両眼視力低下と受診目安
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両眼視力低下の原因:急性と慢性の鑑別
両眼視力低下の入口は、「急に落ちたのか(分〜日)」「徐々に落ちたのか(週〜年)」の二分でほぼ整理できます。
急性の両眼視力低下では、眼そのものの急変(例:緑内障発作)だけでなく、血管イベントや頭蓋内病変など中枢性の可能性も同時に考える必要があります。
一方、慢性の両眼視力低下は、白内障・屈折異常の変化・緑内障の進行・加齢黄斑変性など“よくある”疾患が多い反面、患者が受診を先延ばししやすい点がリスクです。
臨床で役立つ切り口として、次の4象限で考えると取りこぼしが減ります。
- 急性×痛い:緑内障発作、重症角膜障害など
- 急性×痛くない:網膜・視神経・脳血管イベントなど
- 慢性×痛い:ぶどう膜炎の反復、角膜疾患の遷延など
- 慢性×痛くない:白内障、緑内障、黄斑疾患、屈折変化など
「意外に見落としやすい」ポイントは、患者が言う“視力低下”が、実は視野障害・コントラスト低下・複視による見えにくさの総称になっていることです。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/symptoms.html?catid=100
両眼視力低下を訴えていても、片眼ずつの見え方を分けて聴くと、片眼性疾患が“両眼の不便”として訴えられていた、というケースもあります。
参考)救急を要する目の病気
参考:救急性の高い「突然の視力低下」や「緑内障発作」の具体的な症状目安(当日受診の考え方)。
岡山県眼科医会:救急を要する目の病気(当日受診が必要な症状の整理)
両眼視力低下の受診目安:救急・当日・早め
現場で最も重要なのは、緊急度を「救急(直ちに)」「当日中」「早め(数日以内)」に分け、患者導線を即決することです。
少なくとも、視力低下に加えて強い眼痛・頭痛・嘔吐・瞳孔散大がある場合は緑内障発作を疑い、迅速な眼科評価が必要とされています。
また「突然の視力低下」自体が当日受診の目安として挙げられており、時間勝負の病態(血流障害など)を前提に動くのが安全です。
脳神経系を強く疑う“赤旗”も、同じくトリアージに直結します。
これらは脳外科の緊急疾患が考えられるため、眼科に加えて脳外科受診が勧められる、と明記されています。
日本眼科学会の解説でも、両眼で見たときに二重に見える場合は斜視や屈折差が原因となり得る一方、急に起こる場合は脳や神経の異常(脳梗塞、脳動脈瘤、脳腫瘍、重症筋無力症など)も多く、MRI/CTで精査することがあるとされています。
このため、両眼視力低下の訴えでも「複視が混ざっていないか」を確認し、混ざっていれば“視力低下”扱いで様子見しない判断が重要です。
両眼視力低下の問診:視野・複視・頭痛の確認
問診は、視力表の前に“危険度を決める検査”として位置づけると整理しやすくなります。
特に、突然の複視や眼瞼下垂、瞳孔異常は脳外科の緊急疾患の可能性があるため、視力低下の背景症状として必ず確認したい項目です。
医療従事者向けに、短時間で再現性が高い聞き方の例をまとめます。
- 発症:いつから、どのくらいの速さで悪化したか(分・時間・日・週)
- 片眼ずつ:右だけ/左だけ/両方か(片眼遮蔽で確認)
- 痛み:眼痛、頭痛、吐き気の有無(緑内障発作を示唆)
- 見え方:視界が欠ける、カーテン状、黒い点が増える、二重に見える
- 神経症状:まぶたが下がる、しびれ、ろれつ、歩きにくさ
ここでの“意外な落とし穴”は、患者が「視力が落ちた」と言っていても、実際は「二重で読みづらい」「焦点が合わずに疲れる」などの訴えで、背景に眼球運動神経障害や重症筋無力症が隠れることがある点です。
複視の解説では、急に起こる場合に脳梗塞・脳動脈瘤・脳腫瘍・重症筋無力症などが挙げられており、問診で“複視ワード”を引き出せるかが勝負になります。
両眼視力低下の検査:視力検査と眼科紹介の基準
一次対応での視力検査は、「右眼・左眼・両眼」で分け、片眼測定時は遮蔽して行う、という基本が事故を減らします。
両眼視力低下を訴える患者ほど「両眼でなんとか見てしまう」ため、片眼ずつの矯正視力を取らないと重症度を過小評価しやすい点に注意が必要です。
紹介の基準は“病名確定”ではなく、“緊急病態の除外が一次対応では不十分”かどうかで決めるのが現実的です。
参考)両眼開放で日常視を行う事が困難な患者に対する単眼視眼鏡の選定
岡山県眼科医会の整理では、緑内障発作(視力低下、瞳孔の拡大、頭痛、眼痛、嘔吐など)や突然の視力低下は当日受診が必要とされており、一次現場では迷ったら緊急側に倒す運用が安全です。
現場で「眼科に電話する情報」として最低限そろえると良い項目は次です。
- 発症様式(突然/進行性)と発症時刻
- 片眼ずつの視力(可能なら矯正視力)
- 眼痛・頭痛・嘔吐、瞳孔不同、眼瞼下垂、複視の有無
- 外傷、薬剤(散瞳薬やステロイドなど)、コンタクト使用
参考:複視が急に起きたとき、脳・神経の異常も多く画像検査が検討される点(患者説明にも使いやすい)。
両眼視力低下の独自視点:申し送りで起きる誤解対策
両眼視力低下は、申し送りの言葉が曖昧だと、緊急度が“低く見積もられる”方向に偏りやすい症状です。
特に、「見えにくい=疲れ目」や「両眼だから白内障だろう」と短絡すると、突然の視力低下や緑内障発作など“当日受診”の枠から外れてしまう危険があります。
そこで、チーム医療の現場で効くのが「症状を“現象”に分解して申し送る」ルール化です。
- 視力低下(片眼ずつで低下しているか)
- 視野障害(欠け方:カーテン状、中心暗点などの表現)
- 複視(両眼でのみ二重か、片眼でも二重か)
- 疼痛(眼痛/頭痛)と自律神経症状(嘔吐)
- 瞳孔(散大/不同)と眼瞼下垂
岡山県眼科医会の情報では、突然の複視・急な眼瞼下垂・瞳孔の広がりは脳外科緊急疾患が考えられ脳外科受診を勧めるとされており、申し送りでもこの“脳外科キーワード”を落とさないことが重要です。
日本眼科学会の解説でも、急な両眼の複視は脳や神経の異常が多いとされ、画像検査(MRI/CT)が検討されることがあるため、視力低下の陰にある複視を拾う運用が安全側に働きます。
最後に、患者説明の一言テンプレート(現場向け)です。
- 「両眼の見えにくさは、目の病気だけでなく脳や神経が関係することもあるので、今日のうちに専門評価を受けましょう。」
- 「眼痛や吐き気がある視力低下は緊急性が高いことがあるため、すぐ眼科へつなぎます。」
