得された抗体(抗ネフリン抗体)による移植腎障害」という発想をチームで共有することです。

この視点を持つと、移植後の蛋白尿に対して、感染リスク・血栓リスク・免疫介入のバランスを取りながら、血漿交換やB細胞標的など“治療オプションの棚卸し”がしやすくなります。

先天性ネフローゼ症候群(特にCNF)で現場が困るのは、「高度蛋白尿が続く=治療が効いていない」こと自体よりも、蛋白尿が引き起こす二次的合併症が多臓器に波及し、どの問題から手を付けても別の問題が悪化し得る点です。

そのため、治療を「腎臓内科(小児腎)だけの課題」に閉じず、栄養・感染・凝固・周術期(カテーテル、腎摘、PD、移植)までを一本の治療計画として設計することが、結果的に最短で腎移植成功に近づきます。

浮腫の管理(アルブミン補充例、薬物療法、腎摘、栄養、血栓・感染、移植までの考え方が詳しい)

フィンランド型先天性ネフローゼ症候群の診断・管理の手引き(PDF)