麻痺性縮瞳とホルネル症候群と原因と鑑別

麻痺性縮瞳と原因

麻痺性縮瞳の臨床整理
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まずは「縮瞳」か確認

瞳孔径、左右差、対光反射、眼瞼下垂などをセットで観察し、緊急性の高い病態(脳幹・頸部病変、中毒)を先に除外します。

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機序は交感神経の麻痺が主軸

麻痺性縮瞳は「瞳孔散大筋が働きにくい」方向で起きやすく、ホルネル症候群は代表例です。

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鑑別は“片側か両側か”で絞る

片側ならホルネル症候群や局所病変を、両側なら薬剤・中毒・全身性要因を強く疑い、病歴で分岐します。


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麻痺性縮瞳の原因と機序(交感神経の麻痺)

麻痺性縮瞳は、瞳孔を拡げる側(交感神経支配の瞳孔散大筋)が十分に働かないことで「相対的に縮瞳として見える」状況を指します。

瞳孔径は副交感神経(瞳孔括約筋)と交感神経(瞳孔散大筋)のバランスで決まり、交感神経路の障害(麻痺)でも縮瞳が起こり得る、という整理が臨床では重要です。

このタイプの縮瞳では、単に「小さい」だけでなく、同側の眼瞼下垂や顔面発汗低下など随伴所見の有無が病変部位推定に直結します(ホルネル症候群の想起につながる)。

現場で役立つ観察ポイントを、意識して“セット化”しておくと見落としが減ります。

  • 瞳孔:左右差、暗所での差の増減(暗いほど目立つか)
  • 反射:対光反射(直接・間接)、近見反射
  • 眼:眼瞼下垂、結膜充血、眼球陥凹の印象
  • 全身:発汗の左右差、頸部痛、頭痛、神経脱落症状、呼吸状態

麻痺性縮瞳とホルネル症候群(眼瞼下垂と縮瞳)

ホルネル症候群は、眼の交感神経の麻痺により、瞼裂の狭小(眼瞼下垂)と縮瞳などが起こる、と整理されます。

臨床では「縮瞳+軽い眼瞼下垂」が同側にそろうだけで、単なる生理的左右差ではなく交感神経経路障害を疑うきっかけになります。

“麻痺性縮瞳”という言い方をする場合、まさにこの交感神経麻痺の文脈(ホルネルの可能性)を念頭に置くと、頸部〜胸部〜脳幹までの病変検索に発想がつながります。

救急・病棟での分岐としては、次の病歴がある場合に優先度が上がります。

  • 頸部痛や頭痛が急に出た(頸動脈解離などを疑う導線)
  • 外傷、中心静脈カテ、頸部手術・神経ブロック
  • 上肢のしびれや脳神経症状を伴う
  • 既知の腫瘍や肺尖部病変の既往

※症候群のラベリングよりも、「交感神経麻痺を疑って中枢〜頸部〜胸部を外さない」ことが実務上の価値になります。

参考)公益社団法人 鳥取県医師会

麻痺性縮瞳の鑑別(薬物・中毒・オピオイド)

縮瞳は交感神経麻痺だけでなく、副交感神経優位(過剰刺激)でも起こり得るため、麻痺性縮瞳と断定する前に“薬剤・中毒”の文脈を必ず拾う必要があります。

有機リン中毒では典型所見として縮瞳が挙げられ、発汗や意識障害、呼吸減弱などのコリン作動性症状が同時に出やすい点が、眼所見単独よりも重要な手掛かりになります。

また、薬物過量(オピオイドなど)では拮抗薬(例:ナロキソン)が用いられ、原因に応じた治療選択が必要になる、という“縮瞳の背景を当てにいく”発想が安全です。

病歴での実践的な聞き取り(例)です。

  • 処方薬:鎮痛薬睡眠薬抗精神病薬点眼薬の使用状況
  • 生活歴:農薬曝露、職業(農業・清掃)、密閉空間での曝露
  • 来院状況:救急搬送、意識状態、呼吸数、SpO2、分泌物(流涎など)
  • 同伴情報:現場のにおい(溶剤・農薬)、空の薬包、貼付剤

縮瞳を見たら「目の病気」から入るより、まず“全身危機(呼吸・循環・意識)と中毒”を先に置くと対応がブレにくくなります。

参考)https://nishiizu.gr.jp/wp-content/uploads/sites/24/2025/03/conference-20_04.pdf

麻痺性縮瞳の検査と観察(対光反射・近見反射)

瞳孔の評価は、サイズだけでなく対光反射を含めた神経学的診察として位置づけると、鑑別の解像度が上がります。

縮瞳そのものは副交感神経作用で説明でき、動眼神経の副交感線維を介して瞳孔括約筋が収縮する、という基本の回路を押さえることが、反射所見の解釈に直結します。

左右差・対光反射・随伴する神経症状を総合して鑑別する、という考え方は、縮瞳でも散瞳でも同様に有効です。

ベッドサイドで“すぐできるのに差がつく”手順を、あえて言語化します。

  • 明所と暗所で瞳孔径をそれぞれ観察(暗所で差が増えるか)
  • 対光反射:直接反射と間接反射を両眼で確認
  • 近見反射:近方注視で縮瞳が起きるか
  • 眼瞼:下垂の程度、瞼裂幅、疲労で変動するか
  • 神経:構音、眼球運動、顔面の感覚・発汗、四肢筋力

ここで重要なのは、「麻痺性縮瞳」という言葉に引っ張られず、反射が保たれているのか、神経症状が局在を示すのかを淡々と積み上げることです。

参考)縮瞳と散瞳の違いは何ですか? |縮瞳

麻痺性縮瞳の独自視点:動眼神経麻痺との“取り違え”対策(散瞳が出やすい機序)

縮瞳を見ているつもりでも、現場では“眼瞼下垂”という共通点から、動眼神経麻痺(Ⅲ)とホルネル症候群を取り違えそうになることがあります。

動眼神経麻痺では散瞳が問題になる場面があり、IC-PC動脈瘤など外科的病因(圧迫性)のⅢ麻痺では散瞳が出やすい一方、糖尿病性など内科的病因(虚血性)では散瞳が目立ちにくい、という臨床的な傾向が知られています。

この“散瞳の出やすさの違い”の説明として、縮瞳に関わる副交感神経線維が動眼神経の周囲に位置するため外部圧迫に弱い、という理解が紹介されています(教育現場でも使いやすいポイントです)。

つまり、麻痺性縮瞳を疑う場面の安全策は「縮瞳=安心」ではなく、次を同時に確認することです。

「麻痺性縮瞳」という単語に沿って記事を読んでいる医療者ほど、逆に“散瞳を見逃さない導線”まで押さえると臨床の再現性が上がります。

参考)コラム

有用:動眼神経麻痺で散瞳が出やすい/出にくい機序(圧迫性と虚血性の違い)の解説

コラム

有用:ホルネル症候群(交感神経麻痺)で眼瞼下垂と縮瞳が起こるという整理

公益社団法人 鳥取県医師会

有用:有機リン中毒で縮瞳など典型症状がまとまっている(鑑別・初期対応の導入に使える)

https://nishiizu.gr.jp/wp-content/uploads/sites/24/2025/03/conference-20_04.pdf