後退視症と診断と原因と症状と治療

後退視症と診断と治療

この記事の概要
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後退視症は「見え方の異常」

眼の器質疾患だけでなく中枢の視覚処理異常も背景になり得るため、病歴と神経学的視点が重要です。

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診断は鑑別が中心

網膜剥離・硝子体疾患などの緊急疾患を先に除外し、必要なら神経画像も含めて評価します。

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治療は原因により分岐

原因治療+症状への具体的支援(説明・環境調整・リハ)でQOLを守る設計が鍵です。


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後退視症の症状と原因

後退視症(Porropsie)は、注視している対象が「遠ざかっていく」ように感じられる視覚体験として古くから報告があり、見え方の異常(知覚の歪み)として捉えるのが出発点になります。

同じ「見え方の異常」でも、眼科領域の器質疾患(網膜・硝子体黄斑)による像の乱れと、中枢(後頭葉〜側頭・頭頂葉周辺)の視覚処理異常による変形視・失認スペクトラムが混在し得る点が臨床上の落とし穴です。

原因は単一に決め打ちしにくく、少なくとも以下の2ルートで考えると整理しやすいです。

  • ①眼球(入力側)由来:網膜牽引や網膜剥離の前駆症状、黄斑部の障害などで、患者が「遠い」「小さい」「歪む」と表現するケースがある。

    参考)https://ganka.gr.jp/ja/sickness_moumaku.htm

  • ②中枢(処理側)由来:後頭葉・頭頂葉・側頭葉付近の病変で変形視が出現し得るため、視覚失認など他症状との組み合わせで疑う。​

意外に見落とされやすい点として、「遠ざかる」という主観は“視力低下”よりも“距離感・大きさ・実在感の違和感”として語られることがあり、問診で具体例(いつ・どこで・何が・どの程度)を引き出せないと、めまい・不安・抑うつに回収されて終わる危険があります。

後退視症の診断と検査

診断は「後退視症というラベルを付ける」より、「危険な鑑別を落とさない」ことが中心になります。

まず眼科救急で優先すべきは、飛蚊症・光視症・視野欠損が揃う場合の網膜裂孔〜網膜剥離で、進行すると視力に重要な黄斑が関与し視機能予後に直結するため、症状の時間経過とセットで評価します。

加齢に伴う後部硝子体剥離では、網膜への牽引が光視症の機序として説明されており、患者が「暗い所でピカピカする」「端で光る」と訴える場合は後部硝子体剥離〜裂孔合併の有無を確認します。

参考)後部硝子体剥離・飛蚊症・光視症 (よくある目の病気 82) …

この段階の基本検査は、眼底検査(散瞳)を軸に、必要に応じて周辺部までの観察や追加検査(施設の標準手順に従う)を組み合わせ、緊急紹介が必要な所見を見逃さない設計にします。

眼科所見が乏しいのに、対象の形・大きさ・距離の知覚異常が強い、あるいは他の高次視覚症状(例:見えているのに認識できない等)を疑う場合は、中枢性の変形視を念頭に神経学的評価へつなげます。

後頭葉の障害で視覚失認などが起こり得るという整理は、後退視症の周辺概念を医療従事者が共有するうえで有用です。

後退視症と治療

治療は「後退視症そのもの」への特効的アプローチというより、原因疾患の治療+安全性とQOLの確保が二本柱です。

網膜剥離が疑われる場合、放置すると最終的に失明に至り得るという啓発は患者行動を変える力が強く、受診勧奨の説明に具体性を持たせられます。

中枢性が疑われる場合も、症状を“気のせい”にしない説明が重要で、後頭葉周辺の機能低下で変形視が起こり得るという臨床的枠組みを共有すると、患者の納得度が上がり、検査・紹介の同意形成が進みやすくなります。

また、原因が不可逆で視機能障害が残る場合には、視覚リハビリテーションが生活の機能障害を減らし得るという考え方があり、医療側の「治らないから終わり」を避ける道筋になります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10333291/

医療従事者向けの実務ポイントとしては、治療方針の説明に「①失明リスクの有無」「②当日〜数日単位で悪化する疾患か」「③運転・転倒など安全配慮が必要か」を必ず含め、患者教育を手順化するとトラブルが減ります。

参考)網膜剥離の前兆・原因は?放置するどうなる|六甲なのはな眼科

後退視症と網膜剥離と硝子体

後退視症を訴える患者が同時に「飛蚊症」「光視症」「視野欠損」などを言語化していない場合でも、問診で誘導せずに確認する価値があります。

網膜剥離の症状として飛蚊症・光視症・視野欠損が挙げられるという整理は、後退視症の“背景にある緊急疾患”を拾い上げるチェックリストとして機能します。

後部硝子体剥離の発生過程で、硝子体と網膜の癒着部位が牽引され、光視症につながるという説明は、患者が自覚する「違和感」の医学的意味づけに役立ちます。

さらに、加齢や近視などを背景に後部硝子体剥離が起点となり網膜の裂け目から進行する、という機序の理解は、後退視症の訴えを“網膜イベントの入口”として評価する臨床感覚を支えます。

参考)網膜裂孔・網膜剥離

「意外な情報」として押さえたいのは、患者が“遠ざかる”と表現していても、実際には視野の一部が欠け始めた違和感を距離感のズレとして言い換えているケースがあり、視野の自覚は案外あいまいだという点です。

後退視症の独自視点と安全

検索上位の一般向け記事では「症状・原因・治療」の定型に収まりがちですが、医療従事者が差を作れるのは“安全”の設計です。

後退視症を訴える患者は、病態が眼科・神経・精神心理の境界にまたがることがあり、転倒・運転・就労(手元作業、夜間移動)など具体的リスクの聞き取りを先に置くと、診断が確定する前でも介入できます。

また、症状が慢性化している場合は「見え方の異常が生活にどう効いているか」を評価し、必要なら視覚リハの導入を検討するという視点が、治療手段が限られるケースで特に有用です。

眼科的に異常が見つからない場合でも、後頭葉周辺の機能低下で変形視が起こり得るという知識を背景に、神経学的症状の併存(読みづらさ、道に迷う等)を拾うと、紹介の質が上がります。

  • ⚠️ 緊急度の高い赤旗:急な飛蚊症増加、光視症、視野欠損(カーテン様)、急激な視力低下。
  • 🧩 問診で具体化する項目:いつから、片眼か両眼か、暗所で悪化するか、特定の対象(顔・文字)で強いか。
  • 🧯 安全介入:運転の一時中止提案、段差の多い環境の注意、転倒リスク確認、同伴受診の勧奨。

緊急疾患の症状整理(医療従事者が患者説明に使える要点)

疾患・状態 典型症状 重要ポイント
網膜剥離 飛蚊症、光視症、視野欠損、進行で視力低下。 放置で失明に至り得るため早期受診が重要。
後部硝子体剥離 網膜牽引により光視症が起こり得る。 裂孔合併の有無の確認が要点。
中枢性の変形視 後頭葉周辺病変で変形視などが起こり得る。 眼科所見が乏しければ神経学的評価も検討。

後部硝子体剥離と光視症の説明(患者説明で使える基礎)

後部硝子体剥離で網膜牽引が起こり光視症につながる、という機序の説明(症状の意味づけに有用)

網膜剥離の症状と受診の重要性(受診勧奨の根拠)

飛蚊症・光視症・視野欠損など網膜剥離の典型症状の整理(赤旗説明に有用)

後頭葉障害と変形視など(眼科異常が乏しい時の視点)

後頭葉病変で視覚失認・変形視が起こり得ることの概説(鑑別の補助)