上腕骨外側上顆炎の治し方とストレッチとバンド

上腕骨外側上顆炎の治し方

上腕骨外側上顆炎の要点
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まずは病態の誤解を正す

慢性例は「炎症」より腱の変性(tendinosis)が中心になり得るため、安静だけでなく段階的な負荷調整が重要。

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保存療法が基本

活動調整・外用薬/NSAIDs・ストレッチ・バンド装着・リハビリが第一選択。多くは保存的に改善を目指す。

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難治例は段階的に追加

痛みが強い/長期化する場合は注射や画像評価、さらに手術適応の検討へ。再発予防まで含めた説明が鍵。

上腕骨外側上顆炎の症状と診断とテスト

 

上腕骨外側上顆炎(いわゆるテニス肘)は、物をつかんで持ち上げる、タオルをしぼるなどの動作で、肘外側〜前腕に痛みが出るのが典型です。

日本整形外科学会(JOA)でも、安静時痛が目立たないケースが多い点が示されています。

臨床では「圧痛+誘発テスト」で診断の精度が上がります。JOAが一般的検査として挙げるのは、Thomsenテスト(手関節伸展抵抗)、Chairテスト(椅子を持ち上げ)、中指伸展テストです。いずれも肘を伸ばした状態で抵抗運動を行い、肘外側から前腕の痛みが誘発されるかを見ます。

(JOA)

鑑別としては、橈骨神経由来の痛み(いわゆる橈骨トンネル症候群)、頸椎由来の放散痛、肘関節内病変(遊離体など)を念頭に置きます。難治例で「圧痛点が典型とズレる」「夜間痛が強い」「筋力低下が不釣り合い」などがあれば、病態の取り違えを疑い、画像や他部位評価に進めるのが安全です。

上腕骨外側上顆炎の原因と病態と短橈側手根伸筋

上腕骨外側上顆炎は、年齢とともに腱が傷みやすくなることに加え、手首を伸ばす筋群の起始部(特に短橈側手根伸筋)に障害が起こると考えられています。JOAでも短橈側手根伸筋が主に関与し、手関節伸展に関わる筋(長橈側手根伸筋、総指伸筋)も関連する点が整理されています。

(JOA)

ここで患者説明で重要なのが、「炎症だから冷やして安静」だけでは説明が足りないことです。慢性例では病理学的に炎症細胞が乏しく、腱の変性(tendinosis)として捉えられる、という見方が文献で繰り返し論じられています(angiofibroblastic hyperplasia など)。

論文(Pain Res Manag. 2020;2020:6965381)

意外に見落とされるのが「痛いから使わない」こと自体が、腱の脆弱化(ストレス遮蔽)につながり、再開時に再損傷しやすくなる可能性です。過度な安静一辺倒ではなく、痛みを許容できる範囲での負荷設計に導くと、治療の納得度が上がります(医療者側の説明の質が、患者のセルフマネジメントの質を決めます)。

(Pain Res Manag. 2020)

上腕骨外側上顆炎の保存療法と湿布と外用薬とバンド

治し方の基本は保存療法です。JOAの一般向け解説でも、①手首や指のストレッチ、②スポーツや手作業を控え湿布や外用薬、③局所麻酔薬+ステロイド注射、④テニス肘用バンド装着、の順で保存療法が提示されています。

(JOA)

外用NSAIDsについては、少なくとも短期(4週間程度)では有効である可能性が複数の試験で示されており、内服NSAIDsより胃腸障害リスクの面で扱いやすいことがあります(患者背景により選択)。ただし、痛みが引いた=治った、ではなく「負荷管理が成立した」状態を作るのが目的です。

(Pain Res Manag. 2020)

バンド(カウンターフォースブレース)は、前腕伸筋群を圧迫して短橈側手根伸筋起始部へのストレスを分散させ、痛みの頻度・重症度を下げ得るとされます。装着は「痛い肘の外側そのもの」ではなく、前腕の筋腹側に巻くこと、きつすぎて末梢のしびれや循環不全を作らないことを必ず指導します。

(Pain Res Manag. 2020)

【患者指導で使えるセルフケア要点】

  • 🧊急性の強い痛み:短期間のアイシング+活動量調整(RICEの考え方を応用)。(Pain Res Manag. 2020)
  • 💊薬:外用薬は「痛みをゼロにする」より「運動療法を可能にする」目的で位置づける。
  • 🎾バンド:家事や作業など負荷がかかるタイミングに限定して使い、常時固定で廃用を招かない。

上腕骨外側上顆炎のストレッチと運動療法とエキセントリック

ストレッチは「腱の付着部にかかる張力を下げる」目的で、保存療法の中核になります。JOAでも手首や指のストレッチをこまめに行うことが保存療法の第一に挙げられています。

(JOA)

運動療法は、単なる柔軟性だけでなく筋機能(伸筋群の耐久性・協調性)を戻すフェーズが重要です。総説では、伸筋群のストレッチと筋力強化が機能改善・疼痛軽減を狙う基本戦略として扱われ、近年はエキセントリック運動(伸張性収縮)が第一選択の保存療法として位置づけられつつあります。

(Pain Res Manag. 2020)

また、患者によっては「手首を反らす運動が怖い」ため回避が強く、結果として握力低下が固定化します。痛みの許容範囲(例:0〜10の疼痛スケールで3以下など、施設方針に合わせる)を設定し、反復回数よりフォームと翌日の反応(増悪の有無)で負荷を調整すると、継続率が上がります。

【例:外来で説明しやすい段階づけ(目安)】

  • 🟡痛みが強い時期:手関節・手指の軽いストレッチ、生活動作の工夫(持ち上げは手のひらを上にする等)を優先。(Pain Res Manag. 2020)
  • 🟢痛みが落ち着いた時期:前腕伸筋群の筋力訓練(特にエキセントリック)を追加し、作業復帰の耐久性を作る。(Pain Res Manag. 2020)
  • 🔵再発予防:握る・ひねる作業の「連続時間」を管理し、マイクロ休憩を入れる(スマホやPC作業でも同じ)。

上腕骨外側上顆炎の注射と手術と独自視点の再発予防

注射は「短期の疼痛軽減」には有用な場面がありますが、長期成績や副作用(反復で腱断裂や筋萎縮など医原性リスク)を踏まえた適応判断が必須です。総説では、ステロイド注射は短期的に良いが、1年後では経過観察や理学療法に劣る可能性、反復注射の有害事象リスクが指摘されています。

(Pain Res Manag. 2020)

保存療法に反応しない難治例では手術療法を検討します。JOAでも保存療法が無効の場合に手術療法(筋膜切開術、切除術、前進術、肘関節鏡視下手術など)が挙げられており、臨床では「どれだけ保存療法を適切に行ったか(期間と内容)」を整理して紹介することが重要です。

(JOA)

独自視点として強調したいのは、「再発予防は前腕だけでは終わらない」点です。上肢の痛みが長引く患者では、①肩甲帯の安定性低下→遠位で過剰に握る、②前腕回内位・手関節背屈位での固定化(マウス操作や工具)→短橈側手根伸筋が休めない、③“痛み回避”による筋出力の偏り、が重なりやすいです。そこで、再発予防として次をセットで説明すると、医療者の指導が「治し方」から「戻らない身体の使い方」へ進化します。

【再発予防チェック(意外に効く)】

  • 🖱️マウス:手首背屈位で固定しないよう、前腕支持を作る(机前縁で前腕が浮く人は要注意)。
  • 🧰工具・家事:握り込みを減らすため、グリップを太くする/滑り止め手袋で把持力を下げる。
  • 🎾スポーツ:バックハンドで肘伸展+手関節背屈が強いフォームは負荷が集中しやすいので、コーチングと連携。
  • 🧠患者教育:痛みが減っても「連続作業時間」を先に戻すと再燃しやすいので、強度より時間を段階的に増やす。

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予防と治療(検査・ストレッチ・注射・手術の概要がまとまる権威ある日本語リンク:外来説明の土台)

日本整形外科学会:テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

病態(慢性は変性=tendinosis、保存療法の位置づけ、注射の短期効果と長期課題、装具・ESWTなどの概観:医療者向けに深掘りする際の基礎)

Management of Lateral Epicondylitis: A Narrative Literature Review (Pain Res Manag. 2020)

上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2024(改訂第3版)