脊髄性黒内障と一過性黒内障とTIA

脊髄性黒内障

脊髄性黒内障:臨床で迷いやすいポイント
👁️

「黒内障」は症状名としても病名としても出てくる

一過性に片眼が見えない“症状”として語られる一方で、コード上は「視覚障害/盲」に分類される“病名”としても並び、用語の混線が起きやすい領域です。

🧠

一過性黒内障はTIAの重要所見

TIAの定義に「網膜の虚血」が含まれ、片眼の一時的視力消失(黒い幕/白っぽい霧)として現れ得ます。

🚑

“治ったから大丈夫”が最も危ない

TIA後は早期に脳梗塞へ移行し得るため、短時間で改善しても、神経学的緊急度の高い訴えとして初動を設計する必要があります。


<% index %>

脊髄性黒内障とICD10と病名マスター

医療現場で「脊髄性黒内障」という語に初めて遭遇する場面は、紹介状の病名欄やレセプト・サマリー、あるいは院内の病名マスター検索で見つかったときが多いはずです。実際、標準病名マスター(ICD10検索)では「脊髄性黒内障」がH54.0(両眼性盲)配下の病名の一つとして掲載されています。

ここが最初の落とし穴で、一般に外来で語られる「一過性黒内障(amaurosis fugax)」は、あくまで“発作性の一過性単眼視力消失”という症候であり、持続的な視覚障害(盲)を意味するH54の文脈とはズレます。

さらに厚生労働省資料の分類上も「一過性黒内障」は網膜血管閉塞(H34)ではなく、G45.3として“除外”されていることが明記されています。

つまり「脊髄性黒内障」という病名がデータ上に出てきたとき、臨床の問いは2段階になります。①それは“症候としての一過性黒内障”のことを言いたいのか、②それとも“視覚障害/盲の病名”として入力されただけなのか――この切り分けが必要です。

独自視点として重要なのは、病名マスターに引っ張られて臨床推論が固定化される点です。例えば「脊髄」という語が入っていることで脊髄疾患を連想しやすい一方、現実に緊急度が高いのは“網膜虚血=TIA相当”としての一過性黒内障であるケースが多く、まずは脳卒中ハイリスク症候として初動を組む方が安全です。

参考:ICD分類で「一過性黒内障(G45.3)」が眼科の網膜血管閉塞(H34)から除外されている点(用語の混乱回避に有用)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou07.pdf

脊髄性黒内障と一過性黒内障とTIA

臨床的に「黒内障」と言われたときにまず押さえるべきは、一過性黒内障がTIAの“特徴的な症状”として位置づけられている点です。

TIAは、近年の定義では「脳、脊髄または網膜の局所的虚血による一時的な神経学的機能障害で、急性梗塞を伴わないもの」とされ、網膜虚血が明確に含まれます。

一過性黒内障は、眼動脈(網膜へ血流を送る血管)の血流低下で片目が一時的に見えなくなる、と説明されており、「黒い幕」だけでなく「白っぽく」見えなくなる表現もあり得る点は問診のコツです。

そしてこの訴えが出た場合、同側の内頚動脈狭窄が強く疑われる、という臨床上のメッセージが明確に書かれています。

“脊髄性黒内障”という語面に引きずられず、病態としては「網膜虚血=脳卒中の一部(眼のstroke)」とみなして、救急導線・脳卒中導線へ乗せるのが現場では合理的です。

意外に見落とされやすいのは、症状が消失している時点で眼底所見が乏しく、患者も「もう治った」と受診を先送りしがちな点です。TIAは早期に脳梗塞へ移行し得るため、改善したから安心、ではなく「改善したからこそTIAの可能性が高い」場面があることを共有しておくと、受診行動につながります。

参考:TIAの定義に網膜虚血が含まれること、一過性黒内障の所見・検査・治療(抗血小板/抗凝固、頚動脈高度狭窄でCEA/CAS)がまとまっている

一過性脳虚血発作(TIA)について - 東京逓信病院
東京逓信病院は東京都千代田区の総合病院で、どなたもご利用いただけます。救急難民やがん難民を作らない急性期及び総合的がん診療医療機関を自負し、新しい医療とエビデンスを創造し発信する先進医療機関を目指します。

脊髄性黒内障と頚動脈狭窄と検査

一過性黒内障を疑うとき、検査設計は「眼」単独で閉じず、血管イベントとして全身(特に頚動脈・心原性)を見にいくのが原則です。

具体的には、TIA評価として血圧測定、血液検査、心電図、MRI/MRA、頚動脈エコーなどで原疾患を探す流れが提示されています。

頚動脈狭窄が背景にある場合、血栓がはがれて末梢(網膜動脈系)に詰まる機序が想定される、という説明は、患者説明にも紹介状にもそのまま使いやすい要点です。

心電図で心房細動がある場合は心原性脳塞栓症の可能性が高い、という枝分かれも明確で、黒内障を「眼の症状」で終わらせないためのチェック項目です。

また、頚動脈狭窄症の患者が「片眼が黒い幕のように見えにくい」といった一過性黒内障を呈し得ることは、頚動脈狭窄の啓発ページでも繰り返し述べられています。

臨床での“意外な盲点”として、視力低下の訴えが「視野の上半分/下半分だけ」など部分的で曖昧な表現になることがある点が挙げられます。こうした訴えは虚血性視神経症など鑑別が広がるため、症状の時間経過(分〜数十分か、持続か)と単眼/両眼、同時に神経症状があったかを、最短で聴取するテンプレ化が有効です。

脊髄性黒内障と治療と予防

治療はまず「脳梗塞発症予防」が目的になり、TIAが疑われた場合にはただちに予防的治療を開始することが推奨されている、という姿勢が示されています。

原因が動脈原性(頚動脈や頭蓋内主幹動脈狭窄など)で血栓が飛んだ可能性が高い場合はアスピリンなどの抗血小板薬、心房細動があり塞栓が疑われる場合はワーファリンなどの抗凝固薬、という整理は現場の初期対応の骨格になります。

同時に高血圧・糖尿病・脂質異常症などの動脈硬化リスクへの介入も並行する、と明記されており、黒内障を“生活習慣病の出口”として捉える視点も重要です。

頚動脈高度狭窄がある場合にはCEA(頚動脈内膜剥離術)やCAS(頚動脈ステント留置術)を考慮し、CEAは症候性で70%以上狭窄が適応、CASは高齢やCEA高リスクなどで選択され得る、と具体的に整理されています。

別ソースでも、症状がある頚動脈狭窄で50%以上なら手術をすすめる、といった閾値が提示されており、施設の方針差はあっても「症候性+一定以上の狭窄」で血行再建を検討するという方向性は共通しています。

検索上位ではあまり強調されない実務的ポイントとして、黒内障の患者は「眼科に行くべきか、脳外科/救急か」で迷うことが多く、受診先の迷い自体が治療開始を遅らせます。受付や電話トリアージ用に「片眼の突然の見えにくさが数分〜数十分で戻っても、当日中に脳卒中評価が必要」という一文を院内で共有すると、運用上の事故が減ります。