サンゴ状結石 手術
サンゴ状結石 手術の適応と治療方針(経過観察しない判断)
サンゴ状結石は、腎杯と腎盂に連続する形態の結石で、無治療で経過観察すると腎機能低下や敗血症などを招きうるため、基本は「積極的治療」を検討します。
実臨床では「症状が乏しいから様子見」という誘惑が起こりがちですが、サンゴ状結石は感染結石(例:リン酸マグネシウムアンモニウム)を含むことがあり、感染が乗ると一気に重症化します。
ガイドラインでも「無症候性のサンゴ状結石を有する患者に対して,経過観察しないことを条件付きで推奨」と整理されており、意思決定の起点は「放置の害」を具体化することです。
ここで有用なのが、術前カンファレンスでのチェックリスト化です(外来から入院までの抜け漏れ防止)。
・画像:NCCTで結石量、腎杯分枝、皮質厚、穿刺ルートを概略設計(造影の要否も議論)
・腎機能:Cr/eGFR、片腎機能が疑わしければ腎シンチも視野(施設運用に依存)
・抗血栓薬:休薬計画、代替、周術期の出血リスク評価(結石手術は出血が主要合併症になりうる)
「意外と見落とされやすい」点として、患者の生活背景(就労・介護・遠方)を先に把握すると、分割治療(staged PCNL/ECIRS)を受け入れられるか、術後フォローの継続が可能かが見えます。ガイドラインもSDM(協働意思決定)の重要性を明記しており、説明の質が治療継続率に直結します。
参考)経皮的腎結石破砕術(PNL)の手術方法とメリット・デメリット…
サンゴ状結石 手術の第一選択:経皮的腎砕石術(PNL/PCNL)の手技と要点
サンゴ状結石や20mm超の腎結石では、一般にPNL/PCNL(経皮的腎砕石術)が優先される治療として位置づけられます。
PNLは、背部から腎盂・腎杯へ穿刺して腎瘻ルートを作り、内視鏡下にレーザー等で破砕し回収するため、「大きい石を確実に減量できる」ことが最大の利点です。
一方で、腎実質を通るアプローチである以上、出血(輸血が必要になることもある)や術後感染は常に意識すべき合併症です。
手技そのものは施設差がありますが、患者説明文書でも共通する要点は次の流れです。
・全身麻酔で行う
参考)https://www.doai.jp/sinryo/hinyoukika/pdf/shujutsu04.pdf
・超音波やX線で確認しながら穿刺し、ガイドワイヤーを通す
・トラクトを拡張し、内視鏡が出し入れできる筒(シース)を留置する
・結石を確認し、破砕・回収する
臨床で「意外に効く」テクニカルな視点は、最初から“完遂”を目標にしすぎないことです。出血が多く視野が悪い、石が硬い・位置が悪い、感染リスクが高いなどでは、1回目は腎瘻造設までで止め、段階的に複数回で安全に除去する運用も現実的です。
参考)経皮的腎尿管砕石術(PNL:Percutaneous nep…
術後は腎瘻カテーテルを留置し、残石や尿路の状態を確認してから抜去する流れが一般的で、ここでの判断が再入院率に影響します。
サンゴ状結石 手術の選択肢:ECIRS/TAP(PNL+TUL/URS併用)の位置づけ
近年の大きな変化は、PNL単独に加えて、ECIRS/TAP(内視鏡併用腎内手術)がサンゴ状結石の主要選択肢として普及した点です。
ガイドラインでも「腎結石(20mm以上)に対してECIRS/TAPを条件付きで推奨」「サンゴ状結石に対してECIRS/TAPを条件付きで推奨」と、併用治療を明確に扱っています。
ECIRS/TAPはPNL/PCNLとTUL/URSを同時に行う概念で、体位としてValdivia体位が用語として整理されています。
併用の臨床的メリットは、サンゴ状結石の「枝分かれした腎杯側」を逆行性(尿管鏡)から攻められる点で、単一路トラクトの限界を補えることです。
一方で、器械・人員・時間のコスト、体位管理、放射線被曝、灌流量が増えることによる腎盂内圧上昇など、むしろ感染リスクを上げる要因も同時に持ち込みます。
そのため、施設内で「ECIRS適応」を定義しておく(例:複数腎杯への鋳型状、単一路ではSFRが低そう、過去のESWL/TUL不成功など)ことが、チーム医療として非常に重要です。
参考:用語と位置づけ(権威性のある一次資料)
尿路結石症診療ガイドライン第3版(2023年版):ECIRS/TAP、PNL/PCNL、サンゴ状結石のCQ、アルゴリズム、閉塞性腎盂腎炎の推奨などがまとまっています。
https://plaza.umin.ac.jp/~jsur/gl/jsur_gl2023.pdf
サンゴ状結石 手術の周術期:腎盂腎炎・敗血症を避ける感染対策
サンゴ状結石の手術で最も怖い合併症の一つが、術後の尿路感染からの敗血症であり、「尿培養が陰性でも起こりうる」点が臨床判断を難しくします。
結石自体が感染源になりうるため、単に周術期抗菌薬を投与するだけでなく、術前評価と術中管理を一体で組み立てる必要があります。
ガイドラインでも、尿路結石による閉塞性腎盂腎炎では、腎瘻造設や尿管ステント留置などのドレナージを条件付きで推奨しており、「感染+閉塞」の組み合わせは特に早期介入が重要です。
実務で押さえるポイント(医療者向けに具体化)
✅術前
・尿検査だけでなく尿培養を取り、既往の抗菌薬歴も確認(耐性菌の見立て)
・発熱・悪寒戦慄・CRP高値・水腎症があれば、まずドレナージ優先を検討(根治手術を急がない)
・感染結石が疑わしい場合は「石を割る=菌をばらまく」工程になるため、術式や分割計画をより慎重に
✅術中
・灌流圧を上げすぎない(腎盂内圧上昇は菌血症リスクを上げうるため、吸引付きシステムや適切な排液路を意識)
・長時間化する場合は、完遂より安全優先でstagedに切り替える判断をチームで共有
✅術後
・発熱・頻脈・血圧低下などは早期に敗血症として扱い、尿路閉塞の再評価(腎瘻閉塞やステント不全)も並行
「意外な盲点」として、尿管ステント留置は排尿に関する不快感が持続しうる一方、腎瘻は運動・衛生面の一時的なQOL障害が生じうるとガイドライン内で言及されており、患者説明でのトラブル予防に役立ちます。
参考:サンゴ状結石の治療選択(一般向けだが医療説明の言語化に使える)
サンゴ状結石の定義、経過観察のリスク、PNL適応の説明に使える記載があります。
サンゴ状結石 手術の独自視点:残石・再発予防まで含めた「結石センター型」運用
サンゴ状結石は「手術で取ったら終わり」になりにくく、残石があれば感染結石では再感染の温床になり、カルシウム系でも再発率の高い疾患群として再来しやすいことが本質的な難しさです。
ガイドラインは再発予防として、低リスク例でも飲水指導・食事指導・生活指導を基本に置き、高リスクでは24時間尿化学検査など特異的評価を組み合わせる設計を示しています。
特に「結石成分分析」は、その後の薬物療法や生活指導の根拠になるため、手術標本の取り扱いを院内フローで標準化すると再発対策の質が上がります。
結石センター型の運用で効果が出やすい工夫(検索上位に“単独項目”としては出にくい現場知)
・術前から「分割治療(2回以上)」「補助療法(ESWLや追加URS)」「残石ゼロに固執しない安全設計」を説明し、SDMを成立させておく
・退院前に“再発外来”予約を確定し、飲水(尿量目標)と食事の要点を紙で渡す(口頭のみは忘れられる)
・感染結石が疑わしい場合は、尿細菌培養のフォローと、残石評価(画像)を短い間隔で置く
・メタボや生活習慣病合併が多い点はガイドラインにも記載があり、内科(高血圧・糖尿病・脂質異常)との連携が再発率に効く
最後に、手術戦略を一文で表すなら「SFR(結石除去率)を追うほど、感染・出血の安全設計が重要になる」です。SFRは成功指標として用語化されており、チームの共通言語にすると議論が速くなります。
