栄養障害性視神経萎縮
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栄養障害性視神経萎縮の原因とビタミンB12と葉酸
栄養障害性視神経萎縮(栄養障害性視神経症)は、低栄養やビタミン欠乏により視神経、とくに乳頭黄斑線維束が障害されることで生じるとされ、典型的に両側性・対称性の視力低下を来します。
原因としてはビタミンB1、ビタミンB12、葉酸(ビタミンB9)などの欠乏が挙げられ、アルコール使用症や肥満外科手術後などがリスクとして強調されています。
総合すると「栄養が足りない」だけでなく、「吸収できない」「必要量が増える」「複数欠乏が重なる」状況が臨床では多く、単一要因で説明しない姿勢が重要です。
ビタミンB12欠乏は、栄養障害性視神経障害の代表で、食事性不足だけでなく内因子低下(悪性貧血など)や回腸での吸収障害などが関与し得ます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10777438/
栄養性の視神経障害では、眼症状が血液異常より先行し得る点が指摘されており、「貧血がないから否定」としないことが落とし穴になります。
また、葉酸欠乏も同様に視神経障害と関連し、臨床的には中心視野障害・色覚異常などで発症しうるため、B12とセットで評価しやすい項目です。
意外に見落とされやすい要素として、銅欠乏が栄養性視神経障害の原因として「明確なエビデンスがある栄養素」に含まれる点が重要です。
銅欠乏は胃切除や吸収障害、手術後の年単位の経過でも発症し得るとされ、短期の食事歴だけでは拾いにくいことがあります。
栄養障害性視神経萎縮を疑ったら、B群ビタミンだけに注意が固定されないよう、背景(手術歴、消化器疾患、サプリ・偏食)を広く問診します。
原因・診断の基礎(栄養障害性視神経症の病因、症状、診断、治療、予後のまとまり)
MSDマニュアル プロフェッショナル版:中毒性視神経症と栄養障害性視神経症
栄養障害性視神経萎縮の症状と中心暗点と色覚
栄養障害性視神経萎縮は、無痛性で、数日〜数週間〜亜急性に「かすみ」「ぼやけ」から始まり、中心暗点や傍中心暗点が拡大していく経過が典型像として整理されています。
視野障害は中心暗点〜盲点中心暗点(中心と盲点をまたぐ)として表現され、視力低下の割に色覚が落ちることがある点が臨床の手がかりになります。
両側性・対称性で進むことが多く、相対的入力瞳孔反応異常(RAPD)が目立ちにくいという特徴は、片眼性の炎症性視神経炎との鑑別に役立ちます。
眼底は初期に所見が乏しいことがあり、時間経過で視神経乳頭耳側の蒼白化が見えてくる、という「遅れて見える変化」が見逃しやすさにつながります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5745528/
一方で、チアミン(ビタミンB1)欠乏では、発症早期から乳頭腫脹が前景に出ることがあるとされ、同じ“栄養性”でも所見の出方が異なる点が重要です。
このため、症状が中心優位でも眼底が正常に見える時期はあり得る前提で、視機能検査と背景評価を優先します。
臨床での説明に使いやすいポイントは次の通りです。
- 👁️ 視力:ゆっくり低下し、日内変動より「じわじわ感」が目立つ。
- 🎯 視野:中心暗点/盲点中心暗点で、周辺視野は比較的保たれやすい。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 🎨 色覚:視力低下と不釣り合いに悪く感じる例がある。
- 😣 痛み:眼球運動痛などの痛みが乏しい。pmc.ncbi.nlm.nih+1
栄養障害性視神経萎縮の診断と視野検査とOCT
診断は、病歴(低栄養、肥満外科手術、アルコール、薬剤・毒物曝露など)と視野検査所見を柱に臨床的に行う、という整理が実務的です。
視野検査で両側性の盲点中心暗点(乳頭黄斑線維束の障害)を捉えることが、疑いを強める根拠として位置づけられています。
血液検査では疑う欠乏(B1/B12/葉酸など)や毒素について評価し、背景に応じて検査項目を広げます。
OCTは網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化を検出し得る手段として言及され、眼底変化が出る前にRNFLの変化を捉える可能性があるとされています。
特にRNFLの菲薄化は乳頭黄斑線維束から始まり、進行で全周に及ぶ、という進展パターンがまとめられています。
ERGやOCTで網膜疾患を除外し、必要に応じてMRIで圧迫性・脱髄性病変を除外する、という「除外診断の手順」も併走させると迷いが減ります。
検査設計を現場向けに簡略化すると、次の流れが実装しやすいです。
- 視機能:矯正視力、色覚(石原表など)、コントラスト、視野(中心〜盲点中心暗点を意識)。
- 形態:眼底+OCT(RNFL/黄斑評価)。
- 画像:MRI(圧迫・脱髄の除外)。
- 血液:CBC(大球性貧血の有無)、B12・葉酸・B1、可能なら銅など(術後や吸収障害を疑う場合)。
栄養障害性視神経萎縮の治療と補充療法と予後
治療の基本は原因の是正で、疑わしい毒性物質の回避と栄養の改善(ビタミンBや葉酸の補充など)が中核になります。
低栄養が原因と推定される場合、重度の視力障害に至る前に補充を開始することで回復し得る、という実務的なメッセージが示されています。
ただし、視神経萎縮が成立すると視力は通常回復しない、という予後の限界も同時に押さえる必要があります。
補充療法は「欠乏の同定」と「複数欠乏の同時補正」を前提に組み立て、単独補充で安心しない姿勢が推奨されています。
特にB12欠乏では経口または筋注などの補充法が整理され、重い神経症状では筋注がより迅速な改善に寄与し得る、という臨床的な運用が述べられています。
葉酸、チアミン、銅なども含めて不足栄養素を補い、関連する毒性要因(アルコール、薬剤など)も同時に評価することが、不可逆化を防ぐ鍵になります。
患者説明での「予後の現実的な線引き」を、医療者向けに言語化すると次の通りです。
- ⏱️ 早期:原因除去・補充が速いほど改善余地がある。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 🧠 併存:遺伝性や毒性が重なると、反応が読みづらい(同じ表現型を取り得る)。
- ⚠️ 遅延:萎縮が完成してからは回復が期待しにくい。
- 🧰 支援:ロービジョン補助具が役立つ場合がある。
栄養障害性視神経萎縮の独自視点と問診
栄養障害性視神経萎縮の診療で「独自視点」として強調したいのは、検査より先に“生活と医療の接点”を精密に聞き取ることで、診断のスピードが上がる点です。
MSDマニュアルでも診断の核に病歴と視野検査を置いており、病歴の質がそのまま診断精度に直結する構造になっています。
栄養性は「原因が治療可能」な一方で「時間で不可逆化」し得るため、問診の漏れはそのまま予後に跳ね返り得ます。
問診で押さえるべき“見逃されやすい具体”を、チェックリスト化します。
- 🍺 アルコール:量だけでなく、食事が置き換わっていないか(摂取カロリー・タンパク質・ビタミン密度)。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 🥗 食事制限:厳格な菜食・偏食・咀嚼嚥下の問題、独居で食が単調になっていないか。
- 🏥 手術歴:肥満外科、胃切除、腸管切除、長期経腸栄養(微量元素不足を含む)。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 💊 薬剤・毒性:エタンブトールなど視神経障害を起こし得る薬剤、メタノール等の毒物曝露。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 🧠 併発症状:しびれ、歩行障害、認知・気分変化(B12や銅などの神経症状のサインになり得る)。
さらに一段深掘りすると、「食事は摂れているのに欠乏する」状況(吸収障害、胃酸低下、術後、炎症性腸疾患など)を想定して質問を組み立てると、検査の選択と優先順位が明確になります。
栄養障害性視神経萎縮は多職種連携(眼科、内科、消化器、栄養、心理など)が重要とされ、眼科単独で抱え込まない設計が再発予防にもつながります。
「中心暗点+色覚低下+両眼性」で来た患者に、背景の栄養・吸収・毒性の三点を同時に探ることが、臨床での最短ルートになります。pmc.ncbi.nlm.nih+1