成人発症スチル病の治療
成人発症スチル病の治療の前提:診断基準と鑑別
成人発症スチル病(AOSD)は「診断(確定)」というより、分類基準+除外診断で臨床的に組み立てる疾患です。難病情報センターでは、39℃以上の発熱(1週間以上)、関節痛(2週間以上)、定型的皮疹、好中球増加を伴う白血球増加などを大項目とし、感染(敗血症など)・悪性腫瘍(悪性リンパ腫など)・膠原病を除外する枠組みが示されています。
医療現場で特に注意したいのは、初診時点で「発熱+炎症反応+フェリチン高値」がそろうとAOSDに寄りやすい一方、同じパターンは重症感染症や血液腫瘍でも起こり得る点です。フェリチンは活動性の参考になる一方、特異的ではないので、血液培養・画像・リンパ節/骨髄評価などを含めた鑑別の優先順位づけが必要になります。
また、Minds掲載の「成人スチル病診療ガイドライン2017年版【2023年Update】」は、診断・活動性評価・治療(NSAIDs、ステロイド、MTX、シクロスポリン、生物学的製剤など)をCQ形式で整理しており、施設内での標準化に使いやすい骨格です。
成人発症スチル病の治療:ステロイドとパルス療法
治療の基本は炎症制御で、難病情報センターでは通常グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)で寛解を目指し、初期量はプレドニン換算で30〜60mg程度を炎症の程度や体重で調整すると説明されています。
重要なのは「効いたらすぐ切る」ではなく、再燃を避けるために慎重に減量することです。難病情報センターでも、早く減量し過ぎると再燃する場合があるため慎重に減量すると明記されています。
ステロイド反応が不十分、または臓器障害が強い・病勢が激しい状況では、ステロイド大量点滴(パルス療法)を併用する選択肢が挙げられています。
現場の落とし穴として、発熱の原因がAOSDではなく感染だった場合、ステロイド導入が悪化要因になり得ます。導入前後で感染徴候(血行動態、培養結果、画像、PCTの解釈など)を再評価し、「AOSDとしての熱型」だけで突っ走らない運用が安全です(ガイドラインの診断CQをチームで参照し、除外を手順化すると事故が減ります)。
成人発症スチル病の治療:メトトレキサートとシクロスポリン
ステロイドで効果不十分、再燃、あるいは減量困難な場合、難病情報センターでは免疫抑制薬の併用が選択肢になるとされています(保険適応外を含む)。
代表例として、メトトレキサート(MTX)やシクロスポリンが臨床で用いられてきた経緯があり、Minds掲載ガイドラインのCQにも「MTXはASDに有用か」「シクロスポリンはASDに有用か」、さらに「ステロイド抵抗性ASDに対してMTXとシクロスポリンのどちらが有用か」といった形で論点が整理されています。
ここでの実務上のポイントは「どちらが効くか」だけでなく、患者背景(妊娠可能年齢、腎機能、感染リスク、肝機能、ワクチン接種歴、薬剤相互作用など)で優先度が変わる点です。たとえば高齢者や腎機能低下がある場合はシクロスポリンの取り回しに慎重さが求められ、肝機能障害が目立つ場合はMTXの導入判断が難しくなるなど、病勢だけで決めない枠組みが必要になります。
成人発症スチル病の治療:IL-6阻害薬とIL-1阻害薬(生物学的製剤)
治療抵抗性(ステロイド単独や従来免疫抑制薬でコントロール困難)では、生物学的製剤が実臨床で大きな位置を占めます。難病情報センターは「既存治療で効果不十分な成人発症スチル病」に対してトシリズマブが2019年5月に、カナキヌマブが2025年3月に承認されたと記載しています。
さらに、Minds掲載のガイドラインでは「治療抵抗性ASDに対してIL-6阻害薬と免疫抑制薬のどちらが有用か」「治療抵抗性ASDに対してIL-1阻害薬と免疫抑制薬のどちらが有用か」など、難治例の次の一手がCQとして明確化されています。
“意外に重要な実務”として、生物学的製剤導入前に「感染の見落とし」をもう一段階つぶすことが挙げられます。AOSDの高熱・皮疹・肝機能障害は感染症と非常に似るため、導入前のスクリーニング(結核/肝炎、必要に応じ真菌、最近の渡航や曝露、血液培養のタイミング)をチェックリスト化すると、忙しい現場でも漏れが減ります。
論文引用としては、AOSDでの生物学的製剤治療をまとめた日本語レビュー(J-STAGE掲載)もあり、症例集積中心であること、有害事象として感染症や注射部位反応などが報告されることが述べられています(詳細は本文参照)。
成人発症スチル病の治療で見落としやすい:フェリチンとMAS/HPSの早期対応(独自視点)
成人発症スチル病は、病勢が急激に跳ね上がる局面があり、その代表がマクロファージ活性化症候群(MAS)/血球貪食症候群(HPS)です。難病情報センターでは、成人発症スチル病で10〜15%程度にMAS/HPSが合併し得て、フェリチンが極めて高い値を示すことがあると説明されています。
ここでの臨床の盲点は、「フェリチンが高い=AOSDが悪い」と短絡し、感染や腫瘍性疾患、あるいはMAS/HPSへの移行を同じ箱に入れてしまうことです。フェリチンが上がる方向は同じでも、DICや血球減少、肝障害の加速、意識障害などの“並走所見”がそろい始めたら、単なる再燃ではなくMAS/HPSを疑い、血算トレンド・凝固・肝胆道系・LDH・TGなどを含む再評価を即座に回す運用が安全です。
Minds掲載ガイドラインの目次にも「ASDに合併するマクロファージ活性化症候群の臨床的特徴はなにか」といったCQが含まれており、治療章だけでなく合併症章を“治療の一部”として読む価値があります。
また、日常診療で使える小技として、入院初期から「発熱の波形(間欠熱)」「皮疹の出現タイミング(解熱とともに消えるか)」「咽頭痛・リンパ節腫脹」「薬疹の可能性」を看護記録と同じ粒度で共有すると、AOSDらしさの判定精度が上がり、過剰抗菌薬や過小治療のどちらも減らせます(特に夜間帯の判断が安定します)。
治療全体の一次情報として最も参照しやすい日本語リンク:Minds掲載のガイドライン概要(CQ一覧・アルゴリズム・定義の所在が分かる)
成人スチル病診療ガイドライン 2017年版【2023年Update】(Minds)
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10629099/
鑑別と治療の実務に直結する日本語リンク:難病情報センター(診断基準、治療、MAS/HPSなど重篤合併症の説明がまとまる)
