CPPD結晶沈着症と偽痛風
CPPD結晶沈着症の症状と偽痛風
CPPD結晶沈着症は、ピロリン酸カルシウム結晶が関節内に析出して炎症を起こす関節炎の総称で、一般に「偽痛風」と呼ばれる急性発作はCPPD結晶沈着症の一部の病型です。
臨床像は「典型的な高齢者の膝の急性単関節炎」だけではなく、手関節・足関節・肩などにも起こり、発熱を伴うこともあります。
また、頚椎歯突起周囲の沈着で頭痛や発熱を伴う“crowned dens syndrome(軸椎歯突起症候群)”のように、関節以外の症状が前景に出て見逃される病型がある点は医療者側の落とし穴です。
急性発作の現場で重要なのは「痛風に似るが高尿酸血症が必須ではない」ことと、「炎症反応が上がる疾患は他にも多い」ことを同時に意識することです。
参考)もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改…
発作のピークが強烈であっても自然軽快するケースがあり、患者が“原因不明の発熱と関節痛が数日で引いた”と語ることがありますが、そのエピソードこそCPPDを疑う材料になります。
一方で、過去に膝などの関節手術や外傷歴がある関節に起こりやすいことも知られており、問診で「昔の半月板手術」などを拾えると診断の近道になります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/8209a57afa6cdc26fac55548d48bb3871608248d
CPPD結晶沈着症の診断と関節穿刺
CPPD結晶沈着症の確実な診断には、関節液中あるいは組織中のCPPD結晶の証明が必要で、画像検査は有用でも“確定”に届かないことがあります。
関節液でのポイントは、偏光顕微鏡下でCPPD結晶(棒状または方形で、弱い正の複屈折性)を同定し、尿酸塩結晶(針状で強い負の複屈折性)と区別することです。
現場では「時間外で結晶確認ができない」「結果がすぐ返らない」こともあるため、疑いが強い急性関節炎では紹介や入院も含めた動線設計が安全策になります。
急性単関節炎で最も怖い鑑別は化膿性関節炎であり、CPPDを疑っていてもグラム染色や培養で感染を除外する視点が必須です。
“結晶が見えたから感染は否定”ではなく、臨床経過・全身状態・関節液所見を合わせ、必要なら感染との併存も想定して動くべきだと明記されています。
その意味で、関節穿刺は「結晶を探す検査」であると同時に「感染を落とす検査」であり、治療(排液)にも直結する三役を担います。
CPPD結晶沈着症の画像検査とX線
画像では、X線で軟骨の線状石灰化(膝なら半月板の石灰化など)が手がかりになり、CPPDを疑う第一歩になります。
慶應義塾大学病院の解説でも、X線や関節エコーで沈着を確認でき診断に有用だが、十分確定できない場合は関節穿刺を行う、と診断の優先順位が整理されています。
つまり「画像で疑い→穿刺で確定」という順番を基本線にすると、痛風・感染・高齢発症RAなどの鑑別で迷いにくくなります。
臨床で意外に多いのは、X線で軟骨石灰化があっても症状がない(無症候性の石灰沈着)パターンで、画像所見と臨床像のズレに振り回される点です。
急性発作のときは、患者が最も痛い関節が“石灰化が一番目立つ関節”と一致しないこともあり、画像はあくまで「疾患背景の証拠」と捉える方が安全です。semanticscholar+1
画像所見を過信せず、発赤・熱感・可動域制限・全身状態を踏まえて、穿刺をためらわない判断が医療安全の面でも重要になります。
CPPD結晶沈着症の治療とNSAIDs
CPPD結晶沈着症には結晶を溶解・除去する特効薬がなく、現時点の中心は疼痛と炎症を抑える対症療法です。
急性発作ではNSAIDsが用いられ、膝などの大関節に関節液が貯留する場合は穿刺排液と関節内ステロイド注入がしばしば行われます。
多関節発作や発熱など全身症状が強いときには、ステロイドの全身投与が選択されうる、という整理は実臨床の判断に直結します。
生活指導としては、急性期は患部安静が原則で、痛みが落ち着いた後は過度な安静を避けて通常生活へ戻す指導が必要とされています。
また、痛風と異なり食事療法は原則不要とされるため、患者が自己判断で極端な食事制限を始めないよう説明することが重要です。
関節変形が進み歩行障害が進行すれば人工関節置換術などの外科的治療が適応になりうる点も、長期フォローでは押さえておきたい事項です。semanticscholar+1
CPPD結晶沈着症の鑑別と代謝性疾患(独自視点)
検索上位の一般向け解説では「膝の偽痛風=高齢者の一過性発作」として理解されがちですが、医療従事者が一段深く見るなら“なぜその人に結晶沈着が進んだのか”の背景評価が差になります。
特に55歳以下など若年でCPPDが疑われる場合、遺伝性疾患や代謝性疾患が隠れていることがあり、血液検査や画像検査で原因検索が必要になるとされています。
大阪大学の解説でも、原発性/続発性副甲状腺機能亢進症、低Mg血症、低ホスファターゼ症、ヘモクロマトーシス、ギテルマン症候群など、基礎疾患を伴うことがあると具体的に挙げられています。
さらに実務的には、鑑別の精度を上げる“ミニ検査セット”を外来のテンプレとして持つのが有効です。
慶應義塾大学病院の解説では、代謝性疾患との区別としてカルシウム、フェリチン、マグネシウム、リン、アルカリフォスファターゼ、鉄、トランスフェリン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンなどを調べると明記されており、これを起点に院内のオーダーを標準化できます。
この「背景を拾う視点」は、単に発作を止めるだけでなく、再発しやすい症例・多関節化しやすい症例の見立てにもつながり、紹介(内分泌、腎、血液など)のタイミングを早められる可能性があります。
参考)ピロリン酸カルシウム沈着症|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸…
(診断・治療の臨床像と病型、検査の具体例がまとまっている参考リンク:概要〜診断〜治療の流れ)
慶應義塾大学病院 KOMPAS:ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)
(化膿性関節炎の除外や、急性期治療・生活指導の要点が短く整理されている参考リンク:現場の説明に使いやすい)
(代謝性疾患・併存疾患の具体例が列挙され、若年例や背景検索の視点が得られる参考リンク:原因検索パートの補強)