上腕骨外側上顆炎と治し方とストレッチ

上腕骨外側上顆炎と治し方

この記事の概要
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まずは保存療法が基本

ストレッチ、負荷調整、外用薬・装具などを組み合わせ、腱付着部の過負荷を減らします。

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理学療法は「腱の再教育」

痛みを抑えるだけでなく、伸筋群の機能回復と再発予防(作業動作の修正)まで含めて設計します。

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治らないときは方針転換

注射や体外衝撃波、画像評価の再確認、鑑別(頸椎・神経・靱帯損傷など)を段階的に考えます。

上腕骨外側上顆炎の保存療法とストレッチ

 

上腕骨外側上顆炎(いわゆるテニス肘)の「治し方」を語るとき、一選択は保存療法です。日本整形外科学会の一般向け解説でも、治療はまず保存療法(手首や指のストレッチ、手を使う作業を控える、湿布・外用薬、必要に応じて注射やバンド)から開始する流れが明確に示されています。

この疾患の本態は“炎症”だけでなく、短橈側手根伸筋(ECRB)起始部周辺の微小損傷・変性を背景にした腱付着部障害(tendinopathy)として捉えると、保存療法の狙いが整理しやすくなります(痛みの鎮静+過負荷環境の是正+腱の負荷耐性の再獲得)。

保存療法の設計は、単純な「安静」ではなく“負荷の最適化”が鍵です。具体的には、痛みが強い急性期(増悪期)には以下を優先します。

・🧊疼痛の出る動作(握る・ひねる・持ち上げる)を回避し、作業量を落とす

・🧴外用NSAIDsや湿布などで痛みを抑え、睡眠や日中活動の質を確保する(漫然と長期化させない)

・🧷装具(テニス肘用バンド)で前腕伸筋群への負荷を分散する(装着位置は外側上顆そのものではなく、やや遠位の筋腹側が一般的)

ストレッチは“頻度”と“痛みの許容範囲”の設計が重要です。上位情報として、手首や指のストレッチをこまめに行うことが推奨されており(日本整形外科学会)、臨床では「痛みを0にするため」ではなく「痛みを悪化させない範囲で腱・筋の滑走と伸張性を保つ」目的で用います。

実践のコツは次の通りです。

・🖐️手関節屈曲方向へゆっくり伸張し、肘は伸展位で固定して“前腕外側(伸筋群)に伸び感”が出る角度を探す

・⏱️20〜30秒保持を1セットとして数回、1日複数回(“こまめに”を優先)

・⚠️「伸び感」ではなく鋭い痛みが出る場合は角度・負荷を減らす(強い疼痛のまま継続すると過負荷の上塗りになる)

上腕骨外側上顆炎の診断とテスト

「治し方」の前提として、上腕骨外側上顆炎らしい所見が揃っているかの確認は医療従事者として省けません。日本整形外科学会の解説では、外来で行える疼痛誘発テストとしてThomsenテスト、Chairテスト、中指伸展テストが一般に用いられるとされています。

これらは共通して、前腕伸筋群(特にECRB)に負荷をかけ、外側上顆〜前腕外側の痛みを再現する点がポイントです。

臨床の落とし穴は「肘外側が痛い=外側上顆炎」と短絡しやすいことです。肘外側痛の鑑別としては、橈骨神経(後骨間神経)絞扼に関連する“橈骨トンネル症候群”、外側側副靱帯損傷、頸椎由来の放散痛などが混ざり得ます。保存療法が計画通り進まない時ほど、疼痛部位の再同定(圧痛点が外側上顆直上か、やや遠位か、筋腹か、橈骨頭周辺か)と、負荷での再現パターンの再評価が重要になります。

また、患者説明の観点では「安静時は痛くないが、つかむ・持ち上げる・タオルを絞るなどで痛い」という典型的な訴えは、まさに日本整形外科学会の症状説明と整合します。ここを丁寧に言語化できると、患者の自己判断による無理な継続(痛みを我慢して使い続ける)を減らせます。

上腕骨外側上顆炎の注射とステロイド

保存療法に含まれる選択肢として、日本整形外科学会は「肘外側に局所麻酔薬とステロイドの注射」を挙げています。急性の強い疼痛で日常生活や睡眠が破綻しているケースでは、短期的な鎮痛によりリハビリ(ストレッチ・運動療法)へ移行しやすくする、という位置づけが現実的です。

一方で、上腕骨外側上顆炎の診療ガイドライン(日本整形外科学会・日本肘関節学会が作成)には、薬物療法、ステロイド局所注射、テニスバンド、理学療法、体外衝撃波、PRPなど多数のClinical Questionが整理されており、治療選択の幅と同時に「どれを、どのタイミングで」が論点であることが分かります。

現場で強調したいのは、ステロイド注射は“万能の根治”ではない点です。実際に、ステロイド注射に伴う靱帯損傷を報告した国内症例報告もあり、反復注射・過度な早期復帰・注射後の負荷管理不良が重なるとリスクが顕在化し得ます。

したがって説明の要点は次です。

・💉目的は痛みの短期コントロールで、注射後に「負荷を整える期間」を作ることが重要

・📅注射で痛みが軽くなった直後ほど、作業量・スポーツ量の段階的復帰計画が必要

・🧠“痛みが消えた=治癒”ではなく、腱の耐性回復は遅れて進むため再発しやすい

必要に応じて、文献・症例への導線を置いておくと記事の信頼性が上がります。

ステロイド注射に伴う靱帯損傷の報告(注意喚起の根拠)。

上腕骨外側上顆炎に対するステロイド注射に伴う靱帯損傷の一例(J-STAGE)

上腕骨外側上顆炎の理学療法と運動療法

保存療法の中で、患者アウトカムに直結しやすいのが理学療法(運動療法を含む)です。上腕骨外側上顆炎では、安静と鎮痛だけでは“負荷に弱い腱”のまま日常へ戻ってしまい、再燃を繰り返すことがあります。ガイドラインでも理学療法がClinical Questionとして扱われていること自体が、臨床上の重要性を示唆します。

運動療法の中でも、エキセントリック(遠心性)運動は研究蓄積があり、システマティックレビューでは、エキセントリック運動を含む介入群で痛み・機能・握力が改善したという報告が多いとまとめられています。

ただし、“エキセントリックだけ”で勝てるというより、多くは多面的プログラム(負荷調整+徒手+物理療法+ホームエクササイズ)の一部として組み込まれています。

臨床での組み立て(例)は次の通りです。

・🏋️手関節伸展のエキセントリック:軽負荷から開始し、痛みの強い日は負荷を落とす(可変性が大事)

・🤲握力再教育:痛みが出にくい肢位(手関節軽度伸展など)を探して段階的に戻す

・🧰道具の工夫:太いグリップ、滑り止め、両手動作、手のひらを上に向けて持つなどで外側上顆へのストレスを減らす(生活指導は“治療”に含める)

・🧠痛み教育:痛みゼロを目標にしすぎず、許容範囲内での負荷が腱の回復に必要なことを共有する

エキセントリック運動のエビデンス(要点確認用)。

Is eccentric exercise an effective treatment for lateral epicondylitis? A systematic review(PubMed)

上腕骨外側上顆炎の体外衝撃波と独自視点

保存療法抵抗性の症例では、体外衝撃波療法(ESWT)を検討する施設も増えています。上腕骨外側上顆炎診療ガイドラインでも体外衝撃波治療がClinical Questionとして扱われており、一定の臨床的位置づけがあることが分かります。さらに国内論文として、難治性の上腕骨外側上顆炎に対する拡散型体外衝撃波治療の報告もあり、「外来で行える低侵襲治療で、手術前に検討してよい選択肢」という趣旨が述べられています。

ここから先は検索上位に埋もれがちな“独自視点”として、医療従事者が押さえておきたいポイントを1つ深掘りします。それは、治療反応性を左右するのが「局所(肘)への介入」だけでなく、「負荷が肘へ集中する理由の評価」であることです。

具体的には、肩甲帯(肩甲骨周囲筋)や体幹の出力が落ちている人は、軽い動作でも前腕伸筋群に代償が入りやすく、肘に過負荷が集中します。テニスやゴルフだけでなく、デスクワーク+マウス操作、育児、厨房作業などでも同様の“代償パターン”が起こり得ます。

この場合、局所のストレッチやバンドだけで一時的に楽になっても、元の作業環境に戻った瞬間に再燃しやすいので、「動作の分解」と「負荷の分散」を治療計画に最初から入れておくと、治し方の説明に説得力が出ます。

意外に見落とされる実務的チェック項目(現場で使える)

・🖱️マウスの高さと前腕回内位の固定(回内+手関節背屈位が続くと伸筋群が張りやすい)

・🔧工具・包丁のグリップ径(細いほど握り込みが強くなり外側上顆に負担が集まる)

・🧺持ち上げ動作の手のひらの向き(回外位のほうが外側負荷が下がる場面がある)

・🏸フォームの修正(打点が後ろ、肘主導、手首こねる等は再発因子になりやすい)

体外衝撃波の国内報告(難治例での位置づけの参考)。

難治性の上腕骨外側上顆炎に対する拡散型体外衝撃波治療(PDF, J-STAGE)

ガイドラインの存在(治療選択肢の全体像の根拠)。

上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(改訂第2版)(Minds)

疾患の基本(症状・テスト・保存療法の標準的説明の根拠)。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)(日本整形外科学会)

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