多関節型若年性特発性関節炎
多関節型若年性特発性関節炎の診断と分類(発症6か月以内5関節以上)
多関節型若年性特発性関節炎(JIAの多関節炎)は、「16歳未満で発症」「原因不明の関節炎が6週間以上持続」を前提に、発症から6か月以内に罹患関節が5関節以上であることが分類の軸になります(少関節炎は1〜4関節)。
小児慢性特定疾病情報センター:若年性特発性関節炎 診断の手引き
一方で、分類項目を満たすこと自体が「診断条件」ではなく、あくまでJIAと診断した後に病型分類する点が重要です。
臨床現場では「関節腫脹・関節痛・可動域制限」を丁寧に同定しつつ、画像で裏付けを取ることで、発熱や疼痛のみで迷走するケースを減らせます。特に一般臨床医が関節炎を診断する場合、診察所見に加え少なくとも1つ以上の画像所見を確認することが望ましいとされています。
診断の流れを医療者向けに実務化すると、次のチェックが有用です。
- 📌「いつから」:6週間以上の持続か(初期から治療介入され短縮してもJIAとして扱う場合がある)診断の手引き
- 📌「どこが」:関節数(発症6か月以内に5関節以上で多関節炎)診断の手引き
- 📌「他ではないか」:感染症・腫瘍・自己炎症症候群・整形外科的疾患などの除外を並行する診断の手引き
また多関節炎は、リウマトイド因子(RF)陽性と陰性で臨床像や治療の考え方が変わり得るため、RF(必要に応じて抗CCP等)を含む自己抗体の評価は「分類と予後予測の言語」を揃える意味が大きいです。JIAの診断そのものはRF陰性でも否定できない点は、成人RAに慣れた医療者ほど再確認したいところです。
多関節型若年性特発性関節炎の検査所見と画像(MRI・関節超音波)
JIAは「特異的な単独検査で確定」しにくい疾患群であり、身体所見+炎症反応+自己抗体+画像を統合して臨床診断する構造が基本です。小児慢性特定疾病情報センターの手引きでも、関節炎の同定には診察に加え画像診断(MRI、超音波)が有用とされています。
画像の「使いどころ」を具体化すると、次のように整理できます。
- 🧲 MRI:単純MRIで関節液貯留や骨髄浮腫、造影MRIで滑膜増殖/肥厚が確認できれば関節炎と診断できる(ただし小児では鎮静や造影剤アレルギーに注意)。若年性特発性関節炎 診断の手引き
- 📡 関節超音波:滑膜肥厚・関節液貯留(グレースケール)や異常血流シグナル(パワードプラ)で関節炎の裏付けが可能だが、小児は発達段階によるばらつきが大きく熟練が必要。若年性特発性関節炎 診断の手引き
- 🩻 単純X線:病初期は変化が乏しい一方、進行例では裂隙狭小化、骨びらん、亜脱臼、関節強直などを確認できる。若年性特発性関節炎 診断の手引き
「意外に効く」実務上の工夫として、痛みの訴えが強いが腫脹が不明瞭な場合に、超音波で滑膜炎(血流シグナル)を拾いにいくと、心理的要因や過敏性疼痛と短絡せずに説明可能な根拠が得られることがあります(逆に陰性なら鑑別を進めやすい)。
また、炎症マーカーが軽度〜陰性でも少関節炎・多関節炎では起こり得るため、「CRPが低い=JIAではない」と判断しないことが安全です。
検査データの読み方で注意したいのは、MMP-3が関節炎の参考になり得る一方、ステロイド投与で上昇し判定に注意が必要と明記されている点です。医療者間の申し送りで「MMP-3上昇=悪化」と短絡しないよう、投薬状況をセットで共有すると現場が安定します。
多関節型若年性特発性関節炎の治療(メトトレキサート・生物学的製剤)
関節型JIAの治療の中心は免疫抑制薬による寛解導入で、第一選択としてメトトレキサート(MTX)が位置付けられています。
一方で、MTXを軸にしても半数は難治性で関節破壊が進行し得るとされ、早期から治療強化を検討すべき患者群が一定数存在します。
難治例の治療選択肢として、難病情報センターの解説では、タクロリムス・サラゾスルファピリジン・イグラチモド等の併用や、生物学的製剤(エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプトなど)の併用が挙げられています。
生物学的製剤は「炎症性サイトカインや共刺激」を狙う設計のため、RF陽性で成人RAに近い表現型、あるいは炎症所見が目立つ表現型などで、患者の層別化(どの経路が支配的か)を意識して選択すると説明が通りやすくなります。
薬剤安全性の観点では、メトトレキサートや生物学的製剤による治療で感染症を生じることがあるとガイド資料に明記されており、開始前のワクチン歴・感染リスク評価、開始後の発熱対応フローをチームで標準化しておく価値があります。
「意外に差が出る」運用面のポイントとして、学童期以降は本人の服薬自己管理が始まり、週1回製剤(MTXなど)で内服日がずれると効果・副作用評価が揺れやすいので、カレンダー化や学校行事との調整(嘔気が出やすい曜日を避ける等)も医療者の介入余地です。
必要に応じた論文リンク(概念整理・エビデンス確認用)。
治療指針の考え方(国際ガイドラインの一例、英語):2021 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Juvenile Idiopathic Arthritis
多関節型若年性特発性関節炎の合併症と予後(ぶどう膜炎・成長障害)
JIAは関節炎だけで完結しない慢性疾患で、ぶどう膜炎(虹彩炎)をはじめ、皮疹、肝脾腫、漿膜炎、発熱、リンパ節腫脹など多様な関節外症状を伴い得るとされています。
ぶどう膜炎は約5〜10%に合併し、抗核抗体陽性例に認めやすいこと、さらに半数が無症状で関節炎の活動性と無関係に発症し得る(先行する例もある)ことが、フォロー設計上の重要点です。
長期予後では、成人期に至った患者の半数で関節変形や成長障害(下肢長差や小顎症)がみられ、二次障害(変形性関節症や咬合不全など)の原因になり得るとされます。
さらに、関節機能障害も約半数にみられ、約3%は車イス・寝たきり状態となるという記載があり、薬物治療だけでなくリハ・学校生活支援・心理社会的介入を「最初から並走」させる意義が大きい疾患です。
合併症フォローの実務ポイント(医療者向けメモ)
- 👁️ ぶどう膜炎:無症候例があるため、症状出現待ちではなく定期眼科フォローを前提に組む(家族説明では「症状がなくても進むことがある」を強調)。難病情報センター
- 📏 成長:身長体重の推移だけでなく、下肢長差・顎顔面(小顎症)・咬合など“後から効く”問題を拾い、必要時に整形・歯科/口腔外科と連携する。難病情報センター
- 🦴 関節破壊:進行例では関節形成術や人工関節術が考慮されるとされ、若年から「将来の手術」という選択肢が現実化する点も共有しておく。難病情報センター
多関節型若年性特発性関節炎の独自視点:診断の遅れを生む“見落としパターン”とチーム対策
検索上位の解説は「定義・治療薬」中心になりがちですが、臨床で本当に痛いのは“診断の遅れ”と“病勢評価のぶれ”です。診断の手引きでもJIAは除外診断であり、感染症、腫瘍性病変、自己炎症症候群、整形外科的疾患など鑑別が重要とされています。
ここでは、医療者が現場で遭遇しやすい「見落としパターン」を、対策とセットで整理します。
見落としパターン(臨床“あるある”)
- 😵「痛いのに腫れて見えない」:小児は腫脹が目立ちにくく、触診スキル差も出る。→超音波(滑膜肥厚・血流)で客観化し、診断の土台を固める。診断の手引き
- 🌡️「CRPが陰性だから否定」:少関節炎・多関節炎では炎症所見が軽度〜陰性の例もある。→“炎症反応は参考、否定材料にしない”をチーム共通言語にする。診断の手引き
- 🧾「RF陰性だからRA型ではない」:JIAは自己抗体陰性例があり得る。→RFは分類と予後の参考、診断の決め手ではないと教育する。難病情報センター
- 👁️「目の症状がないから眼科は後回し」:ぶどう膜炎は半数が無症状で、関節炎の活動性と無関係に起こり得る。→初期から“眼科フォローを治療計画に埋め込む”。難病情報センター
チーム対策(医療機関内で再現性を上げる仕組み)
- ✅ 初診〜3か月の「鑑別チェックリスト」を運用し、感染症・悪性疾患・自己炎症などの除外プロセスを記録化する(除外診断ゆえに説明責任を果たしやすい)。診断の手引き
- ✅ 画像の役割分担:腫脹が不明瞭なら超音波、深部関節や骨髄浮腫疑いならMRI、という院内ルールを作る(“なんとなくMRI”を減らす)。診断の手引き
- ✅ 治療強化の合図を統一:MTX中心だが難治例が一定数いるため、早期に生物学的製剤等の検討に進む条件をカンファレンスで共有する。難病情報センター
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診断(分類・画像・鑑別)の詳細がまとまっている(日本語・一次情報)。
小児慢性特定疾病情報センター:若年性特発性関節炎 診断の手引き
治療や予後、合併症(ぶどう膜炎・成長障害など)の全体像がまとまっている(日本語・公的情報)。
難病情報センター:若年性特発性関節炎(指定難病107)
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日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン 若年性特発性関節炎少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む 2024改訂[本/雑誌] / 日本リウマチ学会/編集