結節性多発動脈炎と診断基準と検査所見と血管造影

結節性多発動脈炎 診断基準

結節性多発動脈炎の診断基準:臨床で迷わない整理
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Definite/Probableの骨格

厚労省の枠組みは「主要症候」+「組織 or 血管造影所見」で判定する構造です。

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検査は“炎症+臓器虚血”をセットで

CRP/赤沈などの炎症反応だけでなく、腎・神経・消化管など臓器障害の裏付けが重要です。

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鑑別はANCA関連血管炎の除外が要

PANは中型血管主体で、糸球体腎炎や小血管炎主体の病態は基本的に合致しません。

結節性多発動脈炎 診断基準と主要症候(Definite/Probable)

 

結節性多発動脈炎PAN)は、厚生労働省指定難病として「Definite」「Probable」を対象に診断基準が示されています。

基本構造は「主要症候」と「検査所見(組織または血管造影)」の組み合わせで、臨床的には“症候の数え上げ”よりも“中型血管炎として整合するか”の確認が重要です。

【主要症候(10項目)】は以下のように、全身症状+臓器虚血/梗塞+皮膚・神経症状を広くカバーします。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001135322.pdf

【診断カテゴリー】は次のとおりです。

  • Definite:主要症候2項目以上+検査所見1(組織)​
  • Probable(a):主要症候2項目以上+検査所見2(血管造影)​
  • Probable(b):主要症候のうち1(発熱+体重減少)を含む6項目以上​

“Probable(b)”は、血管造影や生検で決め手が得られない状況(侵襲やサンプリングの問題など)を想定した逃げ道にも見えますが、逆に言うと「症候の整合性」を相当厳密に吟味しないと誤診の温床になります。

特に高血圧・腎障害・末梢神経障害・皮膚所見が同時に揃うケースはPANらしさが増しますが、感染性心内膜炎やコレステロール塞栓、薬剤性血管炎などでも似た構図をとり得るため、“血管炎の型”としての再確認が必須です。

結節性多発動脈炎 診断基準と検査所見(病理組織・炎症反応・ANCA)

厚労省の検査所見は、(1)病理(組織)または(2)血管造影所見が柱で、Definiteは病理が要件になります。

病理の中核は「中・小動脈フィブリノイド壊死性血管炎の存在」で、PANの本体が“壊死性動脈炎”であることを示します。

一方で、PANは臓器別に病変が“飛び石(skip)”になり得るため、皮膚や筋の生検が陰性でも否定できません。

このときに重要なのが、炎症反応(CRP・赤沈)と臓器障害(腎機能、神経障害、消化管虚血など)を同時に「同一機序で説明できるか」を見直すことです。

また、厚労省の臨床調査個人票にはMPO-ANCA/PR3-ANCAの記載欄があり、鑑別の実務としてANCA関連血管炎を意識して除外する設計になっています。

PANは一般にANCAが陰性とされ、糸球体腎炎や毛細血管・細静脈レベルの小血管炎が前面に出る場合は、CHCCの定義にも照らして別の血管炎(AAVなど)を再検討するのが安全です。

参考)https://www.derma-osaka-u.jp/wp-content/uploads/2017_05.pdf

ここで“意外に見落とされやすい点”は、PANの診断基準を満たすことと、活動性評価・治療選択に十分な情報が揃うことは別問題だという点です。

たとえば、同じ「腎障害」でも、腎梗塞優位なのか、腎動脈狭窄による腎虚血・レニン高値が主体なのかで、画像の選び方(CTA/MRA/血管造影)や緊急度が変わります。

結節性多発動脈炎 診断基準と血管造影(小動脈瘤・狭窄・壁不整)

Probable(a)の鍵になる血管造影所見は「腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発性小動脈瘤・壁不整・狭窄」です。

PANでは中型血管が標的になりやすく、腎内小動脈の微小動脈瘤が“診断に効く所見”として古くから重視されてきました。

ただし、血管造影の所見は“あれば強い”一方、“なければ否定”ではありません。

理由は、(1)撮像できる血管径の限界、(2)病変の時相(活動期・瘢痕期)、(3)治療介入後で所見がマスクされる、(4)部位依存(腸間膜・肝・脾・末梢など)といった要因があるためです。

実務では、造影CT(CTA)やMRAで全身の血管病変の当たりをつけ、必要な場面でカテーテル血管造影に進む流れが現実的です。

参考)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_d.pdf

また、消化管虚血を疑う腹痛・下血がある場合、腸間膜動脈の評価が遅れると不可逆な腸管壊死に至るため、症状が強いほど画像検査の優先順位を上げます。

結節性多発動脈炎 診断基準と鑑別診断(AAV・川崎病・膠原病)

厚労省の枠組みでは、鑑別として「顕微鏡的多発血管炎」「多発血管炎性肉芽腫症」「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」「川崎病血管炎」「膠原病(SLE、RAなど)」「IgA血管炎」を除外することが明記されています。

これは、PANの主要症候(神経・腎・皮膚・消化管など)が“血管炎一般”としては非特異的であり、分類を誤ると治療戦略がズレるからです。

鑑別のコツは、「血管サイズ」「臓器障害の型」「検査(ANCAなど)」の3点をセットで考えることです。derma-osaka-u+1​

たとえば小血管炎主体(糸球体腎炎、肺胞出血など)を疑わせる所見が前面にある場合、CHCCのPAN定義(中動脈の壊死性動脈炎で、糸球体腎炎や小血管炎を伴わない)から外れるため、AAV側に舵を切って再評価するのが合理的です。

また、膠原病に伴う二次性血管炎(SLE/RAなど)は臨床像が複雑化しやすく、PAN“単独”の診断基準だけで走ると見誤りやすい領域です。

逆に言うと、PANらしい所見が揃っていても、自己抗体プロファイル、補体、感染スクリーニング、薬剤歴を“儀式”ではなく意思決定の材料として統合しておくと、後から診断がひっくり返るリスクを減らせます。

結節性多発動脈炎 診断基準の運用(独自視点:臓器別に「証拠の強さ」を点数化する)

検索上位の多くは「主要症候を列挙→Definite/Probable」の説明に留まりがちですが、臨床では“どの臓器で確からしさを稼ぐか”を戦略的に考えると診断精度が上がります。

そこで独自の運用提案として、臓器別に「証拠の強さ」を点数化し、Definite/Probableの判定と同時に、追加検査の優先順位を決める方法が有用です。

例として、以下のように“PANらしさ”の強い証拠から集めます(あくまで運用案で、公式スコアではありません)。

  • 強い(決め手):生検で中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎​
  • 強い(画像で決める):腎内小動脈を含む腹部大動脈分枝の多発小動脈瘤・狭窄・壁不整​
  • 中等度(臓器虚血の組み合わせ):高血圧+腎梗塞、単神経炎、多発皮膚潰瘍/壊疽、消化管虚血所見​
  • 弱い(炎症反応のみ):CRP高値、赤沈亢進、白血球増多など(非特異的)​

このように整理すると、「Probable(b)で走ってよい症例」と「侵襲があっても生検/血管評価を急ぐべき症例」を分けやすくなります。

さらに、治療開始後は組織学的証拠が得にくくなることがあるため、疑いが強い段階で“どこを生検するか(皮膚・筋など)”を先に決めておくと、診断の後戻りを減らせます。

有用:厚労省の指定難病「結節性多発動脈炎」臨床調査個人票(主要症候、検査所見、Definite/Probableの判定枠がまとまっている)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001135322.pdf

有用:血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版・ダイジェスト)(CHCC2012の整理や、PANを含む血管炎全体の枠組み理解に役立つ)

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_d.pdf

参考:CHCC2012に基づくPANの定義(糸球体腎炎や小血管炎を伴わない中動脈の壊死性動脈炎という“境界線”の確認に有用)

https://www.derma-osaka-u.jp/wp-content/uploads/2017_05.pdf

抗リン脂質抗体症候群・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症・結節性多発動脈炎・リウマトイド血管炎の治療の手引き 2020