サルコイドーシス腎と高カルシウム血症の診断治療

サルコイドーシス腎と腎機能障害

サルコイドーシス腎の要点
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病態は「3本柱」

肉芽腫性尿細管間質性腎炎/高カルシウム血症による腎障害/糸球体腎炎をまず切り分ける。

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検査の追加が鍵

血清Ca、PTH、1,25(OH)2VitD、尿中Ca、尿細管障害マーカー(α1MG・β2MG・NAG)+画像で見落としを減らす。

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治療はスピード勝負

進行性腎不全や高Ca血症はステロイド適応。線維化が進む前の介入が長期腎予後を左右する。

サルコイドーシス腎の病態と肉芽腫性尿細管間質性腎炎

サルコイドーシスに伴う腎疾患は、大きく①肉芽腫性尿細管間質性腎炎、②高カルシウム血症に伴う腎機能障害、③糸球体腎炎の3つに整理すると臨床推論が進めやすいです。

このうち典型とされる肉芽腫性尿細管間質性腎炎は、臨床的には稀とされる一方、剖検例では腎臓に肉芽腫性病変が一定割合で存在した報告があり、「腎に病変はあるが臨床で拾われにくい」ことを示唆します。

見落としやすい理由の一つが、尿細管間質性病変や腎循環障害が主体のケースでは蛋白尿・血尿が軽微で、いわゆる腎炎らしい尿所見に乏しいまま腎機能低下で気づく点です。

腎生検は確定に有用ですが、腎萎縮や抗血栓療法などで適応が制限され、実臨床では「疑いを持って検査を揃える」プロセス自体が診断率を左右します。

参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/037030214j.pdf

また、他臓器で肉芽腫が証明されている場合、腎生検で肉芽腫が確認できなくても「間質性腎炎の所見」で腎病変として確定できるとされており、病理の解釈にも全身疾患としての視点が必要です。

サルコイドーシス腎と高カルシウム血症・1,25(OH)2VitD・PTH

サルコイドーシスでは肉芽腫内で活性型ビタミンD(1,25(OH)2VitD)が産生され、腸管カルシウム吸収が亢進して高カルシウム血症につながる、という病態理解がまず重要です。

この高カルシウム血症が進むと、患者が自覚症状を訴えない段階から腎機能障害が起こり得るため、「腎機能が落ちた後追い」で気づくと既に遅いことがあります。

さらにサルコイドーシスによる高カルシウム血症では血清PTHが低下するのが基本で、鑑別として原発性副甲状腺機能亢進症の合併や、Ca製剤・VitD製剤内服の有無の確認が推奨されています。

意外に落とし穴になりやすいのが「血清1,25(OH)2VitDが上がっていない=否定」と短絡することです。

肉芽腫で局所産生されるため血清濃度が必ずしも上昇しない、と明記されており、臨床ではCa・PTH・尿中Caと合わせて判断する必要があります。

また腎結石の頻度が高いことも報告されており、腎障害の機序としては脱水(腎性尿崩症など)や腎血管収縮など複数が示唆されています。

サルコイドーシス腎の検査・診断と尿中β2MG・NAG・Gaシンチ

腎機能障害が疑われる状況では、血清Ca、PTH、1,25(OH)2VitD、尿蛋白定量、尿沈渣、尿中Ca排泄量に加えて、尿中α1MG・尿中β2MG・NAGといった尿細管障害マーカーをセットで測ることが推奨されています。

画像としては腎エコー、腹部CT、Gaシンチが有用とされ、特にGaシンチで腎集積がある場合は尿細管間質性腎炎を強く示唆します。

無菌性膿尿、尿中α1MG/β2MG/NAG上昇も尿細管間質性腎炎を示唆する所見として挙げられ、腎生検の検討につなげます。

一方で「腎機能障害=すべてサルコイドーシス腎」と決め打ちしない姿勢も同じくらい重要です。

サルコイドーシス患者では、サルコイドーシスとは無関係の腎機能障害も多く、高血圧性腎硬化症など一般的な原因の併存を常に評価する必要があるとされています。

そのため、腎障害の鑑別は“サルコイドーシスの腎病変”と“よくあるCKD原因”の両方を並走して評価するのが安全です。

サルコイドーシス腎の治療とステロイド・プレドニゾロン

肉芽腫性尿細管間質性腎炎による進行性腎不全、または高カルシウム血症は、ステロイド治療の適応とされています。

尿細管間質性腎炎の初期治療としてはプレドニゾロン0.5〜1.0mg/kg/日(20〜60mg/日)内服やメチルプレドニゾロンパルス療法が用いられ、反応は良好とされます。

重要なのは「速やかな診断と治療」で、治療開始時の間質線維化が長期腎予後に影響し得るため、紹介・コンサルトのタイミングが腎機能の回復可能性を左右します。

治療後1か月時点の腎機能回復の程度が予後に関与する可能性も示されており、フォロー設計(いつ・何を再評価するか)を最初から決めておくと迷いが減ります。

反応が乏しい場合は糸球体腎炎合併の検討が必要とされ、腎病理が“間質だけ”で語れないケースもある点は押さえたいところです。

腎機能が安定したらステロイドを減量しますが、再燃に注意した慎重な経過観察が必要で、長期維持療法が有用とする報告もあるとされています。

高Ca血症性クライシスのように生命危機を伴う場合には、生食+カルシトニン、場合によっては低Ca透析など迅速な対応も検討すべきとされます。

静注ビスフォスフォネートの報告は少なく、日本では悪性腫瘍以外には適応外と明記されているため、施設ルールと適応の整理が必要です。

治療全体像としては、サルコイドーシス診療の手引きでも「全身治療薬の第一選択は副腎皮質ステロイド」であり、腎機能障害や高カルシウム血症例は一般に全身治療適応と考えられるとされています。

一方で、疾患の多様性やステロイド作用の二面性(自然治癒過程との関係)から標準化が難しく、個別症例で利益と不利益を説明しながら方針決定する必要がある点も強調されています。

サルコイドーシス腎の独自視点:骨粗鬆症予防と活性型ビタミンD回避

医療従事者が実務で悩みやすいのが、ステロイド長期投与に伴う骨粗鬆症予防です。

手引きでは、投与量にかかわらずステロイド治療による骨粗鬆症は起きる前提で評価・予防を行い、定期的な骨塩量検査で実情把握することが重要とされています。

治療としてはビスフォスフォネートが第一選択としつつ、活性型ビタミンD製剤は病状を悪化させる可能性があるため「避けた方が無難」とされている点は、サルコイドーシス腎を扱う現場では意外に重要な落とし穴です。

つまり、腎機能・Ca代謝の管理だけでなく、「骨の予防薬選択」までがサルコイドーシス腎の安全管理に直結します。

特に高Ca傾向がある患者で、骨粗鬆症対策として安易に活性型ビタミンDを追加する行為は、理屈の上でもリスクがあり得るため、導入前に血清Caや既往(結石など)を再確認すると安全です。

患者説明の実務としては、BP製剤使用時の歯科連携(顎骨壊死リスク)にも言及があり、処方時点での一言が将来のトラブル予防になります。

参考:腎臓・泌尿器病変の全体像、検査セット(尿中β2MG/NAG、Gaシンチ等)、治療(PSL量、再燃、代替治療)がまとまっている

サルコイドーシス腎臓・泌尿器病変(JSSOG)

参考:サルコイドーシス診療の基本方針(ステロイド一選択、腎機能障害・高Caの扱い、Ca代謝異常と活性型VitD、骨粗鬆症予防の注意点)

サルコイドーシス診療の手引き2016(厚労科研)